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クェスカイゼスの開発コンペティション応募作品:設定文





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クェスカイゼス型I=D 個体識別名トロイアに関する報告書



r:以下の報告書は帝國軍開発局関係者のみに閲覧を許可します。

l:クェスカイゼス(以下トロイア)の解析結果={

t:当該個体について=
トロイアは数少ない文献に見られる機体構成及び有する性能などの特徴からからクェスカイゼスであると特定された。
同機は現行I=Dの原型とされているがトロイアが発掘されたオリジナルである、或いは後世に建造されたコピーであるという物証は発見されなかった。
追記:一人乗りのコックピットブロックは後の時代になってから追加された物だと判明している。
パイロットとマッチングが良いことは利点であったが、これも改装によるものかコピー故の仕様なのか断定する材料にはならなかった。

t:重力制御について=
トロイアは大きな特徴として現行機では未採用の重力制御装置を有する。
機体表面に備えた黒い球体がそれであると特定されたが、詳しい作動原理は未だ不明のままである。
主な用途については反重力による静音飛行、盾周囲へ斥力を発生させる防御機構、内蔵砲身及び実剣など攻撃兵器への応用である。
追記:主電脳のアーマメントセレクタにはこれら重力兵器のリストが残されていた。
射撃兵装として重力球射出砲を内蔵、近接兵装には特異な形状の実剣を装備し全距離戦闘が可能である。
また防御面においても重力場を左腕装備の盾付近に形成することにより、実体弾は元より光学兵器の減衰・湾曲にも効果が見られた。

t:外装について=
表面装甲は積層構造で構成されている。
積層装甲、レイアードアーマーは現代でも実用化されている技術であるが、トロイアに装備されている物は組成不明の重金属合金製である。
固定装備されている実剣と実盾も同じ金属で形成されているが、非常に硬度が高く、粘りのある金属であること以外はよく解っていない。
追記:実剣は細く伸ばした四角錐をしており、刃は付いていなかった。
これは自重を倍加させ重さで断ち割ることを企図した仕様のためらしい。
同様に実盾も装飾程度のサイズであったが、装甲防御としてよりも重力場を展開させる機構としての役割の方が大きいようだ。

t:内部機構について=
当該系統機が現行機の原型とされる事から、内蔵されるメカニズムにさほど大きな差異は認められないと推察されたが、実際の検分でも主電脳付近及び重力制御装置がブラックボックス化している以外目立った機構は発見されなかった。
ただし一点毎の部品精度は非常に高く、現代で再現するには莫大な手間と費用がかかるものと推察され、「パーツの合いは薄紙が通らないくらい」という検分に立ち会った技術者の証言がある。
素材についても外装同様未知の合金が使用されている部位があり、より詳しい解析結果が待たれる。

t:搭乗者適性について=
これも文献に散見するとおり騎士階級、つまり根源力5万を超える者でないと起動しない。
検証のため根源力8千の報告者が搭乗してみたが、コンソールにエラー表示が出るばかりで腕一本動かなかった。
特定のパイロットのみを識別する訳ではないことから、防犯装置の類ではなく機体のスペックに応じたパイロットを要求する一種の安全装置であると考えられる。

l:機体構成={

t:全高=15m
t:総重量=可変

t:頭部=
普段は兜状の装甲に覆われカメラアイのみが露出している。
面頬の下に古の武人を思わせる口を引き結んだ素顔がある。

t:胴体部=
本体にまとわりついているマント状と房状の布は装飾的なものである。
機体性能に寄与する部分はないが戦場ではよく目立ち友軍を鼓舞したと思われる。

t:腕部=
重い実剣を支えるためにマニュピレーターは頑丈に出来ている。
左腕は実盾を備える機構上右腕より重い。

t:脚部=
実剣のサーバーを兼ねて大腿部が大きく張り出し、足首に当たる関節が無いのが外見上の大きな特徴。
これは反重力による浮遊を常態としているためであり、二足歩行時には前傾した爪先立ちで膝を大きく曲げて移動することになる。

t:武装=
両腕に重力球射出装置を内蔵。
左腕に重力場を形成する実盾を固定装備。
左右大腿部に実剣を各一本格納。
内蔵する武装のみで大抵の状況に対応可な為、外付けの火器などは用いられない。

t:その他=
未知の金属(技術者の通称はオリハルコン)による積層装甲を装備。
表面に重力を制御している球が見えるが、これは半ば液体金属のような性質を持つらしく表面張力で機体表面に張り付いている。
この球はその時々で制御が必要とされる部位に移動する性質があり、半外部装置化したこの機構のため内部構造は驚くほどシンプルで堅実な組み上がりになっていた。


