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第四十二話『彼女が信じたそれ』


 シリカは森を走り出していた。と言っても、正確にはかなりふらついていた。
 二日酔いの中年より覚束ない足どりだったが、シリカは止まらない。
 頭の傷はかなり致命的で、既に彼女の半身は軽く麻痺していた。
 方向感覚もほとんど狂い(今の彼女の必死さはコンパスの存在を忘れさせていたに違いない)、気も失いかけている。
 そもそも、出血もまだ止まっていなかった。要するに――凄まじい深手だったのだ。
 原住民を殺してから、もう何処まで歩いただろうか? 百メートル、或いは二百メートル?
 このペースでは、この島を全て回る事は出来ないだろう。――もう少し、早く移動しなければ。
 彼女の場合、血が頭から漏れ続け、もう視界が完全にピントのズレたカメラの様に映っていた。
 何が何だか分からないピンボケ画像。何? それは手ブレだって?
 ――それでも、勿論まだ一休み、と言う訳にはいかなかった。


 折りからの銃声(まあ島だ。現場から遠くても僅かながら響いてくる)の連続で、ゲームに乗った人物が存在する事は明確となっている。
 それで余計に焦りと緊張が襲ってきたが、
 構わずファルコン(ちなみに馬鹿でかい亀を背負っていた。まあとにかく)とシーク(ゼルダ、と言う姫が変身している姿らしい)は北へ向かった。
 強大な魔力と殺気の元凶。――ガノンドロフから逃れる為に。

 もう空には立派に太陽が上がっていたし、日光は照らし出していた。
 それでも”死”の恐怖(或いは緊張?)と言うのは絶えず精神を削っていくものだ。

 もしかしたら、そこの茂みから銃口を覗けてこちらを狙っている者がいるかもしれない。
 後ろから、奇襲されるかもしれない。
 そして――いつまで正気を保っていられると?

 ゲームが終わるのは最後の一人になるまで。史上最悪の椅子取りゲーム。グレイト。

 ――いずれ、今共に居る同士とも殺し合わなければならないのか?
 と言うか、それがルールなのだ。もう結論は出ている。
 脱出も恐らくこの悍ましい首輪がある限り不可能。
 そもそも、”デイジー(緑の帽子がそう叫んでいた)=何もしていないのに処刑”の例もあった様に、あのポーキーの気まぐれでいつ殺されるのかさえも――
 ――ここにいる全61人の参加者の命はポーキーの手の中にあると?
 脳裏に高笑いするポーキーの顔が浮かび――それを打ち消した。

 二人は北に向かって(ガノンドロフが南から近づいている以上、そうしざるを得ないのだが)移動していたのだがファルコンが亀を背負っている分、動きは鈍くなっていた。
 それでも、進まなければならない。
 ――生き延びる、と言う最低ラインを越える為、そして、まだ生きている他の参加者を救う為――

 その時、がさっ、と二人(と一匹)から左手の茂みが動いた。
 二人は息を殺し、すぐに戦闘体制に入った。
 一種、やはり緊張と言うものは少なからず走るものだ。
 そして、呆気にとられた。
 動物? いや――

「あ……よかった、生きてた人が居たのサ!」
 シークとファルコンは、不思議そうに互いの顔を合わせた。
 これは――?

「――つまり、そう言う事なのサ。悪魔なのサ、あいつらは」
 マルクと名乗った差し当たり、悪くない性格の動物は自分は殺されかけて逃げてきた事を伝えた。
 真剣に、それを伝えようとしている様子。
 ――これを疑えと?

