…時はなのはとヴィヴィオが対峙している頃まで遡り…
エインフェリアを一撃で撃破したレザードは、依然としてヴァルハラへ進路を取って飛行を続けおり、
暫くして前方にうっすらとヴァルハラの姿を発見し接近すると、ヴァルハラから大量の砲撃が襲い掛かってきた。
「フッ…手荒い歓迎ですね」
レザードは不敵な笑みを浮かべながら一言漏らすと、砲撃を交い潜り一つの砲口へ辿り着き、
右手に持っていたグングニルを振り抜いて衝撃波を作り出し砲口を破壊、
大きな風穴を作り上げるとレザードは悠々とヴァルハラへ侵入するのであった。
リリカルプロファイル
第三十五話 神
風穴から侵入したレザードは次々に立ちはだかる障壁を撃ち破り大通りらしき場所に出て辺りを見渡すと、
其処はまるで太古の宮殿を思わせるような造りをしており、
至る所に彫刻や壁画が飾ってあり、正に豪華絢爛といった様子であった。
すると目前から大量のアインヘリアルが姿を現し始める、どうやら侵入者を排除する為に動き出した様子である。
「やれやれ…御大層な持て成しですね」
レザードは肩を竦め小馬鹿にした表情を浮かべていると、アインヘリアルから多数の魔力弾が発射される。
するとレザードはバリア型のガードレインフォースを張りアインヘリアルの攻撃を防ぎ、
そして左手に青白い魔力を纏わせてアインヘリアル達に向けるとファイアランスを発射、
複数の炎の矢がアインヘリアル達に突き刺さり、一瞬にして溶解していった。
そして一通り攻撃を終えたレザードはモニターを開き、ドゥーエが文字通り命を懸けて届けてくれた内部構造図と今現在の場所を照らし合わせる。
どうやら此処はヴァルハラの外装地区、三賢人がいる場所は更に奥の内装地区である事が判明した。
「此処からでは些か遠いですが…仕方ありませんね」
そう言うなり歩き始め地図を頼りに内装地区を目指す、その間にアインヘリアルの増援・襲撃が続くが、
まるで無人の野を行くが如く何事もなかったのように進み、
レザードの歩いた後には溶解もしくは破壊されたアインヘリアルの残骸だけが転がっていた。
外装地区を突き進み内装地区に繋がる障壁を破壊して更に進み歩いていくと、
先程まで大量に襲いかかって来ていたアインヘリアルの姿が突如としてなくなり、
突然の撤退に首を傾げるも先に進み目的の場所へと辿り着く。
其処には身の丈以上の巨大な扉が存在しており、神の玉座と書かれたプレートが掲げられていた。
「…随分と御大層な部屋ですね」
レザードは一つ鼻で笑うと右手に持つグングニルを振り抜き衝撃波を作り出して扉を切り刻み、
音を立てて扉が砕け落ちる中、ゆっくりを部屋へと足を運ぶ。
部屋の中は広く大理石をモチーフとした石柱が幾つも並び建ち、目前には緩やかな十段ほどある階段があり、
更に奥には巨大な玉座が三つ並び建ち、玉座にはヴォルザを中心に右にガレン左にはダレスが堂々と座っていた。
レザードは三賢人の姿に内心驚きつつ含み笑いを浮かべる、何故なら三賢人の姿は、
かつて自分がいた世界に存在していたディパンの三賢人に容姿が酷似していたからである。
恐らくはメルティーナと同様“他人の空似”であるのだろうが、今思えば彼等が行ってきていた行動は、
ディパンの三賢人とさほど変わってはおらず、その事が尚彼等を滑稽に見せていたのだ。
だがレザードの内心を余所に神の三賢人はゆっくりと椅子から立ち上がり、
レザードを見下ろす形で対峙するとヴォルザが威厳あるように言葉を口にする。
「まさか…貴様自身がこのヴァルハラに乗り込んでこようとはな……」
だがむしろ手間が省けたと不敵な笑みを浮かべるヴォルザに対し、
眼鏡に手を当て此方も不敵な笑みを浮かべて見上げているとヴォルザは更に言葉を口にする。
「我ら神に逆らい者には罰を与えんとな…」
「ほう…ならばその罰とやらを見せて貰いましょうか」
そう言うとレザードは左手を向けてファイアランスを撃ち出す、
するとダレスが一歩前に出てバリアを張り、ファイアランスを防いだ。
「私のファイアランスをこうも簡単に防ぐとは…ならばコレはどうです?」
