第五話 約束
気がつくと、私は楓の元へ走っていた。
楓を護りたい-その一心で。
…クーもたまには良い事言うな…。
ちょっとだけそんな事を思った。
感謝の意味も、込めて思った。
「楓!!!」
乱暴に戸を開け大声で叫ぶ。
クラスメイトが一斉に真名を驚いた目で見つめる。
その名前の主は、驚いていつもの糸目をぱちくりさせて、息の上がった真名を見た。
「どどどどうしたでござるか、真名。」
「…!!!」
刹那が一瞬だけ、真名を細目で見た。
しかし真名は、そのことに気づいていなかった。
「楓、話がある。来てくれ!!」
強引に楓の腕を引っ張った。
「まっ、真名!?」
ズンズンと歩を進めていく。
クラスメイトの視線など気にも留めず、教室を後にした。
「ど、どうしたでござるか一体…。」
いつもと違う真名の様子に、楓は不安の色を隠せなかった。
人目のつきにくい場所へ移動すると、真名は楓より一歩手前のところまで進む。
そして、その純黒の髪の毛をひるがえし、楓のほうを向いた。
「真名?」
「楓…話がある。聞いてくれ。」
「…悩みでもあるでござるか?」
意を決して、真名は言う。
「実は…昨日、依頼が来たんだ…。
お前の、暗殺っていう内容の…
当たり前だが、私はお前を殺そうなんて、カケラほど思ってない。
だが、もしかすると、お前は依頼人に狙われるかもしれん。その場合は…、
私が、お前を護る。
お前は、私にとってとても大切な奴だからな…」
真名は、伝えたい事を全て伝えきった。
楓は、驚いていた。自分の命を狙うものがいたことと、
真名が、その依頼を頼まれていたこと。
そして、真名が、依頼を無視してでも楓を護ってやること――。
素直に嬉しかった。
「真名。拙者は大丈夫でござるよ。怖くなんかない。拙者は殺されないからな。」
「…おい、楓。当たり前だが、真面目な話だぞ…。相手は何者かも分からないんだ。」
「拙者を護ってくれるのでござろう?真名も拙者も強い。相手がどんな者であろうと、平気でござるよ♪」
楓はこんなときにでも強気だった。
それが、彼女のいい所でもあるだろう。
「もう一度言う。拙者は、殺されない…。」
まるで、真名を安心させるかのような言葉。
真名は一度、『大切な人』を、失っている。
楓は真名の過去を知ってから、真名にそんな思いはさせないように、言葉を放つ。
真名は、それに察せずなまま。
「…死ぬなよ。『約束』だぞ?」
「真名こそ、依頼人にサックリ殺されぬようにな。」
硬い絆で交わした約束。
共に護り、生きていく。
しかし、それが達成できる日が来ない事に、二人は気づいていなかった―――。
最終更新:2009年04月26日 13:36