――歪みの神より生まれし異形の巨人は死せる王の血肉を喰らい彼の翼を獲ん――

   ――翼を獲し巨人は彼の地を滅し、機械仕掛けの女神が地を産み、無限の欲望は法を創り、楽園へと到る――

           ――楽園に至りし時、歪みの神は女神と共に翼を駆り天を目指す――


                           リリカルプロファイルif
                                創造


 時は遡り、ミッドチルダ全土を巻き込む今回の戦い機動六課陣はヴァルハラとゆりかごの動きに注意しつつ
 ガジェット及び不死者並びにアインヘリアルとの戦いに勤しんでいた。
 ゆりかご周辺ではナンバーズとエインフェリアが激戦を繰り広げ、ヴァルハラは既に中央区画まで進軍しており、
 地上本部壊滅の際の傷跡が未だ残るこの地でヴァルハラからの一斉放射を確認、周囲は瓦礫と化した。

 今回の作戦の指揮を任されている機動六課部隊長八神はやて、彼女の下に信じられない情報が届く。
 その情報とは本局に展開されていたアルカンシェル隊が一瞬にして全滅、
 同時に二つの月の軌道ポイントに巨大な建築物が発生、アルカンシェル隊の全滅はこの建築物からの攻撃ではないかと推測、
 更に建築物にはエインフェリアのイージスとミトラの姿が目撃されており十中八九、神の三賢人の仕業と推測された。

 本局はヴァルハラの壊滅を優先とし機動六課陣の最高戦力を投下を要望、
 はやてはこれを受け入れ暫くしてヴァルハラの姿を肉眼で発見すると、ヴァルハラは音を立てて崩れ去り瓦礫の山と化した。
 その上空にはナンバーズらしき者が存在しその中にレザード、そしてスカリエッティの姿があり、
 ヴァルハラを破壊したのは両名と判断、早速ターゲットを二人に変え現在に至る。

 瓦礫の山を中心に広げられた機動六課陣、一方この状況に対しレザードは手筈通りの行動を促し
 それぞれは割り当てられた行動を行うため分散した。

 「逃げる!?」
 「そうはさせない!!」

 フェイトはなのはの言葉に合わせるように行動スカリエッティに狙いを定め迫るが、
 レザードが立ちふさがりフェイトは苦虫を噛み締めながら後退りした。

 「残念ですが…ドクターの後を追わせる訳には行きません」
 「くっ!!」

 レザードから放たれる圧倒的な威圧感はこの場にいる生き物を凍り付かせるには充分すぎる圧力があった。
 誰もが動けず冷や汗を垂らす中ただ一人、なのはだけが力強くレザードを睨み付け声を荒らげた。

 「ヴィヴィオは!今ヴィヴィオはどうしているの!!」
 「ヴィヴィオ?あぁ、あの“鍵”の事ですか…そんなに姿を確認したいのならお見せしましょう」

 レザードは大画面のモニターを全員が閲覧できる高さで浮かび上がらせる。
 そしてモニターを起動、画面にはゆりかご内の起動室が映し出され其処にはベリオンが佇んでいた。
 すると徐にベリオンの腹部に映像が寄り音を立てて外装が開き扉のように開き始める、その中身に一同は絶句した。

 「こっこれは……」
 「貴方が望んだモノですよ」

 其処にはかつてヴィヴィオと呼ばれた“者”が、ベリオンの体内に存在する生体ポットの中に仕舞われていた。
 いや…最早“者”として取り扱う事が出来ない程の姿形を成しており、
 裸の状態に両腕両足は消失し変わりに金属の管の束が繋がれ、
 頭部の後頭部分は開かれ脳は剥き出し状態、脳には赤や青のコードが幾つも繋がれていた。
 胸元も大きく開かれリンカーコアが剥き出し状態、しかもレリックと融合しているようで赤く輝き活性化していた。

 その扱いはまさに“モノ”の一言、大きく変わり果てたヴィヴィオの姿に周囲は目を逸らしまたは隠し
 エリオとキャロ、それにフェイトに至っては口に手を当て、込み上げてくるモノを必死に押さえつけていた。

 …そしてなのはは、瞳を見開き幾つもの脂汗をかき、右手で丁度心臓に位置する部分を掴み、抑えきれない衝動を必死に抑え込もうとしていた。
 一方でレザードは周囲の反応に眼鏡に手を当て不敵な笑みを浮かべ楽しんでおり意気揚々に説明を始める。

 ヴィヴィオはゆりかごを起動させる為の鍵、両手足は起動スイッチに用いられ
 二つのレリックと融合させたリンカーコアをポット内の延命・増強・安定を兼ね備えた液体に晒すことで
 活性化を促し起動に必要な魔力を確保、失った手足に繋がれている管を通って配給、
 更に脳細胞に直接情報・命令を流す事によりスムーズにそして安定した攻撃を行えると説明を終えた。

 「まぁ、細胞を基にした起動システム確保も考えましたが、少々面倒であったので…」

 細胞を用いる際はベリオンに積載されているリンカーコアとレリックを用いるが確実性が無い為、此方を選んだという。
 レザードのこの説明はまさに人を命を弄ぶ行為、フェイトは怒りのまま声を荒らげた。

