第弐話 仕事

すっかり暗くなってしまった。

まさか楓と一緒に喋っていただけで、こんなに早く時が流れるなんて。

あの場所は、楓の隣は…私にとって、居心地が良すぎる。

そんなことを思いつつ、いつものように、私は玄関のノブに手をかける。

ガチャガチャ、と音を立てるだけで、開く気配はない。

…今日も刹那は近衛のところか。

鍵を取り出し、鍵穴に差し込んで、ドアを開けようとした瞬間、

 カサ…と音がした。

「!!?」

音のした方向を見る…下、だった。

(紙…か?依頼状…?)

すばやく取り出し、誰も見ていないことを確認すると、部屋に入り、依頼状の封を…

…なんのためらいもなく、開けた。

後から、封を開けてしまったことを後悔してしまうとは、思わずに。

「……!!!」

依頼の内容。

その内容は、龍宮真名自身の心が揺らいでしまうほどの内容。

…長瀬楓の、暗殺…?

『長瀬楓』って、あの長瀬楓か?

バカレンジャーのバカブルーで、

私と同じくらい背が高くて、

のほほんとした性格で、

最強の甲賀中忍で、

世界の中で誰よりも、

愛しい存在だと、思えた人。

「まさか…そんな…ワケ…」

否定したかった。

すると、はらりと何かが封筒から落ちてきた。

…写真、か?

裏側に伏せられた、それ。

おそるおそる、裏返してみる。

…頼む!!楓じゃない、他の人物であってくれ!!!

心の中で、必死に願う。

その願いは、あっさり打ち切られた…。

私の隣で微笑む、楓の顔。

いつの間に撮られた…とか思うわけもなく、

突きつけられた非情な現実に、真名は立ち尽くす。

「………!!!」

ぽたり…と、

真名の頬に、小さな雨が伝った。



続く >>> 迷い


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最終更新:2009年04月14日 17:24