夢現…微睡みの中に漂うフェイト、彼女の耳に音が小さく響いてくる、
 煩わしい…最初はそう感じていた、だがその音は徐々に大きくなっていき最後には大きな爆発音となって脳天を貫く。

 その音により自分が気絶していた事に気が付き目を覚まして体を起こすフェイト、
 辺りを見渡すと壁や天井の残骸が山のように築かれており、
 ふと上空を見上げると其処には白金の魔力光と桜色の魔力光が幾重にもぶつかりあっていた。
 その光の正体がなのはとレザードであると気付いたのは、そう遅くは無かった…


                 リリカルプロファイル
                  第三十九話 黄昏


 フェイトは目の前で起きている激戦を見て呆然としていた、何故ならば二人の戦いは既に一線を越えた戦いであったからだ。
 なのはから繰り出されるディバインバスターをレザードは詠唱破棄したセラフィックローサイトにて迎撃、
 一方でレザードはダークセイヴァーにて追撃するが、なのははディバインシューターを用いて相殺、

 変わってなのはがアクセルシューターを撃ち放つのだが、レザードはグングニルを振り払い、弾き飛ばして周囲の壁を瓦礫に変えると、
 再度グングニルを振り払い衝撃波を放つが、なのははA.C.Sドライバーを起動させて左に回避、先程までなのはがいた場所は衝撃波により瓦礫と化した。

 「逃さんっ!!」

 ところがレザードはとっさに左手をなのはに向けてレデュースガード、レデュースパワー、プリベントソーサリーの三種のバインドで縛り付け、
 その光景を目の当たりにしたフェイトは、なのはが危機に陥っていると判断して、なのはを救い出す為に向かおうとした。
 …だが――

 (こないで!フェイトちゃん!)
 (なのは?!)

 突然のなのはの念話に驚きの表情を浮かべるフェイト、だがすぐさま真剣な表情に戻し自分も手伝うと伝えるが、
 頑としてなのははフェイトの要求を断っていた。

 何故ならば、レザードの実力に対抗出来るのは神とユニゾンした自分のみであり、
 言い方が悪いがフェイトの実力では足手まといがオチであると、凛とした声でハッキリと伝えた。

 (…それじゃあ、私はなのはの為に何も出来ないの?)
 (…ゆりかごから脱出してくれるだけでいいよ)

 そうすれば自分は全力全開で戦えると今度は優しい声で答え、暫くフェイトは黙り込みその後すぐ、意を決しなのはに背を向けてこの場から立ち去り
 フェイトの後ろ姿を横目で確認したなのはは小さく微笑むと、すぐさま険しい表情に変わりレザードを睨み付けるのであった。


 場所は変わり此処動力室では、魔力を使い過ぎて暫く休憩をしているはやての姿があった。
 すると其処にフェイトから連絡が入り、その内容に驚きの表情を浮かべる。

 「何やて!?撤退ってどう言う事や!!」
 「細かい事は後で伝えるから今は!!」

 フェイトの必死な態度にただ事ではないと感じたはやてはすぐさま了解し、ヴォルケンリッターに撤退の指示を送ると
 ザフィーラははやてを背負いシグナムを先頭に動力室から避難した。

 一方でスバル達はチンクを引き渡す為に突入口に向かって進んでおり、
 スバルはティアナを背負い、フリードリヒにはエリオを騎手にチンクを抱えたキャロの姿があった。

 すると此方にもフェイトからの連絡がティアナの下に届く、その内容とは突入口を出たらそのまま、もう引き返す必要は無いというものであった。
 そしてフェイトもまた突入口とは違う場所からの脱出を試みると告げ、それを聞いて一つ疑問を抱いたスバルが問い掛けてきた。

 「ところでなのはさんは?」
 「…なのはは一人でレザードと戦ってる」

 フェイトの思わぬ答えに困惑するスバルであったが、取り敢えず今は外に出る事を優先するようにとフェイトは促し
 スバルは納得のいかない表情を浮かべている中、ティアナが了解して、一同は急いで突入口へ向かっていった。