するとレザードは体を宙に浮かせ三賢人のいる高さまで上がると、グングニルを振り払い衝撃波を撃ち出すが、
それすらもダレスのバリアは防ぎきり驚く表情を浮かべる。
レザードの攻撃が一通り終えると今度はガレンが一歩前に出て、杖を向けて直射砲を撃ち抜くが、
レザードはバリア型のガードレインフォースを張り攻撃を防いだ。
「ほう…少し侮っていたか」
ガレンは一言漏らすと魔力を高め、直射砲は徐々に勢いと威力が増し、レザードを押しのけ始めるとバリアに亀裂が走る。
…このままではバリアが砕け散ると見たレザードは予め…と言うより常に用意している移送方陣を発動、
足下に五亡星の魔法陣が張り巡り、バリアが砕けるとほぼ同時に移送、難を逃れる。
そして先程より高い位置に移送すると三賢人を睨み付けた。
「よもや私のバリアを破壊するとは!」
レザードが作り出したバリアはそう簡単に砕けるものでは無く、
なのはのスターライトブレイカーすら防げると自負していたが、その自信は脆くも崩れ去った。
「ならば!コレならどうでしょう!!」
レザードは左手を向けて青白い魔力を纏わせると、イグニートジャベリンを撃ち抜く。
その数は10本に上り、光の槍は三賢人に襲いかかるが、ダレスのバリアに阻まれる、
しかしレザードの放った槍の一つによってダレスのバリアに小さな亀裂が走った。
「おや?思っていたより威力がありましたね」
レザードの攻撃が自分の想像より威力があった事に驚いていると、
ガレンもまた「驚きだな」と応え笑い合う中、レザードは先程と同様の数のイグニートジャベリンを撃ち放つ。
だが今度は完璧に防がれ、苦虫を噛む表情を浮かべていると、ヴォルザの左手から強烈な光を放つ雷を発生させる。
「ふっ…二人とも迂闊であるぞ」
そう言って二人を窘めると左手を向けてサンダーストームを撃ち放つヴォルザ、
一方レザードはバリアを張り巡らして攻撃に備えるが、バリアは一瞬にして砕かれ、
強烈な雷がレザードの身に降りかかり、何度も体を跳ね上げサンダーストームが終えると、
苦しい表情を浮かべながら漂うレザードであった。
「ぬぅ…これほどの魔力を有しているとは…」
「…フンッ魔力はまだまだこの程度ではないわ」
「何ですって!?」
レザードの驚く表情に三賢人は不敵な笑みを浮かべると更に魔力を高め、ガレンは魔力弾を50程作り出し、レザードに向けて撃ち出す。
するとレザードはバリアを張りつつ魔力弾を回避、更にアイシクルエッジにて迎撃し回避出来無い場合はバリアで防いでいた。
だがガレンは更に魔力弾を追加して遂にレザードのバリアを破壊、
その身に幾度も魔力弾が突き刺さる、だがその中でレザードはガレンの元へ向かっていく、
三賢人は基本的に魔導師系であると考え腕力ならば勝てると踏んだからである。
そしてグングニルを勢い良く振り下ろすが、ガレンは持っていた杖で容易く受け止め、
逆に押し返すと杖を振り上げレザード目掛け振り下ろし、
直撃したレザードはなす統べなく床に叩き付けられ、暫くしてゆっくりと立ち上がる。
「バカな!何という力だ!!」
「フンッ此が神の器を手に入れた我々の実力だ」
神の器は魔力だけではなく接近戦でも充分な実力を引き出せる代物であり、
見た目でも非力そうなレザードの腕力では相手に出来る訳が無いと力強く答え不敵な笑みを浮かべる。
だがレザードは再度衝撃波を放ち、更にアイシクルエッジを撃ち抜くが、
今度はガレンがバリアを張り防がれると、続け様にヴォルザがエクスプロージョンを放ち、
レザードの周囲は炎に包まれるが、何とか耐え抜いて上空へと移動、
するとダレスが誘導性のある魔力弾を撃ち放ち、レザードは石柱を縫いながら逃げ回り、
ファイアランスで魔力弾を相殺、更に左手を向けて青白い魔力で覆うと指を鳴らし、
バーンストームを発動、三賢人の足下は三度爆発を起こし、彼等がいた場所は炎に包まれる。
「コレならどうでしょう」
「…無駄な事を」
すると辺りの炎が消え去り中から無傷の三賢人が姿を現し、
