神はあまり役に立たない?
真庭忍軍十二頭領が一人、
神の鳳凰は走る。
他の二人の頭領、感染の狂犬と増殖の人鳥を探す為、
真・真庭の里を目指して駆ける。
「………………」
街中をまるで鳥かの様に、
一直線に里を目指す。
今、考えている事は三つ。
一つは情報収集。
片手を建物の壁に触れる様に走りながら、忍法・記録辿りで誰かが通ったかを調べている。
今の所は特に誰かが通った様子はないので特に意味は無いが。
一つは、あの化け物の様な天才に挑む為の策。
天才の様な化け物か化け物の様な天才か、
しかし思い出すのはあの戦場に突如として乱入し、
破壊と血肉と爆炎を撒き散らしたあの
鑢七実と言う名の『虚刀流』。
技と力、ほぼ全てに置いて圧倒的な『虚刀流』、
幸いとも言うべきは極端に無い体力。
「………………」
それを除けば恐らく誰よりも強かったあの『虚刀流』、
あれを一時的でも真庭忍軍に入れれれば、真庭忍軍の勝率は格段に上がる。
しかし、交渉に応じるか?
応じないだろう。
姿が見えていない段階から爆炎を撒き散らし、
姿が現れたと思えば拮抗していた戦闘を完膚なきまでぶち壊した。
あの状況で行ってきた奇襲とも言うべきあの行動からすれば、交渉する気は零、殺す気が百と考えられるだろう。
仮に交渉出来たとして、こちらが有利に交渉出来る可能性は無い。
だったらどうするか?
あの『虚刀流』を放って置けば残り三人になった真庭忍軍十二頭領。
我を含めた残り三人がどうなるか?
この戦いのルールに従って殺されるだろう。
「………………」
だったら我はどうするべきか?
現状であの『虚刀流』と対抗する術は?
足を止めずに考える。
「…………人鳥は?」
臆病ではあるが恐らくここで生き残れれば主になるであろう人鳥はどうだろうか?
忍法運命崩しと柔球術の合わせ技で倒せるか?
…………いや、無理だろう。
文字通り見ただけであの柔球術を見破られて終わる。
そして最悪、忍法運命崩しまで見取られたら…………
それから考えれば却下するしかない。
だとすれば、
「…………狂犬は?」
仲間意識が強過ぎる事を除けば優秀であり、里の相談役でもある狂犬はどうだろうか?
忍法狂犬発動は文字通り女に対してのみの一撃必殺技に近いが、第一条件として相手に触れなければならない。
果たして指一本でも触れられるか?
――難しい問題である。
が、一考するだけの価値がある問題でもある。
そして最後に残ったのは、
「…………我は?」
真庭忍軍の中ではまだ普通の考え方を出来る我。
忍法命結び及び忍法断罪円及び忍法記憶辿りなどなど、
しかしはたして我の忍法が通じる人間がこの戦いに何人居るか?
先の館での戦いの三人にはそれぞれに邪魔されながらであったが当たらず、手の内を見せるだけに終わった上、もしもあの時の戦闘をあの『虚刀流』に見られていたら?
――時間稼ぎも出来るか分からない。
「現時点では狂犬が一番有利……か」
結果的にあの『虚刀流』と戦うと言う条件のみなら我が一番役に立たないとは…………
何とも言えない。
そして最後の一つは里を目指す事。
そこに居るかも知れない二人と合流する事を第一に。
「さ、さて、真庭忍軍を集める為に急がねばならんな」
少なくとも人鳥とだけでも合流出来れば、忍法運命崩しの効果で我等に運が向いて来る。
そうすれば殺しも情報収集も上手く行くはず。
いや、狂犬も忍法狂犬発動で女から情報を手に入れられる。
今現在のこの複雑怪奇な状況を整理する為の足掛かりになる上、その肉体を使えばどこかの人間の体を乗っ取っての不意打ちも可能。
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………あれ?
我が地味に一番役に立てない状況?