 時間は遡りフェイトが部屋を出た直後、三種のバインドで縛られている状態のなのはが其処にあったが、
 体に力を込め容易くバインドを吹き飛ばし、その光景を見てレザードは当然か…といった表情を浮かべていた。
 神とのユニゾンは魔力だけではなく本人の身体能力も向上させる事が出来る、つまりバインドではもう捕らえる事が出来ないのだ。

 「面倒な相手になったものだ……」

 賞賛とも不満ともとれる言葉を放つレザードの前にA.C.Sドライバーを起動させて突進して来たなのはが現れ、レザードはグングニルを盾にして攻撃を受け止める。
 だがなのははお構い無しに尚も突進、レザードを押し遣り壁を突き破り更に幾重も突き破って最後にディバインバスターを撃ち放った。

 それによって更に壁を突き破り大きな風穴を作り出すと、風穴から直射型のライトニングボルトがなのはに迫り
 なのはは上昇して回避するが更なる上空に移送方陣にて先回りしていたレザードと出くわし、グングニルを振り払らわれ衝撃波を撃ち出される、
 ところがなのはは衝撃波を受け止める為ラウンドシールドを張るのだが、受け止めきれずに押し遣られ次々に壁を突き破っていった。

 しかしレザードの顔には手応えを感じたしたという表情が浮かび上がっておらず、ジッとなのはが押し遣られて作り出された風穴を見ていると、
 其処から桜色の光が瞬時にレザードの前に現れ光が消えると無傷のなのはが姿を現し、
 その姿を見たレザードの表情には驚きの様子は無く、寧ろ当然といった表情を浮かべていた、そしてなのはを見下ろす目線で言葉を口にする。

 「そろそろ貴様の仲間が脱出した頃だろう」
 「気づいていたの?」
 「当然だ」

 神の力を得た存在があの程度で倒されるハズもなくまた、この程度の力ではない事は重々承知している。
 故になのはの本気を見る為邪魔な存在である彼等が脱出するのを見逃しまた様子を見ていた、その言葉に意外といった表情でなのはが言葉を口にする。

 「随分と余裕なのね…それとも自信?」
 「紳士的と言って欲しいものだ、だが…もうその必要は無い…私の全てをお見せしましょう!」

 そう言って両腕を大きく広げ、まるで十字架のように見える形で構えると、
 魔力を高め白から白金へと変化し目を見開いて、まるで劇を終わらせるかのように高々と宣言した。

 「さあ!フィナーレだ!!!」


 場所は変わり此処はミッドチルダ宙域に待機しているクラウディアのブリッチ、
 其処には周辺地域の変化をモニタリングしている夢瑠が脳天気に大欠伸をかいていた。

 すると其処に本局からの通信が届き、その内容に驚いた表情を浮かべながら対応する夢瑠。
 その内容とは今し方隕石が七つ、ミッドチルダに向かっているのを捉えたと言うものであった。

 「えっ?!それってどういう事――」

 夢瑠は本局に詳細な情報を求めようとしたところ、クラウディアを掠めるようにして七つの隕石が通り過ぎミッドチルダに降りていった。
 それを肉眼で確認した夢瑠はすぐさまスタッフに着弾ポイントを予測させる、そして出た結果がゆりかごに向かっている事が判明した。
 この結果に脳天気な夢瑠であっても危機感を感じ、すぐさま上司であるクロノと連絡を取るのであった。

 「てめぇらの顔も!!」
 「見飽きたぜぇぇぇ!!」

 時間は遡り、ゆりかご周辺上空ではアギトとユニゾンしたアリューゼが広域攻撃魔法と化したファイナリティブラストにて
 次々にガジェット及び不死者を飲み込み爆発もしくは光の粒子と化して消滅させていた。

 他にもフェンリルに跨り次々に不死者を凍結させていくメルティーナや、白天王に指示を送りガジェットを次々に破壊しているルーテシアの姿があり
 地上では気だるそうな顔をしながら猟犬を使って攻撃するヴェロッサと、ヴェロッサを窘めながらもヴィンデルシャフトを振り抜くシャッハの姿があった。

 その中で現場責任者であるクロノは、戦況を確認しながらも次々にガジェット及び不死者を撃破していた。
 此方の戦力は全地上魔導師及び教会騎士団の七割を投入、その為ガジェット及び不死者は順調に数を減らしつつあるが、
 依然として先の見えない戦いが現状であった、一方で残り三割の戦力はミッドチルダの全住民の避難を完了させ更に怪我人への対応に勤しんでいた。