 「貴方という人は…どこまで人の命をバカに―――」
 「人?命?何を言うのかと思えば…これはただの鍵…言うなれば“モノ”です」

 人の形、人の言葉を話せばそれは全て生命体であると言う発想は滑稽であり、また無知であると力強く断言するレザード。
 実体を持つ生命体とは肉体…いや物質のマテリアル、魂と言い変えれる幽体アストラル、
 そして精神…この世界では記憶または情報と置き換えられるメンタルの三要素を含んだ存在、
 ほとんどの生命体は各要素を持ち、神のような実体の無い存在はアストラルとメンタルを一つずつ持っている。
 これはレザードが住んでいた世界では生命の三要素と呼ばれ、術者ならば常識と言える知識である。

 「そっそんな言葉信じられる訳―――」
 「だから無知だという、それに貴様等も目撃している、例えば……不死者」

 不死者はグールパウダーによってリンカーコアを暴走、その際に肉体が耐えきれるように変化した存在、
 その際に精神も抑えつけられてしまうのだが、稀ではあるが強靭な精神により意志を持つ不死者も存在する。
 レザードの説明にティアナはピクンと反応する、何故ならその稀である存在を知っているからだ。

 更に説明は続く、レザードの世界に存在する神の器は神が地上に降りる際、または神の精神が消滅するような事態に用いられる肉の器で、
 その際に器を管理していた魂と精神は消滅するようになっていると。

 「言うなればエルフ…いや神の器はコレと近しい存在、だが器は神によって造られた代用品、そしてコレはその代用品以下!」

 ヴィヴィオは肉体と肉体に宿る記憶のみの不確か不完全な存在、それもそのハズ、
 レザードは神の器であるエルフを参考にした訳ではなく、エルフと人を材料にして造られるホムンクルスを参考に造られているからだ。
 当然この世界のホムンクルスとは名ばかりの異なる存在、だが共通点があるそれは魂が存在しないと言うところ。

 「つまり其処にいるホムンクルスもまた魂の無い器に過ぎん、同じ意味で残滓である貴様等も、プログラムである貴様等もだ」

 レザードは次々にスバル、エリオとフェイト、そしてヴォルケンリッターの面々を指さす。
 如何に知識を得ても如何に知能があっても、造られた物である事には変わりがない。
 それだけではない、能力有無によって人々は簡単に手のひらを返す、コロコロ変わる変わり玉のように。

 「だから解放しやろうというのだ、貴様等も人間として生きる事が出来るのだぞ?その意味…分かるであろう……」

 レザードの言葉に静かに佇む一同、フェイトはオリジナルとは異なる為に母親から虐待を受け育った。
 エリオは代用品として造られあっさりと手放された、その後の周囲の物珍しい目線を受けて育ってきた。
 スバルも同じだ、医療センターで検査を受ける度に嫌な思いをしてきた、真摯に対応してくれたのは一人だけだ。
 ヴォルケンリッターの面々は今まではやて以外は例外無く道具として扱われてきた、
 割り切ってきていたが…やはり気持ちのいいものではない。

 「そして…同時に能力の有無による差別も消え去る!」

 この言葉に更に静かになる、なのはは重傷を負った際、最初に放たれた言葉が罵声であった。
 当時の上司は魔法が使えない人物でよくヴィータと口論していた、魔導師を快く思っていなかったのだろう。
 キャロは類い希なる才能を疎まれ、また制御出来ない巨大な力の存在に周囲から冷ややかな目線を受けていた。
 ティアナは兄の死を上司達に貶された事があった。
 皆は多かれ少なかれ蔑まれてきていた、故かスカリエッティがそう思うのも無理はない…
 …そう思った矢先、一人の男が言葉を口にした。

 「誰もそんな事、頼んじゃいねぇぞ」

 アリューゼである、凛とした…そして一切動じない瞳でレザードを睨みつける。
 人生、生きていれば嫌なことなど一つも二つも…いや幾つもある、それはこの先にも幾つもあるだろう、
 だからといって道を外してまで逃げる必要があるのか?そうまでして逃げないと、いけないものなのか?

 「確かに辛いときはあるわ…でも逃げてるだけじゃ進めはしない」

 次に言葉を発したのはメルティーナ、ありきたりな言葉であるが人は一人ではない、
 頼れる仲間、友人、隣人、恋人、動物だっていい、一人で悩むより遙かにまし。

 「それに魂があろうとなかろうと、そんな小さな子供にあんな仕打ちをするアンタの方がよっぽど信用できないわ!!」

 メルティーナの一言に目を覚ます一同、あの可愛らしかったヴィヴィオがあんなむごい姿となった。
 それを実行したのは誰でもないレザード、結局彼も造られた者を軽視している。
 詭弁…自分の罪を正当化したい、ただそれだけの為にあんな事を口走っただけに過ぎない。
 機動六課陣は先程とは打って変わって目つきが変わり、威圧感が周囲に充満し始め、その様子に呆れた表情で見下すレザード。

 「なるほど…誰も賛同しないという事か……ならば――」

 眼鏡に手を当て不敵な笑みを浮かべ佇むと、今度は一歩前に足を突き出し右手に持つグングニルを水平に構える。

 「我はひたすら、欲望の赴くままに…行動するのみ!!」

 今此処に…最後の一戦の火蓋が切って落とされた。



 その頃、落ち込み体育座りで茫然自失しているルーテシアの下にチンクが姿を現していた。
 ルーテシアの瞳に生気は無く生きた屍状態、その痛々しい姿にチンクはそっと肩に手を置く。

