時間は遡り、なのはとレザードの戦いは端から見れば拮抗していると思われる程の戦いぶりを見せていた。
 だがレザードの表情には未だ余裕があり、全力を出してはいないであろうと感じるなのは。

 一方でなのはは既にブラスター3を発動している状態、このまま拮抗が続けばいずれなのはが敗北するのは必死である。
 しかしなのはの顔には焦りを感じている表情は無く、寧ろそれに不気味さを感じるレザードであった。


                      リリカルプロファイル
                       第三十八話 覚悟


 そんな戦況の中でなのははレザードにレイジングハートを向けてディバインバスターを発射、
 しかしレザードは旋回しながらこれを回避し、左人差し指を向けてライトニングボルトを放つ。

 するとなのははラウンドシールドを張りこれを防ぎ、続いてアクセルシューターを撃ち放つが、
 レザードはアイシクルエッジにて相殺、拮抗が徐々に破られつつあった。

 すると其処に一つの影が姿を現す、その正体はフェイトであった。
 フェイトはなのはが戦っているこの広場へと足早に向かっていたのだ。

 「なのは!助けに来たよ!!」
 「フェイトちゃん!スカリエッティは逮捕出来たの?」

 なのはの質問にフェイトは口を噤み下を向いて影を潜む表情を醸し出し、その表情に困惑するなのは。
 すると対峙していたレザードがその理由を語り出す、スカリエッティはもし自分が管理局に捕らわれる事になったら、
 自らの意志で自らの命を絶つ覚悟を持っていたという、つまりはスカリエッティは自害したのだろうとフェイトに代わって答えた。

 「そんな………何故!?」
 「…それ程までに管理局が気に入らなかったのでしょう……」

 肩を竦め小馬鹿にした表情を浮かべながら語るレザード、だが理由はそれだけではなかった。
 逮捕されれば懲役を受ける事は明白である、だが管理局には協力を約束する変わりに懲役を減らす制度がある。

 管理局は十中八九その制度を用いて交渉をしてくるだろう、スカリエッティは管理局からの脱却が目的である、
 それ故に管理局に尻尾を振るぐらいならいっそ自分の手で幕を閉じると言う覚悟があったのだ。

 しかしこの事を二人に話したところで理解は出来ないだろう、
 レザードはスカリエッティの覚悟を胸の内にしまうと、改めて二人と対峙する。

 「まぁ、いいでしょうそんな事は…今重要なのは私の邪魔をする者が増えた…という事実ですから」
 「……ずいぶんと余裕ですね」
 「それはそうでしょう」

 女小娘が二人になったからと言って自分の方が優勢である事は変わりはしない、左手を眼鏡に当て不敵な笑みを浮かべるレザード。
 その表情に不快感を現す二人であったが、寧ろ余裕のあるレザードの度肝を抜こうと考え、
 フェイトはライオットザンバー・スティンガーを水平に構え、なのはもまたレイジングハートを向けて対峙する。

 先ずはフェイトが先行しレザードの懐に入ると左の刀身を振り下ろすのだが、
 レザードは右手に持つグングニルで受け止め、フェイトは続けて右の刀身を水平に構え突く。

 だがレザードは滑るようにして後方へと回避、更に左手を向けてクロスエアレイドを放つ、
 しかしクロスエアレイドはなのはのアクセルシューターによって撃ち落とされ更にレザードに向けてショートバスターを放つ。

 するとレザードは急降下してショートバスターを回避し床すれすれを滑走、なのはに向けて衝撃波を放つ。
 だがフェイトが間に割り込みスティンガーにて衝撃波を切り裂き、後方ではなのはがアクセルシューターを撃ち放った。

 しかしレザードはリフレクトソーサリーを張りアクセルシューターを跳ね返したのだが、間髪入れずにフェイトが接近
 左の刀身を左へ薙払うようにして振り抜くがレザードはグングニルにて左の刀身を受け止める。

 するとフェイトは右の刀身を左の刀身に合わせ一つにし、ライオットザンバー・カラミティに変えて一気に振り切り
 レザードはその衝撃に耐えきれず吹き飛ばされるがすぐさま着地、するといつの間にか上空に移動していたなのはが、
 レイジングハートをレザードに向けており、ディバインバスターを撃ち鳴らした。

 一方レザードは依然として冷静で左手に青白い魔力をたぎらせると、直射砲のようなライトニングボルトを撃ち放ちディバインバスターと激突、
 そして見る見るうちに押していく中、なのははカートリッジを一発使用、出力を上げ
 ライトニングボルトを押し返し始め、最終的に相殺という形で終えた。

 一方でフェイトはレザードからかなり離れた後方に移動しカラミティをスティンガーに変えソニックムーブを発動、
 金色の一筋と化してレザードに迫るがレザードは全方向型のバリアを張り攻撃を防ぐ。
 ところがフェイトはお構いなく何度も切りかかり、まるで無限の剣閃ともいえる程の動きをしていた。

 そんなフェイトの攻撃によりバリアに亀裂が走りそれを見たフェイトは更に速度を上げて攻撃、右の振り下ろしが決め手となりバリアを破壊、
 するとフェイトはスティンガーをカラミティに変えてとどめとばかりに下から上へすくい上げるかのように振り上げた。

