動力室での第二戦、はやて率いるヴォルケンリッターは、苦戦を強いられていた。
その大きな要因は二つあった、一つはガジェットVI型のバリアの強度である。
彼等のバリアは単体でザフィーラ程の強度があり、複数で張られた場合はその相乗効果によりまさに鉄壁ともいえる代物と化していたのだ。
次にバスターモードのベリオンの実力である、ルーンを組み替えることで発動させる事が出来るスキル能力、
マイトブロウを中心に一撃の威力を大きく高めるトゥルーシーイングや、再生能力であるリジェネーションヒールなどと、
強力なスキル能力に悪戦苦闘の状態が続いているのであった。
リリカルプロファイル
第三十七話 使命
とは言え此方の目的は動力炉の破壊である、つまりベリオン及びガジェットを動力炉から遠ざける、
もしくは抑えればいいのであって無理に相手をする必要はないのだ。
其処ではやては次の作戦を練り出す、それはベリオンの相手をザフィーラとシグナムが、ガジェット四体をヴィータ一人に任せ
がら空きとなった動力炉をはやてのフレースヴェルグにて破壊するというものであった。
ヴィータにガジェットをあてたのはヴィータの気持ちを考慮した為である。
だが作戦を始める前にまずシャマルがヴィータにストライクパワー・フィールドインベイドのツインブーストを、
シグナムとザフィーラにはディフェンスゲインとアクセラレイションのツインブーストを掛けて強化させると、
一斉に動き出しヴィータはグラーフアイゼンをギガントフォルムに変え、四体いるガジェットのうち前方にいる一体に狙いを定め攻撃を仕掛ける。
だがガジェットはバリアを張り攻撃を受け止めると、受け止めている一体を中心に三方向、遠目で見ると三角形に見える位置を陣取り、
光弾がまるでマシンガンのように撃ち鳴らされる、ところがヴィータはパンツァーヒンダネスにて攻撃を防ぎ、
上空へと逃げ込みシュワルベフリーゲンを八発撃ち下ろして牽制、相手の動きを止めると
四体のガジェットの中心に潜り込み先程仕掛けたガジェットに横殴りでギガントハンマーを振り抜き吹き飛ばす。
すると対角線にいたガジェットからロケット弾が発射され、ヴィータは左手を向けてパンツァーシルトを張り難を逃れた。
一方でシグナムとザフィーラはベリオンの相手をしていた、だがベリオンのマイトブロウは強力で、
此方は回避を優先といった状況が続いていた、するとシグナムはカートリッジを一発使用して
刀身を炎で包み込み右に薙払うようにして紫電一閃を放つが
ベリオンはバリア型のガードレインフォースを張り吹き飛ばされるも受けきり、左手をシグナムに向けて光弾を連射、
ところがベリオンとシグナムの間にザフィーラが割り込み障壁を張りこれを防いだ。
しかしベリオンは攻撃をやめず、続けて攻撃を仕掛けザフィーラを足止めすると
右手を向けてエネルギーをチャージし始める、するとザフィーラの頭上から飛びかかるかのようにしてシグナムが姿を現し
予め用意していた紫電一閃で一気に振り下ろす、ところがベリオンは右手をシグナムに向け始め、
エネルギーの直射砲を撃ち抜きシグナムは紫電一閃の威力を利用して直射砲を相殺、
直射砲は真っ二つに分かれシグナムの後方で爆発を起こしていると、ベリオンが目の前に現れ
マイトブロウが効いた右拳を振り抜き、シグナムはとっさに刀身の面をを盾代わりにして攻撃を受け止める。
しかし衝撃全てを受け止める事が出来ず吹き飛ばされ、今度はザフィーラが入れ替わるようにしてベリオンに迫り、
魔力を乗せた右拳を頭部目掛けて振り上げ更に左拳の振り下ろし、続けて縦回転からの右のかかと落としが直撃しその巨体を揺らす。
ところがベリオンは何事も無かったかのようにザフィーラを見上げると、右拳をアッパーのように振り上げ、