 「チンク…ガリュー死んじゃった……」

 それだけではない、目の前でオットーも命を失った…親友と形見、両方を同時に失った故に絶望と言う奈落の底に叩きつけられていた。
 チンクはそんなルーテシアの気持ちを汲み取りゆっくりと膝を付き同じ目線で立つと優しい声で言葉を紡ぐ。

 「大丈夫、ガリューはルーテシアを護るために一緒にいる」
 「気休めはよして」

 死んだ者が身を守る事など出来ない肉体が無いから…失った命をすくい上げる、そんな事は不可能…ルーテシアはチンクに目を合わせずに言葉を紡ぐ。
 とその時である、ルーテシアの耳に聞いた事がある声を耳にする、それはルーテシアがよく知る声だった。

 「ルールー、ボクなら此処にいる」
 「オットー!!――――?!」

 振り返ると其処にはチンクの体からひょこんとオットーが顔を出しており、目を丸くするルーテシア。
 チンクの話ではオットーだけでは無くノーヴェ、ウェンディの魂も存在しており、
 精神集中によって魂を選別、具現化させる事が可能であると説明した。

 「だから今此処でガリューの魂を具現化させる」

 そう言うやチンクはその場で目を閉じ静かに回転し始め精神集中を行う。
 するとルーテシアの周囲に紫色に輝く光の球体が姿を現す、それはまるでルーテシアを守っているように思えた。

 「これがガリューの魂だ」
 「これが……」

 ルーテシアはガリューの魂に触れその暖かみを感じる、死してもルーテシアの事を思い護るという意志それが暖かさの正体なのかもしれない。
 そして…チンクはマテリアライズを開始する、魂は更に輝き周囲を照らすと形を成しルーテシアの前にガリューが姿を現す。

 「ガリュー!!」

 復活したガリューの姿を目の当たりにしたルーテシアは飛びつくように抱き付き、ガリューもまたルーテシアを優しく受け止める。
 ルーテシアの瞳からは大粒の涙が零れ落ち大きな声で泣く、それは歓喜にも安心にも似た光景であった。
 そんな光景にチンクの中ではウェンディが止め処なく涙を流して感動、ノーヴェも安心した表情を浮かべ、チンクもまた静かに佇んでいた。

 一方自力でゆりかごに戻ろうとしているギンガ、だが戦いのダメージが蓄積している為か思うように体が動かず帰還には苦労していた。
 すると其処に上空からトーレとセッテが姿を現しギンガの肩を取る。

 「二人とも……」
 「放って置く訳にはいくまい」

 基礎は違えど同じ仲間であり義理の姉妹を放って置く事は出来なかった。
 ギンガは二人に感謝の弁を伝えると安心したのかそのまま意識を失い、自分の身を二人に預けた。
 その寝顔は幼く見え二人は苦笑いを浮かべながらそっと飛び立ちゆりかごへと向かった。



 いち早くゆりかごに戻ったスカリエッティとクアットロ、そして久し振りに会ったウーノと握手を交わすドゥーエ。
 モニターにはゆりかごに向かっているチンク組とトーレ組、
 それにドラゴンオーブの攻防戦が映し出されており、スカリエッティは腕を組んで見守っていた。

 現在ドラゴンオーブは次元跳躍攻撃により各管理局支部を破壊し始めていた。
 一方で管理局側は早急にドラゴンオーブの破壊を指示し隊を派遣するが、
 スカリエッティ側の戦力となったエインフェリアのイージスとミトラの防衛力に成す術が無い状況が続いていた。

 「ふむ、ドラゴンオーブもエインフェリアも十分な成果を上げているようだね」
 「そういえばウーノ姉さん、ディードの様子はどうなのよ?」
 「今は治療カプセルに入っているわ」

 ドゥーエの質問に簡潔に答えるウーノ、自力で辿り着いたとはいえ傷口は深く
 到着後すぐさま治療カプセルに入れ、今現在はアギトが見守っているという。

 そんな報告の中、スカリエッティはモニターをある映像に切り替える、其処にはレザードが機動六課陣と対峙している様子が映し出されていた。
 だが未だ開戦している様子はなく、威圧感が画面越しからでも感じるほど静寂に満ちていた。

 「彼女達の相手はレザードに任すとして、此方はそろそろ行動を開始しよう」

 スカリエッティは映像を映したままウーノに指示を促し、ウーノは了解すると早速ゆりかごの能力を発揮させるコードを起動させた。
 これによりベリオンの体内に保存されているヴィヴィオから幾つか気泡が浮かび上がり、リンカーコアから虹色の魔力光が発生、
 虹色の魔力光はベリオンを包み込み彼のリンカーコアを刺激、今度は動力炉を包み、
 それを皮切りに魔力光はゆりかご全体に伝わり全体を覆い込んだ。

