過去の彼方(仮虚の刀)
「結局、心王一鞘流道場にはなにもなかったわね」
「……だね」
現在地はE-4。
近くに寄ったからと言うだけの理由で軽く見た心王一鞘流道場には、
大した物も、そして交渉する相手も居らず、
戦利品は道場の奥に祭る様に置かれていた妙に真新しく見える木刀一本のみ。
ここで休むか聞いたら病院とデパートの近くだから不味いんじゃない移動しましょうと言う事で、
「そう言う訳で、一応今向かってるのはぼくの家なんだけどね」
「え、なに?」
「いや、別に」
「あっそ……で、本当にその人類最強とやらが居るの?」
「あの人をこう言うのに参加させない訳がないとぼくは思うけどね」
現在進路をさっきまでと完全に逆方向の地図で言うD-6の骨董アパートに向けて移動中、
と言う訳だが、
「さっきから聞いてるとその人類最強の請負人とやらの……」
「
哀川潤」
「そう、その哀川潤って人。話し的には居てもおかしくはないだろうけど」
上手く行けば居るであろう人物の話をした所、
「どこの国の最終兵器よ?」
信じて貰えなくて苦戦中。
文字通りと言うか予想通りと言うかであるが苦戦中。
まあ、信じて貰えないと思ってたけど。
「いえ、むしろどこの自衛隊の最終兵器よ?」
「い、いや……流石にそこまで反則的に強くは…………」
――無いんだろうか?
哀川さんだし案外最終兵器彼女にも勝てるんじゃないか無理だな。
って、じゃなくて!
「まあ信じて貰えないだろうけど……」
「いえ、そこまで行くと信じる信じない以前の問題よ?」
言い返せない。
「しかも瞬間移動並みの速度で移動が出来る?
どこの近距離パワー型のスタンドの吸血鬼よ?」
言い返せない。
【ここから先、ひたぎちゃんの愚痴コーナー】
「まったくあなたと組んだのはいろいろと間違えたかも知れないわね」
何だこのツンツンは!怒涛のツンツン劇は!
「ツンツンじゃなくてツンデレよ」
そう、ツンデレ――って認めちゃったよ!
「どうでもいいでしょ?」
ま、まあ、まだどうでも良い事には入るだろうけど…………
「あ、くだらない事言ってる間に橋が見えて来たわよ?」
って何だかんだ愚痴を聞いてる間にE-5まで来ていたらしい。
恐るべし愚痴パワー!
何時の間にか一つのエリアを移動したというのか!?
「まあ、この調子で行けば案が……ッ!」
「ん?どう……ッ!」
まあ、誰だってそうだろうと思う。
バトルロワイヤルと言う状況下で、
橋の近くの暗闇、そこに一人、血塗れの男が何故か橋を叩いていたら、
誰だって声が詰まるだろう。
さて、そしてこちらはその血塗れの男こと、
鑢七花は現在、橋の近くに居た。
「でっかいな!かなりでっかいぞこれ!」
更に詳しく言うと手で橋を叩いていた。
もう橋を手で叩き壊さんばかりの勢いで叩いていた。
一応言うと背中に
想影真心を背負ってはいるが、
十二単を二重に重ねた様な派手な衣装で覆われている為、
髪の毛も含めて顔以外は外部から見えない状況である。
それは、例え彼女の鞘とも言える存在である、
戯言遣いでも彼女と分からないぐらい見えないように覆われている。
一見すればまさしく、
血塗れの上半身裸の男が何やら怪しい物を背負いながら、
橋を叩いている光景以外の何者でもない。
とりあえず簡潔に言えば、
もの凄く怪しい。
これ以上でも以下でもないだろうが、
傍から見るととりあえず怪しい。
しかもそれに本人が全く気が付いていない、
それが厄介な事である。
ちなみに、
叩くのに夢中で遠くからこちらを見ている人物に気が付いていない。
普段の状態なら気が付いていただろうが、
橋に夢中で気が付いていないと言う割とアホな状況である。
見付けたとしても逃げられるだけだろうが。
そんな状況。
しかも地味に辺りに音を響かせながらそれを続ける。
本当に死亡フラグですねお疲れ様でした状態である。
普通なら現状でそれを注意する人は居ないが…………
「不判」
その一言と共に男が一人居た。
そう表現する事が相応しい様に、
何時の間にかそこに居た。
「何がしたいのか、全く持って判断できないな――虚刀流」
一度見たら忘れようが無い奇妙な洋風の男。
顔に『不忍』の文字の付いた仮面。
「先ほどの部屋で奇策士どのが生きているのをこの目で見た時と」
仮面の男が虚刀流から10mほど離れた後ろから徐々に歩み寄って行く。
「同じぐらいの驚きだ」
それに虚刀流が気が付いたが既に遅い。
既に距離は5mもない。
「ん?あ――お前は」
虚刀流が何か言おうとしたが遅かった。
既に手で口を塞がれ、
橋から引き摺り離された。
それだけである。
「今の状況下でそんな事をするとは、
奇策士どのの教育もなっていなかったのではないか。
そう疑わざる負えんな――虚刀流」
口に手を当てたまま、
と言うよりも口をしっかりと掴みながら、
そんな事を言って橋から引き離す。
なかなかの力技をする方もする方だが、
される方も背中に人間を背負ったままではあるものの、
抵抗しないまま離されるのは、
傍から見ると何この状況?な状態である。
…………何この状況!
