ご主人様のオモチャ
いちいち僕を踏むのやめてください」
背中からそっとご主人様のおみ足をどかしながら、僕は答えた。
「お仕事どうでした?」
僕は台所でお茶を入れる。
「まあまあだな」
ご主人様はいつも「まあまあだな」としか答えない。
僕はお茶をソファの前の机に並べた。
僕のご主人様はイヌの女軍人だ。本当はもっといろいろ辛いこととかあるんじゃないかと思う。
「お前、また変なことを想像したな?」
そしてなぜかとても察しがいい。いや、変なことは想像していないけど。
「余計なこと考える奴は奴隷に向いてない。調教しなおす」
「おわっ!」
いきなりソファに押し倒されて、僕は叫ぶ。
「い、今するんですか! 今!」
「いいじゃないか。減るもんじゃなし」
「僕の貞操が減ります」
ご主人様は僕を無視してズボンに手をかけた。無理やりずり下ろされて僕の大事なところが露になる。
「ご主人様っ……」
「そう言いながら実は期待してるんじゃないか?」
にやりと笑うその口の中に犬歯が覗く。垂れ耳がぴくりと動き、すんすんと臭いをかがれる。
「男の子の臭いだな」
「ちょっ……やめてくださいってば!」
「お、ちょっと反応したな。臭いをかがれて興奮するのか」
「違います!」
僕は全力で否定するが、ご主人様は聞いちゃいない。
「お前みたいな淫乱は懲罰だな」
そういうと、ぺろりとやさしくペニスを舐められた。
「っ!」
「優しいのがいいか? それとも」
「――んっ」
僕の顔はたぶん真っ赤だと思う。恥ずかしくてたまらない。
「激しいのがいいか?」
サディスティックな笑みを浮かべて僕を見上げるご主人様は、どうしようもなく美しい。
「お、勃ってきたな」
ご主人様は指を輪っかにして、すーっと僕のペニスをしごく。
「まだあまり触ってないぞ」
「んっ……ご主人、様……」
ああ嫌だ。たぶん僕は、すごく物欲しそうな顔をしてる。
ご主人様はまだ強く責めてくれない。ちろちろと優しく、カリのあたりを舐める。
「欲しいか?」
「んっ……欲しいです……」
べろり、と竿全体を舐められて、それから口の中にペニスを含まれる。
「うう……」
それだけですさまじい快楽が脳に流れ込んできて、僕はうめいた。
ご主人様は全部くわえてしまうと、そこでしばらく動きを止めた。
「ご、ご主人様……」
ご主人様にされたい。
ご主人様の口の中に出したい。
そんな思いが通じたのか、ご主人様は愛撫を始めた。
ぬるり、ぬるりとご主人様の唇が竿の上を行き来する。
「くう……」
肉体的な快楽だけでなく、本来奉仕すべき人に奉仕されているという倒錯感が、精神的な快楽をもたらしている。
気持ちいい。悔しいけれど、気持ちいい。
ご主人様の手がそっと玉のほうへ添えられる。さわさわと触られるとそこからも快感がにじみ出てくる。
ぬぷっとご主人様が口からペニスを抜いた。一気に抜かれて今すぐ射精しそうになった。
「気持ちいいか?」
「気持ち、いいですけど……」
問いかけている間もご主人様はペニスをしごく。
「何が不満だ」
「ご主人様は気持ちよくなくていいんですか」
「バカ」
ご主人様は鈴口をつつく。
「オモチャが余計なことを考えなくていい」
そう、ぼくはご主人様のオモチャだ。
でも僕は、だからこそ――
「おわっ」
再びくわえられ、僕は悲鳴を上げた。
くちゅ、くちゅといやらしい音を立ててご主人様の唇が上下する。
口の中を犯しているのだ、と思うとなんだかどうしようもなく興奮してくる。
僕の限界が近いのを知って、ご主人様は顔の動きを早める。
「うわ、ああああっ」
出してしまった。
罪悪感と快感でいっぱいになりながら、ご主人様を見た。
ご主人様の口からは僕の精液が滴っていて、いい眺めだと思った。
まるでご主人様が僕のもののようで。
僕はオモチャだ。
でもできれば有能なオモチャになりたい。
ご主人様を気持ちよくさせたい。
「いつかご主人様をあんあん言わせて見せますからね!」
「無理無理」
――絶対、絶対いつかやってやる。