驚く表情を浮かべていると、ヴォルザはアースクレイブを発動、
レザードの頭上から大量の岩の刃が降り注ぎ床まで追いやられ膝を付かされる。
「おのれ…こうなればエインフェリアを一撃で葬った我が魔法で叩き潰してくれる!」
そう言って立ち上がると左手を三賢人に向け、足元に巨大な多重の多角形型の魔法陣を広げ詠唱を始める。
「汝は知るだろう…幾何になりし封縛…いかなる訃音を告げるものか!」
すると三賢人を中心に巨大な氷の塊が三角形の位置に現れ徐々に迫り三賢人を閉じ込める、
そして――――
「デルタストライク!!」
次の瞬間、氷の塊は砕け散り辺りには砕け散った氷が雪のように舞い散る中、
三賢人ごと砕け散ったであろうと確信し、不敵な笑みを浮かべながら見つめると、レザードの表情が一転する、
何故ならばレザードが放った広域攻撃魔法の中心にはダレスとガレンがバリアを張り巡らせ耐えきった姿を目撃したからである。
「バカな…あのエインフェリアを一撃で葬った魔法と同威力なハズなのだぞ…」
「我々がエインフェリアよりも弱いとでも思っていたのか?」
エインフェリアは三賢人の肉体である神の器の基の一つであり、神の器が基であるエインフェリアよりも弱いハズがない、
そうヴォルザが答えると、左手をレザードに向けて不敵な笑みを浮かべる。
「…広域攻撃魔法とは、こういう物を言うのだ!」
すると足下に巨大な広域攻撃魔法用の魔法陣を張り巡らし詠唱を始める。
「頌歌なき混沌…浄化なき漆黒…無の監獄に囚われし隻眼の巨神に我は問う!」
そして魔力の球体がレザードを中心に囲うようにして張り巡り、
球体内に赤い稲光が漂うと赤い球体と化してレザードを包み込む、
その光景は端から見ればまるで赤い眼を彷彿としていた。
「プリシードグラビディ!!」
次の瞬間、プリシードグラビディは光を放ち辺り轟音が鳴り響き消滅すると、
音の中央ではグングニルを杖にして辛うじて立っているかのような佇まいのレザードがいた。
「何故…これ程の魔力を……」
「……ならば冥土の土産に教えてやろう」
そう言うなりヴォルザは胸元を指す、三賢人は高性能な神の器だけでは飽きたらず、
内部にレリック更には補助としてジュエルシードが取り付けられており、
二種にはルーンが刻まれほぼ無尽蔵に魔力を得られる、まさに永久機関とも言える機能があるのだという。
つまりそれは三賢人の魔力には底が無いという事であり、
レザードは焦るような表情を浮かべながらグングニルを振るおうとしたが、
ダレスのバインドによって手足を縛られグングニルを落としてしまう。
するとレザードの体が大の字に引っ張られ更に浮かび上がり、
三賢人の目線まで上昇すると三賢人は足下に魔法陣を張り詠唱を始める。
『虚空を伝う言霊が呼び覚ませしは…海流の支配者の無慈悲なる顎門!!』
三賢人は声を揃え詠唱を始めると、それぞれの手から水が生まれ水流となり、
更に激しい激流へと変わり最後は竜に形取り、三賢人の手の平に漂う。
そして詠唱を終え広域攻撃魔法の準備も整った三賢人は、レザードに別れの挨拶を告げた。
「我ら神に逆らった罪…命を持って償うがいい!!」
「……フフッ…フハハハハハハハ!!」
「…ついに恐怖で心が折れたか……」
まるで哀れむようにしてレザードを見つめる三賢人に対し、
今までとは異なり不敵な笑みを浮かべ魔力を高め始める。
すると呼応するようにグングニルが反応し、レザードの前まで向かうと縛り付けていたバインドを切り裂いていく、
そして右手でグングニルを掴むとレザードは三賢人に左手を向けて、多角形型の巨大な魔法陣を足下に広げ詠唱を始める。
「汝…美の祝福賜らば、我その至宝…紫苑の鎖に繋ぎ止めん……」
「最後の足掻きか…無様な!!」
しかしレザードの広域攻撃魔法が発動する前に三賢人のダイダルウェイブが発動、
顎門がレザードの魔法陣ごと飲み込み三匹の竜は天高く上る。
「…ふっ安心せよ、すぐに無限の欲望も後を追わせよう」
そう言って勝利を確固たる勝利を確信した三賢人であったが…
