第壱話 日常
『幸せ』とは、こういうことだろうか。
大切な誰かと、なにか楽しいコトしていたり、
大切な誰かと、一緒に日々を過ごしたり、
大切な誰かと、笑いあったり、
大切な誰かの、隣で座っていたり…
なんてことのない、日常。
「真名ぁーーー!!!」
私を呼ぶ、ちょっとハスキーな声。
「む?どうした楓。テストの平均がやばかったのか?」
返事を返す、ハスキーな私の声。
「あれ?なぜわかったでござるか?」
「顔に書いてある。」
カバンに教科書やらなにやら詰め込みながら、楓の方を見向きもせずに返事を返す。
楓がつまらなさそうにぶーたれてきた。
「真名は冷たいでござるなぁ~。…拙者のコトが嫌いでござるか?」
「なっ…、そんな訳ないだろう。」
「じゃぁ好きでござるか?」
…そうだ。
私は楓のコトが好きだ。
しかし、それは口に出して言えない。…いや、言うコトができない。
一般的にそーゆー系のコトを「百…」ともいうらしいが、そんな事はいまはどうでもいい。
だから私は不器用に、
「好きだぞ…。忍者として」
「せせせ拙者、忍者などではないでござるよ!!!真名ぁ!!!」
ほら、慌てふためいて、あわあわとしている。
とっくに皆にばれているのに、この鈍感馬鹿忍者は気づいてないのか…?
まぁ、こんな形でしか気持ちを伝えられない私も私だがな…。
…鈍感馬鹿忍者は、私の恋心にも気づいてない、みたいだな…。
「うぅ…真名のバカぁ…。バレたらどう責任取るつもりでござるか」
「ははは、すまない。ほら、帰るぞ。…鳴滝姉妹はどこだ?」
「あの二人なら、たった今美空殿と一緒にどっか行ったでござる。」
飽きないな…あのいたずら3人小娘…。
ま、関係ないから、どうでもいいが。
「そうか、なら帰るぞ。」
「あっ、ちょっ…待つでござるよ、真名ぁ!!」
こんな、なんてことのない日常。
その一瞬が、かけがえのない、幸せな宝物。
楓はいつでも、私の隣に居てくれた。
優しい楓に、私は惹かれていった。
失いたくない、大切な人だった。
自分が女であることを後悔させられる程、愛しく貴方を想うくらい。
好きだった。
大好きだった。
あの頃の私は、『幸せ』だったんだ…。
最終更新:2009年05月03日 22:09