 だがレザードはフェイトの攻撃のタイミングに合わせてシールドを張り攻撃を受け止め更に前宙のような動きでフェイトの頭上を舞い床に着地、
 攻撃から難を逃れたかに見えたが、レザードの左上空にはなのはが陣取っており、
 レイジングハートのカートリッジを三発使用、先端から環状の魔法陣が張られていた。

 「ディバイン…バスタァァァ!!」

 撃ち放たれたディバインバスターがレザードに迫る中、左手で大型のシールドを張り攻撃を受け止めると、
 なのははカートリッジを一発使用、ディバインバスターを強化させ、更に威力が増すとシールドに亀裂が生じ始める。
 その後暫くしてシールドが砕け散りレザードはディバインバスターに飲まれていった。

 ところがレザードは上空へと移動しており、足下には五亡星の魔法陣が張られていた。
 レザードは常に準備してある移送方陣を発動させてディバインバスターの驚異から逃れたのである。

 なのはは悔しそうにレザードを睨みつけている中、レザードは驚いた様子で左手の感触を確かめていた。
 先程張ったバリアに加えシールドすら破壊された…三賢人の時のように相手を油断させる為にわざと強度の低いシールドやバリアを張った訳ではない。

 十分な強度で張っていたのだが彼女達は実力でバリアやシールドを破壊した、それ程までに彼女達の攻撃には威力がある…
 つまり彼女達は既に三賢人以上の能力を持っている事を指し示しているのであった。

 「ふむ…その杖の影響とはいえ、これ程の力をつけていたとは……」

 レザードは素直に二人の実力を賞賛する中、なのはの下にシャマルからの連絡が届く。
 それは今し方はやてがベリオン及び動力炉を破壊したというものであった。

 しかし動力炉を破壊したというのにゆりかごは依然として動いたままである、
 それはゆりかごに存在する自己防衛モードによるもので、本体自体に残されている魔力によって飛行を維持されているのであった。

 しかしベリオンの破壊…その内容にフェイトはスカリエッティと対峙した時の事を思い出す。
 彼はベリオンとゆりかごを使ってミッドチルダを破壊するという計画があった、

 だがベリオンは破壊されゆりかごも既に機能としては不完全と化している、
 つまりこれはスカリエッティの計画は失敗に終わったという事を指し示しているのであった。

 一方でなのは達の報告を小耳に挟んだレザードは眼鏡に手を当てていると、
 不敵な笑みを浮かべたなのはがレザードを指差し声を上げた。

 「ゆりかごもベリオンも無くなった!これで貴方達の計画は失敗に終わったの!!」
 「失敗?まさか…確かにゆりかごは使い物にならなくなりましたが、計画そのものは支障ありませんよ……」
 「どうゆう事?!」

 レザードは肩を竦め小馬鹿にした表情でなのはの問いに答え始めた。
 世界を崩壊などレザードが本気を出せば簡単に導く事も可能である、だがレザードはそれをしなかった。

 理由はスカリエッティにあった、スカリエッティは自分の手で枷を外そうとしていた、
 その気持ちをくんで敢えてレザードは前に躍り出て行動をせず、知識を与え準備を手伝うまでで止まったと、
 結果スカリエッティはゆりかごを復活させ更にレザードから得た魔法技術によってユグドラシルと呼ばれる魔法陣まで造り上げたという。

 「何故そこまでスカリエッティの計画に荷担するの!!」
 「そうですね……興味があったから…ですかね」

 そう言ってレザードは眼鏡に手を当て不敵な笑みを浮かべる、もとより深い理由など無かった、
 最初に出会ったのがスカリエッティであっただけ、そして彼の計画に興味がわいた…それだけであると、
 尤も今はレザード自身にも目的が生まれ、それを実行に移すには管理局という存在は邪魔であると語った。

 「貴方の目的って何ですか!!」
 「シンプルなものですよ…誰しもが望む事……」

 しかし自分の目的は他の者達と違って管理局を敵に回す為に対峙する事となった…それだけであるという、
 そしてレザードはゆっくり深呼吸をして一度上を向くと瞳を閉じて黙り、なのは達は固唾をのんでいると暫くして瞳を開き
 なのは達に目を向け目的を口にする。

 「“愛しき者”と一緒になる…それだけですよ」
 「…………………えっ?!」

 レザードの目的を聞いた二人は暫く固まっていると、レザードが意気揚々に語り出す。
 スカリエッティの技術とレザードが御守りとして大事にしていた神の毛によって生まれた存在チンク。

 彼女は戦闘機人にしてレザードが愛する神のクローン、彼女と添い遂げる事が目的であり、
 それを実行するには規制を促している管理局が邪魔な存在となる、結果スカリエッティと利害が一致した為に協力したのだと語る。
 …そんなレザードの身勝手過ぎる理由に二人は睨みを利かせ激怒した。

