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30話


0.


「ピアノバー……クラッシュ倉敷? ほほう、これは中々ハイセンスな店名ですね」
 倉敷市に何の恨みがあるのですか。
「失礼、噛みました」
 いや、わざとでしょう。
「噛みまみた」
 わざとじゃない!?
「ガリガリだ」
 誰がですか。
 ちなみに私は、人並みにはあると自負しています。


1.


「……まあ、なかばテンプレと化した掛け合いも繰り広げましたし、そろそろ真面目にやりましょうか」
 そう言って、八九寺さんは緩みきっていた顔をキリッと引き締める。
 私は最初から真面目にやっていましたよ、と冷めた視線を向けるが、
 少女は『ピアノバー・クラッシュクラシック 地下二階』と書かれた看板、
 そしてその看板を掲げたビルを見つめるばかりで、こちらの抗議の視線に気付く気配は無い。
 ……まあ、いいでしょう。生憎、つまらない事にこだわっていられる状況でもありませんしね。

「クラッシュクラシック……病院坂さん、地図にも書かれていましたよね」
 八九寺さんの問いに、私は手にしていた地図を開く。
 そこには確かに、目の前の看板と同じ文字が表記されていた。
 私達の現在地でもあるその場所を指差しながら、地図を八九寺さんに見せる。
「ふむ……幸い、ここから澄百合学園までは、そう距離は無いようですね。
 運がよければ、かつ精一杯頑張れば、何とか迷わずたどり着けるような気もします」
 たしかに、ここから学園へは大通りで結ばれていますし、余程の事が無い限りは難なく行けるように思えますね。
 ……逆に言えば、これで迷ってしまうようならば彼女の『怪異』の力は余程のものである、との証明にもなりますが。

 ですが、私は今すぐ学園に向かおうとは考えていませんよ。

「……え?」
 不思議そうに、八九寺さんは私の顔をじっと見つめる。
 それも当然かもしれませんね。つい先程まで、たしかに私達は学園を目指して進んでいたのですから。
 しかし、興味深い事実に気付いてしまったからには、予定を変更するのもやむをえません。
「……興味深い……事実?」
 八九寺さん、あれは何に見えますか?
 近くの大分寂れた感じの建物に、指を向ける。
「何って……ただの本屋では? 講談書店と看板にも書いてありますし」
 ええ、その通り、あれはただの本屋であり、本屋以外の何物でもないでしょう。
 では、あちら……本屋とは反対側の、黄色い屋根の建物は何でしょうか?
「どこからどう見ても、花屋でしょう。目高フラワーショップ。病院坂さん、一体何が言いたいのですか?」
 八九寺さんの問いに、ここを見てください、と私は地図のある一点――私達の現在地、ピアノバー・クラッシュクラシックと表記された、その部分を指し示す。
「これがどうかしましたか?」
 八九寺さん、この地図と周囲を見比べてみて、何か違和感は感じませんか?
「違和感と言われましても……ああ、主催者はこの会場をどうやって作り上げたのか、とかは気になります。
 あの人たちは『魔法』を使える、と言っていましたが」
 まあ、この会場は彼ら――主催者の持つ特殊な力で作られたものだとは思います。
 元々あった町を、この殺し合いのために住人を消して使用している、とは考えにくい。
 先程町を歩いてもみましたが、この町でかつて人が生活していたとは全く感じられないのですから。
 やはり、この会場は主催者が言うところの『魔法』によって生み出された、ということでしょう。
 ……謎を『魔法』の一言で片付けてしまうのは、ごっことはいえ探偵を名乗る身として望ましくありませんがね。
 ただ、私が言う違和感とはその事ではないのです。

「では、違和感とは一体……?」
 この辺りには、目の前の『クラッシュクラシック』以外にもいくつかの物件があります。
 『講談書店』『目高フラワーショップ』の他にも、あちらの方にはコンビニがありますし、その向こうには美容院もあります。
 にも関わらず――【地図に記載されているのは『ピアノバー・クラッシュクラシック』のみ】です。
 さらに言えば、看板によれば目の前のビルにある店舗は『クラッシュクラシック』だけでは無いというのに。
 八九寺さん。E-7の『コーヒーショップ』にしてもそうですが、何故ここだけ? とは思いませんか?
「たしかに不自然ですが……では病院坂さん。
 病院坂さんは、どうしてここだけが地図に書かれている、と考えているのですか?」

 予想通りの問いを、少女が返す。
 私自身、確証を持っているわけではない。
 ただ、このような細かい発見が、事件解決の大きな手掛かりへと繋がることはミステリにおけるお決まりのパターンだ。
 だから私は、自信を持って視線で八九寺さんに伝える。

 この『ピアノバー・クラッシュクラシック』には、主催者に繋がる何かが隠されているのではないでしょうか?

