不殺の刀と不生の刀《前編》
「不面白」
わけのわからないなにやら高い建物が立ち並ぶ鉄の道を音も無く駆け抜けながら、右衛門左衛門は呟く。
「面白くないな、まさか敵をこうも殺し損ねるとは」
あのおかしな二人組といい、
真庭狂犬といい、どちらも十分に殺せる相手だったにも関わらず、どちらも殺せてない。
傍目からみてもわからないが、その表情は不愉快そうに歪んでいる。
「これでは姫様の安全が保障されないではないか…」
頼みはあの闇口とかいう者だが、結局のところどこまで信用できる相手かわからない、
ちなみに虚刀流はあの時にすでに除外されている。
本来ならば、あの場で始末したかったが、炎刀無しでは勝算が薄いことと一応
否定姫には害が無いことがわかったからこそ何もしなかった。
だが後の奴らは違う特に狂犬は狂犬だけは始末しておきたかった。
だが、今頃悔やんでも仕方が無い。
こうなれば一刻も早く姫に合流すること、それが今はそれが第一目標、そして、
「その前に出遭うものは」
不生、生かしはしない
「しかし、虚刀流、以外と冷静であったな…」
虚刀流を見たとき、恐らくは戦いになるだろうと思った。
なにせ、自分こそが奇策士を葬った相手なのだから、怒り狂いはしなくても生かしておこうとは思わないだろうと、それでも一応否定姫のことを伝え、奇策士を助けてやるから代わりに否定姫を頼むと、言葉だけでもかけるつもりだった。
だが、実際はあっさりしたものだった。
というよりこの戦いについてわかってもいなかった。
「まあ、いいか」
虚刀流の心境などどうでもいい、とりあえず姫に害するものではない、それだけが重要だ、ならば始末は最後でもいい。
そう言えば、他にも殺し損ねた二人がいたが、あれにおいても大丈夫だろう。見慣れない格好ではあったが、こちらに話した内容からして殺し合いには乗り気ではないらしい、ならば無視してもいい。
「そして、もう一つ」
真庭鳳凰の暗殺、これについては無理にやる必要もないのだが、一応自分が生前に受けて実行出来なかった任務だ
後腐れが残っていては面白くない。
「全く、死んだ後も気の休まる暇がないな」
別にそれが嫌なわけでもないがな、と締めくくり、再び駆ける、音もなく静かに駆け続ける。
夜通し駆け続けているにも関わらず、その顔には全く疲れは浮かんでいないが、内心は少々焦っていた。
「それにしても、まずいな…」
未だに誰も殺せていない。すでに空は白みがかってきているにも関わらずだ。
「確か、一定期間誰も死ななければこれが爆発するのだったな」
と、忌々しげに首についているものを撫でる。
「まさか、まだ誰も死んでないなどということはないだろうが」
それでも一抹の不安が拭えない。
やはり目につくものは殺す。
それが一番の方法だろう。
そんな物騒なことを考えていた矢先に、彼らは現れた。
「おい、いい加減にしろよ。これで何回目の休憩だ?虚弱体質とかそういうもんを超えてすでに歩く気がねえだろ!?」
「うう、しーちゃん以外と冷たいね、僕様ちゃんだってこれでも精一杯歩いてるんだけど」
「お前今んとこ歩いてる時間と休憩してる時間だったら、休憩してるほうが長いだろ」
人識はあきれたようにため息をつきながらも、道に座り込んだ玖渚の隣に腰を下ろす。
なんだかんだでやはり彼は面倒見がいいのだった。
「てかさ、これが終わったらお前マジで体ちょっと鍛えろよ」
「うに、そうしたいのはやまやまだけど、そういうことをするだけの体力もないからね」
いや、お前やる努力もしてないだろと、突っ込もうとしてため息で呑み込む。
言ったところで、なんやかんやと流されるのがオチだ。
「全く、あんだけ時間かかってまだこんだけしか進んでねえってどうよ?」
そう愚痴りながら地図を開く、このへんだったら恐らくF-6地点だろう。
G-7から夜通し歩いてまだここだ。
いや、夜通しというのも変な話だろう、なんせ、その過程で何回休憩を取ったかもう数えるのもダルイ。
