虚刀『鑢』対人類最終『橙なる種』
清涼院護剣寺、刀大仏が祭られる剣士達の聖地、そして無刀の姉弟達による決闘が果たされた地。
「はあ、なんでこんなとこに来ちまうのかね」
巨大な大仏を見上げながら、これまた大きな男、
鑢七花は似合わぬため息を吐いた。
「まあ、元からどこに向かってるのかなんか全然わかってなかったけどさあ」
誰もいないながらも呟き続ける姿は不気味であるが、これは仕方の無いことだろう。
なんせ、さっきのさっきまで
否定姫と話しながら歩いていたと思ったら、わけのわからない
場所へと放り込まれ、何かの説明がされたと思ったらここに一人放り出されてしまったのだから。
「誰もいないのかよ」
要するに七花は寂しいのである。いつでも道中には連れがいたのが今では一人。
どれだけ言葉を発しても返事してくれる相手が全くいない状況にまだ慣れてないのだ。
決して七花が悲しい性格だからではない。
「それじゃ、別の場所探してみるか」
別に誰も聞いてないのに、やっぱり寂しい七花は声に出して言う。
だが、別に七花は話し相手を探しているわけではない。確固たる目的があった。
(あの場所に確かに
とがめが…いた)
自分が惚れ、そして守りきることが出来なかった女。自分の腕の中で死んでいった彼女が
確かにいた。
そんなはずがない。
とここに来る途中に何度も思った。
とがめはあの時に死んだ。
あの冷たくなった肌、消えていくぬくもり、死体から脱がせそして今自分が羽織っている形見の豪奢な着物。
全てが記憶に残っている。
けれど、確かにとがめはあそこにいた。
あの時のままの姿で
あの時のままの格好で
(あれは、間違いなくとがめだった)
死んだはずのとがめがなぜいたのか、考えれば考えるほどわからなくなっていった。
そもそも考えることは自分に向いていない。
それでも考えて、考えて、考えて、一つの結論に至った。
「会って、確かめるしかないよな」
単純ではあるが、一番確実な方法である。
考えぬかなきゃいけないようなことか?とかは思ってはいけない。
これでも七花もがんばったのである。
「けど、今俺どのへんにいるんだ?」
とがめを探すと言う目的に行き着いたが、重大な問題が出てきてしまった。
自分の現在地がわからないのである。
「さっき捨てたあの紙切れってやっぱ地図だったのか?」
と七花は気づいた時に持っていた紙と何かが入った袋のようなもののことを思い出した。
袋に関しては、開け方がわからないので全部置いてきたし、紙にしても読めない字がいくつも
あるので捨ててしまった。
「全く、そうならそうと配る前にさっさと言えよ」
ちゃんと水倉林檎から説明があって、それをあの時七花はとがめに気を取られ聞き逃しただけなのだが、
それには気づかない。ついでにまにわにの首が吹っ飛ぶのも気づいてなかった。
まにわに哀れなり。
「ま、いっか、あの部屋にいた他の連中でも見つけてみるかな」
さらに信じがたいことだが、七花はこのゲームの説明にしてもあんまりよくわかってなかった。
とりあえず、うっとうしい首輪がつけられ色んな所に飛ばされた程度にしかわかってない。
とがめや否定姫がいないと駄目駄目な七花であった。
「それにしてもここにいると色んなこと思い出すよな」
この場所でのことも鮮明に覚えている。
血を分けた姉との戦い。
異端なる才能、そして最悪たる刀を携えた。紛れも無い最強の敵、勝てたことが今でも信じられない。
いや、正確には勝ったとはいえない。
とがめの奇策、そして虚刀流であるがゆえの宿命、刀の呪縛があればこそ、手に出来た勝利。
そこまでしなければ勝つことが叶わなかった許されざる天才。
「姉ちゃん…か」
七花が見つけたのは何もとがめだけではなかった。
あの天才もまたあの場所にいた。
あの時と同じ全てを見透かすような眼をして、
ちなみにまにわにに関しては誰一人として発見していない。
やはり哀れなり。
「やっぱり、俺のこと恨んでんだろうな」
とがめは七実は殺されたかったのだと言ってくれた。
けれど七花は納得できなかった。
