…今から七年前、とある医療施設に一人の女性が査察に入った。
 女性の名はクイント・ナカジマ、首都防衛隊の査察官である。
 クイントは前々からこの医療施設に目を付けており、地上本部の許可を得て査察に踏み込んだのだ。

 …施設内は何の変哲もない医療施設であったが、奥に隠してあった地下通路を通ると風景は一変する。
 其処には幾つもの培養カプセルが並び、骨格に似たフレームも並び立っていた。

 「……やっぱり、戦闘機人の研究施設だったのね」

 戦闘機人、基礎フレームを軸に肉体を作成する質量兵器であるが、
 この施設では肉体を構成する部品に、人間の遺伝子を利用しているようで、人道的にも違反した施設だった。

 クイントは更に奥へ進むと扉に突き当たる。扉にはロックが掛かっており、クイントはリボルバーナックルで扉を突き破り、
 部屋に入ると二つのカプセルが並んでおり、覗き込むと中には、五歳と三歳位の少女が眠っていた。
 そしてカプセルにはこう記されていた。

 「ホムン………クルス?」


                   リリカルプロファイル
                     第八話 尊敬


 その後クイントは二体の戦闘機人を回収、管理局の分析班に引き渡した。
 分析後、様々な事実が判明した。まず彼女らはメンテナスフリーの性能を持ち、
 基礎フレームにおいては、肉体の成長に合わせて成長する、正に生きた金属とも呼べるフレームで構成されていた。
 次に体内にはリンカーコアが搭載されており、人造魔導師とは異なり自身の努力で強化出来る代物であった。
 極めつけは遺伝子、彼女らの肉体の遺伝子はクイントの遺伝子で造られており、正にクイントの子と呼べる様な仕様となっていたのだ。

 「まるで質量兵器と言うより人間に近いですよ、これは貴重なサンプルです」

 サンプル…分析班のその言葉に眉をひそめるクイント。
 分析班は彼女らを兵器より“人”に近いと言いながらサンプルという“物”扱いをしている。
 しかもこんな幼子に対して…そんな分析班の態度に対しクイントの怒りが込み上がり、
 このまま彼らに引き渡したままでは、何をするか分かったものでは無いと、
 同じ遺伝子を持つ身として――いやクイント自身が持つ女性としての一面に火を付けた。

 「では、更なる分析の為に解剖を――――」
 「いいえ、もう十分です、ここからは私達が彼女達の面倒を見ます!」
 「なっ?!何を言っているんですか!アレは“兵器”なんですよ!」
 「いいえ、彼女達は“人”です。そして…私達の子供です!!」

 母性溢れるクイントの瞳は決意と覚悟の色を宿し、分析班は母の威圧感に圧倒され、渋々とクイントの申し出を受け入れる。
 だがその変わりに、定期的な診断を受けさせる様にと最後に告げて、分析班は立ち去った。


 ――その後、二人はギンガ・スバルと名付けられ二年後のクイントの死が訪れるまで大事に育てられた――


 時は変わって現在、ゆりかご内の訓練場では二人の戦闘機人が、チンク相手に模擬戦を行っていた。
 一人は赤髪の少女ノーヴェ、もう一人は茶色のロングヘアーで一カ所だけ髪を縛った少女ディエチである。

 「だあああぁぁぁっ!!」

 ノーヴェは気合いと共に拳をチンクに向け振り下ろすが、
 チンクはバックステップで難なく回避、更にノーヴェに向けナイフを三本投げ対抗。
 だがノーヴェはエアライナーと呼ばれるISで上空への道を造り移動、チンクのナイフを全て回避する。

 一方ディエチはイノーメスカノンと呼ばれる巨大な狙撃砲でチンクを隙を狙っていたのだが、
 逆に先手を打たれチンクのナイフが四本襲い掛かり
 すぐさま迎撃するのだが一本撃ち漏らし、左の頬をかすめた。

 一方チンクがディエチに向けてナイフを投げている頃、
 ノーヴェはチンクに向けブレイクギアを使用した蹴りを打つ構えに入っていた。

 ブレイクギアとは、彼女が身に付けているジェットエッジと呼ばれるローラーブレードの、足首部分に搭載されているスピナーの事で、
 回転によって加速されたエネルギーを、かかとの部分にあるジェットノズルで噴射、蹴りの威力を高める効果を持つ。

