「行くのか、蒼紫・・・・」
忍び装束の老人は、西洋外套に身を包む背の高い男にそう問いかけた。
問うたのは、隠密御庭番衆“元” 京都探索方、
柏崎念至、通称“翁”。
問われたのは、隠密御庭番衆現御頭にして、事実上最後の御頭、
四乃森蒼紫であった。
二人がいるのは、先ほどの石造りのドームとは打って変わって、
“翁”の現在の住まい、「葵屋」を思わせる日本家屋である。
“翁”は屋内の畳の上に、その手に一人の少女を抱いた状態で
立膝を付いている。
蒼紫は、縁側で“翁”に背を向けて、今や外へと
飛び出さん、という所であった。
「翁・・・・・操を頼む」
蒼紫はそれだけ言うと、振り向かずに縁側から
ふわりと飛んで降りる。
外には三人の男たちが、控えていた。
一人は、般若面を被り、両腕に黒白の縞模様の刺青をいれた異装の男(?)。
一人は、関取りを思わせる巨躯に、背中に樽を背負った男。
最後の一人は、顔に十字傷を持つ、凄まじい筋肉をした巨漢であった。
蒼紫と共に明治の世を駆ける、御庭番衆であることを捨てられなかった男たち、
“般若”、“ひょっとこ”、“式尉”の三人である。
「蒼紫ぃっ!」
“翁”は蒼紫の背中に再び声を掛ける。
蒼紫は、今度は言葉で応じることすらせず、
何も言わずに付き従う三人の隠密と共に、
夜の闇へと消えて行った。
「これでよかったんですよね・・・・」
屋敷から離れた森の中、“ひょっとこ”が呟く。
それは、問いかけるというよりも自分自身に言い聞かせるようであった。
「何でぇ、怖気づいたか“ひょっとこ”?」
“式尉”がニヤリとしながら言う。
「ちげぇえよ!ただ、操様をほおっておいていいのかなって・・・」
「“翁”も老いたとはいえ、かつては“最凶”と言われたお方。
操殿一人ならば十分に守りきれるであろう」
“ひょっとこ”の言葉にそう返すのは“般若”だ。
「しかし“ベシミ”の奴も運の無い野郎だ。こんな絶好の機会に
お呼ばれされねぇとはよぉ」
“式尉”が頭をぼりぼり掻きながらここに御庭番衆の名前を呼ぶ。
“ベシミ”。下級隠密で、最後の隠密御庭番衆の一人だが、どういうわけか
ここには影も形も見られない。
「けどよ、“ベシミ”にゃ悪いけどこんな機会は滅多にないぜ」
“式尉”の言葉を受けて“ひょっとこ”が言う。
「・・・・・・・・」
蒼紫は、“ひょっとこ”の言葉に、
先ほどの石組のドームでの出来事を思い出す。
あの白い南蛮鎧の男に討ちかかった老人を含めて、
あの場にいたのは誰もが相当な使い手ばかりだった。
それも、恐らくは自分たちと同じ忍びの。
「行くか俺達の戦場に・・・・・」
かつて戦うべき時に戦えず、
戦う事しかできない4人。
せめて、自分達が強かった事の証をと、
戦いを求めて幾星霜、ついに廻ってきた絶好の機会。
証明するのだ、己たちの強さを。
それが俺達の生涯に飾る最後の「華」だ。
顔に壮絶な笑みを残して、
4人の修羅は、暗い森の奥へ、奥へ・・・・
参戦決定チーム
【隠密御庭番衆チーム@るろうに剣心】6/6
○四乃森蒼紫/○柏崎念至/○般若/○式尉/○
巻町操/○火男
※参戦時期は、武田観柳邸決戦前
最終更新:2008年12月12日 19:24