 「狂ってる……そんな理由で世界を破壊しようとしているんですか!!!」
 「そうですか?私にとっては意味のある理由なのですがね……」

 “愛しき者”と一緒になりたいと言う気持ちは誰しもが持っている感情、だがそれを許さずまた反対する者を裁けるだけの力があれば
 誰もがそれを行うであろう…そうレザードは言葉を口にするが、なのははレザードの意見に真っ向から反対する。

 なのはにも“愛しき者”がいる、だがもし彼の生まれが特殊であったとして、
 自分に反対する者を裁けるだけの力を持っていたとしても行使する事は無いと語る。

 「偽善…ですね……」
 「そう捉えられるかもしれないけど、少なくとも貴方の意見には賛同出来無い!!」
 「それは残念だ……ならば此処等で御退席して貰いましょうか」

 するとレザードの足下から青白く光る五亡陣が現れ、青白く光るレザードの魔力が白く輝く魔力に変わり、
 レザードの全身は光の粒子に包み込まれ、次に右手に持っていたグングニルがネクロノミコンに戻りレザードの目の前で浮かび光を放つと、

 一枚一枚ページが外れ白く輝く魔力に覆われレザードの周りを交差しながら飛び回り、
 そしてレザードのマントは浮遊感があるようにふわふわと漂い、レザードの体も同様に漂うと足下の魔法陣が消え去った。

 モードIIIカタストロフィ、大きな破滅または悲劇的な結末と言う意味を持つこのモードは
 レザードが自ら掛けたリミッター全てを外し愚神の力を解放した状態である。

 「まさか…ここまで魔力を強化出来るなんて……」
 「……何か勘違いしているようですが…これが本来の私の力です」

 レザードの放った言葉は二人を動揺させるには充分過ぎる言葉であった、今目の前で放たれている魔力は二人のようにデバイスをリミットブレイクさせた
 もしくは自己ブーストしたものであると思っていた、だが実際は何て事無い能力リミッターを解放させただけに過ぎないと言うのだ。
 しかもレザードの話ではこの力は神から手に入れたのだという。

 「そんな……貴方も神の力を手にしているなんて…」
 「貴方達のような微力な力と一緒にして欲しくはありませんが……」
 「なっ何ですって!!」
 「何なら試してみてはどうです?」

 そう言ってレザードは二人を挑発すると、二人はその挑発に乗りデバイスをレザードに向けて構え始め、
 先ずはなのはがアクセルシューターを八発撃ち出し攻撃を仕掛ける、しかしレザードは舞うようにしてこれを回避、

 一方でフェイトはソニックムーブを用いてレザードに接近、依然として回避しているレザードの背後を取り
 手に握られたスティンガーをカラミティに変えて絶好のタイミングで振り下ろす、
 だが魔力刃はレザードの体をすり抜け、すり抜けた所は光の粒子を化しており暫くして肉体に戻っていった。

 「どっどうなっているの?」
 「ふっ…貴方達ではこのアストラライズされた肉体を傷付ける事など出来はしないという事ですよ」

 そしてレザードは右人差し指をフェイトに向けるとレザードを覆う光の粒子の一部がグングニルに変わり発射、
 フェイトはカラミティの魔力刃を盾にしてグングニルを防ごうとしたが、呆気なく刃は砕け散り腹部を貫き通した。

 一方でなのははレザードに向けてエクセリオンバスターを発射、放物線を描くようにしてレザードに迫っていくが、
 レザードは肉体を光の粒子に変えてこれを回避、更になのはの足下を光の粒子による爆発を起こし、しかも離れた距離に移動していた。

 一方で床に伏せ腹部を貫かれたフェイトは痛みに耐えていると、光の粒子の爆発に巻き込まれ高々と舞い上がるなのはを目撃、
 すぐさま近づき安否を心配するとなのははゆっくりと立ち上がり、遠くでほくそ笑んでいるレザードを睨みつけた、どうやら命に別状はないようである。

 「くぅ………此処まで…差があるなんて…」
 「ふっ…やっと理解出来ましたか」

 ほんの少し戦闘を行っただけではあるのに、レザードとの圧倒的な差を痛感する二人。
 此方の攻撃は一切通用しない、魔力も身体能力も遥かに向こうが上回っている、どうあがいても“二人”では勝ち目がなかった。
 ならば最後の手段を執るしかない、なのはとフェイトはお互いに見つめ合うと小さく頷き腰に添えてあった杖に手を伸ばす。

 「ほぅ…まだ何かする気なのですか?」
 「…私達は…諦めが悪いんだよ!」

 なのはは一言口にして右手に持つ杖に魔力を、フェイトは左手に持つ杖に魔力を込める。
 するとなのはの足下に赤い三角形が三つ均等に並ぶ魔法陣が、フェイトの足下にも同じ模様の青い魔法陣が張られ、
 杖が力強く輝き出すとまるで祈るようにして瞳を閉じ二人同時に杖を魔法陣に突き刺す。

 すると魔法陣は更に強く輝き出し光の柱となって辺りを照らし始めると、二人の頭上から
 黒いローブを纏い背中にそれぞれ赤と青の計六枚を翼を生やし、頭には天使の輪がついた