ザフィーラは障壁を張って攻撃を受け止めるが、一瞬にして亀裂が走って砕け散り、拳が目の前に迫る中
顎を引くようにして半歩下がり紙一重で躱すと、反撃とばかりに左拳をベリオンの頭部に直撃させる。
しかしこの攻撃も余り効果無く、逆に右の裏拳が迫る中でザフィーラは先程と同様に障壁を張り、
砕け散る瞬間の間を利用して頭を下げて回避、頭頂の髪がこすれるギリギリのところで躱すが、すぐさま左の拳がザフィーラの顔目掛けて迫っていた。
するとザフィーラは右拳に先程以上の魔力を乗せて左拳を狙い打ち、辺りに衝撃波が爆音となって響き渡った。
その頃シグナムはある程度距離をとり刀身を鞘にしまい居合いの形で構えるとカートリッジを二発使用、
一気に引き抜き魔力と炎を纏った連結刃、飛竜一閃をベリオンに放ち、それを確認したザフィーラは
すぐさま後方へと下がりベリオンは飛竜一閃に飲み込まれていった。
「主はやて!今です!!」
「分かっとるわぁ!!」
はやては二つ返事で答え予め用意してあったフレースヴェルグを動力炉に向けて撃ち放つが、
ガジェットVI型四体がフレースヴェルグを防ごうと飛びかかろうとしていた。
だがヴィータがフェラーテを用いて目の前に立ちふさがりギガントハンマーにて次々に床に叩き付ける、
幾ら強化されたガジェットであっても今のヴィータでは相手にはならない、それ程までに実力に差があったのだ。
「これなら直撃や!!」
はやては勝利を確信した表情を浮かべ、フレースヴェルグは動力炉に直撃、動力炉は土煙に包まれ
姿が見えない中、徐々に土煙が晴れ始めると其処には虹色の光に包まれた無傷の動力炉が存在していた。
「んなアホな!何でや!?」
「あの光……カイゼル・ファルベか! ?」
シグナムの放った言葉、それはつまり聖王の鎧が発動している事を指し示している、
だがカイゼル・ファルベ、つまり虹色の魔力光は聖王のみの能力であり、現状ヴィヴィオだけが使える代物のハズであった。
何故動力炉にそのような能力が備わっているのだろう…そうはやては疑問を感じ、ふと何気なくベリオンに目を向ける、
其処には動力炉と同様に虹色の魔力光に包まれ二周り巨大化したベリオンの姿があった。
「危険レベル更ニ上昇、サードモードカラミティヲ起動サセマシタ」
サードモード・カラミティ、体を巨大化させるだけではなく体内に存在する聖王の遺伝子に、
魔力を介する事で通常の魔力を聖王の魔力に変え、聖王の鎧の使用が可能となるベリオンの最終形態である。
しかもベリオンはゆりかごを起動させる為に動力炉と接続しており、それによってベリオンは動力炉の出力を
動力炉はベリオンの能力を共有する事になり、これによって動力炉を聖王の鎧で覆う事が出来たのである。
つまりは今のベリオンは動力炉と一心同体、ベリオンを破壊しない限り動力炉を破壊する事が出来ない、
その事実にはやては一つ舌打ちを鳴らし睨みつけているとベリオンははやてに襲い掛かり、
右拳に虹色の魔力を纏わせて更にトリプルエッジと呼ばれる一度で三度の攻撃効果を持つスキルを加えた一撃を振り抜く、
一方ではやては、それに合わせて三重の魔法障壁を張るのだが次々に破かれ直撃、
弾丸のように吹き飛ばされていく中で、はやての内側ではリインによる治療が開始されていた。
一方でヴィータはベリオンの変化に驚き更に、はやてが吹き飛ばされていくのをこの目で見て、
かつてのなのはの時と状況が被り目の色を変えてベリオンに襲い掛かろうとした。
だが、行く手をガジェットVI型が立ちふさがりヴィータは睨み付けながらギガントハンマーを振り抜いていく。
「邪魔を!するんじゃあ…ねぇぇぇぇ!!!」