始めは仕方ないか程度で付き合ってたが、いい加減にイライラしてくる。
しかし、それでも玖渚を捨てていかないあたりやはり彼は面倒見がよかった。
「まあまあ、いいじゃん、急いだってしょうがないよ、ほらウサギとカメってどっちが勝った?」
「あんなもんただの詐欺だ。そもそも競争してるときに寝るなんて馬鹿以外の何者でもねえだろ」
「わかんないよ、他の参加者だってこんな時間だから寝てるかもしんないし」
いねえよ、そんな奴、と人識は投げやりに突っ込む。
そこでいったん会話が途切れ、
「あ、そうだ!」
という玖渚の言葉で再び始まる。
「いいこと思いついたよ、しーちゃん」
「なんだよ」
休むなら黙って休め、と人識が思いっきり顔に出しているにも関わらず玖渚は笑顔で続ける。
「僕様ちゃんが休まないで、もっとてきぱき進める方法」
「へえ、何だよ?」
「おぶって」
殺そうと思った。
いやお前、休憩しといてそれは無いだろとかいう突っ込みの前に、殺そうと思った。
そんな気持ちを抑えながら。
「却下」
とにべもなく切り捨てる。
「えー!どうして?いいじゃん、それだったらきっと早く進めるよ」
どこへだよあの世へかよ、といいかけるのを我慢して言う。
「お前を背負って早く進むくらいなら、休憩しながらいったほうがましだっつうの」
「ちぇっ、せっかく寝れると思ったんだけどな」
まじめにヤバイと思った。
お前人の背中で寝るつもりだったのかとか言う突っ込みの前に、ヤバイと思った。
さっきは殺さないでおこうと決意を固めていたから我慢できたが、今回はまずい。
殺そうと思ったうえにさらに殺そうと思ったから、
ちなみに冗談だ。
うん、きっと冗談だよな。
「まったく、兄貴といいお前といい、ストーカーに引き篭もり、なんで俺の周りにはこんな連中ばっか…」
「うに、類は友を呼ぶって言うけどね」
咄嗟に言い返したくても、言い返せない。
ここまでくると、ひょっとして、俺もそういう類の人間なのかとか思ってしまう。
そんな矢先
「不聞、聞くまでも無いと思うが、お前たちも参加者だな?」
と、背後から声がして振り向くと、
仮面をかぶった変人がいた。
いや、待て待て、こいつが変人と決まったわけじゃない。
ひょっとしたらちょっと仮面が好きな人かもしれないだろ。
などと、一生懸命思い込もうとしている人識を差し置いて
「うわあ、初めて出会う人にしては濃い人が出てきたね、人識君」
まず、玖渚がそんな風に第一声をあげる。
「ほら見て、あの仮面何書いてるのかな、ふにん?」
「しのばず、だ、これは不忍と読む」
「しのばず?」
「まあ、言うなれば、私は忍者ではないということだ」
とりあえず、普通の人間じゃないことは確定した。
「まあ、それはどうでもいいことだ。私が忍者であれ、なんであれ、な。そんなことより私にとって大事なのは」
ゆっくりとボウガンの矢先を二人に向けながら、
「お前たちを殺すことだ」
と、話を締めくくる。
「かはは、傑作だ、傑作だぜ」
話を黙って聞いていた。人識が突然笑い出す。
「不判、笑う意味がわからんな」
まだ結構距離は離れているが、ボウガンから矢が放たれれば即死する可能性もある。
決して笑えるような状況ではないはず、にも関わらず人識は笑う。
「かっはっは、虚弱体質に振り回されて、イライラしてるところで、記念すべき最初の相手が出てきたと思ったら、仮面の変な奴だったってか、傑作どころじゃねえぞ」
一通りむなしそうに笑ったあと、
「なあ、とりあえずここはお互いに出遭わなかったことにしようぜ」
と、唐突にとんでもないことを口走る。
「なんだと?」
仮面で表情は隠れているが、それでも声に驚きをのせて男は、右衛門左衛門は聞く。
「それは、命乞いか?ならば」
「違うっつうの、なんで、会って早々に命乞いするんだよ?俺はそんな愉快なキャラじゃねえ」
さっきまでの笑いはどこへやら、イライラとした口調に戻り人識は続ける。
「別にここで戦ってあんたを殺すことに関しちゃなんも思わねえよ、けどな」