 流浪の双神を呼び出し光が落ち着いていくと、突き刺した杖がまるで灰のようにして跡形もなく消えていった。
 一方でレザードは二人が呼び出した者が分かったらしく流石に驚きの様子を隠せずにいた。

 「まさか…神を召喚するとはな……」
 「ほぅ…成る程、我々の力を借りたいと言うのがよく分かる」

 イセリアクイーンはレザードの肉体に宿る力を感じ、なのは達が協力を仰ぐ理由を理解する、
 それほどまでにレザードの能力は常軌を逸していたのだ、そして流浪の双神は右手に杖を携えレザードに向ける。

 「貴方には悪いが、これも契約なのでね…」
 「神が二体…少々楽しめそうだ……」

 流浪の双神を目の前にしても未だ余裕のある様子を浮かべるレザード、その反応になのはとフェイトは不安感を覚える中、
 戦闘が開始され先ずはレザードが牽制としてアイシクルエッジを二人目掛けて撃ち出すが、
 二人は手に持つ杖でいとも簡単に防ぎ、次にガブリエセレスタが杖を振り下ろす。

 ところがレザードはグングニルを形成しガブリエの攻撃を受け止める、するとイセリアが時間差でレザードに攻撃を仕掛け
 貫くようにしてレザードの腹部を狙い撃ち直撃、勢いよく吹き飛ばされるレザードであるが、
 右手を向けてクールダンセルを放ち氷人形が二人の前で襲いかかる、だが二人は冷静に対処に当たり杖で氷人形を打ち砕いた。

 「流石に神の前ではアストラライズは意味をなさないか……」
 「当然だ、肉体を幽体にする事など造作もない」

 レザードを一目見た瞬間から幽体化している事を見抜いた流浪の双神は、同じく肉体を幽体に変えて対処に当たったようであり、
 これはレザードのアストラライズを無効化された事になる、だがレザードの表情には焦りの様子が無く
 その表情を遠くで見上げているなのは達には不安を募らせていた。


 一方場所は変わり此処スバル達とチンクが戦闘を繰り広げている広場では、
 スバルのナックルダスターをマテリアライズで形成した左の盾で防ぐチンクの姿があった。

 「くぅ!やっぱ堅い!!」

 スバルはカートリッジを一発使用してナックルダスターの威力を高めるが、一向に砕け散る様子がない盾。
 一方でエリオは距離を離しストラーダを向けてカートリッジを二発使用、先端部分から魔力刃が形成されると一気に突撃、
 まるで弾丸を思わせるような速度でチンクに迫っていく、一方でエリオの存在に気が付いたチンクは

 スバルの攻撃を流すようにして盾を傾け見事に受け流すと、その場で一回転しエリオに目を向け、
 右手に携えた刀身を振り上げ魔力刃ごとエリオを高々と吹き飛ばした。

 だが上空にはキャロが待機しており、フリードリヒに指示を促しエリオを回収、更にブラストレイをチンクに放つ、
 ところがチンクはブラストレイを既に読んでおり既に移動して回避、カートリッジを一発使用すると脇差しのような小型の刀を二本生成、
 勢い良くキャロに向かって投げつけるが、脇差しはティアナのクロスファイアによって撃ち落とされた。

 するとチンクを囲うようにしてクロスファイアが六発向かってきており、チンクは盾を使って弾こうとしたところ盾は光の粒子となって消滅、
 一つ舌打ちを鳴らし悔しそうな表情を浮かべるも、クロスファイアを右往左往しながら回避し更に右手に持つ刀身にて三発打ち落とした。

 ところがクロスファイアは更に五発追加されて迫ってきており、チンクはまたもや一つ舌打ちを鳴らすと、
 左手で床の一部を掴み取り、原子配列変換能力を用いて長刀の刀を形成し、右の刀身と左の刀によって次々にクロスファイアを撃ち落としていく。
 その時である、チンクの後方からスバルが勢い良く右拳を振り上げており、拳には衝撃波が纏っていた。

 「リボルバァァ!キャノン!!」

 だがスバルの気配に気が付いたチンクは左の刀を盾代わりにして攻撃を受け止めると、
 今度はスバルの拳のカートリッジを一発使用してスピナーを高速に回転させて衝撃波を撃ち出すリボルバーシュートを撃ち抜き、
 左の刀は二つに折れ衝撃波はチンクの胸元に突き刺さり吹き飛ばされていく。

 だがチンクは吹き飛ばされながらも自身のISであるランブルデトネイターを用いて刀を爆破、
 スバルは爆発に巻き込まれ周囲は土煙が舞い散り、暫くして落ち着いていくと
 其処には全方向型のプロテクションを張り爆発から逃れたスバルの姿があった。

 「やはり…間に合っていたか」

 チンクは一つ舌打ちを鳴らしスバルと対峙している中、攻撃後オプティックハイドを発動させて
 姿を隠しているティアナが今までのチンクの戦闘を基に分析を行っていた。

 先ずスバルから予め聞いていたチンクの能力であるが、マテリアライズは魔力を原料として生成、非破壊効果を持つが三分程度で消滅する、
 一方で原子配列変換能力は物質などの媒介を魔力によって変換させる為に消滅する事は無いが非破壊効果を持たない、