三匹の竜は急に動きが止まり暫くすると徐々に頭部から凍り付き始め、
全身を凍り付かせるとレザードのこもった声が辺りに響き渡る。
「アブソリュート…ゼロ!!」
すると次の瞬間、ダイダルウェイブは粉々に砕け散り、
辺りはまるでダイヤモンドダストのように破片が煌びやかに舞い、
その中心には左手を眼鏡に当て不敵な笑みを浮かべ佇むレザードの姿があった。
「これは!一体?!」
「失礼…余りにも滑稽過ぎたのでつい……フフッ」
「なん…だと?」
今までの戦闘は全て三賢人の実力、そして神の器の性能を知る為の演技、
だが三賢人はそれを知らずに茶番劇に乗っかり、あまつさえ調子すら乗っていた。
正に神も畏れぬ恥知らずな行為、故に三賢人の底が見えた為にこの茶番劇を終えた…
そう不敵な笑みを浮かべながら語ると、三賢人は大声で笑い始め流石のレザードも困惑する。
「愚かな…この程度の魔力で勝った気でいるとはな!」
そう言うや否や三賢人は更に魔力を高め不敵な笑みでレザードを見上げる。
一方でレザードは呆れた表情を浮かべ頭を押さえ始めた、
この期に及んで三賢人の愚考に愚行…最早呆れるを通り越して哀れみすら感じる。
正に傲慢を形取った存在、この様な存在が神を名乗っている自体、万死に値する…レザードはそう考えると、
レザードの考えに知ってか知らずか三賢人は更に挑発を重ねる。
「やはり神の力の前に言葉を無くしたか……」
「愚かな……神の力という物が一体どの様なモノを指すのか、見せて上げましょう……」
するとレザードの足元から青白く光る五亡陣が現れ、青白く光るレザードの魔力が白く輝く魔力に変わり、
レザードの全身は光の粒子に包み込まれ、次に右手に持っていたグングニルがネクロノミコンに戻りレザードの目の前で浮かび光を放つと、
一枚一枚ページが外れ白く輝く魔力に覆われレザードの周りを交差しながら飛び回り、
そしてレザードのマントは浮遊感があるようにふわふわと漂い、レザードの体も同様に漂うと足下の魔法陣が消え去る。
その変貌と魔力の異常な高まりに三賢人は泡を食っている中で、
レザードは三賢人に左人差し指を向けると、全身を纏う光の粒子が集まりグングニルを形成し勢い良くダレスに向かっていく。
するとダレスは先程と同じくバリアを張り攻撃に備えるが、一瞬にして打ち砕き更に身を貫く、
そして柄の部分まで貫き止まるとレザードは手の平を返し人差し指で呼ぶような動作を二回程行うと、
グングニルはその場で勢い良く縦回転、更に回転を維持したままレザードの手元に戻り、光の粒子に戻って消え去る。
「どうです?神の力をその身に受けて」
「ぐぎゃああああああ!!!」
「……いい返事です」
レザードは満面の笑みでそう答える中、痛みでのたうち回るダレス、
グングニルの攻撃は非殺傷設定を受けている為、真っ二つされた時に生じる痛みのみ与えるようになっていたのだ。
そんなダレスの姿を見たガレンが報復とばかりに魔力弾を形成、その数は100にも上り一斉に撃ち出しレザードに迫ってくる。
…だが魔力弾はレザードの体をすり抜け天井や柱、壁などに次々に激突していく、
そして肝心のレザードはまるで何事も無いかの様に佇んでいる、
しかし魔力がすり抜けた部分は光の粒子と化し、暫くして肉体に戻っていった。
アストラライズ、対象物の物体(マテリアル)を幽体(アストラル)に変換させる事で霊体化する技術で、
物質は勿論の事、魔法すら効果が無く攻撃するには同じくアストラライズするか、
霊体化を無効もしくは霊体自体に影響を及ぼす能力・技術が必要となるのだ。
しかし三賢人はそのような事を知らず次々に魔力弾を撃ち抜くが、
その全てが無効化…つまりはすり抜けていき、ガレンはレザードの頭部目掛けて直射砲を撃ち抜くが、
アストラライズされた肉体には一切傷を負わせる事が出来ず、すり抜けただけに終わる。
「愚かですね…そんなモノが通じる訳が無いでしょう」
するとレザードはガレンに向けてアイシクルエッジ、イグニートジャベリン、ダークセイヴァーと次々に撃ち抜き、