「けど?」
「やなんだよ」
「は?」
「てめえみてえな奴が殺す奴第一号なんてごめんだっつってんだよ!」
そこで、堰をきったかのように言葉があふれ出す。
「ったく、なんなんだ、今の状況だけでもわけがわからねえってのに、その連れがこんな虚弱体質、そして、現れた最初の敵はこんな奴かよ?ここは普通もっとそれにふさわしい奴だろ?なんでこんな濃い奴が!?俺、なんか悪いことしたっけ、いや、してないよな!?なのにこりゃねえだろ!?」
ひとしきり喋り、ぜえぜえとあえぎながら最後に締めくくる。
「ほんともう傑作としかいいようがねえ」
「あのさ、しーちゃん」
とりあえず、終わったのかと玖渚が声をかけてくる。
「とりあえず、しーちゃんは愉快なキャラだと思うよ」
「うるせえ」
「とにかくだ」
明らかに緩んできた空気をしめなおそうとするかのように、右衛門左衛門は少し下ろしかけていたボウガンを再び向けなおす。
「お前がどう思っていようと、私はお前を見逃す気はない」
「おいおい、かんべんしてくれよ。美人にそんな台詞言われりゃ嬉しいが、あんたに言われても嬉しくねえ! なんで、俺にそこまで固執すんだよ!」
「その刀だ」
「は?」
右衛門左衛門は人識が腰元にさしている刀を指差す。
「その刀は私の物だ。一本はあったが、もう一本はどこにいったのかと思っていたが、お前が持っていたとはな」
「ああ、そうだったのかよ」
「別に無くても困るものでもないが、一応使い慣れた武器なのでな、返しても」
「ほらよ」
最後まで言い終わる前に、と言うより、刀が私の物だと言ったその時からすでに刀を腰から外し、人識は刀を放り投げていた。
刀は地面を滑り、少しずつ距離を詰めていた右衛門左衛門の足にぶつかって止まる。
そのまま、しばし沈黙。そして
「……なんの真似だ?」
と、右衛門左衛門が理解できないように口を開く。
「ようするに、それを返して欲しくて、俺に挑んできてるわけだろ?だから返してやるっていってんだよ、これで俺は面倒な殺しはしねえでいいし、あんたもまだ生き残れるってわけだ、ほら、やっぱ、俺って真人間だよな」
あまりにも相手を舐めた言動と態度ではあったが、右衛門左衛門は表情を変えずに、じっと刀を見つめ、
「不解」
と再び口を開く。
「私はお前の敵だぞ?その私にわざわざ武器を与えるなど…」
「いいんじゃない?人識君が返すって言ってんだしさ」
玖渚の言葉にも反応せず、右衛門左衛門は刀を見つめたまま動かない。
その様子にしびれを切らしたのか人識は
「ああ!勝手にしろよ!とりあえず返すもんは返したんだしもう行くぜ」
と勝手に簡潔に完結させ、くるりと右衛門左衛門に背を向ける。
最早興味さえ失ったかのように、こちらに向けられるボウガンを無視して
「あ、ちょっと待ってよ人識君!」
突然の行動に驚きながらも玖渚はその後を追いかけ、右衛門左衛門と刀だけが残される形になる。
その様子に、相手の意図は理解できずともさすがに罠ではないと確信したのか、ボウガンを下ろし、
刀を拾うために腰をかがめ、
「まあいい、これでお前たちから刀を奪う必要は無くなったわけだな」
刀の柄を握り、
「だが、お前たちを殺す理由が無くなったわけではない」
次の瞬間、一気に二人の、正確には後方を歩いていた玖渚との距離を詰め、刀を振り下ろしていた。
刀を拾い、ボウガンをしまい、抜刀し、距離をつめ、斬る。
動作は単純、だがそれらは恐ろしいほどの速さで繰り出されていた。
簡単にあらわせば、刀を拾った次の瞬間にそれらの行動を右衛門左衛門はやってのけていた。
常人ならば、目では追いきれないほどの速度で、
相手が玖渚ならば、何をされたのかもわからないまま絶命していただろう。
相手が玖渚ならば。
「かはは、なかなか面白いことするじゃねえか」
「不禁、驚きを禁じえないな、止められるとは」
「ほえ?」
だからこの構図は至極当然であった。