 しかしあの爆発能力であるランブルデトネイターにより爆弾に変える事が出来るようなのだが、
 確かな威力を誇るには三分以上時間を要するようで、マテリアライズで生成した武具では時間的にも非破壊効果的にも不可能である可能性が分かった。

 そしてチンクは動きを先読みすることが出来るようで、此方の攻撃や行動の先の動きを行っていた。
 しかし先読み出来るのはチンクが見た対象のみ目線から離れた若しくはティアナのように隠れた対象の動きは先読み出来無いようである。

 つまり背後もしくは目の届かない場所からの攻撃が有効なのであるが、
 チンク自身も危機察知能力が高い為か、中々思うようにいかないのが現状である。

 「でも今はこれしか打開策が無いか……」

 結局のところこれ以上の有効な対策が無い為に引き続き指示を送るティアナであった。
 一方でスバルと対峙しているチンクは先手を取りスバルに攻撃を仕掛ける、
 だがスバルは依然として全方向型のプロテクションを張り巡らせたままでチンクの攻撃を受け続けていた。

 「成る程…考えたな」

 どうやらスバルに攻撃の目を向けさせる事により、他のメンバーの行動を先読みさせないよにする作戦のようである。
 一方でエリオはフリードリヒの背中にてキャロからフィジカルヒールを貰い体力を回復させると、
 フリードリヒから飛び降り床に着地、ストラーダをチンクに向けてカートリッジを三発使用、
 メッサーアングリフを放ち見る見るうちにチンクに迫る。

 「甘いな、その程度の動き先読みしなくても分かるわぁ!!」

 チンクはエリオの攻撃を半歩体をずらして容易くかわし不敵な笑みを浮かべるが、
 エリオは急速停止し左足を滑らすようにして反転、左の裏拳による紫電一閃を打ち抜こうとした。

 ところがチンクは腰を素早く下ろし裏拳を回避、更にスライディングキックにてエリオを迎撃、
 するとエリオの攻撃に続けとばかりにスバルが飛び出し、右手にはスピナーの回転により螺旋状と化した振動エネルギーを纏っていた。
 振動拳と呼ばれるスバルのISである振動破砕を用い、持てる技術を尽くし完成させた必殺の一撃である。

 一方でスバルの拳を目撃したチンクは危機感を感じマテリアライズにて大型の盾を生成し備えた。
 そして激突、辺りには振動拳の衝撃が伝わり床を削るようにして破壊、チンクもまた盾とともに床を削りながら吹き飛んでいく。
 だが盾を破壊する事は出来ず盾が消滅すると無傷のチンクが顔を覗かせていた。

 「これでも…駄目なのか……」

 スバルは絶望の淵に追いやられたかのような表情を浮かべている中でチンクに異変が訪れる。
 それはチンクの表情が痛みに耐えているような顔つきで更に左膝をついたのだ。

 今までとは異なる反応にティアナは一つ確信する、マテリアライズされた武具は破壊する事は出来ない、
 だが武具に受けた衝撃全てを受け止められる訳ではない、本来であれば破壊される程の衝撃を受ければ
 その衝撃は武具を通し本人に伝わり、そのままダメージを負うという事であると。

 つまりは強烈な攻撃であればたとえマテリアライズされた武具でもダメージを与える事が出来る訳である。
 そしてチンクを撃破するに当たって一番要なのが一撃の威力に定評があるスバルであった。 

 一方でチンクは自分が受けたダメージが思っていた以上である事に驚きを感じ、またスバルに警戒を浮かべていた。
 これ以上攻撃を受ければ敗北するのは必死、憂いは経たなければならない…そう考えたチンクは真っ先にスバルを始末する事に決めた。

 「貴様から先に叩いてくれる!!」
 「そうはさせない!!!」

 するとエクストラモードを起動させたエリオが割って入り、左拳に雷を纏わせ自身最速のソニックムーブにてチンクの懐に入る。
 一方でチンクはエリオの行動を先読みし、攻撃を避けられないと悟るや否やマテリアライズにて大型の盾を形成した。

 しかしエリオはお構いなく盾の上から何度も紫電一閃を連打しチンクを釘付けにする、
 そして更にカートリッジを全て使用して右手に持つ小型化したストラーダに魔力を込め何度も盾を突き刺した。

 「奥義エターナル!!レイド!!!」

 最後に魔力と雷を込めた突きが盾に響き、その衝撃により盾ごと吹き飛ばされるチンク
 しかしエリオの攻撃を防ぎきったチンクは反撃を行おうと睨みつけるとエリオが声を荒らげた。

 「今です!ティアナさん!キャロ!!」

 チンクは辺りを見渡すと右上空にはエクストラモードを起動させ、フリードリヒの胸元に存在する竜紅玉に魔力を溜め込みいつでも撃てる用意があるキャロと、
 少し離れた左側にエクストラモードを起動させクロスミラージュを水平に構え、その中心を軸に巨大なエーテルの球を作り出し、いつでも放てる用意があるティアナがそこにいた。
 どうやら二人はエリオの攻撃の最中に準備を始め、エリオの攻撃が終わる頃を見計らって攻撃出来るように準備を整えたようである。