戦闘力のみなら上だが、今、この状況を有利に動くと言う観点のみで行くと、
「わ、我の忍法が一番役に立たぬ…………」
と言う事に気が付いたが、
「い、いや、我には忍法記憶辿りが……」
あるが元は川獺の忍法。
いやいやいや、それを考え出したら我の忍法のほとんどが他人の物。
何やら
真庭鳳凰が袋小路に嵌り出したが誰も心配する必要はない。
真庭鳳凰の趣味は気苦労なのだから。
大事な事なのでもう一度。
真庭鳳凰の趣味は気苦労なのだから。
なんら心配する必要はない。
「ふむ…………どうしたも」
真庭鳳凰が趣味とも言える様な、と言うより趣味の気苦労を重ねていた所で、
足場が突如として消えた。
……いや、足場が消えたと言う表現は正しくは無い。
正しく言うと足場の無い所に足を踏み出したと言う方がむしろ正しい。
そして無論、足場の無い所に足を出してそのまま何事も無いかの様に歩く事は不可能。
つまり――落ちた。
落ちたのは考え事をしていた性ではあるが、その後の反応は流石は忍者と言えただろう。
崩しかけていた体を強引に立て直し、着地の態勢を取り…………
「ボチャン」とでも言い表す様な派手な水音を立てた。
そこから先の行動もまた、流石は忍者と言える。
落ちた場所から息の続く限り一気に水の流れの上流を目指して泳いで行った。
その時、水に落ちた時に発生した波紋、それ以外に目立った水の波紋を一切残さずに。
何処とも分からない橋の下。
「チャプン」と言い表す様な物静かな音を立て、真庭鳳凰は鼻と目だけを軽く出す。
新鮮な空気の確保と周りに誰も居ないかの確認の為。
今、手持ちの物は全て水で濡れている状態、
もしもこの状況に陥っている鳳凰が誰かに気が付かれたらどうなるか?
この戦いに乗っている人間だったら問答無用で襲って来るだろう。
水で服が濡れている性でまともに体を動かせない鳳凰が、その相手に勝てる可能性は低く、ましてや負ける可能性の方が高い。
用心に用心を重ねての行動であった。
「――――――」
そして自分自身の考えが正解であった事を知る。
近くでの戦闘の物と思われる金属音、
荒い足音が一つ、二つ……おそらく二人。
近く……おそらくそこまで遠くない近くでの戦闘。
そして両方とも――玄人。
複数からなる金属音からして接戦。
忍者らしくそこに不意打ちをして二人とも殺せるか?
――――否。
そこまで甘い戦いとは思えない。
ましてや自身が万全でない状況でそんな事はしない。
二人の玄人が本気で戦っているのなら一人は死ぬだろう。
若干希望的観測ではあるが、ならば、わざわざ手を出す必要はない。
そう考え、再び潜る。
その二人の玄人の内の一人が、
まさか自身の親友だった人間だったとは、
考えもせずに。
再び水面下の移動を始めた。
――――――チャプン――――
無音……ではないが騒々しいとも言えない程度に川の流れる音が聞こえる中、
一つだけ少し違った音が辺りに響く。
その音は精々魚が水から飛び出した程度の音であり、普通なら聞こえても注意はしても警戒はしない程度。
しかし、その音を立てた本人は慎重に慎重を重ねている様に、一度引っ込めた頭をゆっくりと水から出して行く。
しかも今度は、一切音を立てずに。
そして辺りを見渡す。
その場所は川と川との分かれ目。
川の十字路とでも言い表す様な特徴的な地形の場所。
そこが真庭鳳凰が目指した場所だった。
「着いたか…………」
その一言と共に辺りを見渡す。
地点としては恐らく間違いない。
そして辺りに誰も居ないかの確認も終わった所で川からゆっくりと抜け出す。
「……しかし…………」
全身に張り付いき動きを阻害する服、
大した距離を泳いでいない筈なのに付き纏って来る倦怠感、
思わず顔を顰める。
普段ならばこの程度では大した倦怠感は訪れない。
これがあの主催者の言っていたハンデ。
そう思うと背筋に寒いモノが走る。
まさか人の基礎体力まで自由自在に操れるのか?
だとしたら、
「これは不味いな……」
予想以上のハンデ。
流石に人鳥の性格と思考力を考えれば無茶をして体力を激減させる事はないだろう。
が、狂犬の方はどうだ?
狂犬の性格から考えればあっと言う間に無茶を重ねて追い詰められかねない。
つまり…………
「急がねば」
急いで狂犬を見付けなければ、最悪、この戦いが始まって最初の(戦いが始まる前のは抜いて)、最初の真庭忍軍の死者になりかねない。
そうなれば、
あの『虚刀流』に対抗する術はほぼ………………無い。
「急がねばならぬが…………」
そう、急がなければならない。
分かってはいる、分かってはいるが、
「ここで無茶は出来ない」
当初の予定通りに事を運ぶしかない。
手始めに、
スーパーマーケットなる場所で武器と服を乾かし、体力の回復を図る。
それからでないと、
「……我の体が持たぬ」
そう言いながら疲れを感じさせない様に歩く。
跡に水の跡を残しているのに気が付いていながらも、
歩くしかなかった。
【1日目 深夜 F-7】
【真庭鳳凰@刀語シリーズ】
[状態]身体中にかすり傷、疲労(大)、全身びしょ濡れ
[装備]ジェリコ941
[道具]支給品一式、ジェリコ941の予備銃弾(残り60パーセント)、ランダム支給品(1~2)
[思考]
基本 真庭頭領(特に狂犬)を探す
1 地図の果てを確かめる。
2 主催者が本当に願いを叶えるだろうか・・・?
3 体力を回復させる
4 スーパーマーケットなる場所で身体などを乾かす
最終更新:2009年12月18日 09:25