右衛門左衛門の振り下ろした刀を玖渚ではなく人識がナイフで受け止めているこの構図は。
玖渚当人は何が起こったのかもよくわかっていない。
だが、わかっている右衛門左衛門は言う。
「まさか、あの状態から割り込んでくるとはな」
そう、人識ならば今の斬撃程度止められることは右衛門左衛門にも予想はついている。
だが、右衛門左衛門は玖渚を狙っていたのだ。
あの隊列ならば、振り向いてから動いたのでは、人識に玖渚をかばう暇は無かった。
だが、人識は、右衛門左衛門が動いた瞬間に同時に動いていた。
こちらを見るでもなく、そのままの体勢で、流れるように体を回転させ、
玖渚の背後に接近していた右衛門左衛門の前に立ちふさがり、刃を止めていた。
玖渚からすれば、人識が消えたようにしか見えなかっただろう。
結局、殺されそうになった当人が一番最後にその構図を眺めることになった。
「あれえ?しーちゃんいつの間に?」
あまりに呑気なその問いかけに
「いきなり、弱そうな奴から狙うとは、いい雑魚キャラっぷりだな。前言撤回だ、一番最初に殺すのにふさわしいぜ、お前」
全く取り合うことなく、人識は刀を弾く。
「これは、殺し合いだ。弱いものから死ぬのは当然だろう?そもそも…ん?お前」
再び、斬りつけようとして、突然、右衛門左衛門は声を怪訝な物に変える。
「どうしたよ?そんなに俺が美形で驚いたか?」
「近くで見れば、似ているな」
「あ?」
「さっき遭遇した二人組のうちの一人に似ているな、いっくんといったか…」
「いーちゃんだ!」
突如、割り込んできた声に驚いたように右衛門左衛門は玖渚に視線を向ける。
「知り合いか?」
「うん、どこにいたか教えてもらえない?」
「不在、もうどこにもいない」
「え?」
いつも浮かべているよりさらに明るい笑顔を浮かべる玖渚に、氷のように冷たい声で右衛門左衛門は返す。
「私が殺した」
もちろん右衛門左衛門は殺していない。
だが、玖渚の反応を見て揺さぶりをかけることにした。
今の反応からして、さっきの男の知り合い、それも親しい仲であることは間違いない。
ならば、この嘘に反応して動揺し、怒り、闇雲に突っ込んでくればしめたものだ。
今は人識が邪魔で殺せないが自分から突っ込んでくれば殺すのは、
「かはは!傑作だ!傑作だぜ!こりゃ!」
などと考えてるところに。
全く予想もしてない反応を人識がする。
「どうした?お前は奴に似ているが、ひょっとすると兄弟か何かか?」
「はっ、兄弟?んなもんじゃねえよ、兄弟なんざ、あの馬鹿兄貴だけで充分だっての」
「不判、よくわからんな、それではつまり赤の他人ということか?」
「いいや、俺とあいつは鏡のように同じで、対極だ。けどな、俺とあいつは決定的に違うところがある」
「不聞」
人識が話すのを最後まで聞かず、右衛門左衛門がさえぎる。動揺が無いとわかった以上、これ以上喋っても仕方が無いと思ったか、
「どうでもいいことだ。貴様がなんであれ、先刻も言ったように私の目的はお前たちを殺すことと言っただろう」
といい終わると同時に動く。
凄まじい速さで突き出された突きは、やはり同じようにとめられる。
「かはは、なるほどな、こりゃあいつを殺したってのもまんざら嘘でもねえか」
「どういうことだ?」
「ああ?どういうこと?そんなこと決まってんだろ?」
止めた刀の切っ先を押し戻し、人識は笑う、見る者をぞっとさせるような顔で、
「戯言だよ、ばぁか!」
そして、戦闘は始まった。
同じ頃E-4地点
玖渚がウサギとカメのどちらが勝ったという話を持ち出し、人識が詐欺だと言っていたその頃。
同じく参加者であり、実力的にはウサギと言っていいような
鑢七花は。
「くー…」
寝ていた。
別に周りを警戒してもいないように。
「おい、起きろ!」
そんな彼に声が掛けられる。
「う…うん」
たった一声で一気に覚醒するさまは見事だが、まだ寝ぼけているのかしきりに目をこすっている。
はっきり言って完全に無防備、というか頭の悪さ丸出しである。