 聖王の鎧、ヴィヴィオが持つ固有資質で攻防一体の能力である。
 だが起動はともかくレリックウェポン化したとはいえヴィヴィオの魔力だけではゆりかごを聖王の鎧で包み込む事は出来ない、
 其処でベリオンと融合させる事で体内に搭載されているリンカーコアと、ゆりかごの動力炉の出力を合わせる事で使用可能となったのだ。

 「起動確認しました」
 「ではこの世界を新たな世界へと創り変えよう」

 スカリエッティの宣言を機にゆりかごは砲撃を開始、虹色の直射砲が山を海を大地を雲を空を貫き破壊が始まった。
 そしてゆりかごを警護するガジェットもまた行動を活発化、森を林を家をビルを街を破壊し始めた。
 まさに終焉と呼べる光景、避難所に集った住民は互いに抱き合いながら恐怖に震え絶望の淵に叩き込まれていた。


 時は少し遡りレザードと機動六課陣が対峙し膠着状態が続く中、先に動いたのはシグナムとアリューゼ、
 左右から正面に向かいカートリッジを二発使用、レヴァンティンは炎に包まれバハムートティアは熱せられた金属のように真っ赤に染まり出す。

 「紫電一閃!!」
 「ファイナリティブラスト!!」

 振り下ろされた二つの強力な一撃、だがレザードはグングニルを水平に保ち両端の刃にて、いとも簡単に受け止める。
 必殺の一撃を容易く防がれシグナムは苦虫を噛む表情を浮かべる中、
 アリューゼは動じる事無くカートリッジを一発使用、刀身に黄色い付加魔法チャージを発生させて再度振り下ろす。
 これには流石のレザードも押され地面スレスレで止まり上空を見上げると、今度はシグナムが飛竜一閃の構えをとっていた。

 「飛竜―――」
 「そうはさせん!!」

 レザードは勢い良くグングニルを投げつけシグナムの腹部を貫き、呻き声を上げながらうずくまり、苦しみ悶えているシグナム。
 一方でアリューゼが再度突撃し突きの構えのまま襲いかかるが上空へと回避、攻撃は大地を削るだけに終わり
 上空へと避難したレザードは不敵な笑みを浮かべ、アリューゼに向けてダークセイヴァーを撃ち放つ。

 だがアリューゼの前にザフィーラが立ちふさがり渦を巻く強力な障壁を張ってコレを防ぎ、
 ザフィーラに合わせるように地上からメルティーナのスティンガースナイプ、ティアナのクロスファイアをそれぞれ二十近く撃ち放ち
 計四十前後の誘導性がある魔力弾がレザードに襲い掛かるがリフレクトソーサリーにて全てを跳ね返した。

 二人は跳ね返された魔力弾を必死に相殺する中、シグナムに突き刺さったグングニルを呼び戻し
 そのままザフィーラに投げつけて障壁を打ち破り、ザフィーラの右腕を貫き串焼き状態に変えた。

 その頃スバルはレザードに向けてウィングロードを伸ばし滑走、
 カートリッジを一発使用してリボルバーキャノンの準備を始める。

 一方レザードがいる位置より更に上空ではフリードリヒに乗ったキャロとエリオの姿があり
 キャロの支援魔法を受けたエリオはフリードリヒから飛び降り垂直落下の姿勢でカートリッジを一発使用、
 刀身に稲妻が走り落下速度を維持したままレザードに迫る、奇しくもこの時スバルの攻撃も準備を終えており互いにタイミングを合わせ攻撃を仕掛けた。

 「リボルバァァキャノン!!」
 「サンダァァレイジ!!」
 『ストライクドライバァァァ!!』

 スバルのバリア破壊とエリオの斬撃が交差するストライクドライバーがレザードに襲いかかるが、
 当のレザードは移送方陣にてこの場を移送、二人の攻撃は虚しく空を切った。

 「シャマル!!」
 「出ました!此処から二時の方向です!!」

 だが既に先を読んでいたはやてはシャマルに予めレザードの移送先を検索を指示、
 シャマルは自信ありげに結果地点を指し暫くして魔法陣が現れ始め、
 はやてはヴィータとフェイトを派遣、レザードの姿を確認するや間髪入れず攻撃を仕掛ける。

 「うりゃあああ!!」
 「はあぁぁぁぁ!!」
 「何っ!?」

 移送後いきなり、右から来るヴィータのラテーケンハンマーと、左から来るフェイトのライオットザンバーにレザードは戸惑う姿を見せるが
 すぐに冷静さを取り戻し両手にシールド型のガードレインフォースを張り攻撃を受け止め魔力素が火花のようにチリチリと散る。

 『なのは!!!』
 「準備完了!いつでもいけるよ!!」

 二人の合わさる声の先には地上からレイジングハートを向け足下に魔法陣張り巡らせたなのはの姿があり、
 レイジングハートの先端と末端部分に環状の魔法陣が張られていた、これはなのはがもっとも得意とする魔法である。

 「ディバイン!バスタァァァ!!」

 放たれた桜色の直射砲ディバインバスターは真っ直ぐレザードに向かい、
 鍔迫り合いをしていたヴィータとフェイトはタイミングを合わせて離脱、レザードに直撃するハズであったが
 既に張られた右のガードレインフォースをディバインバスターに向けてコレを防ぎ難を逃れた。