 「行くぞ!チンク姉ぇ!」
 「甘いな、ノーヴェ」
 「えっ?!」

 振り向くと先程回避したナイフがノーヴェに迫っており、ノーヴェは慌ててその場を退避、
 その様子を離れで見ていたディエチは嫌な予感がしてゆっくり振り向くと、
 先程頬をかすめたナイフがUターンしている真っ最中で、ディエチもまた慌ててその場を退避。

 「ぎゃあぁぁぁぁぁ?!」
 「うっ! ……お……重い………」

 必死な形相で逃げまくる二人、その姿を見たチンクは頭に手を当て
 ヤレヤレ…といった表情で二人にアドバイスを送る。

 「ノーヴェ!右手に付けている物は飾りか!迎撃しろ迎撃!!
  ディエチも重いんだったら捨てるのも手だぞ!!」

 チンクのアドバイスにハッとする二人、ノーヴェは振り向きバック走行をしながらナイフの迎撃体制に入り、
 右手の小手に付いているクリスタルからマシンガンの様に光弾を発射、その光弾は物の見事に全弾外した。

 「げっ?!全然当たらねぇ!!」
 「落ち着いて狙えノーヴェ!」
 「……どうしよ…棄てたはいいけど対抗手段が無い……」
 「ディエチ………」

 先程と同様、頭に手を当て頭を掻くチンク。人のアドバイスを素直に聞くその姿勢は良いが、
 それから先を自分で考えないのが二人の特徴であり欠点、さて…この天然達をどう指導しようかと考えていると、
 床から人差し指が現れ辺りを探っている様子、そしてチンクを見つけると引っ込み、セミロングの水色の髪の少女が床から飛び出す。

 「チンク姉!探したよ!」
 「セインか……何のようだ」
 「博士が用があるから部屋に来てくれってさ」

 セインと呼ばれた少女の連絡を受けたチンクは一つ頷く。
 すると、今まで二人を追い回していたナイフが止まって床に落ち、
 カチャンと金属音と同時に二人は倒れるように床に座り込んだ。

 「模擬戦は此処までだ。二人共今日の失敗をしっかりと反省しろ!」
 『…はい………』

 力の抜けた返事をする二人、やれやれと頭を左右に振りチンクはレザードの待つ部屋へと向かった。

 「大変だねぇ、前線タイプは」
 「……セインは…良いの……かよ」
 「私はほらっ、偵察タイプだから」

 肩で息をするノーヴェの問いに笑顔で呑気に答えるセイン、
 ノーヴェの隣には最早喋る気力も無いディエチが横たわっていた。


 その頃、レザードの部屋ではレザードがモニターを見つめており、
 其処には先程までの戦闘機人達の模擬戦データが記されていた。

 「ふむ……やはり特化型は応用が利きにくいですね」

 偵察に特化したセインのISディープダイバーは、床や壁などに潜り込むことが可能で、潜入には打ってつけの能力なのであるが
 バリア・フィールド等の能力に弱く、ノーヴェは前線しかも格闘に特化した為か、射撃能力が低く、

 ディエチに至っては砲撃戦に特化し過ぎて、イノーメスカノンが無いと何も出来ないと言う状態、
 …ディエチにもノーヴェと同様に、何かしらの応急処置が必要なのかもしれない…と考えていると、部屋にノック音が響く。

 「チンクですね?どうぞ」
 「失礼します」
 「妹達の調子はどうですか?」
 「まだまだ甘い所はありますが、徐々に学習していると思われます」
 「そうですか、それはよかった」
 「あの…御用はそれだけでしょうか博士……」
 「いいえ。チンク、その右目は本当に治さなくて良いのですか?」
 「……これは自分への“戒め”とお捉え下さい」

 今のチンクの右目は黒い眼帯で覆われていた。三年前の戦闘時、疲弊していたとはいえ、自分の油断によって撃墜された。
 そして二度とあの様な事が無いようにと、自分への戒めとしてあえて治さずにいた。