しばらくぼーっとした後に思い出したように声に応える。
「なんだよ?誰か来たのか」
「いや、そういうわけじゃねえんだがよ」
と、何かの足のついた布団のような物に寝転がっている少女が目を閉じたまま口だけを動かす。
その様は不気味その物だが、事情を知っている七花は別段驚きもせず、逆に口を尖らせる。
「なんだよ、だったら起こすなよ、迷惑な奴だな」
「おいおい、そりゃねえだろ、俺がいなかったらここに来て寝ることも出来なかったんだからな」
「そりゃ、まあそうなんだろうが…」
七花は納得がいかないという風な顔をするが、実際に、いや本人が思っている以上に今眠っている真心、正確には真心の体に残った四季崎記紀には助けられている。
まずもってこの城にたどり着いたとき、七花は立ちすくんだ。
まずでかい
そして大きさもそうだが何より、勝手に扉が開いた。
しかも、その扉にしても透明で中が見えている。
知る人が見れば、ここが病院でそれが自動ドアで材質がガラスというのがわかるのだろうが、当然ながら七花はびびった。
山にこもったサルをいきなり都会に連れてくれば、当然ながら混乱するが、七花も同じようなものだった。
どうしていいかわからずおろおろしてるところに記紀が助け舟を出さなければ未だに中にすら入れなかっただろう。
そして中に入った後も問題だった。
とにかく入り組んでいる。階段はやたらとあるし、部屋も多い、ついでになにか横に文字が書いてある扉もあった。
それがエレベータという名前であることなど七花にわかるわけもなかった。
そこでまた記紀に助けられ、どうにか瓶や箱がたくさん置いてある部屋へとたどり着けた。
後は記紀に言われるまま、色々な箱をかき回し、何かベトベトする布切れのようなものを剥き出しの腕や足に貼って、そこで、
「なあ、これって体とかにも付けといたほうがいいのか?服脱がすの面倒なんだが…」
などと現代でやれば犯罪、というより人として色々やばめなことを口走った七花に
「ん?別にいいんじゃね、正直こいつの体もう大分回復してるしな、適当な応急処置でいいだろ」
と、意図はちがってはいるが絶妙にフォローを入れ、色んな意味でまた助けられた。
そして結局、この最上階のこの部屋に来たというわけだった。なんだかんだで助けられまくりな七花である。
ちなみに記紀は一番下の階の部屋にしようと言ったのだが、ご多分にもれず七花は高いところが好きなので、強引にこの部屋になった。
と、そんなこんなしてるうちにさっきの疲れも出て寝入ってしまった次第である。
はっきり言って馬鹿丸出しなのであった。
「で、だ。これからどうすんだよ虚刀流?」
「どうってと?」
「だからよ、こいつが回復してからだよ」
「言ってんだろ、
とがめを捜すって」
「どうやって?」
そう聞かれて七花返答につまる。
正直何も考えていない。けどそれを認めたらかっこわるいので認めることもできない。
「何も考えてねえみたいだな」
しかし、即座にそれも見抜かれる。
「なあ、虚刀流、今の状況ぐらいわかってるよな?ん?」
「うぐぐ…」
どうもさっきいじめた仕返しらしい、答えられないと見越して、質問を連発してくる。
「ま、いいや、じゃあ今から俺がかいつまんで説明してやるよ」
挙句の果てに上から目線で物を言ってくる。
「ようするにこれは殺し合いなんだよ。しかもわけのわからん力を持った奴による…な」
「はあ…」
「しかも勝ち残れるのは一人、そして一日以内に誰も死ななきゃコイツが…爆発する」
「へえ…」
「勝ち残った奴はなんでも好きな願いを叶えてもらえるらしいが…っておい!」
話の途中で七花が寝ていた。どうも難しすぎたらしい。
「は…お、起きてるぜ」
半分垂れた涎を拭きながらも取り繕うが、バレバレである。
「全く、これが俺の作った刀の完了だってか…悲しいぜ」
動いてるのは口だけなのに、哀愁が伝わってくるあたり相当に悲しいらしい。
さすがにヤバイと思ったのか七花は弁解する。