 『奥義!!』
 「ドラゴンドレッド!!」
 「エーテルストラァァァイク!!」

 エリオの合図の下、間髪入れず撃ち放たれた二つの強力な一撃がチンクに迫る中で、
 もう一度マテリアライズを行い、同じ大きさの盾を用意して防御に当たるチンク。

 そして激突と同時に大爆発を起こし、辺りには衝撃波が走り巨大な土煙がチンクを覆い隠す中
 土煙が落ち着き始めると其処には巨大な盾に身を守られていたチンクの姿があった。

 「そんな…効いてないの?」
 「………いや!効いてる!!」

 盾が光の粒子となって消滅した瞬間、チンクは左膝をつき表情に曇りの色を見せ、ティアナは最後であるスバルに目を向け指示を送る。
 だがその一方でチンクの足下には多角形の魔法陣を幾重にも張り巡らせており、何処からともなく声が聞こえ始めた。

 「汝…其の諷意なる封印の中で安息を得るだろう…永遠に儚く……」
 「いけない!広域攻撃――」
 「セレスティアル!スタァァァ!!」

 チンクを中心に輝く羽が舞う複数の光の柱が立ち上り、更に広がっていくとティアナ・エリオ・キャロそしてスバルを飲み込んでいく。
 そして辺りは光に包まれ暫くして光が落ち着いていくと其処には床に這い蹲ったエリオ・キャロ・ティアナの姿があった。

 だがその中で全方向型のプロテクションを張っていたスバルだけがチンクの攻撃耐え抜いた姿があり、
 スバルの姿を見たチンクはカートリッジを全て使用、足下に白い五亡星の魔法陣を張り
 全身を白く輝くまるで白金を思わせる魔力で包み込むと、半身を開き構え素早くスバルの懐に入る。

 そして矢のようなスライディングで足下を攻撃し後ろを取った瞬間に振り下ろし、間髪入れず振り上げスバルの体を浮かせる。
 更に右からの袈裟切り、左からの払い、そして下から切り上げ更にスバルの体を宙に浮かせると、

 巨大な槍が三本スバルの左右の脇腹から肩にかけて、脊髄から腹部にかけて突き刺す。
 そして剣を納めスバルの頭上まで飛び上がると背中から光の翼を生やし、翼が光の粒子となって右手に集うと巨大な槍に変化した。

 「これで終わりだ!奥義!!ニーベルンヴァレスティ!!!」

 そう叫ぶと槍は白く輝く鳥に変わりスバルを貫く、そして白色の閃光は大きな粒上に変化
 スバルを中心に集い圧縮され暫くして大爆発、辺りには爆音と共に衝撃波が響き渡り土煙が覆われていた。

 「す………スバルゥゥゥゥゥゥ!!!」

 ティアナの悲痛な叫びが辺りに響き渡る中でチンクは静かに着地、だが連続のマテリアライズに広域攻撃魔法、
 更にはカートリッジ全てを使用したニーベルンヴァレスティと魔力を大量に消費した為、

 かなりの負荷が体にのしかかったらしく左膝をついて肩で息をしていた、だが憂いでもあったスバルは倒れ他の仲間も床に伏している、
 チンクは勝利を確信した表情で顔を上げると、土煙の中から腕をクロスに構え、チンクの攻撃に耐え抜いたスバルの姿があった。

 「ばっバカな!!私の最大の奥義を耐え抜いたというのか!?」
 「次は……コッチの番だぁぁぁ!!!」

 スバルは両拳を握り締め足を肩幅まで開き構えると両腕のカートリッジを全て使用、大量の赤い魔力が炎のように溢れ出し
 両拳には螺旋状と化した振動エネルギーを纏い、両足には赤い翼のA.C.Sドライバーが起動していた。

 そして一気に加速し一瞬にしてチンクの懐に入るや否や、右のナックルダスターがチンクの胸元に突き刺さり、
 続いて両拳からの上下のコンビネーションであるストームトゥースにマッハキャリバーとの息のあった拳と蹴りのコンビネーション、キャリバーショット

 そして左のナックルバンカーがチンクの顎を捉え跳ね上げると、右のリボルバーキャノンが腹部に突き刺さってめり込み
 更にスピナーの衝撃を放つリボルバーシュートにてチンクを高々と舞い上がらせる。

 すると今度はウィングロードを伸ばして滑走、チンクに追い付くと環状の魔法陣が二つ張られ
 加速された赤い魔力球が握られた右拳をチンク目掛けて振り下ろした。

 「奥義!ブラッディィ!カリスッ!!!」

 振り下ろされた右拳はチンクの腹部に突き刺さり九の字に曲げると、そのまま垂直落下とも言える角度のウィングロードを滑走、
 床に大激突し辺りに激しい衝撃が走る中でその中央ではスバルの拳をきっかけに、赤い魔力と混ざった振動エネルギーが波のように溢れ出しチンクの身を何度も叩きつけ
 甲冑や兜は砕け散りスカートはボロボロ、そして左耳に取り付けてあったデバイスは砕け散ったのであった。