 「まだまだ詰めが甘いですね」
 「それはどうかな? 」

 なのはの意味深な言葉にレザードは周囲を確認すると、遙か上空でははやてがフレースヴェルグの準備を終え今まさに撃ち放とうとしていた。

 「こん時を待っとった!!いくでぇぇぇ!!」

 撃ち放たれた銀色の矢、レザードは険しい表情を浮かべる中、左のガードレインフォースを向け攻撃に備える。
 そしていざ直撃するとレザードが考えていた以上の威力があり、衝撃が辺りに響き渡る中、レザードのシールドに亀裂が走り始める。

 「…ほぅ、これほどの威力があるとは」

 レザードがはやての攻撃を評価する中、シールドが砕け散りフレースヴェルグはレザードを飲み込み大地に激突した。
 辺りは土煙に覆われ姿を隠す中、レザードはゆっくりと土煙から姿を現し上空へと上っていった。

 「…思っていたより、やる」

 素直に評価するレザード、実際のところ他のメンバーの手を借りたとは言えレザードのシールドを砕くのは容易ではない。
 一致団結、彼女達のレザードに対する怒りが力を増しているのかもしれない。
 とは言え全力を出せば彼女達の団結力も稚技に等しい…そうレザードは考えていると、ゆりかごからの連絡が入る。

 今し方ゆりかごは聖王の鎧を起動させ各地の破壊を開始、現在は南下しているという。
 一方はやての下にも連絡が伝わっており、他の局員が対応するがガジェット及び不死者に阻まれ
 またはゆりかごの砲撃に苛まれ思うようにいかないのが現状であった。

 「仕方ない、ゆりかごを止める為に此方の戦力を―――」
 「我が…それを許すと思うのか?」

 はやての作戦を耳にしたレザードは魔力を解放、ザフィーラの右腕に突き刺さるグングニルを手元に戻し
 本型のネクロノミコンに変え一枚ずつページが飛び回りふわりと宙に浮く
 すると白金に輝く魔力光が辺りを照らし威圧感は先程以上、モードIIIカタストロフィを起動させた。

 「これが…レザードの本気!!」
 「その通り、さて…暫くの間、相手をしてやろう!!」

 その威圧感は今までとは比較にならない程、蛇に睨まれた蛙とはまさにこの事である。
 誰もが一歩も動けず威圧されている中、レザードは左手をなのはに向け親指と中指でパチンッと音を奏でる。

 次の瞬間、足下は大爆発を起こし爆発に巻き込まれたなのはが宙を舞い、
 なのはを助ける為にフェイトが向かい、一方でヴィータが目の色を変えカートリッジを二発使用、
 グラーフアイゼンをギガントフォルムに変えてレザードに突撃する。

 「ギガント!ハンマァァァ!!」
 「ガードレインフォース!」

 だがいとも簡単にシールド型のガードレインフォースで防がれ、魔力素が火花のようにチリチリと散り
 ヴィータは更にカートリッジを更に使用して威力を高めるが一向に砕ける様子を見せていなかった。
 しかもレザードは涼しい表情を浮かべて見上げており、目の当たりにしたヴィータはさらに怒りがこみ上げていた。
 そんな状況のレザードから思わぬ言葉がヴィータの耳を貫く。

 「ふっ…八年前の再現には至らなかったか…」
 「て…テメェ!あの時の事知ってんのか!!」
 「当然だ、あの仕掛けを仕掛けたのは我だからな!」

 ヴィータの手が震える、あの時の惨劇、手についたなのはの血…そしてなのはを傷つけたあの兵器…
 …全てはレザードが仕組んだ事…ヴィータは怒りの感情に満ち溢れ感情のままカートリッジを全て使用、
 大きく振り上げグラーフアイゼンのリミットブレイクであるツェアシュテールングスフォルムに切り替え
 特徴的な巨大なドリルが音を立てて回転し勢いが乗ると一気にレザード目掛けて振り下ろした。

 「ツェアシュテールングス!!ハンマァァァァ!!!」
 「グングニルよ!あの鎚を貫け!!」

 迫り来るヴィータの一撃に対し左人差し指を向けレザードの周囲で輝く光が集まり出しグングニルに変わると、
 横回転しながら加速し一陣の矢の如く迫りその先端と激突、その衝撃は周囲の建物を揺らす程強力であった。

 「ほぅ…流石はアームドデバイス、中々の硬度…だが我は言ったハズだ、材質が違うと!」

 次の瞬間ツェアシュテールングスは砕け散りヴィータの手には柄の部分のみ残された。
 グングニル…いやネクロノミコンはオリハルコンと呼ばれる材質で出来ている、
 レザードの世界でも神の金属と呼ばれる物で、軽く…そして硬度のある金属なのである、故にヴィータのグラーフアイゼンは砕け散ったのだ。
 ヴィータは一瞬の出来事に呆然としていると、その隙をついたレザードがヴィータの右隣に位置付け魔力を纏った右手を向けていた。

 「こうなってしまえば鉄槌の騎士も形無しだな!」
 「ヴィータ!逃げ―――」

 シグナムの叫びも空しくヴィータはライトニングボルトの前に消え去り、地上に向け雷鳴が木霊する。
 そして跡地にはバリアジャケットの一部が黒く焦げ、体の至る所から白い煙を放ち白目を向いたヴィータの姿があった。