「話は分かった。危険なのは、メタナイトと言う青いボール、赤いシルクハットを被った鼠、
青い鎧の男、ディディーと言う赤いシャツを着た猿で良いんだな?」
 ファルコンは参加者名簿にチェックを入れながら、確認をとった。
 ファルコンの名簿の『メタナイト』『ディディー』の横には※マークが刻まれた。

 今は関係ない事だが、名簿を見て――つい、思ってしまう。
 この名簿に書いてある自分を除いて60人の名前。
 ――この中で、ゲームに乗った奴は確実に存在する。
 デデデ、ポーラ、レオン、或いはシーダ
 キリが無いのは確かだったが、実際、深刻だったので。

 だが、それでも、仲間は増えている。確実に――


 シリカは木陰から耳を傾けていた。
 もう殆ど頭が稼働していないような状態だったが、”それ”だけはしっかりと聞き取れた。
 メタナイト――? ゲームに乗ったと? メタナイトが? 馬鹿を言うな――
 本当にそうなのか。――違う。メタナイトはこんな馬鹿げたゲームに乗るものか。
 なら、あいつ――マルク、と名乗っていた。
 あいつの言う事は、偽り。
 ――偽りだ!

 シリカ自身、気付いた時には、リザードが飛び出してマルクを押し倒し、デイバックをシリカは奪っていた。
 突然の事――ほんの数秒の出来事だったので、シークとファルコンは驚愕の表情を確実に見せたに違いない。

 シリカはデイバックの口をガチガチとほぼ無理矢理開け――それを取り出した。
 オートオードナンス トンプソン。
 今では現実には見かけづらい、それでも映画には不思議と出る様な、円盤の様な形の物が取り付けられた銃。
 明確に言うならば、その円盤はドラムマガジンと言う装弾部分で、M1モデルだったこれは装填量30発。
(一応マルクのデイバックには付録として二個、ドラムマガジンが入っていた。シリカが気付いたかは、まあともかく)
 更に性能としては、分間700発は発射出来る。独特な発射音から、『シカゴタイプライター』の異名を持つサブマシンガン。

 無論、そんな物で鉛を何発も撃ち込まれたら、一たまりもない。
 要するに、完全に当たり武器。ナイスな事。

「動くな!」
 その約4キロのサブマシンガンを抱えた状態で、シリカは更にそれを構えた。
 サブマシンガンの銃口は鈍く光り、より場を静めるには最適だっただろう(例えマルクの支給品がハズレであろうと、リザードで誰かを脅せた)。
 言った通り、もう誰も動かなかった。
 ――当然、ほぼ逆上していたシリカは本気で引き金を引けた。
 殺気もそれにより、ガノンドロフに匹敵する程だったかもしれない。
「メタナイトが、ゲームに乗ったと言ったな?」
 完全にキレた、その時の様に、シリカは聞いた。
「……君は、メタナイトの知り合いか何かな訳なのサ?」
 少し間を空けてから、マルクは口を開いた。
「ああ」
「残念だけど、メタナイトはゲームに乗ったのサ! 危ないのサ!」
 ――ち、馬鹿じゃないのか?
 それで騙せると? ――あの、メタナイトがゲームに乗る筈が無いのは確かだ。
「信じてよ!」

「メタナイトは……母さんの友人だ、私だってメタナイトの事は理解している!」
 まあ、以前、復讐の為に調べ回ってはいたのであながち嘘ではないが。
 まだメタナイトの事は分からない所もある。だが?
 果たして、マルクの言っている事は――

「頼むから銃を下ろしてくれなのサ! それとも、君はゲームに乗ったのかい?」

 アハ。それで全部わかりました。ということは、あれですね。
 最初から例え狂言であろうと何だろうと、とにかくメタナイトの事を悪く触れ回って、結局いつかは優勝するつもりだったわけですか。
 他のみんなが死んで、メタナイトも死ねば優勝出来ると? なあるほど。それまで何人殺せばいいのか計算でもしてた訳?
 嫌悪感と怒りで、背筋がむずむずした。


 ファルコンは腰に付けていたスパイクロークに手を伸ばしていた。
 マルクとあの少女が話している内に。これを使えば、少女の銃を奪えるかもしれない。
 それを手に取ると、ファルコンは速やかに起動――