 母のシューティングアーツに機動六課での特訓、リボルバーナックルの性能にエクストラモードの能力、
 更にはスバルの今までの戦闘経験やセンス最後にISによって完成されたブラッディカリスはまさに一撃必倒と呼べる威力を誇っていた。

 そして放たれた赤い魔力が落ち着くと其処には眼帯を失い、至る所が切れてボロボロの戦闘スーツ姿に戻ったチンクが仰向けの状態で倒れており、
 チンクの姿を見たスバルは勝利を確信したと同時に両膝を付き肩で息をしていた。
 するとスバルの勝利を祝ってかティアナ達が集まり激励を送るのであった。


 時はチンクが撃破される前まで遡り、イセリアは女王乱舞にてレザードを攻撃、
 だがレザードはシールドを張って攻撃を全て防ぎその中で詠唱を始め、ファイナルチェリオをイセリアに向けて反撃した。

 だが一方でガブリエが接近し右手に持つ杖を振り下ろすがレザードはグングニルで防ぎ難を逃れる、
 その間に攻撃に耐えたイセリアが背後を取り杖を振り抜きレザードを吹き飛ばすが、
 レザードは右手を向けて直射型のライトニングボルトを放ち、イセリアはシールドを張ってこれに対抗した。

 一方なのは達はレザードと流浪の双神の熾烈な戦いに唖然とした表情を浮かべていた。
 するとなのはの下へティアナからの連絡が届く、それは今し方スバルがチンクを倒したという内容であった。

 一方なのはの報告に小耳に挟んだレザードは動きを止め驚愕な表情を浮かべすぐさまモニターを開くと、
 其処には仰向けで倒れているチンクの姿が映し出されていた。

 「バカな…私の“レナス”が………」

 レザードは頭を押さえ、まるでこのような結末を望んでいなかったと思わす表情を浮かべ、うなだれていた、
 一方でなのは達は勝利を確信した表情を浮かべていた、戦況はこちらが優勢
 しかもフェイトから聞いていた計画の要でもあったチンクは此方の手中にある、そして他のメンバーも此方に集うであろう。

 そして流浪の双神も存在する、もはやレザードは袋の鼠状態、これ以上の抵抗は無意味であるとなのはが伝える中、
 微動だにせず依然として俯き頭を手で押さえ、うなだれてるレザードの姿にフェイトが声を荒らげる。

 「何か言ったらどうです!!」
 「…………………」

 しかしレザードは答えず長い沈黙が続き動きが一切無い中、レザードの体から金色の砂のような物が次々に垂れ出し、
 それは床に落ちて徐々に広がり部屋全体を覆い輝かせる。

 「なにこれ?!」
 「術式………かな?」

 それはよく見ると文字のようで部屋全体に書かれたのだろうと言うのがフェイトの見解である、
 すると今まで沈黙していたレザードが静かに言葉を口にし始める。

 「…たかが一介の魔導師が私の計画を潰し、あまつさえ我が“愛しき者”を傷付けるとは……」

 次の瞬間なのは達の体に異変が起きる、それは今までとは異なり体に負荷がのしかかり、
 それはまるで能力リミッターを掛けられた時と同じような感覚を覚えていた。
 なのは達は自分の体の異変に戸惑っていると、レザードが振り返り押さえていた手を降ろしその表情は怒りに満ち鬼の形相と化していた。

 「――許せん!!!」

 自らのお気に入りであり“愛しき者”であるチンクを傷付けた罪は重い、そう口にすると左手を掲げるレザード
 そして―――

 「跪け!!」

 左手を振り下ろした瞬間、何かがのし掛かったかのように全身が重くなりなのは達は床に伏し、その光景はまさに跪いているかのようであった。
 その中でイセリアがゆっくりと立ち上がりレザードに向けて杖を振り払い衝撃波を生み出す。
 だがレザードは迫ってくる衝撃波をまるで埃でも払うかのようにして右手を払いかき消した。

 「どっどうなってるの?!」
 「なる程な……」

 なのはは戸惑う中イセリアが説明を始める、レザードの体から放たれたこの術式により
 肉体・魔力更には攻撃の威力まで十分の一以下にまで押さえつけられているのであろうと語る。

 一方でレザードは再び左手を掲げなのは達を浮かばせると左右の壁、上下の床や天井に次々にぶつけ更に叩き落ととすようにして床に激突させた。

 「殺しはしない!死んで楽になどさせるものか!!」

 すると今度は大量のイグニートジャベリンを用意して一斉に発射、なのは達の身を次々と貫いていく、
 だがレザードの攻撃は終わらず続いてダークセイヴァー、アイシクルエッジ、プリズミックミサイルなどを次々撃ち抜き

 必死の形相で回避またはバリアやシールドなどで防ごうとした、しかしレザードの放った魔法の威力はそれらを簡単に打ち砕きその身に浴び次々に倒れていくなのは達。
 そして最後にレザードは詠唱を破棄してファイナルチェリオを撃ち放ち、その衝撃により床壁などを吹き飛ばした。