 この光景にシャマルの治療を受けているシグナムが立ち上がる、先程の攻撃の痛みは完治していないが、
 目の前で仲間が倒れ何もしない事が出来る程、今のシグナムは冷静になる事は出来なかった。

 「待ってシグナム!まだ――」
 「これだけ痛みが取れれば十分だ!」

 そのまま飛び立とうとした時、レザードの下に一人の人物が迫る。
 アリューゼであった、しかしその姿は二重に見え分裂しているように思えた。
 そしてレザードの頭上で刀身を振り下ろすが、何時の間にか戻っていたグングニルに押さえ込まれた。

 「ほぅ…レヴェリーか」

 レヴェリー、自身の分身を造り動きをトレースさせる幻術であるが、分身もまた本体の30%の威力を誇り幻術としては高度な魔法である。
 それを一撃受けただけで見抜いたレザード、だがアリューゼは気にする事無く再度攻撃を仕掛け
 左払い、突き上げ、振り下ろしと次々に打ち出すがその全てをグングニルで防がれてしまう。

 「対した剣圧だ」
 「よく言う!簡単に受け止めやがって!!」

 アリューゼの腕はレザードより遥かに逞しく本来であれば容易に防ぐ事は出来ない、
 だがレザードの肉体は特別、神の器たるハーフエルフの肉体しかも神王の器である為か、
 または自身の力を存分に振るえるよう調節されている為か、本来の肉体とは異なる力を持っていた。

 とは言え元々魔導師である為、魔力で戦う事を得意とし槍や接近戦に疎いレザード、
 すると其処にシグナムが加勢し流石のレザードも達人二人の剣捌きに防戦一方、バリアを張って攻撃を受け止めた。

 「流石だ…貴様等ならばこの力存分に振るえようぞ!」
 「なっなんだ?!」
 「レザードから赤い魔力だと!?」

 湯気のように赤い魔力が立ち上り戸惑いの色を見せるアリューゼとシグナム、
 そして赤い魔力はグングニルにまとわりつくと光を放ち、刀身は赤く染められていた。
 マイトレインフォース、レザードが持つ武器と一撃の威力を1.5倍高める効果を持つ支援魔法である。

 「さて…反撃と参りましょう!!」

 レザードが不敵な笑みを浮かべる中、騎士の本能かグングニルに危険を察したシグナムはカートリッジを三発使用、
 紅蓮の炎に満ちた紫電一閃を振り下ろしバリアを破壊、そのままレザードに迫るが
 グングニルを振り上げレヴァンティンと激突、一瞬にして砕きガラクタに変えた。

 だがレザードの攻撃は終わりではない、次にアリューゼ目掛けてグングニルを投げつけ
 今までとは異なる程の加速された凶刃は心臓に突き刺さり、アリューゼごと地面に激突した。
 一瞬の事で呆気にとられていたシグナム、その顔に右手を向けアイシクルエッジを唱え
 突き刺さる氷の刃を中心に凍り付きそのまま自然落下、地面と激突すると粉々に砕け散った。

 「脆い…騎士とは名ばかりか……」

 瞬く間に三人を撃破したレザード、既に彼の魔法には非殺傷設定などされて無く受ければ良くて即死、悪ければ致命傷を負うことになる。
 目の前に突きつけられた絶対の恐怖…死、スバルは副隊長達の死を前にして震えが止まらなくなり
 また自分の無力さを噛みしめ嘆いていた、すると其処にレザードが静かに降り真っ直ぐスバルの下へ歩み寄る。

 「くっ……来るな…来ないで!!」

 レザードが一歩歩み寄る度にスバルは一歩後退りする、それ程にまでスバルは恐怖をしていた。
 一方レザードはスバルの恐怖でひきつった顔を目にし、含み笑いを浮かべるも姉との違いに呆れた様子を見せていた。

 「やれやれ…今の貴様の姿を見たら姉は悲しむ……いや嘲笑うだろう」
 「姉……ギン姉!?」
 「そうだ、今は我々の処にいるのは知っているだろう」

 ギンガの誘拐、その現場に居合わせていたスバル、あの時の悲しみは今でも胸に潜めている。
 今ギンガは元気にしており、スカリエッティの配下としてナンバーズと暮らしているという。

 「そんな…ギン姉が……」
 「何故ならナンバーズの中には貴様の妹もいるからな」
 「いっ…妹!?」

 ナンバーズの一人ノーヴェ、彼女の細胞はスバル、ギンガと同じクイントの細胞で造られた存在、
 言うなれば腹違いの妹、ギンガはノーヴェを妹として可愛がりノーヴェもまた新たな姉として受け入れているという。

 「貴様だけ蚊帳の外と言うわけだ」

 だが、今此処で仲間達を裏切り此方に付く気があるのなら喜んで向かい入れ、
 また魂が欲しいと言うのなら与えてやると優しい口調で言葉を並べるレザード。
 その言葉にスバルは心が揺れる、最初はスカリエッティからギン姉を助け出すつもりであった。
 だが目の前で起きている現実、自分より遙かに強い副隊長達の死、それを容易く行ったレザードの実力、
 適わない…どれだけ自分を鼓舞しても震えが止まらない、本能で恐怖しているのだ。