なにせ姉が自分の腕の中で恨み言を言いながら死んでいくのを目の前で見てしまったのだから。
もしも、もしも姉とも出遭ってしまい、今度は憎悪を込めて襲ってきたら勝てるだろうか。
「勝てないだろうな…」
実力にしても当然ながら、姉が自分を殺したいと思っていたら殺されてもいいと考えてしまう。
こんな気持ちで勝てるわけがない。だが、負けてしまえばとがめを捜せなくなる。
「ええい、考えても仕方無いか!」
と七花は頭を振って考えを払いのける。
もしもの考えをめぐらせても答えなど出せるはずがない。そういうことには自分は向いていない。
「そろそろ行くか」
ここから早く出ないとまた考えてしまう。
そう判断した七花は最後にもう一度刀大仏をよく見ておこうと顔を上げ、眼に入ったのは
刀大仏の腹から突き出る漆黒の刀身だった。
「な…」
何が起きているのか理解出来ないうちに刀身を中心に亀裂が走り、大仏の腹がはじけ飛ぶ。
そして、
あたかも神の腹を喰い破る悪魔のように、
“それ”が姿を現した。
赤い、いや赤というには明るすぎる橙色の髪と同じ色の眼をした小柄な少女だった。
小柄な体に似合わぬ大振りの黒い刀を持ち、狂気に染まった眼で七花を睥睨する。
視るのでも診るのでも観るのでも看るのでもなく、ただじっと見つめる。
七花にはわからない。
この少女の名が
想影真心ということも、
この少女が人類最終と呼ばれる存在であることも、
ただ解るのは
少女の持つ刀が『毒刀・鍍』であること、
そして
圧倒的な殺気。
「なんだよ…」
体が震える。
「なんなんだよ…」
足が、竦む。
「こんなの、こんなの」
この感触、過去に味わったことが、ある。この感覚は、
「あの時の姉ちゃんと同じじゃねえか…」
あの時に見せられた、姉自身ですら抑えられなかった姉の本気、その時と同じ殺意を
その少女は放っている。
「げらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげら
げらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげら」
七花の心境をよそに真心は笑う、笑う、笑う。
心底おかしいように、心底嬉しいように、心底狂ったように。
そして目の前の獲物を見つめ、
次の瞬間に七花の目の前で刀を振り上げていた。
「な!?…くそ」
震える体を無理やり動かし、紙一重で刀の切っ先をかわし。後ろとびで距離を取り
(なんて…速さだ!!)
そして、さっきまで真心がいた場所を見上げ、
信じられないような光景を目にした。
大仏の腹に空いた穴から後ろの壁ではなく外が見えていた。
そのことから示される事実は一つ。
「外からここまでぶち抜いてきたってのか…」
あまりの常識破りの行動に言葉を失う七花に構わず、再び真心が切っ先をこちらに向け
飛び掛ってくる。
「っこの!舐めんな!!」
突き出される切っ先を体をわずかにひねる最小限の動きでかわし、構え、
「虚刀流『薔薇』!!」
迎え撃つように蹴りを放つ。
突っ込んだ勢いを抑えきれず蹴りをまともに喰らった真心の小さな体は後方に吹っ飛び
そのまま床に叩きつけられ、
何事も無かったのように立ち上がった。
「嘘だろ!?」
今の一撃は完全に決まっていた。相手の速度を上乗せして叩き込んだ蹴りは相当の威力だったはずなのに、
「げらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげら
げらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげら」
真心は笑いを止めることなく再び突っ込んでくる。
「く…『杜若』!!」
七花もまた前に飛び出す。
だが、速さの差は歴然、真心が先に間合いを詰め刀を大上段から振り下ろす、
より先に七花が一気に加速して横に回り込む。
相手から見れば七花が突然消えたかのように見えるだろう。
この極端な加速の切り替えこそ、虚刀流の歩法『杜若』!