 「どうしましたぁ!?この程度で終わりですかぁ!?」

 レザードは尚も挑発を促しなのは達を立たせていく中、なのは達の表情は絶望に支配されていた。
 此方に攻撃を仕掛ける暇も与えず、もし攻撃出来たとしても大したダメージを与える事が出来無い、

 更には流浪の双神すら手玉に取られている状況、正に今のレザードは“破壊を求める者”といっても過言ではなかった。
 そんな状況になのはとフェイトは塞ぎ込んでいると二人の下へ流浪の双神が駆け寄り二人に話しかけた。

 「一つだけ…奴に対抗出来る手段がある……」
 「えっ?それは一体?!」
 「私達との融合…ユニゾンと置き換えてもいい」

 二人のどちらが流浪の双神と融合する事により一時的にレザードと対等の力を得ることが出来るという、
 だが神とのユニゾンは大きなリスクを伴い、下手をすれば器となった存在の魂が消滅する可能性を秘めていた。

 つまりレザードとの実力差を埋めるにはそれ程までのリスクを背負わなければならないと言う事である。
 すると神の話を聞いたなのはが覚悟を秘めた表情を浮かべ言葉を口にし始める。

 「だったら私が―――」
 「私を器にして下さい!!」
 「―――フェイトちゃん?!」

 なのはの決意を遮るかのようにフェイトは言葉を口にし困惑するなのは。
 するとフェイトが説明を始める、なのはにはユーノやヴィヴィオなど大切な人がいる、その人達を泣かせる訳にはいかない、
 だからなのはの代わりに自分が器になると告げるとなのはは反発した。

 「何言ってるの!フェイトちゃんにもエリオやキャロが―――」
 「二人なら私がいなくても大丈夫だから」

 先だってのスカリエッティとの戦いで見せた二人の決意、それを耳にしたフェイトは二人が自分の下を巣立ったのだと確信した
 それになのはは自分の命を救ってくれた、その恩を返す為にも今ここで自分が器になる、そう覚悟を決めたのだという。

 「なのは……みんなの事をお願―――」

 次の瞬間なのははフェイトに当て身し気絶させると、悲しい表情でフェイトを見つめるなのは。
 いくらフェイトの願いであってもそれを受け取ることは出来なかった、何故ならレザードとは自分の手で決着をつけたかったからだ。

 ホテル・アグスタを始め地上本部での二度の敗北、そしてヴィヴィオを誘拐され絶望の淵に追いやられた。
 それらを払拭する為にも自分の手で行わなければならないと覚悟を決めていたのだ。

 「……良いのだな?」
 「覚悟はもう…決まってるの!」

 なのはの決意ある瞳を見た流浪の双神は小さく頷き、気絶するフェイトから離れ三人はレザードに近づくと、今度は流浪の双神がなのはとある程度距離を置く、
 そして足下に巨大な三角形が三つ均等に並ぶ魔法陣を張り巡らせると、今まで沈黙を守っていたレザードが見下ろす形で言葉を口にする。

 「まだ悪足掻きをするつもりですか?」
 「言ったの…私は諦めが悪いって!!」

 するとなのは足下に流浪の双神と同じ桜色の魔法陣が張られ輝き始めると、それに呼応するように流浪の双神の魔法陣も力強く輝き出す、
 そしてその輝きは一種の壁となり三人は声を合わせて言葉を口にした。

 『ユニゾンイン!!』
 「何ぃ?!」

 流石のレザードも驚きの表情を浮かべていると、流浪の双神はそれぞれ赤と青のエネルギー体になり更に球体に変化、
 魔法陣ごとなのはに近付き胸元に吸い込まれていくようにして収まると、次の瞬間大量の桜色の魔力が天井を突き破るかのようにして溢れ出し魔力がゆっくり収まっていく。

 其処には背中に桜色の六枚の翼を生やし胸元の黒い部分は透けて谷間が強調されたロングスカート型のバリアジャケット
 足下は金で装飾された金属製のハイヒール型の具足に変わり外側の両足首部分からは桜色の翼が生え、
 結っていたリボンが無くなり髪型はストレートヘアー、更に桜色の天使の輪が浮かんでいた。

 そしてレイジングハートは力強くまるで冷え切っていない溶岩のように赤いクリスタルが輝き、
 ストライクフレームから現れる魔力刃は鋭く分厚く左右からは四枚の小さな翼が生えていた。

 なのはの変貌にレザードは依然として唖然した表情を隠せないでいると、
 今まで瞳を閉じていたなのはの瞳が開き、金色に輝くその瞳でレザードを突き刺すように睨みつけた。

 「覚悟っ!!」
 「一介の小娘が神とユニゾンだと……いいだろう相手をしてやろう!!」

 するとレザードは、まるで北極星を思わせるようにして力強く輝き白金のような色と化した魔力を高めていき、
 一方でなのはは自分の体を確かめるかのようにして体を動かし、レイジングハートの先端をレザードに向けて対峙する。




 いよいよ戦況は最終局面を迎えるのであった………








タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年02月01日 21:21