「そんなにサッサと死にたいのか?
奇策士どのが生きているにも関わらず?」
そう言って手を離したのは、
先ほど仮面の男が現れていた距離から二倍ほど、
つまり橋から20mほど離れた場所であった。
「な、なにすんだよ右衛門左衛門!」
とりあえず文句言うのが遅い気がしないでもないが、
一応と言った感じで文句を言う虚刀流。
微妙に口元が血の色でない感じに赤い気がするは気のせいである。
多分。
「不判」
「判らず!虚刀流――この状況下で派手に音を出す、
それは相手に居場所を知らせる様な物、
自殺行為以外の何者でもないぞ!」
心なし怒り気味であるが、
バトルロワイヤルの話を聞いていなかった虚刀流にとっては――
「ばとるろわいやる?それって美味いのか?」
そして時は停まった。
これ以上ないぐらい完全に停まった。
「不笑」
心なしか微妙に疲れた調子の声、
さっきまでの怒りはどこに飛んだと言わんばかりに、
非常に疲れた様子の
左右田右衛門左衛門。
場所はさっきの橋の近くから少し離れた建物と建物の間、
声を潜めず、と言うより声を潜める必要を感じないのか、
声の高さは変わっていない。
「それでは、何も判らぬままこの辺りを歩き回っていたのか――虚刀流?」
そして、その原因である人物である鑢七花は、
「うん」
背中に人間を背負ったままアッサリと答えた。
何も言わずにこめかみを押さえる姿は哀れみを誘うが、
そんな事、おれには関係ないぜとばかりに、
「で、その ばとろろわいやる って結局は何だ?」
無視である。
「バトルワイヤルだ、バトルロワイヤル」
何だか疲れたよパトラッシュと言わんばかりに肩を落としているが、
七花は原因を全く判っていない。
「簡単に言えば――殺し合い。それぐらいは判るだろう?」
それでも頭に?マークを浮かべたままの虚刀流に対して、
一瞬こいつ殺そうか?と思った右衛門左衛門だが、
一度は負けている身なので負ける確立のある戦いはしない。
右衛門左衛門は冷静である。右衛門左衛門は冷静である。
「殺し合い。
この戦いで生き残った者は一つ願いを叶えて貰えるらしいが、
破れた者には文字通り死を――これで判るか?」
それでも頭に?マークを浮かべたままの虚刀流に対して、
左右田右衛門左衛門は真っ白な灰になれそうな気分だったが、
流石に、あ、これは少し不味いか?と思ったのか、
「あ、あー!判った!うん、判ったぞ右衛門左衛門」
慌てた感じのフォロー、
ちなみに心はこもっていないを投げ掛けた。
それでも一応は効果があったのか、
左右田右衛門左衛門はゆっくりと下に向けていた顔を上げ、
七花を見据えて、
「嘘を付くな――殺すぞ」
さっぱり効果がなかった様子である。
「まあいい――もう説明をするのが面倒だから聞くが」
諦めた口調のまま、
「この後、何をするつもりだ?」
口調のみ変えず、やる事によっては容赦はしないぞ、
そう言わんばかりの殺気を込めて聞く。
「んー……一応、
とがめと
否定姫を捜す予定かな?」
殺気を完全スルーで答える。
「今は否定姫と一緒に旅してるし」
その声には特に何も込められてはいない。
――そうか
――姫はわたしが死んだ後は虚刀流と
――そうか、だったら
――ここは虚刀流が死なないように
――言うべき事は一つ
「ふん――そうか、判った」
「わたしはこれから姫から与えられていた
真庭鳳凰暗殺を」
当然の事のように、
「もう一度行う」
なぜかは知らぬがわたしと同じ様に生き返っているのでな。
そう後に続けながら。
そしてゆっくりと、
「虚刀流――姫を見付けたらよろしく頼む」
座りながらゆっくりと頭を下げた。
対して虚刀流は状況を理解出来ていないが、
「んー、判った」
承諾した。
ここら辺は七花らしいと言えば七花らしい。
そしてそれぞれ合図も無くほぼ同時に立ち上がり、
「それでは、また会おう――虚刀流よ」
「ああ、じゃあな右衛門左衛門」
左右田右衛門左衛門と分かれて数分後、
「――――どう思う」
鑢七花は誰にでもなく呟く様に話し掛けた。
背負っている人間以外誰も居ない状況でである。
普通に怪しいが、
「おれに聞くなよ」
普通に答えが返って来た。
背中の少女が、
「おれもこの状況は今まで見た事ないぜ」
答えていた。
「未来は随分と見たが、こんな未来は見た事が無い」
「ふーん……じゃあいいけどさ」
「そう言えば、さっきの所の近くに誰か居たみたいだけど、どう思う?」
「へえ?気付かなかったけど――――まあ、いいんじゃないか?」
当然の様に話は終わった。
この当然の様な会話。
その相手になるべき少女、想影真心は未だに気絶中。
なのに、気絶しているはずの少女が答え、
それを七花が当然の様に終わらせたのには訳がある。
――回想開始
『おい、虚刀流』