総評:
今回の検分で解ったトロイアの部品精度や機体性能は現行の共通機を凌ぐ物であり、仮にコピー機体であったとしてもワンオフの専用機であろう。
これは初回の検分時に施されていた装飾的な外装からも裏付けられ、高い地位にある人物、少なくても騎士階級以上に指揮官機として供与されたものと推察される。
一方で純粋機械動力でありながら他物理域での可動が保証されるメカニズムについては最後まで判明しなかった。
これがブラックボックス内に未知の機構が隠されている為なのか、人型という形態以外の何に依存するものか、継続的な調査が望ましい。
追記:
未知の構成素材、重力制御装置、他物理域での可動からトロイアは紛れもなくTLOであると断定する。
昨今問題となっているドラゴンからの警告を例に挙げるまでもなく、運用には注意が必要であると考える。

♯以下に添付した模擬戦のログと併せて報告書とし、提出いたします。
署名:帝國軍兵器開発局 久遠寺分室 久遠寺 那由他


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 報告書に添付されたログファイルを開くとディスプレイに雑然とした小部屋が映し出された。
 ペーパーメディア、ディスク、メモリースティック…あらゆる記憶媒体とそのリーダー、それらが積み上げられた卓と壁一面を占有しているモニター。
 それから何故かそれらの上でだらしなく寝そべる黒猫。
 カメラの前に銀髪猫耳の女が立つ。首から提げたIDには彼女の顔写真と帝國軍兵器開発局 久遠寺 那由他の文字が覗えた。
 カメラの位置を調整しているらしく画面が不規則に揺れ、やがてモニターの全面が収まる位置に固定されると揺れが収まった。
 再び画面に那由他が戻ってくる。やや緊張した面持ちで咳払いを一つ、カメラに向かって語り始めた。
「808002帝国領宰相府藩国、特殊兵器実験場での模擬戦を開始します。
 被検機体はクェスカイゼス型I=D、個体識別名トロイア。
 テスト目的は実戦想定下における重力兵器の有効性検証と機体の可動域確認及びパイロットによるモニタリングとします」
 那由他はここで言葉を切るとモニターのコンソールに指を走らせた。
モニターに灯が入り分割された画面にコックピット内のパイロットと荒野にたたずむ勇壮な機影が映し出される。
 それは朱と金色に彩られた外装にマントを纏い、有史以前の戦場にたたずむ闘士の風格を備えていた。
 那由他はモニターを一瞥してインカムを取り出すと苦心して猫耳の先に引っかけ、パイロットと通信を開始する。
「調子はどうですか?イズナセンパ…もとい、コールサイン・サンダーボルト」
「ハンガーから歩かせただけだが。動作が妙に滑らかで気持ち悪いくらいだ。オーバ」
 太陽系総軍風の青い軍服を着たパイロットはなんの気負いもなさそうにのんびりした口調で答えた。
「結構です。それではテストを開始します。
指示座標まで移動後戦闘開始。自由にやっていただいて良いですが、搭載兵器を全て使い切ることを求めます」
「おーおー中々派手好みじゃないか。
サンダーボルト、出撃する」
「コピー。御武運を」
 型通りに通信を終えると那由他はチェイサーがトロイアの機影を正確に追うようコマンドを打ち込み、パイロットのバイタルサインなどの記録を取り始めた。
「うなー」『ああ、やっと最終テストかい?…乗っているのはイズナか。なんだって彼を?』
「解析にも立ち会ってたよ。そもそもあの機体は騎士階級じゃないと乗りこなせない。
 わたしじゃテストにもならないって事ね」
 今回那由他に回されたTLOとおぼしき機体の解析と実地テストという、余りおおっぴらに出来ない仕事のためのパイロットと猫士各一名という人選であった。
 自らがデザインした兵器が帝國軍に採用されたよしみで兵器開発局に間借りしている那由他だが、一応は共和国民である。