ガレンは串刺し状態になると最後にグングニルがガレンの腹部辺りを貫いた。
その時…痛みから何とか耐え抜いたダレスが起き上がり、
怒りの眼差しを向けながら迫り、持っていた杖を振り降ろすが、
杖はレザードの体をすり抜け、肩透かしに合うと
今度はレザードの周りを飛び交うページが次々にダレスの身を斬りつけて行く。
レザードの魔力が籠もったページの切れ味は名のある名刀に並ぶ程で、
しかも此方も非殺傷設定されてある為に肉体自体を一切傷付ける事無く痛みのみを与えたのであった。
だがダレスはレザードの攻撃に何とか耐え抜き、続けて魔力弾を撃ち込もうとしたところ突然光の粒子に変わり消えると、
ダレスの周囲が爆発しその光景に膝を付いていたガレンが驚きの表情を見せていると、
いつの間にかレザードは真後ろにテレポートしていたらしく、
右手でグングニルを引き抜き光の粒子に戻すと、続け様に左手でガレンの体を透すようにして心臓を握る。
すると心臓を中心に囲むようにして結界が張られると、握りつぶす動作を行った。
前者はリベリアス・リペンタンスと呼ばれる自らを光の粒子に変え爆発と同時にテレポートする技で、
後者は力ある名前と呼ばれる、対象を魔力で包み込み握りつぶすようにして攻撃、受けた者はほぼ即死と言う荒技である。
だが双方共に非殺傷設定されており、今回放った力ある名前においては、
心臓のみ魔力を張る事により、握り潰された時に生じるであろう苦痛だけを与える非人道的な技へと変わっていたのであった。
「どうです?神の力をその身に受けて…」
「ガハッ!!あああぁぁがあぁぁぁぁ!!!」
「其処まで喜んでくれるとは……光栄の極みです」
ガレンは心臓を押さえ悶え苦しむようにのたうち回り、
その光景をまるで祝福でもしてくれたかのように振る舞うレザード。
「おのれぇ!我らの宿願、このような形で終わってなるものか!!」
その光景にヴォルザは怒りに震えながらレザードに杖を向けてエクスプロージョンを撃ち抜くが、
レザードのプリズミックミサイルにかき消され、寧ろその身にレザードの攻撃を受ける。
すると体が言う事聞かず全身が痺れるように麻痺していると、レザードが目の前まで近付き、蔑んだ瞳で見下していた。
「…哀れですね、所詮は人の身…それで神を名乗るとは、それ自体が痴がましい……」
だからと言って許すつもりはない…そうハッキリとした口調で語り、
左手を向けてファイアランスを撃ち放ち、火達磨にすると、今度はアイシクルエッジにて凍結させる。
それを何度も繰り返し焦熱と極寒の地獄をヴォルザはその身で体験していると、
ヴォルザを助けようとダレスが魔法陣を張り始める中、
レザードは右指先でパチンッと鳴らしポイズンブロウを撃ち放ち、
ダレスの足下から紫色の濃霧が立ち上り消え去ると、
紫色に変色したダレスが、喉を掻き毟りながら悶え苦しんで倒れた。
その光景を見てレザードは声を上げて笑うと一つの案を思い付き、
早速ヴォルザに撃っていた魔法を中断、糸が切れたようにヴォルザが座り込むと、
レザードはヴォルザの目線に合わせ右人差し指をアストラル化させて額に触れ、
ゆっくりと突き進みヴォルザの脳に到達すると―――
「…ファイアランス」
次の瞬間、ヴォルザの脳は炎に包まれ、熱さと痛みと苦しみが文字通り脳内で響き渡り、
頭を押さえ悶え苦しんでいる中、更にレザードは心臓・二つの肺・肝臓・腎臓そして睾丸に火をつける。
…特に睾丸は炎の調整が難しかったと、自慢気に語る中、ヴォルザは顔の穴という穴から体液を垂らし、
体を何度も痙攣させながら苦しみ、その姿はまるで陽向に放置されたミミズのようであった。
だがレザードの攻撃は未だ終わらず、今度はアイシクルエッジを撃ち抜き全身を凍り付かせる。
「ふふふ…どうです?体内から焼かれる苦しみと体外から凍り付く苦しみは……」
非殺傷設定がなければ此程の事をするのは至難の業であり、
更に三賢人の魔力はリンカーコア・レリック・ジュエルシードそしてルーン文字によって、