目測を誤って空振りし、隙が出来ている真心の横にそのままの速度で一気に突っ込み、身構え
「虚刀流奥義」
放とうとした瞬間、
真心の眼がぎょろりとこちらを向いた。
「なっ!」
本能的に七花は減速し後方に跳ぶ、
と同時に胸部を凄まじい衝撃が襲い、
胸を蹴られたと気づいたのは床に叩きつけられてからだった。
「なんてこった…」
今度こそ七花は驚愕する。
変幻自在の『杜若』がこんな早くに見切られた。
からでは無く
「今の攻撃、さっきの俺の『薔薇』じゃねえか…」
そう、真心の放った蹴りは紛れも無く自分自身が放った『薔薇』だった。
しかも
「なんつう威力だ…」
喰らう直前に後ろに跳んで威力を殺したはずなのにあばらが軋んでいる。
その痛みに気を取られる間も無く、
追撃してきた真心が再び刀を振りかぶる。
咄嗟に身構えた七花の前で、
真心が突然消えた。
(やばいっ!!)
考えるより先に体が動き、真横から振られた斬撃をかろうじてかわす。
が、
真心は刀を振り払った勢いをそのままに一気に加速し、再び『薔薇』で七花を蹴り飛ばす。
「ぐお!!」
今度は後ろに跳ぶ暇も無かった。
猛烈な衝撃が七花を襲い、まるで紙くずのようにその大きな体が大きく弾き飛ばされ、
壁に叩き付けられる。
(今の動きは『杜若』、間違いない…こいつ、俺の技を…)
痛みが全身に走りわたるのと同時に絶望感もまた広がる。
(冗談じゃねえ…これじゃ、まるっきり姉ちゃんと一緒じゃねえか)
まだ一度しか見せていない自分の同じ技をより的確に繰り出す。
まさにあの姉に瓜二つ、いや、病魔による弊害が無いぶん、もしかしたら、あの姉より強いかもしれない。
そんな相手に、姉さえ凌駕しかねない、相手に勝てるだろうか?
否
勝てるはずがない。
あの時の姉には刀の呪縛と、そしてとがめの奇策が、守る物があったからこそ勝てた。
だが今度の相手は刀の呪縛があるように見えない、
なによりとがめが、守るものがいない、
(逃げるか…)
少し前の自分ならこんなこと考えもしなかった。
逃げるくらいなら最期まで戦うことを選んだろう。
だが、この敵はそんな信念すら覆す。
そんなことを考えている七花に、真心は歪んだ笑みを浮かべながらゆっくりと近づいてくる。
(遊んでやがんのかよ、ちくしょう!)
その事に憤りを感じても、どうすることもできない。
奥義を出そうにもその暇すら与えられない。
最速の『鏡花水月』 なら繰り出せるかもしれない。
だが、威力に劣る『鏡花水月』では致命傷は与えられない。
逆に吸収され、そっくりそのまま返されるのが関の山だ。
逆にあの筋力で『鏡花水月』を喰らえば、間違いなくこちらが致命傷に至る。
まさしく八方塞がり。打つ手が無い。
(ここで殺されたらとがめに会えない)
今回の戦いは逃げることが許されている。
だったら逃げればいい。
勝てもしない相手に喰らいつき虫けらのように殺されることが自分の目的ではない。
そうだ、姉に会っても逃げればいい、逃げて逃げて逃げて、生き残れればそれでいい。
今の自分には目的がある。
信念より矜持より大事な目的が、
(一か八かで入り口まで走るか!)
ここから出てしまえば、逃げることは難しくない。
七花は『杜若』の体勢のため体を縮め、
自分の着ている着物がざっくり斬られているを目にした。
さっきの斬撃をかわしきれていなかったのだろう。
そこにうっすら血がにじみ着物に染み込んでいる。
その光景は、あの日と似ていた。
とがめが炎刀に貫かれたあの日と、
その斬り口を七花はじっと見つめ、そして、跳んだ。
生き残るための出口へ
ではなく、真心へ、眼前の敵へと!
そしてその勢いで手刀を叩き込む!!
(は、何が目的だ)
その一撃に揺るぎもせず、真心は反撃の拳を叩き込んでくる、が、避けない!
