第八話 代償
「いくつかの質問に答えてもらうぞ…。まずひとつ、お前は何者だ。ふたつ、なぜ長瀬楓を狙う。みっつ、私に暗殺依頼を出したのは、…お前か?」
真名にとっての本当の戦い。
目の前には隙だらけの敵。
撃とうと思えば撃てる相手。
しかし、相手に聞きたいことがいくつかあった。
だから、すぐには殺さなかった。
敵がついに口を開いた。
真名に向き直って。
「そうです。私が貴方に依頼を出しましたよ。『長瀬楓の暗殺』って…。…最近の仕事屋さんはおかしいですね。ちゃんと封筒に報酬もいれておきましたが。」
「報酬なら返す。これで私が貴様の依頼を聞いたことにならない。そして…楓の目の前に姿をあらわすことがないように…私は、貴様を抹消する。」
真名は冷徹な口調で返答しつつ、その前の質問にも答えろ、と命令した。
すると、フードをかぶっていた敵の口元が歪む。
「私の正体と、狙う理由、ですか…。」
「答えろ。答えれば、すぐには命を奪わない。」
真名の口調や瞳には迷いがなかった。
「…貴方は、長瀬楓の故郷を知っていますか…?」
「…知っている。それがどうした。」
「あの里、たしか焼け野原になってたんですよね…今でも。」
「…っ、なぜそれを知っている!!?」
急にフードをかぶった敵が哂いだす。
「あははははははは!!今、私最大のヒントを出しましたが?…私がなぜ長瀬楓の里の事を知っているかって…。」
真名の腕が、ピク、と動く。
「…まさか、貴様…!!」
「そうです。私は、長瀬楓の里を襲った、『悪魔』なんですよ。」
…コイツガ、ナガセカエデノ、サトヲオソッタ、アクマ…?
カエデノ、カエルバショヲウバッタ、アクマダト…!?
「貴様…貴様ぁぁぁぁ!!!!」
激昂する真名に対し、敵は感情のない口調で飄々と喋る。
「焼け野原にした後、流石に全員死んだかと思ってましたが、あの方だけ生き残っていたとは、私もまだまだでしたね…。」
「……それ以上、喋るな…!」
真名にかまわず、悪魔は涼しげに喋る。
「やっぱり、きっちりと皆殺したかったんですよね。だから私は…」
「……それ以上、喋るな…!!!」
「…貴方に頼んだのに…残念でした。」
「それ以上喋るなあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
真名は離れている敵に殴りかかろうとした。
銃じゃなくて、自分の手で鉄槌を下したかったから。
だが、激情に任せてしまったのが失態。
悪魔が、突っ込んでくる真名に向かって、
炎の塊を、放った。
それもかなりの近距離。
避けきれず、腕と脚に掠めてしまう。
それだけでもかなりの大ダメージ。
「ぐっ…あ、ああぁぁぁぁぁあぁぁ!!!!!」
じゅわじゅわと溶かすような痛みに耐え切れず、悲鳴をあげてしまう。
脚がよろめき、ドサッ、とその場に倒れこむ。
「…次は外しませんよ。長瀬楓に、よろしくと伝えましょうか?ククク…。」
冷たい口は、明るい言葉で真名に話しかける。
「ぐっ…、クソ…くそおぉぉぉぉぉ!!!!」
くやしくて、情けなくて、真名は雄叫ぶ。
バチンッ、と敵から炎の塊が放たれる。
――私が最期に見た楓の顔は、悲しそうな顔をしていたな…
せめて、笑っていて欲しかった――
最期にそんなことを考えていた。
もう死んだかな、と思っていたら、
「真名あぁぁあぁぁぁぁ!!!!!」
いるはずのない奴の声がする。
そして、私の身体に痛みがなくて。
不思議に思い、瞳を開ける。
そこには……
「!!!楓っ!!!!??」
長瀬楓が、立っていた。
腹や、脚に塊を受けて。
直撃をモロにくらったため、かなりの血が流れている。
身体にも焼かれたような痕が痛々しく残っている。
「ゴフッ…!!…真、名…。無事でご…ざる、か?」
その場に崩れ落ちる楓。とても辛そうな表情。
「神鳴流奥義…!!!」
どこからか、聞いたことのある声もする。
技名と共に、花びらが舞う。
「神鳴流か…分が悪すぎる。私は引き下がるとするよ。」
悪魔の姿が薄れていく。
「くそっ!待て!!!」
叫んだものの、そこには何も残っていなかった。
「龍宮っ!!楓!!!」
刹那は血相を変えて、真名と楓に駆け寄る。
「刹那…!!!かえでっ、楓がぁ!!!」
「くそっ…遅かったか…。とりあえず、楓を病院へ運んでいくぞ!!」
身体から血を流し顔を青ざめる楓、涙でぼろぼろの真名、翼を広げる剣士。
その3人は今、絶望的な状況にいた。
最終更新:2009年05月10日 15:15