 「さぁどうする?この手を取るかスバル…」
 「わっ私は………」

 差し伸べられたレザードの左手、これをとればギン姉…そして妹であるノーヴェと仲睦まじく暮らせる。
 だがそれはミッドチルダを機動六課の仲間を見捨てると同義、
 どちらも捨てられない選択にスバルは戸惑いを見せているとレザードの背後を橙色の魔力弾が螺旋を描いて襲いかかり
 レザードはバリアを張ってこれを防ぐ、その先にはティアナが銃を構えていた。

 「スバル!気をしっかり持って!!」
 「ティアナ………」

 レザードの言葉が全て真実であったとしてもレザード達が行おうとしている事を正当化させる理由にはならない。
 それにギンガは洗脳されている可能性もある、だとすれば洗脳から解放出来るのは真の妹たるスバルしかいない!っと力強く答えた。

 「絆はそう簡単に断ち切れないんだから!!」
 「っ!!そうか…その髪の色、その武器、技、何処かで見た事があると思えばあの時の男と似ている」
 「なっなに!?」

 五年前、ある不死者が研究所から逃げ出しレザード自らが赴き抹殺した。
 その時目撃者として管理局の局員がいた、ティアナと同じオレンジの髪に二丁拳銃を扱う男、
 少々…そう不死者抹殺より少々手間取ったが、その男の抹殺も一緒に行った事があったと手のひらをポンっと叩き思い出す。

 「そう言えば、集団暴行に見せかける為に遺体を切り刻んだ記憶があるな…」
 「アンタが…アンタが兄さんを!!」

 今まで仇などいないと思っていたティアナの前に突然現れた仇討ちに、
 髪をふわりと立たせ持っているデバイスが振るえるほどに握りしめ
 今までスバルにも誰にも見せたことのない瞳に怒りを宿したティアナ、
 …いや最早怒りでは無く殺意、その感情はカートリッジ全てを使い、足下に魔法陣を張りファントムブレイザーの構えをとらせた。

 「兄さんの仇ぃぃぃぃ!!!」

 感情のまま怒りと殺意が込められたファントムブレイザーは放たれ激流のようにレザードに迫る、
 だがレザードは涼風を感じるかのように動じることなくバリアを張り攻撃を受け止め、
 また自身の足下に広域攻撃魔法特有の多重環状魔法陣を張り巡らせた。

 「セラフィックローサイト」

 右手を向けた先に光が集まり巨大な光の直射砲に変わるとティアナの渾身の一撃を掻き消し
 そのまま吸い込まれるようにティアナを飲み込み、遠くにそびえ立つ山に激突、山は一瞬にして消え去り
 またセラフィックローサイトが通った場所は大きく削られ草木一つも残らない更地と化していた。

 「兄妹揃って愚か者めが……」

 レザードの放った何気ない一言、それはスバルを恐怖から解放させた。
 スバルはティアナの決意を知っている、兄の死を意志を引き継ぐ事により乗り越えた。
 それはまたティアナに大きな試練を与える事にもなるが、決意を胸に秘めていれば乗り越えられた。

 スバルもそうだ、決意を胸に秘めていればギンガを救う事だって出来る、その障害が例え大きくても乗り越えられるハズ。
 だが奇しくもそれに気付かされたのはティアナの命を懸けた特攻、無駄には出来ない…例え自分の腕が使い物にならなくても…

 「私は…」
 「ん?」
 「私はもう迷わない!!」

 決意を秘めたその瞳は金色に輝き全身から魔力が溢れ出しカートリッジを三発使用、
 A.C.Sドライバーを起動させ更に右拳には自身のISである振動破砕が発動していた。
 そして突撃、躊躇無く拳を振り下ろすがレザードのバリアに苛まれる。
 ところが振動破砕による振動エネルギーがバリア全体に伝わり亀裂が生じ暫くして砕け散った。

 「なんだと?!」
 「イケる!!」

 振動破砕は四肢から衝撃波を放ち共振現象を起こし相手を粉砕する、“物質”においてはまさに一撃必殺な技。
 そしてがら空きとなった腹部、それを見逃す手は無いスバルは再度振動破砕を行い躊躇無く振り抜きレザードを腹部を直撃した。

  ……だが直撃した腹部は光の粒子と化し貫くと言うより通り抜けた感触を得て拳はレザードの背に出ていた。
 しかもレザードの口元が徐々につり上がり、全く効果が無い事を証明していた。

 「なっなんで!?」
 「残念だが…アストラル体の我の体には通じん!」

 振動破砕は魔法の源である魔力素に働きかけ結び目を解くことで魔法障壁をも砕く事が出来る強力な攻撃である。
 だがそれは物質での話、アストラル体である今のレザードの肉体には効果が無い、ミッドチルダでは幽体が研究されていないからだ。

 つまりこの世界でレザードを傷つける者は誰もいない、そんな絶望な事実にスバルの瞳孔が開く頃、
 張本人であるレザードは不敵な笑みを浮かべながら左手でスバルの右腕を掴む。

 「なっ何を!!」
 「知れた事…その右腕についているデバイスを貰う!」

 次の瞬間、右手にグングニルを携え大きく振り下ろし、右肩ごと切り落とし
 スバルは左手で傷口を押さえてうずくまり、傷口からは稲光がショートしているように放っていた。
 その姿に高笑いを浮かべ移送方陣にてスバルの右腕をゆりかごに転送、終えるとうずくまるスバルに右手を向けた。