 「成る程、実に貴女らしい考えです。ですが…実はその右目はもう治してあるのですよ」
 「えっ?!ですが右目は機能していませんが?」
 「えぇ、“今の貴女”ではね。そこで貴女にコレを差し上げましょう」

 そう言ってレザードは右手を差し出す。手の中には一つのイヤリングが入っており、チンクはそれを受け取る。

 「これは………デバイス?…ですが私には―――」
 「リンカーコアですか?それならちゃんと持っていますよ」

 あの撃墜後、修復中に人造魔導師の技術と“新たに得た技術”を流用し、リンカーコアを搭載させる事に成功。
 チンクの撃墜はレザードにとっても衝撃で、自分の油断のせいでチンクの撃墜を許してしまったと語る。

 「つまりこれは“償い”と言うべきなのでしょう」
 「博士……ありがとうございます」
 「いえいえ、因みにそのデバイスの名は“ヴァルキリー”その名を告げればセットアップ出来ますよ」
 「分かりました。早速試してみます」

 チンクは早速受け取ったデバイスを左耳に付け叫ぶ。

 「ヴァルキリー!セットアップ!!」

 するとデバイスは輝き、チンクを宙に浮かせ光が体を覆う。
 光の中ではスーツ・コートが粒子化し、上半身は蒼く金の装飾が付いた甲冑、
 下半身は白いスカートに変化し、手足もまた蒼い小手・具足を纏っていた。

 そして目の眼帯が粒子化すると、白い羽根飾りの付いた兜に変化、銀の髪は編み纏められ、
 左腰には銅色の鞘に両刃の片手剣型のアームドデバイスを携え、
 光の渦がほぐれ背中に光の粒子が集まり白い翼へと変化、
 ひとはばたきすると翼はまた粒子に戻り、チンクは床に着地する。

 「こっこれは!?」
 「これが貴女の新たな力です」

 ヴァルキリーをセットアップしたチンクには様々な能力が追加されていた。
 先ずはマテリアライズ、魔力を消費して武具を具現化させる能力である。
 そして具現化した武具にはエーテルコーティングと呼ばれる力場が発生している。
 エーテルコーティングとは、武具を特殊な力場で包む事で破壊不可効果をもたらす。
 …ただ時間制限があり三分しか具現化が持たない。

 次に原子配列変換能力で、簡単に言えば錬金術の様なもの。
 つまり折れた剣で強力な剣を創り出したり、鉄を金に変えることが可能になったのだ。
 …ただ本人の能力によっては配列変換が無理であったり、更にエーテルコーティングの効果も付かないとも付け加えられた。

 最後に右目…これは今までの右目とは違う能力だという。
 名はユーミルアイ、見た相手の行動を予測し直接脳にフィードバックさせる効果を持つ。
 そしてデバイスはカートリッジ式を採用、更にレザードの魔法の一部を登録してあるのだと一通り説明を終える。

 「素晴らしいでしょう、更に自身の能力を鍛え上げればヴァルキリーとしての能力も成長しますしね」
 「…確かに素晴らしいのですが……博士、私自身の肉体は成長しないのですか?」
 「………残念ながら」

 眼鏡に手を当て答えるレザード、心なしか落ち込んで見えるチンクであった。

 一方レザードの部屋の扉の前には、爪を噛み険しい顔をしたクアットロが佇んでいた。
 何故チンクばかり博士は構うのか、自分を見てくれる必要としてくれる様になるにはどうすればいいのか…
 チンクへの嫉妬で狂いそうな感情を抑えつつ、クアットロは扉を後にした。

 クアットロは自室に戻るとゆりかご内のデータバンクを洗っていた。
 レザードに認められる為に必要な資料、情報を得る為だ。
 とその時、管理局に潜入中の姉、ドゥーエからの連絡が入る。
 その内容とはミッドチルダにある、臨海第八空港にレリックが運ばれるというものだった。

 「とりあえず、この情報をドクターに伝えておいてくれない?」
 「…ねぇドゥーエ姉様、この任務私にやらせてくれません?」
 「クアットロ?……今、自分が何を言っているのか分かってる?」
 「分かってますわ」