 シリカはそれを『銃』だと認識した。そりゃ機械質な物で、しかも今のシリカは視界が不安定なのだ。そこまでは仕方なかったとしよう。
 それっきりだった。
 シリカのサブマシンガンが火を吹き、一塊の鉛の列がファルコンの胸を刔った。
 その時にはそのサブマシンガンの異名の通り、ぱららら、とタイプライターのキーを打った様な音が聞こえたが、ファルコンはそれに気付けただろうか?
 紅い霧が放たれ、ファルコン自身を染めながら、ファルコン自身もそのまま倒れた。ピクリともしなかった。
「何をするのサ!?」
「私を撃とうとした。私にとって、敵になった」
 構わず、シリカはもう一度引き金を引いた。
 もう一度、サブマシンガンから鉛弾を撃ち出されたが、それの銃口はふらつき、シリカの意思とは違う位置に弾丸が撃ち込まれる。
 瞬間、マルクの足の付け根に穴が二つ空き、マルクは「ぎゃっ」と呻きながら、倒れた。

 シリカはもう殆ど失血しており、いつ倒れてもおかしくない状態だったにも関わらず今度はシークにそれを向けた。
「お前は? ――お前は違うな?」
 シークはどうしようも出来なかった。
「違う」と言ったところで、今の少女は理解できるか?
 もしかしたらどう転んでも、もうシーク――ゼルダの命運は尽きたのかもしれない。
 正に八方塞がり。ブラックアウト。

 その時。まさに、その時。
 ドツッ、と釘打ちのような音がすると、シリカのこめかみに何かが刺さった。
 ――矢の様なものが生えていた、けれども、シリカはまだ動いている。
 シリカは虚ろに、鈍い動きで矢が飛んできた方向に目を追った。
 ――マルク。起き上がったマルクが放った物。

 もう意識したのか痙攣したのか分からないが、シリカのサブマシンガンがまた唸りを上げ、重さで下を向いていた銃口が反動で上向きになった。
 地面に穴が一直線に向かい、マルクの身体が血を噴き出しながら半回転して、二つめの鉛で人間のこめかみに当たるであろう部分がきれいに爆発した。
 そこでサブマシンガンはカカカカ、と弾切れした様子を伝え、それを待っていたかの様に、シリカも倒れた。
 更にそれに合わせ、マルクも地についた。

 ――シークは今の数秒の出来事を理解出来たのだろうか?
 先程まで生きていた、仲間達が、全員、血の池に沈んでいる。
 少女も、もはや動かない。
 何故少女はここまで出来た?
 ――メタナイトをそこまで信頼して?


 しばらく、倒れた3人の参加者を見つめたまま、シークは立ち尽くしたままだった。

 マルスは現場を見たまま、戦慄して凍り付いた。
 銃声を聞いて、駆け付けたら、死体が二つも並んでいる。
 ゲームに乗った参加者が、まだ周りに居る、と言う事だった。
 ”これ”は始まっている。紛れも無く。
 一つの死体は胸がストロベリーパイをぶつけた様になっていた。勿論、即死した様だった。
 もう一つは、少女で、頭に矢が刺さっていた。
 ――一体、何が?
 誰がここまでむごい事を――
 そう考えたら、シーダの事を考えぞっとした。
 シーダも、こんな危険な目に合うと?
 ――早く、シーダを探さなければ。
 マルスは、踵を返してこの場を後にした。
 ――愛する者を探す為に。

【一日目/昼/D-9】
【マルス@ファイアーエムブレム 紋章の謎】
健康状態:良好
  武装:ファルシオン(レプリカ)@星のカービィSDX洞窟大作戦
 所持品:支給品一式
  思考:基本行動方針:人を助けつつ、シーダを捜す
    最終行動方針:ゲームを潰す
  備考:レプリカファルシオンに特殊な効果はありません。単なる鑑賞用の剣です。】

