誤殺「雪…雪だぁ」
空に白い雪が舞う
駅前の一角、空を見上げる誤殺
その足元の植栽の根元に眠る蛙が今、心臓発作により天に召された
駅前の一角、空を見上げる誤殺
その足元の植栽の根元に眠る蛙が今、心臓発作により天に召された
誤殺「ウエックス君遅いなあぁ…また迷子になっているのかな」
そう思いながら駅の改札口の人の流れに目を向ける
誤殺の手首には上品なシルバーの時計
その時計に目をくれながらひとつため息をついてみた
誤殺の手首には上品なシルバーの時計
その時計に目をくれながらひとつため息をついてみた
誤殺「息白いなぁ…」
そう思い、誤殺は思い切り息を吸い込み、そして口を大きく開けながら吐き出す
誤殺(ゴジラだぞぅー♪ぶあぁー♪)
その横をたまたま通りかかる霊媒師は瘴気かと思い身構える
その横をたまたま通りかかる霊媒師は瘴気かと思い身構える
誤殺「ぶぁー♪ぶあぁー♪」
同じく横を通りかかった勇次郎はエフッエフッしていた
同じく横を通りかかった勇次郎はエフッエフッしていた
ウエ「ううぅ…また降りる駅間違えた…」
改札口を人の流れを掻き分けて通り抜ける
駅前に一人佇む女性「誤解殺気」
駅前に一人佇む女性「誤解殺気」
駅を出ると、雪。ネオンを纏いて様々な色に変わる
その真下の人の目を引く長い黒髪
そして相手の心を鷲掴みにする、切れ長の目
その真下の人の目を引く長い黒髪
そして相手の心を鷲掴みにする、切れ長の目
この駅前ではウエックスしか知らない誤解殺気の持つ少女の如き女の部分
それらが駅前に幻想的な世界を作り出------
誤殺「ぶあぁー♪ぶあぁー♪ぎゃーすぎゃーす」
誤解殺気は胸の前に手をくわっと広げたまま、変な風に揺れていたのだった
誤殺「ぶあー♪」
ウエ「うう…可愛いぃぃ…」
ウエ「うう…可愛いぃぃ…」
やはりウエックスもどこかおかしかった
誤殺「ひ、酷いよ…見てたなら声かけてよぉ…」
ウエ「あ、あはは」
ウエ「あ、あはは」
二人並んで同窓会の会場まで急いでいた
高校卒業して八年、やはり誤解殺気のほうが身長は高かった
高校卒業して八年、やはり誤解殺気のほうが身長は高かった
ウエ「誤殺さん、絵本のほうは順調?」
誤殺「あ、うん♪後で見せてあげるね♪」
誤殺「あ、うん♪後で見せてあげるね♪」
誤解殺気、高校卒業後、短大に入学。
そしてたまたま送った絵本コンクールにて入賞し、現在は絵本作家として活動していた
そしてたまたま送った絵本コンクールにて入賞し、現在は絵本作家として活動していた
誤殺「ウエックス君もお仕事順調?」
ウエ「あ、うん!始めの頃よりは大分動けるようになったし…今ではある程度任せてもらえるようになったよ!」
誤殺「うえへへぇ♪良かったね、ウエックス君」
ウエ「あ、うん!始めの頃よりは大分動けるようになったし…今ではある程度任せてもらえるようになったよ!」
誤殺「うえへへぇ♪良かったね、ウエックス君」
ウエックス、高校卒業後地元の大学受験をマークシート一問ズレの荒行により落第
一浪後、同じ大学を再受験し見事合格、現在は地元の商社に勤める
一浪後、同じ大学を再受験し見事合格、現在は地元の商社に勤める
高校卒業してからも付き合いのある二人
ウエックスは告白のたびにトラブルに巻き込まれ失敗
いまだに二人は友達のままである
ウエックスは告白のたびにトラブルに巻き込まれ失敗
いまだに二人は友達のままである
少し道にも雪が積もってきている
その道をさくさくと音を立てながら歩く二人
その道をさくさくと音を立てながら歩く二人
