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第十一話『二人は知らない』




 どうすればいいのだろうか?
 絵描きの少女アドレーヌは苦悩していた。
 今日も何時もどおりの日常が繰り広げられると思っていたのに、突然見知らぬ場所にいて変な子供に「殺し合いをしろ」と言われた。
 最初は冗談だろうと思っていたのだが、それはあの死体の女性(女性にしがみついていた男はデイジー姫と呼んでいた)の登場と首輪の爆発によって本物だというのが立証された。
 人が死んだ。
 その事実にアドレーヌの中で様々な感情が渦回っていった。とても怖くて、とても悲しくて、とても気持ち悪くて……もう言葉では言い表せなかった。
 しかも自分が最初に呼ばれてしまい、誰が誰なのかは全く分からない。
 自分が見知っている人達に会えるかどうかで、もう不安になっていた。

「カーくん……」

 ぼそりと、自分の友達であるカービィの名を呟いた。
 教室にいたとき、偶々だがカービィの近くにいて、彼の存在は既に確認していた。それ即ち、カービィもこのゲームに参加させられている事を理解させてくれた。
 でも彼はきっとこのゲームには乗っていない。アドレーヌはそう信じている。
 カービィは幾度もポップスターを救っていて、様々な敵を倒してきた。
 ダークマターに乗っ取られていた経験が二度もある彼女だからこそ、助けてくれたカービィを信じているのだ。

「……うん。まずはカーくんに会おう」

 アドレーヌは沈んでいた顔を漸く上げた。
 幸いにも今、自分がいるのは和風な感じの食べ物屋さん。隠れるには丁度良い場所だ。
 人の気配を感じないので、アドレーヌは支給されたデイパックの中身を確認し始める。
 一人分の二日分の食料と水にランタン、それと参加者名簿にマップ
 そこまで来てアドレーヌは己の支給品が絵描きセットである事を願った。
 支給品がもしも自分愛用の絵描きセットならば、自分一人でも戦える。
 自分自身はか弱い女の子、普通に戦っても負けるのが目に見えている。だからこそ絵描きセットが出る事を祈りながら支給品を手に取った。

それは、己が願った絵描きセットではなく、
 長い棒の先に大きな網がつけられた夏の定番アイテム





 虫取り網。





「ふ、ふざけてるの!?」

 虫取り網を見つけた時、思わず大きな声を出してしまう。
 ハッとアドレーヌは慌てて両手で口を塞ぎ、周りを見渡す。足音は特に聞こえない。どうやら店の外に人はいなかったようだ。
 アドレーヌは内心ホッとしながらせめてもの護身用にと虫取り網を外に出したまま、名簿を開いた。
 どうやら知人同士の順で名簿を作られているらしく、自分の名前がある前後にはカービィ、メタナイト、デデデなど見知った名前がある。その中にマルク、ドロッチェスピンの名前があるのも見つけた。
 この三人はカービィの話でどういう人かは知っている。
 ドロッチェやスピンは根元から悪い奴ではないが、カービィみたいな性格ではない。信用に置けるかどうかは分からない。
 マルクは論外。カービィの話から聞いたところ、願いが叶う彗星にポップスターを自分のものにしたいという願いを言ったらしいので敵と判断していいだろう。外見的特長は少ししか聞いていないが彼だと分かったら即座に逃げよう。
 アドレーヌはマルクに対しての行動を決意する中、ふと見知らぬ名前があるのに気が付いた。

シリカ?」

 シリカ、初めて見る名前だ。
 最初は全くの赤の他人かと思ったのだが、グループごとに別けられた名簿ではアドレーヌと同じグループに名前が載っている。
 恐らくマルク達同様カービィとは会った事があり、自分とは会った事が無い人なのだろう。
 そう考えるとやはりカービィと再会するのが早い。

「行こう」

 そう決意すると、アドレーヌは名簿をデイパックの中にしまい、その肩に持つと虫取り網を取り、店から出ようと体を出入り口に向けた。

 その時、のれんが動いた。

「!?」

 出入り口であるのれんが動いたのを見て、アドレーヌの体が恐怖で大きく硬直する。
 非力な自分、そして武器は虫取り網。負けるのは目に見えている。
 己の知り合いである事を内心祈りながら、アドレーヌはギュッと虫取り網を握る。

「ぽよ~……」

 あまりにも幼すぎる鳴き声にアドレーヌは「え?」と声を漏らしてしまう。
 その時、のれんをくぐって店の中に入ってきたのはアドレーヌにとって凄く見覚えのある人物だった。