(何が生き残る、だ)
拳が腹にめり込み、鈍痛が走る。
それでも、
七花もまた揺るがず『薔薇』で真心を蹴り飛ばす。
(逃げて、逃げて、逃げて)
後ろに仰け反る真心に合わせ、七花もまた前に出る。
休ませないために、反撃する暇も与えないために、そしてなによりも
勝つために!!
(それで一体どんな顔してとがめに会えるってんだ!!)
きっと、そうやってとがめに会っても、もうマトモに顔を合わせることも出来ないだろう。
折れた刀など、なんの役にも立たない。とがめに折れた刀など使わせられる訳が無い。
例え、どんな化け物でも、それが姉でも、刀は斬る相手は選ばない!!
刀が斬ることを放棄したとき、刀の役目は終わってしまう。
一度守りきれなかった女を今度こそ守るために、それだけは許されない!!
「うおおおおおおおおおおお!!」
雄たけびとともに、体勢を立て直せていない真心に連続して打撃を叩き込む。
「げらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげら
げらげらげらげらげらげらげらげらげら」
が、それほどの連撃を受けても全く動かず受けた打撃とそっくり同じ打撃で反撃に転じる。
充分な体勢でなくても、繰り出される攻撃は速く、確実に七花を捕らえる。
手数こそ七花には及ばないが一撃一撃が、重い、とてつもなく重い。
それらは七花の体に叩き込まれ、骨を軋ませる。
それでも、それでも七花は退かない。休むことなく攻撃を続ける。
これこそが虚刀流の本質!
虚刀流の技を余すことなく攻撃へと転化する!!
これこそが虚刀流の防御を捨てた戦い!
「はあっ!!」
その気迫に真心ですら圧され、わずかに、ほんのわずかに隙が出来る。
それはほんの一瞬、けれど、七花にとっては充分だった。
瞬時に加速し、真心の右にまわり、構える。
「『雛罌粟』から『沈丁花』まで打撃技混成接続!!」
それは姉から教わった奥義、この天才に繰り出すにはふさわしい技だった。
一つ一つに人を殺せる重みを持った二百七十二種類の打撃が放たれ、あらゆる方向から
外れることなく真心を打つ!!
「が…!」
それらの攻撃を受けても、まだ、真心は倒れない。さすがにかなりの打撲を負ったようだが、
それでも、倒れない。
どころか、攻撃が終わった瞬間を狙い、直突きを叩き込む。
攻撃の直後の隙をつかれ、かわす間もなく直撃を受け再び七花の体が後方にすっ飛ばされる。
「やっぱ、あれじゃなきゃ、駄目か…」
荒い息の下で七花は呟く。
直突きが当たる瞬間に筋肉に力を込めて威力を抑えていなければ、腹をつぶされていた。
それほどの威力は抑えてなお体に激痛を走らせる。
ただの直突でこの威力、次に体勢を立て直され、何かの打撃を喰らえばそれだけで沈むだろう。
そのうえ手は爪がはがれ、甲の皮が向け
血が流れ落ちている。
あの体に二百七十二発の打撃を喰らわせた手が耐え切れなかったのだ。
もう長くは戦えない。
(次で決める!)