 戦況は悪くはない、だが打開策が無い以上ジリ貧は必死である、すると突入口からウィングロードが伸び其処からスバル達が姿を現し、
 それを皮切りにゆりかごの後方部分から火龍一閃と思われる炎が立ち上り、

 其処からシグナムを先頭にヴィータ・シャマルそしてはやてを背負ったザフィーラが現れ、クロノの下へ近づいていた。
 更にライオットザンバー・カラミティと思われる魔力刃が外壁を切り裂き其処からフェイトが姿を現し同じくクロノへと近付いてきていた。

 「はやてフェイト!レザードはどうしたんだ!?」
 「今なのはが相手をしている」
 「それや!どう言う事か説明してな!!」

 するとフェイトは今までに起こった一部始終を余すこと無く伝え、その有り得ない内容に頬に冷たいものが伝う二人、
 神とのユニゾンしたなのはの実力は測りきれない程であり、その力に真っ向に対抗出来るレザード

 最早ミッドチルダの命運はなのはの手に掛かっている、そう判断しているとクロノの下に夢瑠からの連絡が入る。
 その内容とはゆりかごに向かって隕石が七つ向かってきているというもの、その内容に困惑するクロノ達に対しフェイトは断言するように言葉を口にした。

 「レザードだ…」
 「バカなっ!何でもかんでもアイツのせいにするのは――」
 「それはクロノがレザードの実力を目の当たりにしていないからだよ!」

 レザードの実力は隕石すら操れても可笑しくないとフェイトは答え、それに真っ向から反対しようとしたクロノの窘めるはやて。
 今は兄妹喧嘩をしている場合ではない、レザードの仕業であろうとも無かろうとも隕石が迫ってきている事実は揺らぐ事はない。
 そんなはやての言葉に我に返った二人は小さく頷くと、クロノは現場責任者として今この場に集っているメンバーに早急に指示を送った。

 「各隊員に告げる!今此処に隕石が迫って来ている!今すぐこの場から退避せよ!!」

 クロノの指示に隊員は蜘蛛の子を散らすかのようにして次々に退避、だが中にはガジェットや不死者に阻まれ退避出来ない隊員も多くいた。
 するとクロノはアリューゼ達や突入組に救護並びにしんがりを要請、これによって孤立しかけた隊員達は救い出されなんとか退避を完了させた。

 そしてクロノ達もゆりかご全体が確認できる位置まで退避を完了させると大して間も無く、空から摩擦熱により赤く輝く七つの隕石が
 ゆりかごに次々に突き刺さっていき大きな七つの風穴を作り出すと、ゆりかごは音を立てて崩れ始めた。

 「ゆりかごが……」
 「崩壊していく……」

 その光景を目の当たりにしていたはやてとクロノは言葉を口にし、中で戦っているなのはの生存は絶望的であると痛感していると、
 崩れ落ちる瓦礫の間を飛び交う白金色と桜色の魔力光が目に映り、フェイトは思わず身を乗り出すかのように一歩前に出て桜色の光を指差した。

 「なのはだ!!」
 「何だって?!」

 クロノは驚きの表情を浮かべつつ、それを確認する為にモニターを開くと
 其処には神々しい姿に変わったなのはの姿が映し出されていた。

 一方で落ちていく瓦礫の間を飛び交いながらレザードに向けてアクセルシューターを撃ち抜くなのは、
 だがレザードは瓦礫をグングニルで砕き吹き飛ばしてアクセルシューターを防ぎ、代わりに誘導性を付け加えたプリズミックミサイルを撃ち放った。

 ところが此方もレイジングハートの先端部分に存在する魔力刃にて目の前の瓦礫を砕き吹き飛ばしてプリズミックミサイルを防ぐと、
 瓦礫が無くなった目先にレザードの姿があり、すぐさまA.C.Sドライバーを起動してレザードを串刺しにしようと迫った。

 だがレザードはシールドを張って攻撃を防ぐが、なのはは先程と同様に尚も突進、それによりレザードは更に上空へと追い遣られていき
 レザードは左手を引くや否やグングニルを振り払いシールドごと攻撃を相殺した。
 そんな中、崩れ落ちていたゆりかごの残骸が積み重なり地上に瓦礫の山が築き上げられた。