【名前:C・ファルコン@F-ZERO
健康状態:死亡確認
 所持品:支給品一式 スパイクローク@パーフェクトダーク あと10発 】

【シリカ@星のカービィ】
健康状態:死亡確認
 所持品:支給品(シリカ、ドンキー) 任天堂ファミリーベーシック(ドンキーからルート) モンスターボール(リザード:放置:いあいぎり、にらみつける、カウンター、かえんほうしゃ)
 オートオードナンス トンプソン/弾切れ@実在兵器
  備考:リザードはさ迷っています。

「……くっ」
 シークは亀を引きずりながら、森の中を歩いていた。
 ファルコン程力が無い故に、亀は単なる負担と化していたが。
 せめて――今の手掛かりは、この亀と、ピーチ、と言う姫の名前だけ。
 ファルコンの死、マルクの死を無駄にしない為にも――シークは立ち止まる訳にはいかなかった。
 あの少女の様な、また哀れな参加者も止めなければならない。
 絶対に、このゲームを止めさせる。
 絶対に――
【一日目/午前/D-9(森)】
【青い人と緑の亀】
【名前:ゼルダ@ゼルダの伝説
健康状態:疲労、シークに変身中。(クッパ・ガノンドロフを警戒。)、クッパを引きずっている
  武装:マスターソード@ゼルダの伝説
 所持品:支給品一式、ギガクッパのフィギュア@スマブラDX クッパ
現在位置:D-9から西へ移動中
第一行動方針:このリンクを探す。
第二行動方針:リンクと合流。マスターソードをリンクに届ける。
最終行動方針:ゲームの阻止。
備考:依然、ガノンドロフから逃げています。
   メタナイトの事は半分疑っています。】
【名前:クッパ@スーパーマリオシリーズ
健康状態:体全体に重傷。気絶中
  武装:なし(シークにマスターソードを取られました。)
 所持品:支給品一式
現在位置:D-9から西へ移動中
第一行動方針:まずはピーチ姫をさらうのだ!!!
第二行動方針:その後、助けに来るであろうマリオを子分にしてやろう!!!
第三行動方針:他の知り合いも我が子分に入れてやらんでもないぞ、ガハハハハ!!!
最終行動方針:クッパ軍団を編成し、主催者を倒してゲームを潰すのだ!!!】

「……危ない所だったのサ」
 マルクは撃たれた右足を支えつつ、木陰に身を任せていた。
 こめかみの傷は急所まで深かった訳では無いので、死体の仲間居りは免れた。
 それでも、足の傷は致命的だったし(移動に支障はなかったが)、治療をしないとかなり危険だった。
 なら――どうだと言うのサ?
 またメタナイトを知ってる奴が現れて、今度こそ殺されると?
 ――今の僕には、これしか手が無いのサ。
 メタナイト、ディディー、ロイ、ドロッチェ、そして――カービィを殺す為には。
 それに――負傷したのはかえって都合が良くなった。
 これなら、今度は騙せるのではないだろうか?
 そう、今度こそ。確実に。

 まだ、終わった訳では無い。むしろ、始まりですらある。
 ――僕のゲームは、これからなのサ。

【D-9(森の中)/一日目―午前】

【名前:マルク@星のカービィ
状態:頭、右足に重傷 出血中。
装備:無し
道具:支給品一式 ドラムマガジン2個
現在位置:D-9 森の中
思考:
第一行動方針:仲間を探し隊(ロイ、ドロッチェ、メタナイト、ディディー)らがゲームに乗っているというウソを他の人に言いふらす。
第二行動方針:弱っている参加者を探し、トドメを刺す。
第三行動方針:カービィは自分の手で息の根を止める。
最終行動方針:ゲームに優勝する
備考:仲間を探し隊の会話を大体聞き取りました。】@wikiへ

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最終更新:2007年12月09日 22:32