振り抜いたギガントハンマーは次々にガジェットのバリアをまるで煎餅でも叩き割るかのように砕き本体に直撃、
ガジェットは大きくひしゃげ、一部は亀裂が入りその後大きな爆発を起こし残骸となった。
だがヴィータは見向きもせずベリオンに向けてコメートフリーゲンを撃ち抜き、
砕けた鉄球がベリオンに迫る中で、ベリオンはガードレインフォースを張り攻撃を防ぐと、
その攻撃に合わせてザフィーラの右拳がベリオンのガードレインフォースを砕き、
更に続けてシグナムによる右袈裟切りの紫電一閃を振り下ろすのだが、ベリオンは聖王の鎧にて攻撃を受け止め、
右手をシグナムに向けて虹色の直射砲を発射、シグナムはとっさにパンツァーガイストを自身に張り
直射砲に飲まれながらも辛うじて致命傷だけは免れた。
ベリオンの能力は確実に高まっており、それを身に滲みる程実感したはやて達は、
新たな作戦を練り始め、ベリオンと対峙するのであった。
一方でスバル達はナンバーズの最後の一人であろう女性、チンクの逮捕の為彼女を探し続けていた。
そしてある広場へと辿り着く、其処はだだっ広くヴォルテールすら召喚出来そうな程天井が高く造られていた。
すると何処からともなく声が聞こえ始めていた。
「…其は忌むべき芳名にして偽印の使徒、神苑の淵に還れ…招かざる者よ……」
「これって……」
「詠唱!!」
スバルの問い掛けにティアナが即答え声が聞こえる上空を見上げると、
其処には既に甲冑姿をしたチンクが左手を向けており、手には光が集まり出していた。
「マズイ!全員散開!!」
「セラフィックローサイト!!」
ティアナの指示の元、速やかに散開し先程までいた場所はチンクのセラフィックローサイトに包まれ、
入り口を吹き飛ばすとチンクはゆっくりと浮遊間があるように床へと着地する。
「先手必勝……とはならなかったか」
チンクは残念そうに見つめる中で警戒するスバル達、特にスバルはチンクの姿を見て一際警戒の色を宿していた。
何故ならば、この中で唯一チンクと戦闘した事があり、また敗北を喫しているからである。
彼女チンクが作り出す物質はスバルの振動破砕ですら破壊する事が出来ない、
その事を念話にて皆に伝えているとチンクがゆっくりと腰に携えていた剣を抜き出す。
「ならば…正攻法で行くまでだ!」
そう言って斜に構え対峙すると、スバル達もまた構えを取り始める。
暫く対峙していると先にチンクが動き出し斜に構えていた刀身をスバル目掛けて振り下ろす、
するとスバルは右手を向けてプロテクションを張り攻撃を防ぐと、
それに合わせてエリオがスピーアシュナイデンにて攻撃を仕掛けチンクに迫るが、
チンクは左手をエリオに向けてマテリアライズを行い三つ叉に分かれた槍を生成してエリオの攻撃を防ぎ、
更に後方へと飛ぶようにして下がると、それに合わせたかのようにスバルはナックルダスターを振り下ろす。
ところが既にスバルの行動を右目で予測していたチンクは、更に後方へと飛びこれを回避、
スバルのナックルダスターは床を瓦礫にして終えるとチンクは槍を捨て変わりに跳び舞う瓦礫を三つ左手で掴み取り、
その場で左に一回転すると左手には装飾が美しいダガーが三本握られており、それをスバル目掛けて投げ飛ばす。
だが、チンクの投げたダガーはスバルに届く前に、ティアナのクロスファイアによって撃ち落とされ
続いてキャロのツインブーストを受けたエリオがカートリッジを二発使用、魔力刃による突進メッサーアングリフにて攻撃を仕掛ける。
するとチンクは左手をエリオに向けてカートリッジを一発使用、丸みを帯びた中型の盾を形成し攻撃を左に受け流すようにして防ぎ
更にエリオに向けて斧の役割も担うハルバード型の槍を生成してエリオに投げつけようとしたが、
キャロによるアルケミックチェーンがチンクの周囲から現れ、チンクは一つ舌打ちを鳴らし