 その頃上空ではレザードが不敵な笑みを浮かべ右手をかざすと、直径数十メートルの巨大な火球を五つ作り出し
 火球は真っ赤に燃え中心は黄色に近い色まで熱を帯びていた。
 一方でなのはも右手をかざし足下に環状の魔法陣を広げるとレザードの火球と同等の大きさと数の桜色の魔力弾を作り出した。
 そして―――

 「カラミティブラスト!!」
 「アクセル…シュータァァ!!」

 撃ち放たれた二種の魔法は激突するやカフェオレのように混じり合い収束していくと一気に解放
 大爆発を起こし、まるで花火を思わせるかのように無数に散らばり、その画は風流とすら思えた。

 …だが無数に散りばめられたレザードの炎となのはの魔力が混じったソレは、消えること無く地上に降り注ぎ
 二人の足下に広がる森は炎の海と化し木々を燃やし続けていた。

 そんな光景の中レザードは距離を置きなのはを見上げる位置に立ち、右手でグングニルを握り締めると
 右腕に揺らめく赤い魔力をたぎらせ始める。

 「マイトレインフォース!!」

 すると赤い魔力は拳からグングニルに伝わり刀身を赤く染め上げると、天を貫くかのようにしてなのは目掛けて投げつけた。
 マイトレインフォース、レザードが持つ武器と一撃の威力を1.5倍高める効果を持つ支援魔法である。

 一方なのはは右手にラウンドシールドを張り巡らせ受け止めようとするが、抑えきれずグングニルと共に高々と上昇
 ミッドチルダを覆う黒い粉塵と混じった灰色の雲を貫き大穴を開け、其処から夜明けが近いと思わせる夜空を覗かせた。

 一方更に上昇していくなのははシールドを傾け、その場で右に回転してグングニルを受け流す。
 ところがなのはの頭上にはいつの間にか移送していたレザードが、マイトレインフォースを纏わせた右手でグングニルを掴み取り更にそのまま大きく振り上げた。

 「貫け!グングニル!!」

 そして刀身を赤く染め上げると勢い良く投げつけグングニルはなのはの胸元に突き刺ささり、そのまま加速し一瞬にしてなのはごと姿が消え去り、
 レザードはグングニルが向かった方向を確かめると移送方陣にて移動を開始した。


 場所は変わり此処はドラゴンオーブの攻撃により消失した地域から程近い北の山岳地帯、
 深々と雪が降り積もり山々が雪化粧をしているこの地域に異変が起きる。
 それは灰色の雲を穿つ赤い光が突然現れ山に衝突、山は一瞬にして吹き飛ばし変わりに大きなクレーターが姿を現したのだ。

 するとその上空に移送したレザードが現れ右手をクレーターに向け右手にに魔力がたぎると
 クレーターを中心に囲うようにして炎が包み込み、近くの山の雪を溶かしていくと最後にレザードは指を鳴らした。

 「イフリートキャレス!!」

 次の瞬間、囲んだ炎が大爆発を起こし高熱を帯びた爆風は、山岳地帯に積もる雪を瞬時に溶かし尽くし
 山々は岩肌が剥き出しな状態と化した。
 その発端であるクレーター中心は炎と熱により一部がまるで溶岩のように真っ赤に染まっており、

 その光景にレザードが不敵な笑みを浮かべていると
 一筋の桜色の光がレザードの腹部に突き刺さり、それがなのはの魔力刃であると認識した瞬間に一気に急降下、
 岩肌が剥き出しの山に激突しその存在を吹き飛ばした。

 「貴様!あの攻撃に耐え抜いたのか!!」
 「お生憎様、ユニゾンしたお陰で丈夫なったの!!」

 なのはに突き刺さったかに思われたグングニルであったが、外側に小さなシールド、
 内側…というより内臓にフィールドを張った為、貫かれる事は無かった、

 そしてレザードの攻撃に耐え抜き油断したところをA.C.Sドライバーにて攻撃現在に至ったのだ。
 しかしなのはの攻撃はまだ終わってはおらず追って突撃し、次々に山々に大穴を空けていき後に山々は音を立てて崩れていった。