 と。
 この『クラッシュクラシック』の地図への記載にどのような主催者の意図があるかはわからない。
 しかし、記載に『何の意味も無い』ということは、まず有り得ないだろう。
 さすがにそのまま主催者に繋がるような直接的な情報があるとは思えないが、他の場所には無い何かは見つけられるかもしれない。
 ならば、その何かから主催者の思考を推理することは可能。
 そして、主催者――犯人の思考を知ることは、事件解決への大きな一歩となる。

「成程……。つまり、このバーを調べてみようということですね!」
 ええ、私の考えが正しければ、何か発見できるはずです。
 バーがどれだけの規模かはわかりませんが、然程時間は取られないでしょう。
 澄百合学園は逃げません――先にこちらを調べても構わないでしょうか?

「もちろん構いません! 家探しですね、わきわきします!」
 できればもう少し探偵ごっこにふさわしい表現でお願いします!
 というか、この場合はわきわきじゃなくてわくわくです。手をわきわきして何がどうなるというのですか。
「失礼、噛みました」
 違う、わざとです……。
「噛みまみた」
 わざとじゃない!?
「蟹ライダー」
 それはどこのシザースですか。


2.


後日談というか、今回のオチ。

ビルの階段を下り、さらに下り、地下二階へ私たちはたどり着く。
ピアノバー、クラッシュクラシックの扉は、既に目の前。
八九寺さんが、扉に手をかける。

しかし、八九寺さんが触れるよりも早く――その扉は開いた。
それはドアが自動ドアだった、などという理由では無く。

「これから出かけようとしたところに来客か。
 本来ならこの店は未成年お断りだが――こんな状況だ、悪くない」

 内側から、燕尾服の男が扉を開いたから――



「ようこそ、ピアノバー・クラッシュクラシックへ」



【一日目 深夜 H-6 ピアノバー・クラッシュクラシック】

【零崎曲識@零崎一賊シリーズ】
[状態]健康
[装備]無し
[道具]支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考]
基本 他の零崎一賊と合流する、哀川潤と再会する
 1 とりあえず双識と軋識を探す
 2 出来る限り哀川潤と再会したい
 3 人識がいる場合、余裕があれば合流する

 ※哀川潤と再会(または自分か彼女が死亡)するまで、少女しか殺さない決意をしています。少女の定義は後の書き手さんに任せます。
 ※自分や双識は水倉神檎に蘇生されたものと考えています。
 ※零崎人識がいる事を知りませんが、参加している可能性はある、と思っています。

【八九寺真宵@化物語】
[状態]健康
[装備]無し
[道具]支給品一式、ランダム支給品1~3(確認済み?)
[思考]
基本 とりあえず成り行き任せでうろついてみる。生に執着する気もないが、苦しみたくもない。
 1 ……どうしましょうね、この状況
 2 当面、病院坂迷路に付き合って行動する?
 3 ピアノバー・クラッシュクラシックを迷路と家探し

 ※どうやら現在は、身体的にはほぼ「普通の人間」のようです。
 ※彼女の存在は普通の参加者と同様、全ての参加者が認識でき、触れることが出来ます。

【病院坂迷路(オリジナル)@世界シリーズ】
[状態]健康
[装備]無し
[道具]支給品一式、ランダム支給品1~3(確認済み)
[思考]
基本 「探偵役」として主催者の思惑を探り出す。生き残ることにはさほど興味がない。
 1 どうしますかね、この状況……
 2 八九寺真宵とピアノバー・クラッシュクラシック内を探索
 3 八九寺真宵とは、とりあえず今は行動を共にする

 ※自分が死亡後に「復活させられた」かもしれない、と考えています。
 ※八九寺から『怪異』に関する説明を聞き、八九寺と同程度には『怪異』について理解していますが、吸血鬼、蟹などの具体例まで聞いたかどうかは不明です。


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最終更新:2009年12月18日 09:46