 「では死んで…いや、壊れて貰おう!」

 スバルは最後の抵抗にレザードを怒りの眼で睨み付け悔しがる表情を浮かべていると
 後方の空間に円上の鏡が現れ糸が二本飛び出しスバルに巻き付くとそのまま引きずり込まれ、次に現れたのはシャマルの腕の中であった。

 旅の鏡にてスバルを引き寄せた結果である、そしてシャマルの前にはザフィーラが立ちふさがり障壁を張りつつ
 右拳を振り下ろし鋼の軛を打ち出しレザードを縛り付けようとするが、
 レザードはグングニルで薙払い衝撃波が走り一瞬にして鋼の軛を振り払いザフィーラの障壁も打ち破った。

 「では、今度こそ死んで貰おう――」

 とその時、上空から金色の閃光と地上から黄色の閃光が走り、
 それに気が付いたレザードはザフィーラに向けていたグングニルを上空に左手を地上に向けシールドを張り閃光を受け止める。
 閃光の正体、それはエリオとフェイトであった、フェイトはなのはをキャロに任せ
 真ソニックフォームとライオットザンバー・スティンガーを発動させ
 エリオはバリアジャケットの上着を脱ぎ足下を電気で覆う事で加速を促していた。

 「ふっ…そんなに死に急いでいるのならば先に残滓達を片づけるとしよう」

 余裕のある表情でフェイトを見上げるレザード、その態度に二人は苦虫を噛むような険しい表情を浮かべ、一度レザードから離れ再度攻撃を仕掛ける。
 上空からのフェイトの攻撃、地上からのエリオの攻撃、二人の息のあった攻撃にレザードは全方型のガードレインフォースに切り替え攻撃を防ぐ。
 だが二人の怒濤の攻撃は止まらずエリオの紫電一閃、フェイトはスティンガーを合わせたカラミティに切り替え一気に振り払った。

 この攻撃によりバリアは破壊され二人の攻撃がレザードに直撃するが、アストラル体であるレザードの肉体には効かず、受けた場所は光の粒子と化していた。
 するとレザードは右手をフェイトに左手をエリオに向け三種のバインド、レデュースパワー、レデュースガード、プリベントソーサリーで縛り上げ、
 そしてプリベントソーサリーの効果によりバリアジャケットが強制解除、二人は制服姿となった。

 「くっ!こんな事で!!」
 「無駄だ…貴様等如きにこのバインドは外せん」

 そのまま二人を置いてザフィーラ達に歩み寄り右手を向けると足下に多重環状魔法陣を広げ
 雷が発生し徐々に大きくなると竜骨の形を象っていた。

 「ブルーディッシュボルト」

 放たれた雷の竜骨はザフィーラの盾を瞬時に砕き、ザフィーラの身スバル、シャマルを飲み込み天高く上り
 雲に直撃すると強力な稲光を放ち辺りを照らし雲を晴らし消滅した。

 続いてフェイト達に体を向ける二人の目には絶望の色は無く、その瞳が気に入らないレザード、
 どうにかして絶望の色に染められないものか…とその時一つの案を思い出し不気味な笑みを浮かべる。

 「まずはその小さい方だ」

 レザードは右人差し指を向け刃と化したページを飛ばしエリオの両腕脚を斬りつけエリオに激痛が走る中、
 今度は突き刺しエリオの体を浮かせフェイトが覗ける位置に付ける、そして一枚ずつ急所を外しながらページを飛ばしていく。
 その度に刻まれ貫かれ激痛が走りその都度叫び声を上げるエリオ。

 「うぁああああああ!!!」
 「良い声で鳴く、楽器としてはまずまずだ」

 更にページを飛ばし両肩・頬・右目・左わき腹・耳を切り裂き、とうとう左手首と右足首が切り落とされる。
 激痛に大量出血、致命的な傷…制服は黒ずんでいるかのように血で染まりあげ、既に声を上げる事すら困難、いわゆる瀕死である。

 それを目の前でまざまざと見せつけられるフェイト、顔や服はエリオの返り血を浴び赤く染まり
 エリオの変わり果てた姿に真っ青と血の気の引いた表情に瞳は絶望の色を宿していた。

 「そうだ!その表情が見たかったのだ!!」

 レザードはフェイトの顔に指を指し喜びに満ちた表情を浮かべる、
 その表情こそレザードが求めるもの…そしてそれを堪能した以上、用が無くなりグングニルにて腹部を貫き
 更に縦に回転、エリオは二つに分断され溢れ出した血はフェイトを染め上げた。

 「あ……ぁあ………ぁあああああああ!!!」
 「壊れたか…まぁいい」

 既に興味を無くしたレザードは先程と同様に魔法陣を広げフェイトを中心に炎が囲むように走る。

 「灰も残さん、イフリートキャレス」

 次の瞬間、指をパチンッ鳴らし炎はフェイトに迫り巨大な火柱となって燃え上がる。
 その炎の勢いは痛み熱さを感じさせてくれる暇を与えない程で強烈な熱は周囲に充満した。





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最終更新:2010年05月04日 11:08