 所属や機密保持の問題には多少神経質にならざるを得ない。
「コントロール。陸戦型幻獣の大集団を確認。交戦開始する。オーバ」
「コピー。交戦を許可します。…明宗、あんたも手伝いなさいよ」
「なうなう」『はいはい、僕もしっかり頭数に入ってるんだなぁ』
 億劫そうに寝そべっていた卓の上から降り、那由他の隣のオペレーターシートに乗ってバイタルチェックを代行する猫士の明宗。
 モニターの映像がトロイアを背後から捉えたものに変わり、地上50㎝ほどを滑るように移動するトロイアとその前方でひしめく幻獣群を捉える。
「そんじゃあ肩慣らしに『グラヴィティランチャー』ファイアっと」
 あくまで軽快な彼の声と共に盾を装備した左腕の手首が下方に折れ、砲口が覗く。そこからなんの反動や発射音もなくバスケットボール大に圧縮された重力場の球が幻獣の群れ目掛けて撃ち込まれた。
 重力球は着弾と同時に直径10m余りの効果範囲を幻獣ごと圧壊させ即座に蒸発した。同時にモニターに激しいノイズが走る。
「みゃ?」『今のは?』
「内部に取り込んだ電磁波が重力球の蒸発に伴って一気に開放された事による電波障害…かな。
 チェイサーの電子回路がパンクしかねない勢いね」
「ぶーな」『どうやってるのか解らないけど酷い兵器だ』
「そうね。でも有効な兵器だよ。同出力の重力発生装置でも備えない限りあれは防げない」
 那由他と明宗が言葉を交わしながら検出したデータの解析を行う間にトロイアは放たれた矢のように勢いよく跳躍するとそのままの速度で幻獣の只中にパワーダイブをかけた。 
 飛行は勿論、加速度も意のままに出来る重力制御搭載機ならではの芸当である。
 重力球が穿ったクレーターに一斉に幻獣の赤い視線が集まる。全ての個体が攻撃姿勢を取ったところでトロイアは左右の実剣を抜刀し包囲の一画に突進した。
 初撃を外し、一斉に回頭を始める幻獣の只中機体を大きく前傾した姿勢のまま滑るように間隙に斬り込む。
 同士討ちを恐れ突撃姿勢を取った中型幻獣の一体が頭部を西瓜のように爆ぜさせて閣座した。
「…げうー」『…いまのは?』
「実剣の重量をインパクトの瞬間最大にした。金属バットでプリンを叩くようなものね」
 トロイアが幻獣の中に突入したため、チェイサーからの映像が遠景からのズームに切り替わる。
幻獣群が立てる土煙と血煙の中を死角から死角へ、独特の形状をした実剣でなぎ払い叩き割りながらトロイアが蹂躙する。
「コントロールよりサンダーボルト。航空型の増援を確認、対地攻撃来ます」
「はいよ。ぶんぶん飛ばれるのは好きじゃないんだよ、な」
 通信が終わるかどうかのタイミングで聞き慣れた風切り音とともに機関砲弾を模した武器化幻獣が地面に突き刺さる。
 着弾点を先読みで回避しあるいは死角に回った幻獣を盾にしながら、トロイアは行く手に立ちふさがった幻獣の頭を飛び越えるように跳躍した。
 そのまま機体をロールさせて背面飛行に入る。
「あ、そう言えばシールドもあったんだったな」
 思い出したように対地攻撃を左腕の盾付近に展開した重力場で逸らしたトロイアはそのまま航空型の腹下へ重力球を立て続けに射出した。
 戦果を確認する間もなく再び着地、射撃、跳躍、実剣での近接攻撃を繰り返し幻獣群に出血を強い続けた。
 やがて地面を埋め尽くすほどだった群体に虫食いのような穴が広がるにつれて幻獣群は遂に雪崩を打って退却を開始した。
「潮時ですね。サンダーボルト、追撃は不要。模擬戦を終了とします。
帰還してください」
「了解、コントロール。サンダーボルト、帰還する」
 装飾用の被布を翻し傲然として宙を滑るトロイアの姿がモニターに大写しになる。
出撃前と変わらず被弾跡や粉塵による汚れもみられないその姿は高みから戦場を圧する蹂躙者の風格に満ちていた。