持っていたハルバードでアルケミックチェーンを薙払い更にキャロに向けて投げつける。
だがハルバードはキャロの前に躍り出たスバルのプロテクションにて弾かれまたもや舌打ちを鳴らすチンク。
「この眼も万能では…ないか」
チンクが持つ右目、ユーミルアイは見た対象の動きを予測する事が出来るのだが、
あくまで“見ている”対象のみで見ていない対象の行動を予測する事は出来ないのだ。
その為にチンクは大きく距離をあけて四人全員を見渡す位置を陣取り対峙する、
一方でチンクの一通り行動を目撃したティアナは、チンクの能力を分析しながら対抗策を練り始めていた。
場所は変わりなのははレザードがいるであろう場所に向かい続けていた。
その道中、多数のガジェットの攻撃に会うが此方も次々に破壊して何事も無かったかのように進み、
目的地である広場に辿り着くと、其処にはモニターを開き戦況を把握しているレザードの姿があった。
「…貴方もしつこいですね、二度ある事は三度あると…確か貴方の世界の諺でしたよね」
なのはは既に二度もレザードに敗北を期している、その事を踏まえなのはの世界の諺を使って
皮肉を口にするが、肝心のなのはは不敵な笑みを浮かべレザードの諺に対して反論する。
「確かにそんな諺もあるけど、三度目の正直って言う諺もあるんだよ」
そう言ってなのはは左手に携えたレイジングハートをレザードに向ける。
一方でレザードはなのはの言葉に…捉え方如何で様々な言葉が存在するのだな…と顎に手を当て考えていた。
「ならば私の言葉が正しいか、貴方の言葉が正しいか…決着をつけましょう……」
そう言ってネクロノミコンをグングニルに変え右手で携え構えると、なのはもまたブラスターシステムを発動させて構える。
この時なのはは自分の体の異変に気が付く、それはブラスターシステムの際に生じる負荷を感じ無いのだ。
すると腰に添えてあった杖が急に気になり目を向けるとミリオンテラーは淡く輝いていた。
恐らくこの杖によって体への負荷が無くなったのであろう、
つまりそれは全力全開で立ち向かう事が出来る事を意味していた。
「これなら……いける!!」
そう確信したなのははA.C.Sドライバーを起動させてストライクフレームをレザードに向けてすぐさま突撃、
しかしレザードはバリア型のガードレインフォースを張り攻撃を受け止めた。
するとなのははストライクフレームの魔力刃からディバインバスターを発射、
バリアごとレザードを飲み込み天井へと直撃させる。
そして天井は瓦礫と化して降り注ぐ中、左手を向けたレザードの姿があり、ダークセイヴァーを三本撃ち抜いていくと、
なのはは床へと着地、迫り来るダークセイヴァーを左に移動して回避、
難を逃れるとすぐさま右の人差し指を向けてアクセルシューターを五発螺旋を描くようにして発射、
だがレザードはリフレクトソーサリーを張りアクセルシューターを受け止め更になのはに向けて跳ね返し、
跳ね返ってきたアクセルシューターをなのはは同じくアクセルシューターを撃ち放ち相殺した。
「ほぅ…以前にも増して威力が上がっているとは……」
恐らくその影響は腰に添えてある杖の効果であると踏み、そしてまた力を得たという事は
以前のようにはいかないと考え、三賢人よりかは楽しめるであろうと不敵な笑みを浮かべるレザードであった。
一方でベリオンと対峙していたはやては作戦を練り終えそれぞれに念話にて指示を送る。
そしてまずザフィーラとシャマルが合わせて鋼の軛を放ち動きを封じようとしたが、
ベリオンは上空に逃げ難を逃れていると、その後方にはヴィータが位置付けており、右手に携えたギガントハンマーを振り下ろす。
