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Side:ジューン
まだ日は高いが、授業を終えて帰宅する学生も多く見られる。人々の喧騒を縫って僕は市街地を当ても無くふらついていた。
決して手持ち無沙汰であるわけではない。何故僕が街を徘徊しているかといえば、昼の地震直後にベールから届いたメールに全ての元凶がある。

『最近、その辺一帯で停電とか起きてるらしいわよ。それも地震と同時になるみたい。冥魔の仕業らしいから、さくっと解決して点数稼いで起きなさい』

そこにあったのは、無味乾燥な事実の羅列とあまりに乱暴な命令。現状の詳細や手がかりとなり得る情報は一切無し。相変わらず好き勝手言ってくれる。

奴が言う『冥魔』と言うのは表界を始めとして様々な世界に出没している謎多き生命体だ。
侵魔が表界に侵攻するのは人間のプラーナを吸収するためなど、何らかの目的がある。
しかしながら各地に出没する冥魔は純粋に殺戮と破壊活動を繰り返すのみであり、ほとんどが意思の疎通も不可能と言って良い。

この冥魔の出現こそが、ウィザードと侵魔が休戦協定を結ばざるを得なくなった原因となっている。
冥魔の形状は多様だが、いずれも高い戦闘能力を有し、ウィザードも侵魔も手を焼いているのが現状だ。
表界のウィザードから見れば世界を脅かす脅威、裏界の侵魔から見れば自分達の獲物を横取りする邪魔者。
その利害の一致から、守護者アンゼロットと裏界の魔王を始めとした侵魔たちは渋々共闘する道を選んだ。

今回の停電事件に関しては学園で情報収集をすれば恐らく何らかの手がかりを得ることが出来ただろう。
それをしなかった理由は、単衣に足が付かない様にするためと言うことに尽きる。
今日は転向初日と言うこともあって、好奇の視線を常に浴びていた。
そんな状態で無闇にあちこち嗅ぎ回る行為は流言や不信感の種となりかねない。
慎重過ぎるかもしれないが、以前の様にウィザードに半年間追われ続けるような経験を繰り返すのは真っ平ごめん被る。
奴のメールを読む限りは特に早急性を感じない。ここは僕の好きにやらせてもらう。

そう言うわけで、転向初日の授業を終えた僕はクラブ活動の勧誘をどうにか振り切り現在に至る。
これから数日の間は放課後街の主要施設を中心に回って地理の把握に努める事にしよう。
地理の把握はいずれはやる必要がある事だった。たまには剣を置く日々があっても良いだろう。

今後の方向性を固めたところで、耳障りな着信音が服のポケットから発せられる。差出人は案の定ベールだった。
メールが届くということは恐らく分体を表界のどこかに潜ませているんだろう。ご苦労な事だ。
タイトルは空欄で、本文にはこんな事が書かれていた。

『電気が無いと困る施設を重点的に見回っておきなさい』

僕がこの結論に至るということが解っていたとでも言わんばかりの内容。一々癪に障る奴だ。
行動だけでなく思考まで見えているとなれば、恐らくリオン=グンタが屋敷にいるんだろう。
まあいい。晴れて許可が出た所でさっさと行動を開始することにしよう。

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最終更新:2013年02月02日 16:47