「か、カーくん!」
「ぽよ?」

 20cm弱の可愛らしい丸い球体。
 それは明らかに、己が一番再会したいと思っていたカービィ本人であった。
 いきなり自分の事を呼ばれたカービィが首(体?)を傾げているのに気付かず、アドレーヌは緊張の糸が切れ、その場に座り込んだ。

「良かった……良かった……良かった……」

 まさか、こんなにあっさり会えるとは思っていなかった。
 アドレーヌは今、己が探しに行こうと思っていた張本人であるカービィに出会えた嬉しさでボロボロと涙を零し始めた。

「ぽよ!?」

 カービィはいきなりアドレーヌが泣き出した事に驚き、慌ててアドレーヌに近づく。
 アドレーヌはカービィが近づいて来た事に気付き、涙を指で拭きながら言う。

「だ、大丈夫。カーくんに会えて安心しただけだから」

 どこも怪我してないよ、と付け足すとカービィは安心したように笑う。
 アドレーヌはカービィの微笑みにつられて笑ってしまう。その時ふとカービィの右足首っぽい部分についている見慣れない足輪(?)を見つけた。
 最初はそれが何か分からなかったが良く見てみると、それは自分が今つけられている首輪と同じものだと理解するのに時間はかからなかった。
 球体だから首が無くて当然、だから足首らしい部分につけたのだろうと、アドレーヌは納得する。

 ふとその時、カービィが痛いぐらい自分のデイパックを見ているのに気付いた。
 アドレーヌは一瞬何故見ているのか分からなかったが、すぐにその見つめの理由が分かったらしく、カービィに尋ねる。

「……お腹空いてるの?」
「ぽよ」
「デイパックの中の食料、全部食べちゃった?」
「ぽよ」

 己の問いに両方とも頷いたカービィにアドレーヌは若干頭痛を感じた。
 そう、カービィは誰もが認める大食漢だ。一般の人が食べる量では絶対に足らない。
 自分の食料も食べたがっているところからして、連れて来られた時はそれなりに空腹だったのであろう。
 だが今、食料を渡そうとしたらカービィに全て食べられるのは目に見えている。
 だが食料を渡さなかったら、カービィは満足に戦う事は出来ない。
 アドレーヌは少し悩んだが、やがて観念したようにデイパックから食料の一つであるバナナを取り出して、カービィに尋ねる。

「このバナナはあげるから、残りはもう少し待ってくれないかな?」
「ぽよ~!!」

 返事を返す前にカービィは、目を輝かせてバナナを取る。 
 そのまま皮をむいて食べ始めたのを見て、アドレーヌは苦笑する。

「今の状況分かってるのかなぁ……」

 嬉しそうに食べているカービィを見て、彼らしいと思った。が、ふと違和感に気付いた。
 カービィは一言も「言葉」や「名前」を口から出していない。出しているのは「ぽよ」という鳴き声に近い声だけだ。
 アドレーヌが知っているカービィはもっと喋っていた。こんなに幼くはなかった。
 ――何故? 何故、今、目の前にいるカービィは言葉を話さない?

「ぽよ……」

 カービィはバナナを食べながらも不思議がっていた。
 何故この女の子は自分の事を知っているのだろうと思った。
 自分は女の子の名前を知らない、でも女の子は自分の事を知っている。
 このゲームに参加していないというのは分かるのだが、でもどうして自分を見て安心したのだろうか。
 知りたいけれど、どう言えばいいのか知らなかった。まだ知ろうとしている最中なのだ。




 アドレーヌは知らない。目の前にいるカービィは己の友達であるカービィじゃないことを。
 カービィは知らない。アドレーヌが自分の事を自分ではないカービィだと思われていることを。

【名前:アドレーヌ@星のカービィシリーズ
健康状態:健康、薄い涙の跡
武装:虫取り網@ゼルダの伝説
所持品:支給品一式(バナナのみありません)
現在位置:C-5、食べ物屋内
第一行動方針:カーくん……なんだよね?
第二行動方針:カービィからシリカについて聞く
第三行動方針:デデデ達と合流する。
第四行動方針:絵描きセットを手に入れたい。
基本行動方針:知り合いと再会し、ゲームからの脱出
最終行動方針:ゲームからの脱出
備考:カービィの事をゲーム版のカービィだと思っています】

【名前;カービィ@星のカービィシリーズ
健康状態:健康、若干空腹
武装:無し
所持品:支給品一式(食料と水は無い。本人は確認済み)、バナナ
現在位置:C-5、食べ物屋内
第一行動方針:目の前の女の子の事を知りたい
基本行動方針:知り合いを探す
最終行動方針:ゲームから脱出
備考:参加しているのはゲーム版では無くアニメ版のカービィです。時期は次の人にお任せします。
それと右足首に人間参加者で言う首輪がついています】

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最終更新:2007年02月11日 15:32