 クアットロの目は真剣そのもので、モニターのドゥーエ見つめている。
 確かにクアットロには視覚・電子・レーダーすら幻惑させるシルバーカーテンというISを持っている。
 つまりクアットロのISは臨海第八空港との相性が良い、それにクアットロの“性格”であれば、失敗する事はまずあり得ないだろう。
 そう考えたドゥーエは、クアットロの申し出を仕方なく了承する。

 「…分かったわ、ドクターには私から伝えておく」
 「ありがとう!ドゥーエ姉様!」

 クアットロは満面の笑みを浮かべ、直ぐ様現場へと向かう。
 一方モニターにはクアットロの見たこともない満面な笑みに、硬直したままのドゥーエが映し出されていた。



 此処は臨海第八空港、この空港は電子機器によって自動運営された初の無人空港で、荷物の運搬が主な業務。
 空港内では入荷した様々な荷物を自動的に分別・出荷を行っていた。

 その仕事っぷりを見学している二人の少女がいた、スバルとギンガである。
 スバルは学校の課題である空港の仕事を知る為、父親の許可を得て見学を、
 ギンガは陸士候補生の一環として、スバルの付き添いとして同行していた。

 スバルは目をキラキラさせて仕事を見つめており、
 一瞬でも目を離すと何処かへ行ってしまう雰囲気、すると滑走路に新たな飛行機が入港してくる。

 「お姉ちゃん!また新しい飛行機が入って来たよ!」
 「ちょっとスバル!待ちなさい!」

 しかしギンガの制止を無視し飛行機の方へ向かうスバル、それを慌てて追いかけるギンガ。
 その頃、臨海第八空港の上空では、クアットロがモニターを開き空港内の監視カメラをハッキング、
 中の様子をうかがってるさなか、厳重な警戒態勢を取っている部屋を発見、
 監視カメラをズームさせると扉にはロストロギア保管庫と明記されていた。
 次に保管庫内の監視カメラにハッキングを試み内部に探りを入れると、一つのケースを発見する。

 「見つけた!レリックケース!」

 レリックケースを発見したクアットロは、ガジェットドローンⅠ型を向かわせ、
 クアットロのISの効果もあって、順調に事は進み目的の保管庫に到達する。

 だがガジェットはクアットロの開錠を待たず、攻撃を仕掛け扉を破壊。すると辺りにアラーム音が響き、
 警護メカが姿を現しガジェットに攻撃を仕掛けてくる。

 ガジェットには自律判断が可能なAIを搭載しているが知能はそれ程高くは無く、
 また学習機能は搭載されていない為、この様な惨事を引き起こしてしまったのかもしれない。

 話を戻し両者の攻防が続く中、ガジェットの攻撃がレリックケースに当たり、その衝撃で床に落した瞬間、
 眩い光が辺りを包みガジェット、警護メカ共々巻き込み大爆発を起こした。

 一方上空では、クアットロが唖然としていた。ガジェットが原因とはいえ空港は火の海、
 だがこのままレリックも手に入れる事も出来ず帰る訳には行かない。
 少なくともレリックだけは手に入れようと、クアットロは空港へ向かい、
 空港内は炎と煙に覆われ始めており、辺りは警報が鳴り響き、スプリンクラーが起動している通路もあった。

 クアットロはロストロギア保管庫の前に立つと、唖然とした。
 部屋の中ではレリックが高密度のエネルギーを放出、その衝撃で辺りを吹き飛ばしていたからだ。
 このエネルギーの嵐に飛び込めば再起不能は必死、だがそれでもレリックを手にせねば、この場に来た意味が無い。
 クアットロは暴走するレリックを止めようと踏み込もうとした時、モニターにスカリエッティが写り制止を促す。

 「止めたまえ、クアットロ」
 「ドクター!?ですが―――」
 「今、君を亡くす訳にはいかないのだよ」

 幸いガジェットはレリックの暴走で消滅、証拠隠滅する手間が省けている。
 後はクアットロがその場所を後にすれば、全て解決するとスカリエッティは告げ、
 クアットロは小さな声で了承し頷くと、その場を後にした。