 なのはの突撃の勢いは西地区にまで及び消失したエルセア地方まで辿り着くと、
 レザードはグングニルを形成しなのは目掛けて薙払って吹き飛ばして難を逃れる。

 だがなのははある程度吹き飛ばされる程度で止まり、足下に環状の魔法陣を張り
 レイジングハートの先端部分に存在する魔力刃をレザードに向けカートリッジを三発使用する。
 一方でレザードもまた足下に魔法陣を張り右手をなのはに向けると稲妻が走り、それが後に巨大な竜骨と化した。

 「エクセリオン!バァスタァァァ!!」
 「ブルーディッシュ!ボルトォォ!!」

 放たれた二つの魔法は激突して相殺、それによって生み出された衝撃波は残されていた建物を吹き飛ばし海岸線に至っては大波を作り出していた。
 そんな衝撃が走る中でレザードは、移送方陣を用いてなのはの後方上空をとると、左手には巨大な稲光が走る黒いスフィアが存在していた。

 「押し潰れろ!グラビティブレス!!!」

 振り下ろされたグラビティブレスはなのはを容易に飲み込みエルセア地方から南東へと移動、
 ポツポツと家が並ぶこののどかな風景が広がる地区へと衝突する。
 ところがグラビティブレスに異変が起き亀裂が走ると、桜色の直射砲がグラビティブレスを打ち砕いた。

 一方で後を追っていたレザードは先程起きた光景を目の当たりにして歯噛みしていると
 A.C.Sドライバーの加速を用いて上空に移動したなのはがレイジングハートをレザードに向け足下に円状の魔法陣を張り巡らせ、
 先端には桜色の魔力が収束し巨大な魔力の球体を作り出すと大きく振りかぶった。

 「スターライトブレイカァァ!!」

 撃ち出されたスターライトブレイカーはレザードが瞬時に張ったシールドに直撃、
 その瞬間スターライトブレイカーは膨れ上がるようにして広がり周囲を飲み込んでいった。
 このスターライトブレイカーはかつて闇の書であった頃のリインが使った広域攻撃型の魔法である。

 そして魔力光が落ち着いていくと、のどかな風景が一転荒れ果てた大地へとその姿を変え、なのははその風景を眺めつつも依然としてレザードの姿を探っていた。
 あの程度で倒せる存在ではない、あの程度で倒せるのであればこれほど苦労は無い…
 すると後方で瓦礫が崩れるのを耳にして、すぐさま振り向き螺旋を描く八発のアクセルシューターを撃ち抜くが其処にレザードの姿はなかった。

 だが次の瞬間、なのはを中心に青白く輝く五本の光の柱が突如現れ更に五亡星の魔法陣を描き
 なのははオーバルプロテクションを張り攻撃に備えると光の柱が消え去り、それと同時に衝撃が走って周囲を照らしていく、
 そして光が消え去ると中心にいたハズのなのはの姿が無かった。


 場所は変わり此処はミッドチルダ南方のアルトセイム地方から遠く離れた海域上空、此処に突如として光が溢れ
 其処から先程まで南東地区で戦っていたなのはが姿を現す、なのははアストラルメイズと呼ばれる転送魔法で跳ばされたのだ。

 辺り一面は海である、だがこんな所に用がないなのははすぐさま移動しようとしたところ上空に気配を感じ見上げると、
 其処には右手を向けて詠唱を終わらせたレザードがおり、彼の頭上には巨大な槍の矛先がなのはに向けられていた。

 「この距離では逃れられん!ファイナルチェリオ!!」

 なのははとっさにバリアを張ろうとしたが間に合わず、ファイナルチェリオは空しくなのはに突き刺さりそのまま吸い込まれるように海へと沈んだ、
 だがレザードの攻撃は終わっていなかった、激しく水柱を立てた直後レザードはアブソリュートゼロを発動、
 瞬間的に凍り付かせ海には即席の氷の島が生み出されていた。

 「幾ら神と融合したといってもこの距離で―――」

 しかし氷の島は揺れ始め振動が徐々に大きくなり島の周辺は波立ち、氷に亀裂が走るとレザードに向かって桜色の直射砲が伸び
 一歩下がってギリギリでレザードは躱すと直射砲は雲を貫き夜空を覗かせ、砕け散った氷の島は粉雪のように舞い散り
 直射砲が放たれた場所には右の口端から血を流したなのはがレイジングハートを向け不敵な笑みを浮かべながら睨み付けている姿があった。