 モニタリングと外観のチェックから目立った損傷がないのを確認すると那由他は模擬戦終了を宣言するコマンドをコンソールに入力した。
「r:模擬戦終了。状況設定レムーリアを解除する」
 同時に先程までひしめいていた幻獣は勿論、暗雲が立ち籠めていた空や遠景に至るまでが消失し、がらんとしたドーム型の演習場の風景が現れた。
「ふなふな」『これもよく解らないけど良くできてるよなあ』
「所詮は疑似環境を使ったシミュレーターに過ぎないんだけどね。他物理域の環境を再現できるのが大きい。
 これがあるからというのも出向してきた理由の一つなんだけど。
 さて、サンダーボルト。最後に実際に乗った『感想』をお聞かせ下さい」
「俺的にはイマイチだなぁ」
 サンダーボルトことイズナの返答はやや苦いものが混じっているように感じられた。手元のボードにメモを取りながら続きを促す。
「と、いいますと」
「俺達が乗る機体は人型をしていてもどこか機械臭さを残すもんだ。例えば移動時の作動音とか、射撃の反動とか。
 そういう細かいサインを熟知して機体性能を100%活かすのがパイロットの仕事、というを繰り返し教わってきた。
 まあ、そういう面倒くさいところも含めて乗機に愛着も湧くんだが」
「重力制御装置を実装していれば確かにそれらの問題はクリアされます。
 こちらの採ったデータでは反応速度や次のアクションに移るまでのロスもかなり軽減されているように見受けられますが」
「そう、まるで正反対だ。こいつは人間臭過ぎる。
 機械に動かされているのかこっちが動かしているのか解らなくなるのが理想だというパイロットもいるが、丁度そんな感じだな。
 参考になるかね?」
「貴重な意見です。
 最後にもう一つ。サンダーボルト、貴方の理想はどちらです?」
「決まってる、乗機を完全にコントロール下においてこそのパイロットだ。
 手足のように扱うってのはそう言うことだ」
「なるほど。ありがとうございました。
 ハンガーで整備士が待機しています。後は彼等に。
 降機したらコントロールに上がってきてください。2時間後にはナニワに帰りますので」
「了解」
 那由他は通信を終えるとインカムを外してモニターの灯を落とし、息をついた。記録したデータと書類をまとめ、アタッシュケースに納めていく。
「みゃみゃ」『で、肝心の重力制御については何か解ったことはあるのかい。推論くらいは立ててたんじゃないのか?』
「……たぶん、中でもの凄く重い粒子が高速で回転しているんだと思う」
「みゃー」『ジャイロのようにかい』
「そう。それも短軸じゃなくて、中心となる粒子の回りを複数の粒子が取り巻くように周回しているの。
 普段は遠心力と引力が釣り合っているけれど、この周回する粒子の回転数を制御することで軸を傾かせ任意の場所に力場を抽出している…」
「ふに」『原子モデルを思い出すね』
「自重を増減するのと任意の力場からの引力、つまり進行方向に重力源を作って自分はそちらに引っ張られる、 というのが今の所わたしの推論」
「ぶなー」『なんにしても胡散臭い話だな。同型が何機あるのか知らないが』
「イズナさんの証言からも薄気味悪いものを感じるしね。
 100%TLOで間違いないと思う」
 那由他はここで言葉を切ると、ふと思い出したようにカメラに向き直った。
 再び咳払いを一つ。
「808002帝国領宰相府藩国、特殊兵器実験場での模擬戦を以上で終了します。
 願わくば、この機体が正義と慈悲によって運用されますように」
 その言葉を最後に画面が揺れ、暗転して模擬戦のログは終了した。

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文章設定 15-00752-01:ナニワアームズ商藩国:久遠寺 那由他
最終更新:2008年08月10日 21:17