永久機関化されてある為に気絶する事すら出来くなっていたのだった。
「だが殺しはしない…殺して楽になどさせるものか!」
生かさず…殺さず…気絶すらさせず、ただ苦しみ悶えさせる…それはさながら悪魔の所業と言っても過言では無い、
そして三賢人の攻撃は一切通用しない、まさにレザードは“全てを超越した存在”と言っても過言では無い実力を持っていた。
一方でダレスは未だに毒に苦しみ、ガレンは心臓を押さえつけていた。
するとレザードは左手をガレンに向け魔力を用いて体を浮かせる、
だがガレンの瞳は未だ敵対心のある眼差しを秘めていた。
「…気に入らんな」
そう一言発するとイグニートジャベリンを発動、周囲に五本の光の槍を作り出すと、両手足を貫き最後の一本で両目を貫いた。
ガレンは幾度目かの叫び声をあげると今度は左手を潜り込ませ心臓に手を当てるとライトニングボルトを放つ。
「どうです?私の心臓マッサージは?」
心臓に手を当て、とても苦しそうにしていたからマッサージで癒してやろう…
そう言いながらも更に電圧を上げて撃ち抜きガレンの体は幾度も体を跳ね、
背中から余剰の電流が流れ出し口から泡を吹き出し始めても、
気絶する事が出来ず五回程電圧を上げて打ち込まれた後、最後はヴォルザの下へと投げ込み、
ガレンはぐったりとした表情で未だに痙攣を起こしていた。
そんなガレンの様子を見下ろすように確認すると、レザードは続いてはダレスに目を向ける、
ダレスは未だ全身に回っている毒で苦しんでおり、その様子にレザードは
笑みを浮かべながら近付き左手に魔力を纏わせてダレスの腹部に潜り込ませる。
そして左手を引き抜くと纏っていた魔力は消え、レザードは上空にテレポートすると左指先をパチンッと鳴らす。
するとダレスは爆発して吹き飛び地面に叩き付けられると、再び指先を鳴らし爆発、
先程と同様に吹き飛び顔から地面に着地すると更に指先を鳴らして爆発、
ヴォルザとガレンがいる場所まで吹き飛ばされ倒れるとレザードは拍手を送る。
「見事に仲間の下へ戻ったようですね」
レザードはダレスの体の中にバーンストームを埋め込み、指先を鳴らす度に体の中で爆発、
その勢いを使ってダレスを他の二人の下に運んだのであった。
「折角集まったのです、此処は私が一つプレゼントを差し上げましょう…」
すると足下に多角形の魔法陣を幾重にも張り巡らせて詠唱を始める。
「我は命ず…汝悠久の時、妖教の惨禍を混濁たる瞳で見続けよ……」
そして魔法陣から巨大な骸骨が姿を現しレザードはその肩に乗ると、三賢人に向かって指をさす。
「ペトロディスラプション!!」
すると骸骨の口から大量の灰色の濃煙を吐き出し三賢人を包み込み、
濃煙の中では三賢人の一人であるヴォルザの氷が一瞬にして砕け、
そして悶えながら痙攣を起こしており、煙が晴れると其処には瀕死状態の三賢人の姿があった。
最早三賢人は以前のような自信に満ちた姿など見る影もなく、心は折れ肉体と精神は疲れ果て、声も体液も枯れ果てていた。
そしてレザードは三賢人の相手に飽きが来たのか、ヴォルザの体内で燃えさかる炎を消し、
ダレスの毒を消し去ると左手を眼鏡に当てて不敵な笑みを浮かべて語り始める。
「さて…所詮はただの人であった訳だが…私を此処まで楽しませてくれたのです…何か褒美を上げませんと」
そう言って顎に手を当て考え込み、暫くして何かを思いついたのか、
満面な笑みを浮かべ右手を三賢人に向けて褒美を発表する。
「そうだ!石像を贈りましょう…しかし石像の材料は―――貴様達です」
三賢人を材料に三賢人の石像を建ててやる、それはさぞかし自慢の一品になるだろう…
そう告げると恐怖からか逃げ出そうとする三賢人であったが、
レザードはすぐさま指先を鳴らしストーントウチを発動、三賢人を灰色の煙で包み込み暫くして煙が晴れる。
すると其処には恐怖に呑まれ顔を引き付かせながら逃げ出そうとした三賢人の石像があった。
その石像をレザードはじっくりと見つめ顎に手を当て暫く考えた後、結果を口にする。
「…失敗作ですね、やはり、こういった物を後世に残す訳にはいきませんし……」
