≪自殺志願≫の捜索
◆ ◆
敗北から学び廃屋を教え、
快楽から習い骸骨を数え、
抵抗から修め貞操を救え。
振り向いて、立ち止まり、
踵を返して、立ち行かん。
始まりを終わりまで続け。
零の横に零を掛けて三つ、
零の底に零を並べて二つ。
逢わせて一つ、
這わせて零へ。
優しい僕から、
賢しい貴女に、
疚しい試験と、
寂しい試練を。
◆ ◆
「はぁ…………」
零崎双識は地図を見ながら溜息を一つ付いた。
現在地はE-6の分かれ道の片方から移動して少し。
とりあえず気配の方向を地図で確かめてみると、
D-6の骨董アパート、
D-5の清涼院護剣寺、
C-6の不要湖、
C-4の百刑場、
A-6の三途神社
この五つの建物関連のある方向に一つ、
D-6の骨董アパート、
D-7の浪白公園、
C-6の不要湖、
斜道卿壱朗研究施設、
真・真庭の里
この五つの建物関連がある方向に一つ、
とりあえずこの二人は地図上で当て嵌まる建物が、
D-6の骨董アパート、
C-6の不要湖、
中心部分を目指す上では恐らくこの近くを通るだろうし、
二つあるから上手く行けば合流出来るだろう。
次にもう二つの気配、
ランドセルランド…………には恐らく居ないだろう、
気配がそれにしては遠い、と考えると、
澄百合学園、
ピアノバー・クラッシュクラシック、
学習塾跡の廃墟方向に別々ではあるが二つ。
この時点でどれかに誰かが居る確立は三分の二と結構高い。
乗っても問題は無い程度に当たり易い賭けである。
更にピアノバー・クラッシュクラシックの事を考え、
とある一人の零崎。
零崎曲識の事も考えていた。
「とりあえず予想が正しければ」
そう言いながら、
指で地図のピアノバー・クラッシュクラシックの名をなぞり、
「トキが…………居るはずかな?」
道路のど真ん中を歩きながらで無用心な事この上ない。
しかし、その事をまるで考えず地図を見つつ考え始める。
《逃げの曲識》、
《少女趣味》、
禁欲者で菜食主義、
零崎三天王の一人で、
限定した殺人しかしない零崎曲識。
戦わずに逃げるしかしなさそうでなんとも言えないが、
「とりあえず地道に一人一人集めるしかないかな?」
それじゃあ目的地はピアノバー・クラッシュクラシック、
と言う事にして行動を始めようかな?
でも、
「うふふ…………やっぱり子荻ちゃんに会いに行こうかな?」
澄百合学園に行く方向も検討し出す。
家族の事はいいのか零崎双識?
「こんな事態だから流石にスパッツははいてないだろうし」
ここに誰か人が一人でも居たら、
まず間違いなく零崎双識は変態だと所構わず言い触らすだろうが、
幸いと言うべきか残念と言うべきかこの近くには人は居ない。
残念…………
それはそれで、
澄百合学園に家族の一人が居るのだが、
家族の事は全く考えていないのに澄百合学園を目指そうか検討している。
家族愛ゆえか?偶然の副産物か?
それとも、
スカートへの執着心が妙な方向で力を持ったのか?
一応賭けでも二分の一と普通ぐらいの倍率はあるにはあるが…………
そう言う訳で今歩いているのは南の方向。
そして、
ブツブツやら「うふふ」と笑いながら歩いて早くも橋まであと僅か。
しかし、端から見ると完全に危ない人物である。
「ん?――え」
一人で家族の事やスカートの事を考えていて警戒を怠っていた、訳ではなく、
十分警戒はしていたのでこの辺りに人が居ないのは分かっている。
橋のど真ん中に置かれている物体が目に入った。
そのため、一瞬だけ思考が停まった。
それだけであるが、その置いてある物が怪しすぎる。
バイク。オートバイ。
名称、モンキー。英語表記、MONKEY。
目立った特徴、小さい。
「……………………」
それが今まさに目の前にある状況。
橋のど真ん中に小さいとは言えバイクが置かれている状況。
怪しい、怪しい、妖しい。
「いや、妖しいは違うか」
首をブンブン振りながら独り言。
妖しいでは なまめかしい の方の意味になってしまうが、
とりあえず、圧倒的に、決定的に、怪しい。
橋と言う周りから見られ易い場所の、
しかもそのど真ん中にバイクが置かれている状況。
普通なら危険と思い遠回りするなり、橋を駆け抜けるなりするが、
あっさりと歩きながらバイクに近付く。
周りに人が居ない事を知っているから――ではなく、
周りから少なくともこちらに向けた殺意を感じなかったから、
である。
零崎一賊は殺意に敏感なのである。
まあ、それは置いて置いて。
「ふんふんふん――――鍵は勿論……フルフェイス型のヘルメットに…………
ガソリンは満タン、と――おや?運転の説明書まであるぞ?」
見れば見るほど完全にバイク。
それも誰でも移動を簡単に行える様に説明書まである。
これは――――
「どうやっても一人しか乗れないであろう大きさ、満タンのガソリン、誰でも扱えるように説明書、
これから考えられる事は…………殺し合い促進の為の移動手段か?」
小さい分、個人向けではあるが、
これを使って誰か轢くなり、誰か捜索するなり、罠として使うなり、
用途はかなり豊富。
敵さんもどうやら本気みたいだな。
この状況を、
零崎で唯一確固たる意思の元で殺しを行う≪少女趣味≫ならば、
「良くない」と表すかも知れないし、
自分が死ぬ事になったあの早蕨の太刀使いの長男ならば、
「最悪だ」と言うかも知れないし、
零崎の秘中の秘でもあるあの不出来の弟ならば、
「傑作だ」と笑いながら言うだろう。
だったら――――
「少しばかり、一賊の人間集めを急いだ方がいいかな?」
こんな調子で色々な所に殺し合いを促進する道具が置かれていては、
いくら一賊の人間でも殺されかねない。
特に、まだ慣れていない上に両手が無いだろう……
「――伊織ちゃん」
居るかも知れない可愛い可愛い妹のためにも、
このバイク利用させて貰おう、
水倉神檎。
一賊の敵、試験はまだまだ出来そうにないが、
首を洗って待っていて貰おうか?
「それじゃあ、捜索開始。試験はまだ時間が掛かりそうだ」
バイクに跨って、
速度を上げて、
目指す場所は、
澄百合学園。
まだ見ぬ敵と、
まだ見つからぬ一賊。
この二つを目指して零崎双識は進む。
しかし、
「小さいなぁ、これ…………」
ゆらゆらと少し危なっかしげに揺れているバイクと細い身体。
体躯と合わず小さいバイクなので若干苦戦気味の様子。
これは初っ端から不安。
大丈夫なのか零崎双識?
【1日目 深夜 F-6から移動中】
【零崎双識@人間シリーズ】
[状態] 健康
[装備] フルフェイスヘルメット@現実 モンキーバイク(ガソリン満タン)@現実
[道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3)
[思考]
基本 家族と行動を共にする
1 家族の気配に向かって移動
2 自分からは仕掛けないが、無論一賊に仇なす者は皆殺し
3 水倉神檎を「一賊に仇なした者」として認識
4 家族集めを急ぐ
※とりあえず澄百合学園を目指しています。
最終更新:2010年12月05日 01:22