 ――空港外上空、クアットロは落ち込んで飛行していると突如、轟音が鳴り響く―――

 「なに………アレ!?」 

 振り向くと、桜色の砲撃が空を突き刺すように伸びていた。



 時間は遡り、空港内の通路、其処にスバルが迷い込んでいた。
 辺りは炎と黒煙に包まれ、身動きが取れない状況だった。

 「ケホッケホッ……お…お姉ちゃん………何処…」

 煙で喉をやられていながらも必死に姉を探すスバル。その時熱によって崩壊した柱がスバルめがけ倒れ、
 スバルは叫び声を上げながら頭を押さえ体を丸くする。
 もう駄目だと諦めたその時、桜色のバインドが柱を縛り上げ支え、その柱の奥には一人の女性が立っていた。

 「大丈夫だった?安心して、助けに来たよ」
 「ありがとう……お姉ちゃんは?」
 「お姉ちゃん?」

 スバルは女性に事情を話す。スバルの姉ギンガもまた此処の何処かにおり、
 見学中に離れ離れになってしまったという。

 「大丈夫!お姉ちゃんもちゃんと助け出すから!」
 「ホント?」
 「本当だよ!」

 女性は大きく頷くと、スバルは安心した様な表情を見せ、
 その顔を見た女性はスバルを下がらせると、左手に握る杖を天井に向ける。

 「行くよレイジングハート!」

 すると機械音と共にデバイスの先端が二股に変化、
 更に杖の先の周りに環状の魔法陣が現れ、先端部分に桜色の魔力が集まっていき、
 そして――――

 「ディバイン……バスター!!」

 次の瞬間、桜色の魔力が砲撃となって天井を貫き、外までの道を作ると、スバルを抱え作った道を通って脱出した。

 「こちらは高町なのは、聞こえてますか?生存者を一名確保、ですがまだ中には―――」

 スバルは抱えられながらも自分を助けてくれた人の名を胸に刻んだ。
 そして自分もまた、助ける側になりたい…救助隊に入りたいと強く願った。



 場所は変わり此処はゆりかご内のレリックウェポン研究施設、
 内部にはスカリエッティとウーノ、そしてクアットロがいた。
 今回の事件で被った被害はレリック一つとガジェット数体。
 尤もレリック自体は空港の保管庫に有ったものなので実際の被害はガジェット数体のみとなる。
 …とは言え得た物は無く、損益のみ残したとウーノは説明を終える。

 「ではドクター、クアットロの処分如何します?」
 「そうだね……………」

 顎に手を当て考え込むスカリエッティ、辺りは静寂に包まれクアットロは冷や汗を掻き始めていた。
 暫くして考えが纏まったのか、スカリエッティは静かに口を開く。

 「では処分を言い渡す」
 「はい……………」
 「これからはレザードの助手を勤めなさい」
 「はい……………ハイッ?!」

 予想せぬ処分の内容に思わず素っ頓狂な返事を返すクアットロ。
 スカリエッティの言い分はこうだ。今レザードは不死者の研究や戦闘機人の開発などで忙しい、
 そこで今回の失態をきっかけに本格的に助手として徹して貰うと言う事なのだ。

 「これからは更に忙しくなるからね、名誉挽回したいのならこれほどの処分はないと思ったのだよ」
 「ドクター…………ありがとうございます!!」

 大きな声でお辞儀をするクアットロ、その姿を見たスカリエッティは大きく頷きクアットロを下がらせる。
 そしてクアットロは足早にレザードの元へ向かった。
 研究施設に残された二人、不意にウーノが質問を投げ掛けて来た。

 「ドクター、何故あのような処分に?」
 「それはだね…私を楽しませてくれたからだよ」
 「どう言う…ことです?」

 スカリエッティは説明する、クアットロは元々冷静沈着・冷酷非道な性格を植え付けており、
 今回のような行動はまずしない・出来ないハズであった。

 「だが、実際には嫉妬や焦りといった感情を生み出し、このような行動を起こした…これは興味があるよ。
  レザードとという“存在”が感情を引き出したのか、それとも“魂”が感情を導き出したのか
  どちらにしろ戦闘機人たる“兵器”が“人”の要でもある感情を生み出した、そう考えると笑いが止まらないよ」

 研究施設の中、スカリエッティの狂気が混じった高笑いだけが辺りに響いていた……




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最終更新:2011年07月16日 01:32