「
ジングウさん。ジングウさんが
ホウオウグループに戻ったのは2002年の四月中なので、2月にいるのはおかしいんじゃないですか?」
「
サヨリさん、忘れてはいけません。創造主ハタラキ有はこうおっしゃいました。「いかせのごれは、無数の平行世界の積み重ねである」と。ならば、私が2月にホウオウグループに復帰している可能性もある、という事です」
「つまり?」
「これは、少しだけ異なった地平線上でのお話、と言う事です」
「な……」
「あ、
クロウ。おはようございます」
「…………」
「? 私の顔に何かついていますか?」
「いや、顔ではない……リイ、その頭についているのは……」
「見ての通り、猫耳ですが?」
「何故」
ホウオウグループの施設内とは思えない光景に、クロウは唖然としてしまった。
「あ、クロウ。おはようございます」
「やぁ、クロウ。おや? そんな顔をしてどうされました?」
「
チネン、ナナ!? 何でお前達まで……」
「よぉ、クロウ。何驚いてやがるんだ?」
「す、スキュアロウ――!?」
施設内のどこを見ても、そこにいる人の頭の上には猫耳が。見れば、
ワズカ(アイ)や
サイナまで頭に猫耳がついており、先程すれ違ったバツやセキまでも猫耳をつけていた。周りの歯車が狂いまくっているこの光景に、クロウは軽く眩暈を覚える。
(こんな馬鹿な事を考える奴は――)
そう思い立つと、クロウはたった一つの部屋を目指してズンズン進んでいく。そして彼は、扉をぶち破らん勢いで開いた。
果たして、そこには――
「あ、クロウさん」
「おや、クロウではありませんか」
「からしゅ!」
――三匹の、猫耳メイドがいた。
「……この騒ぎは貴様の仕業か、ジングウ……」
「騒ぎってなんです。私は、ホウオウグループにとって不利益になるような真似は何もやってませんよ?」
「とぼけるな! だったら何だ、その猫耳は!?」
「見ての通りですが?」
「そうじゃない! なぜお前らだけではなく、他の構成員まで猫耳をつけている!? これは一体何の真似だ!?」
「? なんで、からしゅはおこってるの? きょうは、にーにーにーのひ、なのに」
クロウが声を荒げて追求していると、不意にジングウの傍にいた
レリックが答えた。
「に……にーにーにーの日?」
「今日は2月22日です。にーにーにー。もっと正確に言えば、にゃんにゃんにゃんの日、と言う事です」
「……それで?」
「いやねぇ。トキコさんがいかせのごれ高校の生徒全員を猫耳にしようという計画を耳にしましてねぇ……これは面白そうだと」
「それで一体ホウオウグループに何の利益があるって言うんだ!? 貴様、外の惨状を目にしたのか!?」
「さ、惨状って……クロウさん、流石に目くじら立てすぎですよ……」
これが
ユウム辺りの悪戯だったら注意程度で済ませたのであろうが、犯人がジングウであるせいか、いささか過剰反応してしまっているらしい。運動したわけでもないのに、クロウはぜーぜーと肩で息をしていた。
「と言うわけで、」
「……なんだ、その猫耳は」
「見ての通りですが? てめぇもつけやがれ、って事ですよ」
「断る! 貴様の起こした馬鹿騒ぎに付き合えるか――」
しゅるるるる、ビシィ!!
「ぐ!? な、何だ、この包帯は!?」
「ふ、ふふふふ……私をただの木乃伊冥土と侮った結果ですねぇ……生憎ですが、私は「怪人:木乃伊冥土」なのですよ」
「い、意味が分からん! 何が違うって言うんだ!?」
「ま、細かいところは抜きにして……」
ガシイィ!!
「う!? き、貴様ら!?」
「からしゅ、かくごしろ!」
「すいません、クロウさん……まぁここまで来たら、「毒を食らわばテーブルクロス」と思って」
「朱に交われば赤くなる! さぁ、貴方も朱に染まろうではありませんか!」
「は、離せジングウ! ぶっとばすぞおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「残念ですが、君もこれでお仲間です」
「や、止め――ア゛――――!!!!!!!!!!!」
この後、施設内で猫耳を装着したクロウが何人かの所属員に目撃されるのであるが、心なしか元気が無かったそうだ。
尚、猫耳は頭部に癒着する仕様であり、本物の猫耳のように動かせる一方、「2月22日」が終わるまで取れないように出来ていた。
この事件を、ホウオウグループでは後に「2.22事件」と呼んだとか、呼ばなかったとか。
最終更新:2011年02月28日 23:42