そう言うと光の粒子がグングニルに変わり、レザードが右人差し指で左から右へ振り払うと、
グングニルもまた同じ動作を行い衝撃波を作り出し、三賢人の石像を完膚なきまでに破壊し尽くした。
その残骸を目にしてレザードは高笑いを掲げながらこの場を後にするのであった。
神の玉座を後にしたレザードはモニターに映し出している地図を頼りに、
アインヘリアルの操作・制御装置を破壊、更に先に進み動力室へと足を運ぶ。
「大きいですね……」
レザードは動力炉を見上げ一言漏らす、全長数キロにも及ぶヴァルハラの動力炉は、
ゆりかごの動力炉に匹敵する大きさで、並の魔法では破壊は難しいと考えたレザードは、
足下に広域攻撃魔法の魔法陣を張り巡られて詠唱を始める。
「我…久遠の絆断たんと欲すれば…言の葉は降魔の剣と化し汝を討つだろう……」
するとレザードの頭上に巨大な槍が出現、槍は回転し始め、
柄の両先から魔力は放出すると、レザードは動力炉に向けて右人差し指を向けた。
「ファイナルチェリオ!!」
そう叫ぶとファイナルチェリオは動力炉に突き刺さり大爆発を起こし消滅した。
…だがレザードは顎に手を当て考え込む、スカリエッティの願いは「ヴァルハラを一切の破片も残さず破壊する事」である。
これほど巨大な船を破壊するには並の魔法では不可能と考えたレザードは、
広域攻撃魔法の中でも威力が高い魔法の一つを選び出し、
レザードは足下に広域攻撃魔法の魔法陣を張り右手を向けて詠唱を始めた。
「汝…其の諷意なる封印の中で安息を得るだろう…永遠に儚く……」
するとレザードを中心に金色に輝く羽と共に光を放ち始め、障壁を撃ち貫く度に輝く羽が舞い散り…
そして―――
「セレスティアルスター!!」
レザードの掛け声を合図に強烈な光が放たれ周囲を包み込むのであった。
場所は変わり此処ヴァルハラの外にはレザードを追いかけていたはやての姿があった。
はやてはヴァルハラからの砲撃を後方で確認していると、
レザードがヴァルハラに侵入、それにより接近し始めるとアインヘリアルが陣を張り、
暫く戦闘を行っていたのだが、急にアインヘリアルが動かなくなり次々に落下していき、
不審に思ったはやてはヴァルハラに接近、ある程度距離を開けて観察をしていた。
「…静かやな」
今までとは打って変わって静寂が包み込み、その静けさがかえって不気味さを演出している頃、
静寂を切り裂くように突然爆発音が鳴り響き、はやては慌てふためいていると、
ヴァルハラの至る所から金色に輝く光が姿を現し、光の中から輝く羽が舞い散り、神々しい演出が見受けられる中、
光はヴァルハラを完全に包み込み、はやてはその眩しさから右手で遮るようにして目を凝らしていた。
「うおっ!眩しっ!!一体なにが起きたんや!?」
はやては事態の把握に専念する中で光は落ち着きを見せて完全に消え去ると、
今まで存在していたヴァルハラが塵も残さず消滅しており、
ヴァルハラの跡地にはレザードが不敵な笑みを浮かべてはやてを見上げていた。
「おや?貴女は確か…八神はやて…でしたか?」
「せや!此処で会ったが百年目って奴や!覚悟しい!!」
そして此処で…今何をしたのか洗いざらい話して貰うと、はやてはレザードを問い詰めるが、
レザードは小馬鹿にした表情で肩を竦めると、左人差し指をリズミカルに三度振りこう答えた。
「ちょっとした魔法ですよ…それに此処で決着をつけるのは少々心許ない…」
故に決着はゆりかごで行おう…そう告げると移送方陣を広げ、紳士的なお辞儀をして移送する、
その姿に苛立ちを見せる表情を浮かべるはやての下にアースラからの連絡が届く。
今し方クラウディアから一報が届き、クロノ達の連絡を受けて本局はアルカンシェル隊を派遣、
そして一斉放射によってドラゴンオーブは消滅したとの事である。
一方でクラウディアはミッドチルダ周辺宙域で待機、
クロノ達は転送装置によりアースラへと移動しているという。
次に各地に展開されていたアインヘリアルが次々に機能停止していると告げると、