しかしベリオンは左手にシールド型のガードレインフォースを張りヴィータの攻撃を受け止め、
逆にマイトブロウとトリプルエッジからトゥルーシーイングにスキル効果を切り替えた右拳でヴィータを吹き飛ばす。
一方でベリオンを見上げる位置では右側にはやて、左側にはエクストラモードを起動させているシグナムが佇み、
はやては剣に切り替えたシュベルトクロイツに炎が纏い、シグナムの左手には炎で作られた剣が握られ構えていた。
そして―――
『剣閃烈火!!火龍一閃!!!』
放たれた二発の火龍一閃は吸い込まれるかのようにベリオンに迫り飲み込むとそのまま壁に激突、
瓦礫となった壁落ちていく中、着弾点では巨大なシールドと聖王の鎧を纏い攻撃を耐え抜いたベリオンの姿があり、
反撃とばかりにベリオンは加速して二人に迫り右拳を振り抜こうとした瞬間、
エクストラモードを起動させたザフィーラが割って入り自身の最大数である五重魔法障壁を張り攻撃に備えた。
しかしベリオンの拳にはマイトブロウに加えトゥルーシーイング更には聖王の魔力を纏っている為に次々に砕け散り、
ベリオンの拳を自分の肉体で受け止め抑えつけていると、ザフィーラが声を荒らげる。
「シグナム!ヴィータ!!」
『応っ!!』
ザフィーラに呼応するようにして左からシグナムが、右からエクストラモードを起動させているヴィータが飛び出し、
シグナムは紫電一閃をヴィータはラテーケンハンマーをベリオンの胴体に打ち込み吹き飛ばした。
そしてベリオンは壁に激突し瓦礫が散らばっていく中で徐々に姿を現し、その胴体は深い切り傷と大きなへこみ痕が残されていた、
だがベリオンはトゥルーシーイングをリジェネーションヒールに切り替え徐々に傷口が治療されつつあった。
一方でザフィーラによって守られていたはやてはすぐさまヴィータと入れ替って距離を置き、
足下と目の前にベルカ式の魔法陣を張り、詠唱を始めると目の前の魔法陣から黒いスフィアが形成し始める。
そしてシグナムとヴィータの攻撃により壁に激突したベリオンの姿が現れると、
対面上にいた二人に離れるよう注意を促し、退避した事を確認するや否や杖をベリオンに向けた。
「遠き地にて…闇に沈め……デアボリックエミッション!!」
次の瞬間、黒いスフィアであるデアボリックエミッションはベリオンへと向かっていき直撃するハズであった、
だがベリオンは左手から虹色の魔力弾を連射させてスフィアの動きを鈍らせると、
右手にチャージされていた虹色の直射砲を撃ち放ちスフィアに直撃、暫くしてスフィアは砕け散った。
「んなアホな!!あの直射砲はあんだけの威力があんのか!?」
ベリオンのエネルギーは動力炉と繋がっている為に無尽蔵とも言えるほどのエネルギーを使用することが出来る、
だがそれだけではない、ベリオンはオブサベイションと呼ばれる一定の時間が経過する度に、能力が上昇するスキルを用いていた。
故に広域攻撃魔法に対抗出来る程の威力を誇る事が出来たのである。
ベリオンの実力にはやて達は警戒し一点に集まっていると、足下に巨大な複数の環状で構成される
多角形の魔法陣を張り、両手の平を広げてはやて達に向けると詠唱を始めた。
「闇ノ深淵ニテ重苦ニ藻掻キ蠢ク雷ヨ…彼ノ者ニ驟雨ノ如ク打チ付ケヨ!!」
「なぬ!?広域攻撃魔法やと!!」
そしてベリオンが向けた両手の間から黒いスフィアが形成され徐々に大きくなり、
両手を今度は頭上に掲げ更に巨大化、スフィアの中では稲光を発し飽和状態となった稲妻がベリオンの周囲に落ち床を砕いていく。
そして詠唱を終えたベリオンは掲げた黒いスフィアを力一杯はやてに投げつけた。
「グラビティブレス!!」
ベリオンの放ったグラビディブレスは吸い込まれるかのように迫りはやて達は飲み込まれ、