 「おのれぇ!図に乗るなぁ!!」

 レザードは海水を引き上げ更に凍り付かせて巨大な氷の塊を三つ作り出しなのはに向けて投げつけ、レザードのデルタストライクがなのはに迫る中
 なのははアクセルフィンにて加速、氷の塊の一つに自ら近づくとグリップを深く握り先端の魔力刃を振り下ろし氷を真っ二つに切り裂く。

 続いて左に迫ってくる氷の塊に対しそのままレイジングハートを向けディバインバスターを放って撃ち砕くと、
 休む暇なく右に迫ってくる氷の塊に対して今度は、環状の魔法陣を二つ右腕に纏わせ拳の先には加速された魔力球が存在しており

 力強く氷の塊に拳をめり込ませた瞬間、魔力球を解放させる事により発生した、巨大な直射砲で内部から氷の塊を打ち砕いた。
 スバルが考案したゼロ距離ディバインバスターとインパクトキャノンを応用したなのは式ゼロ距離ディバインバスターである。

 一方でその光景を目の当たりにしたレザードは歯噛みし更に氷の塊を増やし、その数は12を数え次々に投げつけていく。
 だがなのはも負けてはおらず、A.C.Sドライバーを起動させて最初に迫ってくる氷の塊を打ち貫き、続いて右から迫ってくる氷の塊を
 未だに張られている右腕の魔法陣で魔力球を作り出し魔力球が触れた瞬間に先程と同様に打ち砕く。

 ところが三発目の氷の塊が既に迫って来ており、なのははカートリッジを一発使用するとその場で右回転、
 それと同時に右のハイヒール部分に魔力を込め、かかとに魔力刃を宿すとそのまま回し蹴りによって氷の塊を蹴り砕いた。

 だが左右から氷の塊が迫って来ており、なのはは一つ舌打ちを鳴らすと今度は逆に左回転、
 左手に持つレイジングハートの魔力刃にて薙払い斬り砕くと、更に目の前に氷の塊が押し迫る。

 しかしなのははA.C.Sドライバーを起動させて瞬時に上空へと回避し難を逃れると、すぐさまレイジングハートを向けストレイトバスターを発射、
 氷の塊に直撃すると反応炸裂効果により周囲の氷の塊を巻き込み結果五つの氷の塊を撃ち砕いた。

 残りの氷の塊は二つ、するとその二つが押し迫って来ており、二つの氷の塊に対して更に上昇して回避するが、氷の塊は依然として追ってきており、
 なのはは舌打ちを鳴らして縦横無尽に飛び回っているとレザードと氷の塊が延長上に繋がる箇所を発見、すぐさま誘導を仕掛けレザードを見上げる位置で立ち止まると、
 案の定氷の塊が一列に襲い掛かりA.C.Sドライバーを起動、更にカートリッジを三発使用して魔力刃が桜色から真っ赤に染まった瞬間に加速、
 赤い弾丸が氷の塊を次々に貫きレザードに直撃すると、今度はレイジングハートをレザードごと海に向け更に残りのカートリッジ全てを使用した。

 「エクセリオン!バスタァァァァ!!」
 「ぬぅ!!」

 撃ち放たれたエクセリオンバスターはレザードごと海に直撃、海水を押し遣り海底にまで直撃させると
 今度は竿を引き上げるようにしてレイジングハートをゆっくり持ち上げ、未だ発射されているエクセリオンバスターにより海を二つに割りつつレザードを押し遣った。


 なのはが撃ち放ったエクセリオンバスターはクラナガン中央区画まで及び、海から一直線上に削られた跡が残されていた。
 その先端には仰向けの状態で倒れているレザードの姿があり、レザードはゆっくりと起き上がり汚れた衣服を軽く払うとふわりと体を浮かせ
 周囲に建ち並ぶビルより更に上空まで上昇すると右手を地上に向け詠唱を始めた。