七花は満身創痍の体を無理に立たせ、『杜若』を構える。
幸い、今の相手ならばなんとか最後の奥義を繰り出すことができる。
「げらげらげらげらげらげらげら」
対する真心は全身に打撲を負いはしてるものの、全く衰えを見せていない。
狂ったように笑い続ける。
その姿を見て、七花は何かが腹の奥底から湧き上がってくる物を感じた。
限界の見えない敵への恐怖
ではなく、腹の底から煮えくりかえるようなこの感情は
「…ふざけんな」
そう、怒り。
「ふざけてんじゃねえぞ!!」
怒りがどんどんこみ上げてくる。
「そんだけの力があって、そんだけの才能があって、なんでそんなくだらねえ毒なんかに
振り回されてんだ!!」
始めは呪縛などないと思っていた。
だが違う、この少女は誰よりもこの刀に縛られている。
もし、最初から理性を保っていれば、ここまで食い下がることすら出来ていなかっただろう。
刀に縛られた才能。それは七花にとっての幸運。
けれど許せなかった。
同じような才能を力を、生き残るために毒を使ってまで抑え込んでいた人間を知っているから。
許せなかった。
姉が手にすることの出来なかった力を容易に振るいながらも毒に縛られるこの少女が。
「お前は、あんな、あんな刀鍛冶に負けるような奴じゃないだろ!!眼ぇ覚ませ!!」
その言葉が届いたのか、
それともさっきの二百七十二発の打撃を受け、毒刀に亀裂が走ったのが原因か、
「げ…げらげ…しきざき?げらげら…俺…様はっ…」
笑いが尻すぼみになり、少女は頭を抱え、うめく。
まるで、自分自身を取り戻そうかとするように。
それは絶好の好機、だが七花は動かない。
言葉をつむぎ続ける。
「お前は誰なんだよ、四季崎記紀か?」
「ちが…う………違う……違う違う違う違う違う!俺様は俺様は俺様はぁああああ!!」
叫びながら少女は手に持つ毒刀を柄を持っていないほうの手で刀身を掴み、
「俺様は……四季崎記紀なんかじゃ……無い!!」
万力の力を込め、刀をへし折った。
「俺様は………想影…真心だ!」
『毒刀・鍍』が破壊されたところで、一度まわった毒は消えはしない。
だが、少女の真心の眼からは狂気の光が消え始めている。
毒に打ち勝とうとしている。
「真心……か、いい名前だな」
皮肉でもなんでもなく、心の底よりそう言い七花は今度こそ身構える。
「来いよ真心、決着を付けようぜ、まあその頃にはおまえは八つ裂きになってるだろうけどな」
その言葉に真心もまた折れた毒刀を投げ捨て構える。
今までのめちゃくちゃな体勢ではなく、戦うための体勢を。
片や、人類の最終の存在『橙なる種』。
片や、完了変体刀の最終の刀、虚刀『鑢』
意味合いの違う二つの最終は、微動だにせず、にらみ合い。
「がぁああああああ!!」
「虚刀流七代目党首、鑢七花!参る!!」
ほぼ同時に動いた。
二人の距離は一気に詰まり、一瞬にして近接する。
至近距離で七花は『鈴蘭』の構えを取る。そこから繰り出されるのは『鏡花水月』虚刀流最速の奥義!
真心の攻撃より先に七花の嘗底が突きこまれ、さらにそこを起点に
『花鳥風月』 『百花繚乱』 『柳緑花紅』 『飛花落葉』 『錦上添花』 『落花狼藉』
それら六つの奥義を連続して繰り出す、これこそ、七花の最終奥義!!
「『七花八裂』!!」
七つの奥義は余すことなく真心に叩き込まれる!
が
(おかしい…)
最後に『柳緑花紅』 を放つ途中で七花は違和感に気づく。
『七花八裂』の最大の弱点、それは『柳緑花紅』の溜めの長さ、
そして、当然その合間に反撃されることを覚悟していた。
だが、反撃が来ない。
そしてその理由はすぐに判明する。
真心は両腕を大きく振りかぶっていた。
その構えが何なのか七花にはわからない。
だが確実なのは、あれを受ければ、自分が死ぬということだ。
(はめられた!)
恐らく、今出そうとしている技には『柳緑花紅』以上の溜めが必要なのだろう。
それを確実に当てるために、攻撃終了後に出来る隙をつく為に、わざと反撃を控えていたのだ。
さっきまでのように本能で反撃するのではなく、先を見通し反撃を控え、必殺の一撃を繰り出すための戦略。
気づいた時にはすでに遅く、攻撃は止められない。
そして、それが耐え切られることも七花には直感でわかった。
だが、それでも、それでも、七花は勝ちをあきらめない!
全身全霊最後の力を振り絞る!!
「『七花八裂』より『七花八裂(改)』へ奥義強制接続!!」
『柳緑花紅』を起点に『鏡花水月』、『飛花落葉』、『落花狼藉』、『百花繚乱』、『錦上添花』、『花鳥風月』の
順番でつながれる『七花八裂(改)』。
七つの奥義を最速のそして最大の威力を発揮する順序で放つ正真正銘の最後の奥義。
真心の前に構える暇が無かった『柳緑花紅』を『七花八裂』の最後に放つことで補った、
最終を始点にする、究極の強制接続!
