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始ノ章_ハルナユウイ編

(あーあ、ちょっと残念。)


 そう思いながら、トキコは目の前で楽しそうにお菓子を食べている友人・・・榛名有依を眺めていた。

昨日、トキコが放課後彼女に件の怪物捜査に乗り出した高嶺 利央兎の場所を教えたのは、故意であった。
言い訳をするならば、彼女は彼と一緒に帰る約束をしていた、にも関わらず利央兎はそちらの方に気がいってしまい、彼女との約束を忘れていた。
だから、戸惑っている彼女に素直に彼の居場所を告げたのは、自分の親切心からである。
 そして本当の狙いを言うのであれば、彼女をホウオウグループに引き入れるチャンスと考えたからだ。
利央兎がホウオウグループのため、と言って作戦に参加しているのも、彼女を危険から守るためでもあるのだ。
しかし、ある事件をきっかけに彼女は能力者として目覚めてしまった。
今のところ、敵対するウスワイヤに保護されていないのが幸いだ。
彼らに悟られる前に利央兎はこちらへと引き入れようとしているらしい、のだがアクションはまだ起こしていない。
だから、自分が彼に機会を与えてやったというのに・・・


(今一番信頼出来る人、ねぇ・・・)


 その彼女の話しぶりからすると、真実を知ったまでには至ったものの、肝心の部分は話していないようだ。
やはり大切なのは、有依ただ一人か。
まぁ当然であろう、彼は彼女のことを異常なまでに溺愛している。
それは表に出ずとも、雰囲気から察することは出来る。
異常なまでの執着心、それは自分がホウオウ様を崇拝するように、はたまた子供がお気に入りの玩具を意地でも手放したくないように。
しかし、とトキコの頭の中である疑問がよぎったのだった。


「・・・ねぇー、ユーイちゃん。」
「何?」
「もしも、ユーイちゃんとリオくんが、ひょんなことで敵対しちゃったらどーする?」
「えっ・・・」


 彼女の表情が一変した。
何があったかは知らないが、昨日のことでも思い出してしまったのであろう。
彼女の警戒を解く為に、トキコは言葉を続けた。


「ほら、たとえば体育のドッチボールでー・・・」
「あ、あぁ!そういうことね。」
「うん。」
「・・・それは、仕方が無いんじゃないかな?だって、試合だし・・・」
「そう?」
「うん、・・・トキコは?」
「私?」


 分かってる癖に。そう、心の中で彼女を嘲笑した。




「私だったらー、ユーイちゃんとおんなじかな?でもねー、仕方ない、とは思わないよ?」
「うん・・・?」
「勝ちたいから、相手には容赦しないもん。」


 例え見知った友人だとしても、我らが崇拝するあの人の為ならば一切の容赦はしない。
むしろ、それがトキコの優しさでもある。
半端な覚悟では相手を打ち倒すことも、守り切ることも出来ない。
そういった意味では火波スザクと都シスイ、あの二人が思い浮かぶ。
スザクであれば、あの約束通り、迷わず自分を殺してくれるのだろう。
しかしシスイはどうだろうか。
彼は今過ごしている日常を壊したくないが故に、日々奮闘している。
過去に彼と一度だけ戦場で接触したことがあったが、その時のシスイの眼は常に真っ直ぐであった。
守りたい人の為、日常の為、その揺ぎ無い意志が彼の戦いに対する自信を支えていた。
ならば、その日常の一部が突如彼に牙を向いたとしたら、彼は一体どうするのだろうか。
その信念を、保つことが出来るのか。
もしかしたら、その時彼は・・・


「・・・っふふ・・・」
「トキコ・・・?」
「へ?あ、ごめんごめん!ちょっと考え事してたの!」
「そう?・・・急に笑うから、びっくりしたよ・・・何考えてたの?」
「うーん、鳥さんを次はどうやって弄ろうかなーって。」
「酷っ!」
「あははー。・・・でもね、私思うんだー。」
「ん?」
「ユーイちゃんは仕方が無いって思うかもしれないけど、リオくんなら・・・進んで投げるんじゃない?」
「え、そう?」
「うん、・・・きっとそう。」


 彼ならば、進んで彼女に投げるだろう。
何故ならば、誰にも彼女を取られたくないから。


「それに、もし私がユーイちゃんに当てたら、リオ君すっごく怒ると思うよ。」
「・・・そうかもね。」


 彼の性分ならやりかねない、と苦笑を漏らした有依であったのだった。
ほのかな狂気がそこにあることも、露知らずに。









始ノ章_ハルナユウイ編


(さぁ、そろそろ始めようか)
(朱鷺の思惑は少女に届かず)



作者 登場人物
しらにゅい 榛名 有依トキコ

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最終更新:2013年06月19日 21:00