誤殺「ツンバカちゃん元気かなぁ、早く会いたいね」
ウエ「そうだね、友君には良く会うよ、会社が近いから」
誤殺「友君、今なにやってんのかな?」
ウエ「えっとね、雑誌の編集の仕事してるみたい、徹夜が多いんだってさ」
ウエ「そうだね、友君には良く会うよ、会社が近いから」
誤殺「友君、今なにやってんのかな?」
ウエ「えっとね、雑誌の編集の仕事してるみたい、徹夜が多いんだってさ」
思い出話から世間話まで二人に会話は尽きない
店までもう少しの所で、懐かしい顔に出会う
店までもう少しの所で、懐かしい顔に出会う
転んだ拍子に空に舞い上がる渡辺さんのかばん
その舞い上がったかばんは渡辺さんの頭に落ちてくる
その舞い上がったかばんは渡辺さんの頭に落ちてくる
誤殺「あ!渡辺さんだぁ!おーい!わた」
そう叫びながら早足になる誤解殺気、その瞬間
そう叫びながら早足になる誤解殺気、その瞬間
ウエ「へぇ…佐藤さん不動産の仕事してるんだ?」
佐藤「ええ、渡辺さんも一緒に」
佐藤「ええ、渡辺さんも一緒に」
学生時代はあまり交流の無い二人
少し大人になった余裕からだろうか、二人は違和感無く話しをする
少し大人になった余裕からだろうか、二人は違和感無く話しをする
渡辺「うわぁぁぁ!可愛い絵だよ~」
誤殺「えへへぇ♪ありがと~これはたまねぎマンっていうんだよ」
渡辺「う~たまねぎは苦手だけど、これは大丈夫だよっ!」
誤殺「えへへぇ♪ありがと~これはたまねぎマンっていうんだよ」
渡辺「う~たまねぎは苦手だけど、これは大丈夫だよっ!」
佐藤さんと顔を見合わせ少し笑う
お互いがお互いの幸せを喜びあう微笑み
お互いがお互いの幸せを喜びあう微笑み
あの学生時代の空よりは少しネオンが多いような気がするけど
それでも変わらない何かが嬉しかった
それでも変わらない何かが嬉しかった
佐藤「とりあえず急ぎましょう…時間も大分過ぎちゃったし」
渡辺「うん♪」
渡辺「うん♪」
ウエ「行こう、誤殺さんも」
誤殺「…」
転んだまま、ただ雪の舞い落ちる空をぼうっと見上げる誤解殺気
その手には猫の模様の絆創膏が一つ、一つ折りのまま握り締められていた
誤殺「…」
転んだまま、ただ雪の舞い落ちる空をぼうっと見上げる誤解殺気
その手には猫の模様の絆創膏が一つ、一つ折りのまま握り締められていた
誤殺「…え?」
ウエ「ど、どうかしたの!?」
ウエ「ど、どうかしたの!?」
ウエックスは地べたに座り込んだ誤解殺気さんに手を差し伸べる
その手をふっと掴み立ち上がる
その手をふっと掴み立ち上がる
誤殺「うん、同窓会なんだよね…」
ウエ「う、うん、久しぶりに皆に会えるよ」
ウエ「う、うん、久しぶりに皆に会えるよ」
その手の中の絆創膏を少し握る
誤解殺気さん御用達の猫の模様の絆創膏
誤解殺気さん御用達の猫の模様の絆創膏
誤殺「うんっと…ちょっと不良君の事思い出しちゃった」
ウエ「不良君…」
ウエ「不良君…」
高校一年のときのクラスメイトの不良
ウエックスの後ろの席に座り、誤解殺気さんをクラスに受け入れさせた男の一人
ウエックスの後ろの席に座り、誤解殺気さんをクラスに受け入れさせた男の一人
ウエ「うん…覚えてるよ」
不良「へへ、残念だね、一緒に…卒業したかったな」
不良「へへ、残念だね、一緒に…卒業したかったな」
高校二年の冬、不良は校門前の道路で、急に飛び出した少年をかばい命を落とす
今日みたいな雪の舞い落ちる寒い日の出来事だった
今日みたいな雪の舞い落ちる寒い日の出来事だった