その要因はレザードの手によるヴァルハラ撃破の為であると直接伝え、
後方にいるのであろうか、クロノの驚愕した声が微かに聞こえていた。
そしてはやてはレザードはゆりかごにて決着を付けると直接挑戦状を受けたと告げ、
各員ゆりかごに集合するようにと通告すると足早にゆりかごの下へと向かった。
そして…ゆりかごがうっすらを確認出来る上空ではなのは・フェイト・はやてを中心にヴォルケンリッターが囲み、
後方にはティアナを背負いウィングロードに立つスバルにフリードリヒに乗るエリオとキャロ、
続いてクロノ率いる夢瑠を除いたクラウディアチームに、地上にはジェイクリーナスや、
シャッハにヴェロッサそしてメルティーナにルーテシアの姿も見受けられていた。
ルーテシアはこの戦いが終えた後、自分の罪を償うとクロノ達と約束を交わし、
そして監視役としてメルティーナが付きそう事で許可が下りたのである。
そしてはやては簡潔に説明を始める、まずゆりかご突入は機動六課のメンバーで行う、
何故ならば彼等の実力はかなりのモノになり、更になのはとフェイトは神から戴いた杖を持っている為であるからだ。
そこでまず、はやて・ヴォルケンリッターがゆりかごの動力炉を破壊、
スバル・ティアナ・エリオ・キャロの四人はチンクの確保、
フェイトはまずスカリエッティを確保し、その後なのはと共にレザードの確保、
残りのメンバーはゆりかご周辺のガジェット及び不死者の撃破と突入組の護衛を命じ一斉に動き始める。
そしてクロノ達の援護・護衛により足早にゆりかごに辿り着いた機動六課メンバー、
するとはやてが突入口を作る為にフレーズヴェルグの用意を始めると、
突然ゆりかごの外壁から巨大な火柱が立ち上り大きな風穴をあけ、
其処からはアギトとユニゾンしたアリューゼとナンバーズの戦闘スーツを着込んだメガーヌが姿を現す。
アリューゼはメガーヌを助け出したはいいが、目も向けられない格好であった為にラボにあった戦闘スーツを着させ、
そして復活したばかりのメガーヌを連れたままレザードとの戦闘は無理と考え、
一時的に撤退、その後障壁が立ちふさがりアギトとユニゾンしたアリューゼの一撃によって障壁を破壊し外に出たのだ。
「なんだ?こりゃ―――」
「アリューゼ!手を貸して!!」
ヴェロッサが簡潔に状況を説明するとアリューゼは頷きメガーヌを連れてヴェロッサの下に向かい、
入れ替わるように突入組がアリューゼが開けた風穴から次々に突入していく。
そしてアリューゼはメガーヌをヴェロッサに任せ再びゆりかごに向かうと、アースラからクロノに一報が届く。
内容はミッドチルダ全域に展開されていたガジェット及び不死者が、ゆりかごに集うかのように向かって来ているというものであった。
するとクロノ達の目前の上空に黒い影が姿を現れ大量のガジェット及び不死者を確認した一同は、
次々に構え始めるとアリューゼが皆より一歩前へと躍り出る。
「何をする気だアリューゼ!」
「まぁ見てな…行くぜアギト!!」
「応っ!!」
アリューゼの掛け声にアギトは威勢良く答えると、バハムートティアを肩に構え、
同じく肩幅ぐらいに足を広げるとアギトが烈火刃を発動、バハムートティアの刀身が業火に包まれる。
「テメェ等の顔も――」
「――見飽きたぜぇぇ!!」
アリューゼとアギトが台詞を繋ぎ合わせるように言葉を口にすると、
業火は更に巨大化、アリューゼは業火に包まれたバハムートティアを振り抜いた。
『盛れ炎熱!ファイナリティブラスト!!』
次の瞬間、刀身に纏っていた業火が一直線に伸び横に薙払うと、黒い影は次々に消え去っていき、
一同はアリューゼの桁違いの威力に唖然とした表情を浮かべている中、
アースラから続々とガジェット及び不死者が押し寄せてきていると報告が届き、
報告を聞いたクロノの目前にはまたもや黒い影が押し寄せてきており、
皆に気を引き締めるように促すと、突入組の勝利を信じて対峙する一同。
事態はいよいよ、最終局面を迎えたのであった……
最終更新:2009年12月12日 15:03