「や、でも今までの話はわかったぜ、ようするに殺し合いだろ?」
「そら、さっきあのお面野郎にも言われただろうが…」
「うぐ…」
「まあ、いいや…そんだけわかってりゃ十分か」
もうこれ以上突っ込んでも悲しみが増すだけと悟ったか、話を切り上げ記紀は本題へと入る。
「ようするにだ、あの白髪のお嬢ちゃんもこの殺し合いに巻き込まれてるかもってこった」
「とがめが…」
「もしそうだとすれば、あのお嬢ちゃんも誰かに狙われてる可能性があるだろ?」
「そ、そんな!?」
ようやく話の重大性がわかったらしい七花に記紀は続ける。
「今のこの小娘はよ、俺の毒にやられて突っ走ってたが、最初からこの殺し合いに乗り気な奴もいるだろうぜ、なんせ願いがなんでも叶うってんだからな」
淡々と、記紀は語り続ける。
「しかもよ、俺はコイツの記憶をちと探ったんだが、ヤバイ連中が結構いたぜ、さすがにその連中がどんな奴でコイツがそいつらにどんな感情を持ってるかまでは探れねえけどよ、特に上げるとするならやっぱりこいつだな。名前は
哀川潤」
「あいかわ?そんな奴聞いたことねえけど、強いのかよ?」
「ああ、強いぜ、聞くも馬鹿馬鹿しいあだ名を多く付けられてるが一言で表せば、人類…最強だ…」
「じんるい…最強…」
その言葉の重みに発した本人である記紀でさえ畏怖を感じる。
そして当の聞き手である七花もその重みを感じるのか、しばらく顔をしかめ、そして重々しく口を開く。
「じんるいって何?」
「お前、もう鑢の名を捨てろ!そしてどこかで自殺しちまえ!全く何がどうなったらこんなのが完了形になっちまうんだ!?」
もう声だけなのに嘆きがもろに伝わるほどの突っ込みを入れたあと、もう説明するのも面倒になったのか一気に言い切る。
「ようするに、こいつとおんなじくらい強いってことだ!」
とりあえず、この不毛な会話を早く終わらせたい一心で言った言葉ではあったが、それはあまりに直接的すぎた。
「はあ!?」
その言葉に今度は七花が怒鳴る。
「おかしいだろ!?こいつみたいな奴が無名でいただけで驚きなのに、それと同じくらいのがもう一人いる!? どうなってんだよ、それじゃ俺が日本最強を名乗ってのが馬鹿みてえじゃねえか!?」
「ええい!逆切れすんな!そしてお前は馬鹿みてえじゃなくて馬鹿だ!」
言い返して何か最早会話の質が一気に下がってしまったことに気づいた記紀は気づき強引にまとめる。
「なんにせよ、俺の見た未来にはこんな連中いなかったが、いるのは事実だし仕方ねえだろ!それにだ、お前にとって大事なのはそこじゃねえ、あの嬢ちゃんのことだろうが」
「何?」
「もし、コイツに近い奴があの女を殺しにかかって生き残れると思うか?」
そんなこと聞かれるまでもない。
ウサギにすら負けると自負するとがめがこれほどの相手に生き残れるはずがない。
それこそあっという間に障子紙を破り捨てるように、殺されるだろう。
「け、けどよ…」
それでもなんとか、なんとかその絶望的な事実を否定したくて、必死に記憶を探る。
彼自信似合わないことだとわかっていてもとがめが絡んでるならそんなことは言ってられない。
そして、一つの希望に行き当たる。
「そ、そうだ、何か最初に制限がどうのとか言われたじゃねえか!?俺たちが公平になるようにって」
「へえ、そんなことは覚えてたのかよ?そりゃあすごいな、けど無理だ」
感心するそぶりを見せながらも、七花の希望を記紀はあっさり切り捨てる。
「こいつと戦ったお前ならわかんだろ、こいつの化け物じみた力がよ、確かにコイツの力はある程度の制限を受けている。けどな、所詮ある程度なんだよ、お前にしたってな、反面弱い奴に対しての底上げが行われたとは思えねえよ」
「そ、それじゃ」
「不公平だ!なんて言うなよ世の中なんざそんなもんさ、そもそもそこまで公平を重んじるってならこんな奴を連れて来る必要なんてどこにある?適当な連中をかき集めりゃいいだけだろうが」
反論したくても出来ない、全てにおいて筋が通り過ぎているからだ。