『うお!?お前気絶してたんじゃなかったのか?』
『勘違いするなよ。おれは四季崎記紀だ』
『え?毒刀は破壊したから消えたはずじゃあ?』
『おれはまあ墨みたいなもんだからな』
『え…………どう言う意味だ?』
『付いたらなかなか離れないって意味だ』
『何に?』
『人格に』
『あー、なるほど――じゃあどうやって追い出そう…………』
『まてまて、おれはお前の完成度合いを知りたい……
と言いたい所だが今さっき知ったばっかりだから死にたくない』
『つったってなあ』
『じゃあ聞くがおれが居て問題あるか?』
『う~ん……』
『お前とこいつが寝てる間の見張りぐらいしてやるぞ?』
『う~ん…………』
『とりあえず治療できそうな場所も教えてやるぞ』
『……役に立つな』
『だろ?』
『あ、そう言えば予知がどうとか言ってたけど出来る?』
『今はなんか無理だ』
『……へえ』
『うん』
『んじゃあどこに行けばいい?』
『地図見せてみ』
『地図ってどの地図?』
『最初に配布されたやつだ』
『え?知らねえよ?』
『………………』
『………………』
回想終了――
「あー――今思うとあれだな」
話は終わったかに見えたがまだ七花的には続いていたらしい。
「なんだ?」
少女の声のままで四季崎記紀は答えた。
「見張りになってなかったな」
「ブッ!」
微妙に吹き出して呻く辺り、
左右田右衛門左衛門に後ろを取られていた事を、
少しはまずいと思っていたようであるが、
七花の容赦なさはなかなかである。
「役に立ってないじゃん」
「………………」
何も言えない。
「治療できる所を教えてくれるって言ってたけどダメだったしさ」
「………………」
何も言えない。
「正直殺しても問題ないように思えるんだけどどうよ?」
「…………ま、まあ」
ようやく、
「偶然なんて何度だってあるさ!次は何とかするぜ?」
一番墓穴に入り易い答え方である。
「…………………」
今度は七花が黙った。
「そ、それに後ろに居たのに気が付かなかったから地図も見れたし!」
確かに書かれていない所で現在地を七花に教える為に、
左右田右衛門左衛門が地図を七花に見せた。
それを、こっそりと四季崎記紀も見たが。
「だからおれに任せておけば治療できる施設まで案内してやる!」
その際に四季崎記紀は病院を近くにある事を確認し、
七花をその方向に導いている訳である。
「それは治療出来る場所が判ったのはありがたいけどさあ」
が、追い詰めるのをやめない。
「左右田右衛門左衛門じゃなかったら最悪おれ死んでたかもしれないじゃん」
「…………」
可哀想なまでにあからさまに黙る四季崎記紀。
既に伝説の刀鍛冶とは思えない。
「…………まあいいけどさ」
この後に怒濤の責めが続くと思われたが、
アッサリと七花は引いた。
「?」
それを不信に思うものの、
これ以上責められたくないので黙る。
七花的には治療施設が判っただけ儲けだと思ったようで、
それ以上でも以下でもない理由で引いた訳だが、
それを知らない四季崎記紀である。
「あ、ここで右……だっけ?」
「左だ左!」
二人は病院に向かう。
二人が二人気付かぬうちにポタリポタリと血の跡を残しながら、
病院に向かっている。
【1日目 黎明 E-5から移動中】
【鑢七花@刀語シリーズ】
[状態] 満身創痍(一応健康)
[装備]捨てた
[道具]捨てた
[思考]
基本 とがめと否定姫を捜す
1 とりあえず姉ちゃんには会いたくないな
2 とりあえずこの女をどっかに引き渡さないと
3 なんで砕いた毒刀がここにあるんだ?
4 殺し合いとかどうでもいい
5 四季崎記紀はそれなりに役に立つな
※参戦時期は否定姫と旅してる最中です。
※毒刀に斬られました。
【想影真心@戯言シリーズ】
[状態] 現在気絶中 (猛毒刀与による効果で頭の中に四季崎記紀が居る)
[装備] なし
[道具]落とした(地図くらい残ってるかも)
[思考]
基本 不明
※七花の繰り出した技は全て習得した?
【四季崎記紀@刀語シリーズ】
[思考]
基本 とりあえず生き残る(?)
1 とりあえず七花とこの体(真心)を病院まで案内する
2 虚刀『鑢』の切れ味は確かめたし、死ぬ気はない
3 現状を見極める
※体は動かせるようですが動かす気はない様です。
※二人が通った後に、所々血痕が落ちています
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追跡表 |
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鑢七花 |
― |
| ― |
想影真心 |
― |
| ― |
四季崎記紀 |
― |
最終更新:2009年12月17日 22:18