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自分は優柔不断な人間であるため決断力がありません。これから社会に出て仕事を任されると、適切な判断力や決断力が必要とされる場面が出てくると思うのですが、そういうものを養える本ってありませんか?
- 質問のジャンル
文学
- おすすめする本(タイトル/著者/出版社)
八甲田山死の彷徨/新田次郎/新潮文庫
- 書評
今からちょうど約100年前、日露戦争を目前にして過酷な軍事訓練が強行された。目前に差し迫るロシアとの戦いに備えて、青森県八甲田山を越える雪中行軍が計画された。二つの連隊がそれぞれ別々のルートから八甲田山踏破を命じられ、各連隊を率いる二人の指揮官がそれぞれ対策を練る。冬の厳しい寒さと雪の中、両連隊は死を覚悟してこの行軍に挑むが、その結果片方の連隊は無事八甲田山踏破を成功させるも、もう片方の連隊は遭難しほぼ全滅する。
この二つの集団の明暗を分けた原因は一体何だったのだろうか?その答えの一つとして、小説は両連隊の指導者の行動を対比する形で描かれる。二人の指導者の決断の差が、結果としてこの軍事訓練の成否を左右するだけでなく、連隊の運命をも大きく変えたのである。
これを書いている俺自身もとても優柔不断な人間である。毎日昼食に何を食べるかに最低5分は悩むほどの優柔不断さである。でもそれはそれでいいと思う。何故なら今日俺が何を食べるか決断に迷ったとしても誰にも迷惑をかけないからだ。しかし、それがビッグプロジェクトを左右する決断であった場合話は別である。いつ、どのようなタイミングで、どのような決断をするかは非常に重要になってくる。
一体どのような決断が素晴らしい決断なのか、決断に絶対的な基準は存在しない。その決断が正しかったかどうかはその決断の結果から逆算して語られるからである。それだけでなく、いくつもの決断が重なって一つの結果を導いている以上、その結果の原因を一つの決断に求めることは中々容易ではない。
しかし、それでも、である。一つ一つの決断の集合として結果が現れていることは紛れもない真実である。結果をより素晴らしいものにするために我々はどうにかして決断力を養わねばならない。決断の妥当性は結果とともに語られるものである。だからこそ、我々は偉業を成し遂げた先人たちの決断に学ぼうとするのである。その意味で、この小説は決断の差が好対照な結果をもたらした二つの集団の運命を描いた教訓と言えるだろう。
「山田少佐は、容易ならぬ状態を見て取ると、突然軍刀を抜き、吹雪に向かって、『前進!』と怒鳴った。それはまことに異様な風景であった。(中略)一部の下仕官に突き上げられて、指揮官としての責任を見失ってしまったような光景であった。(中略)だが全ては終わった。結論が出たのである。前進の命令が発せられたのである。」