さらに記紀は続ける。
「こんなありえねえことが出来る奴の思惑なんざしらねえがよ、奴の見たがってんのは人智を超えた連中の殺し合いなんだろうぜ、だとするなら参加者全員をあの嬢ちゃんにあわせるわけねえだろ。ようするに嬢ちゃんみたいなおそらく奴らは餌なんだよ、化け物みたいな連中がやる気にさせる、な」
「どういうことだ?」
「例えばよ、お前率先して相手を殺したいとか思うか?」
その問いに七花は首を横に振る。
とがめの命令ならば相手を殺すことにためらいはないが、それ以外のことで殺しをしたいとは思わない。
所詮自分は刀なのだから。
「そう、力を持ってても戦いたがらねえ奴だって結構いるだろうさ。じぶんが殺されることになってもな。けど、もし他の連中が自分の大事な、例えばお前にとっての嬢ちゃんを殺すとか思ったらどうするよ?」
そんなこと言われるまでもない、とがめに害を為すなら。
例え誰であろうと容赦するつもりはない。
「そういうこった。結局自分だけじゃなく、大切な誰かの命を守るためにも誰かを殺さなきゃいけねえんだよ。…そろそろ俺の言いたいことがわかってきたか?」
「ああ」
鈍い七花もようやく記紀の言わんとすることを理解する。
ようするにどうすると言ったのはこれからのことだけではなかった。
この少女を真心をどうするか、と聞いたのだ。
先ほどは毒刀に毒され正気を失っていたから襲ってきた。
だが記紀の言葉通りならば、真心もまた大切な者がいるとすれば、正気に戻った今もこちらを敵とみなさない
保障はない。
いや、もし敵意を抱かないにしてもいずれこの力がとがめに向けられるかもしれないのだ。
ならば、いっそ
「ここで、やっちまえ、てか」
「ああ、正直こいつが起きたらヤバイんじゃねえか?お前コイツに勝てるかよ」
そんなものは聞かれるまでもない、勝てる自信など無いにも等しい。
恐らく、先ほど繰り出した技は覚えられているだろう。そしてこちらの動きも
「どのみちあの時点でお前に殺されるのが普通だったんだ。今やられても文句は言えねえさ」
「こいつが死んだら、あんたはどうなるんだ?」
「そりゃ俺も消えちまうな、けど今更だろ?お前はあの時俺を八つ裂きにしたじゃねえか」
そう、確かにあの時、鳳凰に乗り移った記紀を七花は殺した。
だが、あれは毒刀を得るためだ。今は理由が、
「理由がねえなんて言うなよ、刀なんてのはそういうもんだ。斬る理由を選んでんじゃねえよ」
「あんた、死にたいのかよ?」
「いんや?出来ることならこの先にいる人外の連中相手に俺の作った最高傑作がどこまで戦えるのか見てみたいに決まってんだろ?」
「だったら」
「けどよ、この場でその最高傑作に斬られるってのも職人冥利に尽きるってもんだ」
脅すような七花の物言いに、記紀はひるむことなく言い返す。
その言葉は今までの言葉のように飄々としたものはなく、職人の意志を感じさせる。
そんな言葉だった。
「そんで、どうすんだよ?」
答えを求められても、簡単には出せない。
記紀の言うとおりなら、自分は刀としてこの少女を斬るべきだ。
持ち主を守ることもまた刀の役目なのだから。
けれど七花は人間でもある。一度殺さなかった命を殺しなおすのもためらわれる。
(あいつなら、右衛門左衛門ならどうしたかな)
刀として作られたわけでもないのに、下手をすれば自分よりも刀らしいあの人間ならば、
いや、そんなことは考えるまでもない。
あの男なら顔色一つ変えず。殺してのけるだろう。
彼もまた刀、なのだから。刀として刀
ならば自分もそうすべきだ。所詮刀に感情など必要無いのだから。
七花はむくりと体を起こし、手を手刀の形にして、ゆっくりと真心に近づく、
そして真心のすぐそばで手刀を振り上げ
「やっぱやめとくよ」
と、唐突に手を下ろす。その判断に驚いたか記紀は言う
「それでいいのか、お前は刀だぜ?邪魔者は」
「俺は刀でもあるけど、同時に人間でもあるんだ、一度助けた人間を無抵抗なうちに殺しなおすのはやっぱり――やだよ」