 「其は汝が為の道標なり…我は頌歌を以て汝を供宴の贄と捧げよう!!」

 するとレザードの前方からビルを押し遣って巨大な火山が生まれると、其処から熱く燃えたぎる溶岩が噴き出しビル街を次々に飲み込んでいった。
 一方でなのははカートリッジを交換した後レザードの様子を知る為、エクセリオンバスターを撃ち抜いた跡を道標に進んでいた。
 すると目先にビルを押し遣って巨大な山が姿を現し、其処から帯び立たしい程の溶岩が流れて来ているのを確認する。

 「なっ?!何なのあれ!!」

 流石のなのはもこれには驚き戸惑いの様子を見せていると、流れ出た溶岩が次々に街並みを飲み込んでいき、更になのはの下へと押し迫っていた。
 しかもこの溶岩はまるで自分の意志でも持っているかのような動きをしており、上昇すれば津波のようにしてなのはの行く手を塞ぐのである。

 「やっぱり、これってレザードが!!」
 「その通り!このカルネージアンセムに飲み込まれるがいい!!」

 周囲にレザードの声と笑い声だけが響く中、逃げ場を失ったなのはの前にカルレージアンセムが襲い掛かり飲み込んでいった。
 暫くして…辺りは流れ出した溶岩が冷え始め固まりつつある中、レザードは不敵な笑みを浮かべながら見下ろしていた。

 そんな中である、冷え切った溶岩に亀裂が走り其処からオーバルプロテクションを張り巡らせたなのはが浮かび上がってくる、
 どうやら飲み込まれる瞬間にバリアを張り出来るだけダメージを抑えたようである。

 だがそれでも相当なダメージは受けているようで表情を曇らせるが、悟られないよう直ぐに隠し何でもなかった表情に変え上空すると
 今度は此方の番といった様子でカートリッジを三発使用、なのはの周囲に現存するビルが次々に桜色の魔力に覆われていき

 まるで引き抜かれていくように浮かび上がると、なのはの周囲に張られている巨大な環状の魔法陣の上を周回し始める。
 その数は15を数え先程レザードが用意した氷の塊の数を更に超える量を用意し、十二分に加速して発射準備を終えたビル群は、なのはの合図を待ち望んでいた。

 「いくよぉ!スタァァダスト!フォォォル!!」

 最早星屑とは呼べない代物と化したスターダストフォール、先ずは二つ放たれレザードに迫ると、マイトレインフォースを纏わせたグングニルを右手に持ち
 一気に下から上へ切り上げビルを真っ二つ、続けて左手を向けて直射型のライトニングボルトにて分解した。
 すると今度はビルが三つ襲いかかってきており、レザードはグングニルを振り払い衝撃波にて迎撃、すぐさま急降下して姿を隠そうとした。

 「逃さない!!」

 だがなのははレザードに向けてビルを二つ飛ばし行く手をふさぐと、今度は五つレザードに向けてビルを放つ。
 一方で行く手をふさがれたレザードは、足下に巨大な魔法陣を張り魔力を込めていた。
 そしてビルがレザードに迫り直撃しようとした瞬間、魔法陣から巨大な骨の両手が現れ次々にビルを払い、砕くと魔法陣から巨大な骸骨が姿を現したのだ。

 なのははその姿に脅威を感じ残りのビルも次々に投げ飛ばすが、巨大な骸骨ペトロディスラプションはいとも簡単に防ぎきり
 むしろなのは目掛けて襲い掛かり、まるで虫でも払い落とすかのようにして右手を振り下ろし、なのはは弾丸のように地上へと叩きつけられた。

 なのはが叩きつけられた場所は大きなクレーターと化し、なのははうつ伏せの状態から起きあがろうとしていたところ
 目の前にあの骸骨が姿を現し、その巨大な両拳が餅でもつくかのよう何度も振り下ろされていく。
 しかしなのはは大型のラウンドシールドを張って攻撃を防いでいたが、攻撃の嵐は一向に収まらず、クレーターは更に大きくなり周囲の建物はその振動により崩れていった。

 その時である、骸骨の動きが止まり大きく口を開けると灰色の煙を吐き出し、周囲を包み込んでいく
 煙には魔力による衝撃波が混じり合っており、触れたもの包まれたものを破壊する作用を持っていた。


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最終更新:2010年02月26日 18:49