はやて達を中心に驟雨の如く雷が打ち続けていた、そしてグラビディブレスが消え去ると
其処にはザフィーラを前方にして巨大な全方向型の五重のパンツァーガイストを全員で張り巡らせて耐え抜いたはやて達の姿があった。
「ぬぅ…シャマルの支援がなければどうなっていた事か……」
そう言ってザフィーラを始め全員がバリアを解除する、実際シャマルの支援魔法であるがなければ
立っている事は出来なかっただろう…それ程までにベリオンの広域攻撃魔法は強力であったのだ。
相手は無尽蔵のエネルギーを持つ存在、しかもベリオンのスキルにより攻撃の威力は更に上がっていくだろう…
このままではいずれ手に負えなくなり世界すら破壊する存在になりかねない、
そこではやてはベリオンを速やかに破壊する為に精神リンクによる夜天の書の魔力を共有を提案、
これによってヴォルケンリッターもまた夜天の書の魔力を使用する事が出来る為に全員は頷くと
早速はやて達は気持ちを合わせて集中、すると夜天の書が力強く輝き出し
はやて達は強い魔力光に包まれるとそれぞれ構え始めベリオンと対峙した。
「いくでぇ!!」
はやての掛け声を合図にヴォルケンリッターは拡散するとベリオンに向かってはやてが飛び出し、
その動きに合わせてベリオンは右拳に虹色の魔力を纏わせマイトブロウとトゥルーシーイングの効果がある一撃を振り抜く、
だがはやては足に渦状の白いフェラーテと背中のスレイプニールを用いて右に急速旋回、
見事ベリオンの後ろをとるとシュベルトクロイツをハンマーに変え更に巨大化させてギガントシュラークを背中に打ち込む。
しかしベリオンは聖王の鎧を纏い辛うじて防いだのだが、はやては足を踏ん張り両腕に魔力を込めて強化させ
更に鎚とは対称の位置から魔力を大量に噴射、推進力にしてベリオンごと右回転をし始める、
そして回転速度が最大になるとそのまま天井を打ち砕くかのように振り上げた。
「ヴィータ!!」
「よっしゃあ!!」
上空には巨大なドリルが特徴的なツェアシュテールングスフォルムで構えていたヴィータの姿があった。
すると体に纏う雷が輝き出しドリルを覆うと回転し始め、けたたましい音を奏でる。
その中で鎚が柄から放れ間を強力な雷で繋がれており、更にその場で回転し始めるヴィータ。
そして最高速度に達したヴィータは迫ってくるベリオン目掛けて鎚を振り下ろした。
「食らえ!!ミョルニル!ハンマァァァァァ!!!」
振り下ろした鎚は見事にベリオンの腹部に直撃し、まるで雷が落ちたかのような音を奏でて床に激突した。
そしてベリオンが落ちた場所は土煙に覆われ姿を消し去っていると、土煙の中へはやてが飛び込み
シュベルトクロイツを剣に変えてベリオンの姿を探っていると虹色の光弾が幾つも襲いかかり、
はやては剣やパンツァーシルトで次々に弾いていると目の前にベリオンが姿を現しその右拳を振り下ろした。
だがはやてはパンツァーシルトをベリオンの拳に向け砕ける一瞬の隙をついて後方へと回避、
土煙から脱出するとベリオンが追いかけてきており、その行動に不敵な笑みを浮かべるはやて。
すると次の瞬間、ベリオンの周囲から鋼の軛が姿を現れベリオンの動きを封じ込めた。
はやては前もってシャマルに鋼の軛の用意を念話で指示し、自らが囮となってベリオンをおびき寄せその後鋼の軛を発動させたのである。
「シグナム今や!!」
「了解です」
上空ではレヴァンティンをボーケンフォルムに変えて構えているシグナムの姿があり、
ベリオンに狙いを定めるとシュツルムファルケンを撃ち放ち貫くと衝撃が辺りに響き渡る、
だが未だベリオンは動きを見せており、右手をシグナムに向けて直射砲を発射、
シグナムは飛び出すように左へと回避、直射砲は天井に直撃し瓦礫が降り注いでいると