どの戦いでも、あの姉との戦いですら使わなかった、いや使えなかった自分の限界点。
それを七花の勝ちへの執念が打ち破る!!
「ちぇりおーーーーーっ!!」
大切な人から教わった掛け声とともに放たれた『七花八裂(改)』は、真心の攻撃の発動を許さずに
最大の威力を持って、真心の体を吹き飛ばした。
人類最終『橙なる種』と完了変体刀完成形『鑢』との戦いはここに幕を下ろした。
「はあ、ひでえ目にあった」
ボロボロの体をひきずりながら、七花は護剣寺の門の前でため息をついた。
その仕草はやはり似合っていない。
「ってか、あれからあんまり時間経ってなかったのかよ」
体感的には一晩中戦ってた気もするが、実際は月の位置がほとんど変わっていない。
「さて次はどこに行くかな」
体のあちこちに激痛が走るが、それでも休む気は無かった。
そんな時間も勿体無い。
「本当にめんどうだ」
口癖である言葉を言い、さらに自分の担いでいる物を見てさらに深くため息をつく。
「余計な荷物も増えちまったし」
そこには、橙の髪をした少女。
想影真心が背負われていた。
「全く、なんでとどめを刺さなかったんだ?俺」
『七花八裂(改)』を喰らい吹き飛んだ真心は、それでもまだ生きていた。
全身ボロボロで気を失って、それでも息をしていた。
本来ならば、その場でとどめを刺しておくべきだった。
だが出来なかった。
やろうと思えば、すぐにできることがなぜか出来なかった。
なぜだろう?
気絶した相手を殺すのは誇りが許さないからか?
相手が子供だからか?
それとも
「とがめに、似てっからかな」
気絶して眠っているような顔は昔、自分の隣で眠っていたとがめを思い出させる。
本人が聞いたら。
「だれが童子属性じゃーー!!」
と突っ込まれてたかもしれないが、残念ながらとがめは不在だった。
「まあ、いいや」
どこかで村でも見つけて、そこで後の面倒でも見てもらえばいいか、と、
相変わらずゲームのことなど全くわかっていない七花であった。
「それにしても変わった格好だよな」
七花は出遭った時から感じていた感想を口にする。
見たこともないような材質の服に、下はもっとわからない構造の何かを履いている。
現代人ならこれがスパッツと言う物だとわかり、さらにちょっとアレな趣味の持ち主なら、
色々と感じることもあったのだろうが、七花にそんな趣味は無いので、変という感想しか浮かばない。
「なんで、こんなめちゃくちゃな力を持ってて、こんな変わった格好した奴のこと
知らなかったんだ?」
とがめと刀を捜して日本全国を旅している間もこんな奴の噂は全く耳に入ってこなかった。
「これなら日本最強も余裕で獲れそうなもんだけどな」
現日本最強であり、数々の戦いでほとんどかすり傷すら負ったことのなかった七花をここまでに
できる実力ならば、日本でダントツの最強になっていてもおかしくない。
実際は真心は人類最終という日本どころか世界最強といっても全く過言ではない存在なのだが、
七花はそんな別世界の事情など知る由もない。
「別に考えなくてもいいか」
単純に欲がなかったとかそんな理由なんだろうな。
と、深く考えるのをやめる。何度もしつこいようだが、七花は考えるのが苦手なのである。
「おかげで心構えも出来たし」
真心と戦うことで、七花は吹っ切れた。
もし、姉と会い、憎悪の眼差しで見つめられても、逃げることはきっと無い、立ち向かえる。
「まあ、会わないに越したことはないけどさ」
立ち向かえるといっても、やはり実の姉とは戦いたくはない。
「否定姫のほうも捜さないとなあ」
今まで薄情にも忘れていた否定姫のことも今更のように思い出す。
一応、とがめ亡き後に旅を共にした間柄である。そちらも無視はできない。
「まあ、先に会ったほうと一緒に捜せばいいか」
結局適当にまとめて、七花は歩き出した。
とがめと否定姫を捜すために、