みなまで言う前に七花はその言葉を否定する。
そう、自分はただの刀ではない、鑢七花というれっきとした人間なのだから。
持ち主がいない今は自分で判断し、自分で考え答えを出す。それが今の自分だ。
「もし、こいつが回復したら今度こそ殺されるかもしれないぜ?それに嬢ちゃんだって」
「そのときはそのときだ。襲い掛かってくるなら俺だって迎え撃って戦うさ、殺すつもりで」
その時にもしも勝てたなら今度は容赦しない、勝てる勝てないなど別にして、それが今自分が人間として出せる
一番の答えだ。
それに、と七花は続ける。
「とがめだって簡単には殺されないさ。あいつは奇策士なんだぜ?それになにより、俺の所有者だ」
そういって笑う。心の底から自分の所有者を信じてる。そう感じさせる笑顔で。
その答えに記紀はため息をつく。
「全く、本当に情けねえなあ、それで本当に俺の作った刀かよ」
「悪かったな」
ふてくされたように答える七花に、半ばあきらめのように記紀は言う。
「まあいいさ、それがお前にとっての姿なら、まあ、完了ってことなんだろうさ、その完了したお前がどこまでやれるか見せてもらうとしよう」
「ああ、ただしその頃にはあんたは八つ裂きなってるだろうけどな」
「なんでだよ!?」
と、最後は半ば突っ込むような形で会話は終了した。
それにしても、と、七花は思う。
この刀鍛冶は本当に意地が悪いと思う。
恐らくは記紀はこうなることがわかってて、それでも動揺させてやろうと、こんな話をしたに違いない。
人をこんな時間に起こしてまで、それも理由はさっきのいじめの意趣返しと言ったところなのだろう。
本当に底意地が悪い、などと見積もってた。
この言葉を聞くまでは。
「にしてもつまんねえ、この場で修羅場が見れると期待したんだがな」
「は?」
言葉の意味がわかっていない七花を無視して記紀は続ける。
「どうも当面は戦う必要が無いみたいなのはわかったか?だから、もう目ぇ開けろよ、真心」
その瞬間、真心の眼が億劫な様子など微塵も無く開かれ、にやりと笑い、ガラリと変わった口調で言う。
「みたいだな、どうもあんたそこまで悪い奴でも無いみたいだ」
その瞬間七花は確信した。
この刀鍛冶最低だ、と。
【1日目 明朝 E-4休息中】
【鑢七花@刀語シリーズ】
[状態] 大分回復した
[装備]捨てた
[道具]捨てた
[思考]
基本 とがめと否定姫を捜す
1 とりあえず無駄に殺しあいたくないな
2 ここは一体なんなんだ
3 人類最強ってどんな奴だ
4 四季崎記紀うぜえ
※参戦時期は否定姫と旅してる最中です。
※毒刀に斬られました。
※ゲームについてちょっと理解しました。
【
想影真心@戯言シリーズ】
[状態] 覚醒 (猛毒刀与による効果で頭の中に四季崎記紀が居る)
[装備] なし
[道具]落とした(地図くらい残ってるかも)
[思考]
基本 起きたばっかりで不明、話は全部聞いてた模様、七花は敵でないと認識
※七花の繰り出した技は全て習得した?
【四季崎記紀@刀語シリーズ】
[思考]
基本 とりあえず生き残る(?)
1 虚刀『鑢』がどの程度戦えるのか見たい
※体は動かせるようですが動かす気はない様です。
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追跡表 |
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鑢七花 |
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想影真心 |
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四季崎記紀 |
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最終更新:2009年12月17日 22:21