はやてがブラッディダガーを大量に撃ち放つのだが、ベリオンはシールド型のガードレインフォースを張ってこれを防ぐ。
ところがはやてはすぐさまベリオンの懐に入り、剣に変えたシュベルトクロイツによる紫電一閃を右に薙払いシールドを破壊、
その場で一回転するとシュベルトクロイツがハンマーに変わっており、続けてラテーケンハンマーを撃ち抜いて聖王の鎧を破り、
シュベルトクロイツを杖に戻すとそのままフレースヴェルグを撃ち抜きベリオンを吹き飛ばした。
「そっちへ行ったで!ザフィーラ!!」
「承知っ!!」
其処には八枚の刃を浮かばせて構えているザフィーラの姿があり、ベリオンの姿を目撃すると刃を飛ばし
ベリオンの体を次々に切り裂き最後にザフィーラの右腕に一直線に集まると一気に振り下ろした。
ザフィーラのグリムマリスはタイミング良くベリオンに直撃して床に巨大なクレーターを作り出し
更にはベリオンの巨体を跳ね飛ばす程の衝撃を与えたのだが、ベリオンはゆっくりと起きあがり未だに動ける状態であった。
だがダメージがあるのは明白で、動きは鈍く体の至る所に凹みや亀裂が走っていた、
その為はやてはとどめとばかりに足下に円状のミッド式魔法陣を目の前には三角状のベルカ式魔法陣を広げ
三角状の魔法陣の各頂点上に三種のそれぞれ異なる性質の魔力がチャージされていく。
一方でベリオンもまたスキルのマイトブロウを魔法威力を高めるスキル、オーバーロートへと切り替え
足下に巨大な魔法陣を広げて詠唱しながら両手を広げると黒いスフィアを形成、
更に両手を上へと掲げ黒いスフィアを巨大化させて先程と同様の広域攻撃魔法を準備し始める、
そして双方の準備を終えると一斉に掛け声をかけた。
「響け終焉の笛!!ラグナロク!!!」
「グラビディブレス!!」
次の瞬間、三種の魔力砲が放たれ一方で黒いスフィアが投げられ両者の間にて激突、
はやては足を踏ん張り衝撃に耐えながら必死に抵抗、ベリオンもまた両手から魔力を衝撃波に変えて抵抗していた。
その為に両者の攻撃は暫く均衡していたのだが、徐々にではあるがはやてが床を削るようにして押され始め、苦虫を噛むような表情を浮かべる。
一方でヴォルケンリッターは主の為に何も出来ない今の事態に歯噛みしていた。
その時である、シャマルから一つ提案が浮かぶ、それは精神リンクを介してはやてに魔力を分け与えると言うものである。
はやてヴォルケンリッターは精神リンクによって夜天の書の魔力を共用する事が出来る、これは言い換えれば魔力を通す道や管で繋がっているとも言える。
だからこそその逆が可能ではないのか?これがシャマルの言い分であった。
「なるほど…試してみる価値はありそうだ」
シャマルの提案にシグナムは乗り他の二人も頷くと自分の中に存在する精神リンクを探りそれぞれ見つけると、はやてにその旨を伝え魔力を込め始める。
そして自分達の魔力を精神リンクによって伝えはやての魔力、更には夜天の書の魔力を強化させていった。
「コイツなら…コイツならいける!!私らの絆…なめんなやぁぁぁぁぁ!!!」
はやてはみんなから託された魔力を使いラグナロクを威力を高めグラビディブレスを打ち砕き、
そのままベリオンに迫まるが、ベリオンはシールドと聖王の鎧を張り耐えようとした。
だが威力を高めたラグナロクはシールド並びに聖王の鎧を打ち破り胴体に直撃すると
その巨体を浮かばせて動力炉に直撃、更には胴体を貫き動力炉にまで及び大爆発を起こす。
その影響で部屋全体は土煙に覆われ、はやて達の姿を覆い隠し暫くして土煙が落ち着き始めると
動力炉は破壊され両腕と頭部のみを残したベリオンの姿が現れ、
はやて達は当初の目的である動力炉の破壊を果たしたのであった……
最終更新:2010年01月20日 18:08