だが、この時点で七花は知らない。
捜すべき相手と会いたくない相手が共に行動していることを。
七花は知らない。
今背負っている少女がどれほどの存在なのか。
そして自分の現在地すら、七花はわかっていなかった。
「ま、歩いてりゃどっかに着くさ」
恐ろしく単調な思考で七花は行く。どっかに着くために。
七花が去り少し経って、護剣寺の門の上で立ち上がった者がいた。
「すごい…!すごいすごいすごいすごいじゃないさ!!」
その人物、体中に刺青のような紋様を付けた少女はさきほどの戦いを思い出し
興奮したように叫ぶ。
真心といい、この少女といい、よく少女に目を付けられる男である。
だが、正確には彼女は少女ではない。
彼女の名は
真庭狂犬、ゲームが始まるより前、首をすっ飛ばされたまにわにの皆さんの
生き残りである。
「あの虚刀流をあそこまで一方的に…なんて娘なの、あいつ!!」
彼女は自分の意識を別の女性の体に移し変えることで永い時を生きてきた。
その彼女でさえ、あれほどの強さは見たことが無かった。
始めは七花の気をそらす程度の相手としてしか見ていなかった。気さえ反らしてくれれば、
後は背後から襲うつもりでいた。そのための囮と、
卑怯な戦法である。
だが、卑怯卑劣こそが忍者の売り、ましてや相手が虚刀流ともなればなおさらである。
だが、
すぐにそれは間違いであったと気づかされる。
実際には卑怯卑劣など入り込む隙間も無かった。
それほどの存在。
「く、全く、この体なのが悔やまれるわね」
もし、あの時の凍空一族に乗り移る前の体なら、あの瞬間に飛び出し体を乗っ取れていただろう。
だが、今の体は戦乱の時代の頃の体になっていた。
この体は隠密行動には向くが、速さが足りない。
いくら手負いとは言え、虚刀流に迎え撃たれてしまうだろう。
「けど、あきらめないわよ…」
あの体さえあれば、鳳凰と人鳥の二人以外の敵を殲滅することも夢ではない。
そして、最後に自分が死に。
優勝者となる者を二人で決めてもらえばいい。
仲間を目の前で殺した水倉林檎とやらに頼るのは癪だが、この際仕方ない。
どちらが勝ち残ったところで、真庭の里には永遠の繁栄が約束されたも同然だ。
里の未来のために、この命を投げ打てるなら悪くない。
そのためにも、
「あの体を…頂く!」
その決意と共に狂犬は七花の後を静かに追う。
狂犬らしく食い散らかすために。
【1日目 深夜 D-5清涼院護剣寺】
【鑢七花@刀語シリーズ】
[状態] 満身創痍(一応健康)
[装備]捨てた
[道具]捨てた
[思考]
基本 とがめと否定姫を捜す
1 とりあえず姉ちゃんには会いたくないな
2 とりあえず、この女をどっかに引き渡さないと
3 なんで砕いた毒刀がここにあるんだ?
4 げーむ?るーる?何ソレ?食い物の名前か?
※参戦時期は否定姫と旅してる最中です。
※ゲームがなんなのかわかってません
※毒刀に斬られました。
※とりあえずこのままだと爆死の危険大です。
【想影真心@戯言シリーズ】
[状態] 現在気絶中
[装備] なし
[道具]落とした(地図くらい残ってるかも)
[思考]
基本 不明
※まだ、毒が残ってるかも
※七花の繰り出した技は全て習得した?
※二人とも体に制限がかかってます。どっちも全力なら護剣寺消し飛んでました。
【真庭狂犬@真庭語】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3)
[思考]
基本
真庭鳳凰と
真庭人鳥を勝ち残らせる。
1 隙を見てあの小娘の体を乗っ取ってやる
2 真庭の里にもう一度繁栄を
※参戦時期は七花に殺された後です。
※体は戦乱時代の物です。
| ← |
追跡表 |
→ |
| ― |
鑢七花 |
― |
| 015 |
想影真心 |
― |
| ― |
真庭狂犬 |
― |
最終更新:2009年07月20日 23:16