私は生きているのか?死んでいるのか?
――意識ははっきりとしている、だが何も見えない。
少しずつ壊れていくような気がする、精神が押し潰されて行く――
私は今ここで私で在るのか・・・
『・・・・コイ』
――自分を呼ぶ小さな声が聞こえた
闇の淵、何も見えない筈の景色に何かが現れる。
はっきりとした形では無い、だがそれは私に語りかけてきた。
『ナゼ、オマエハココニキタンダ?』
「・・・・力を求める為、誰よりも強くなりたくて・・・・過ちを侵した」
『ナゼ、オマエハチカラヲモトメタンダ?』
「・・・・・・・。こんな所でお前に話した所で仕方が無い事だが、話してやるさ」
梓、という名の一人の少女が居た。
幼い頃に両親が病死、施設に預けられていたが、やがて霧月家に引き取られる事となった。
霧月家の長女は、彼女を自分の妹のように想い、彼女と一緒に過ごすことを好んだ。
だが梓は、心を開く事は無かった。
周りの人間から常に暴力を受けていた少女は、人との交流を拒絶していた。
親密に接し、彼女の考えを知ろうとした者も次第に落ち込み、自問自答を
繰り返した。
ある日、梓が突如姿を消した。
霧月家の長女は必死に彼女の事を探したが、見つかる事は無かった。
諦めて家に帰ると、家の様子が明らかにおかしい事に気付く。
そして、居間に入ると――
彼女はそこに居た。
両親が倒れた、血の海の上で。
あまりにも信じがたい状況に、彼女はその場で咳き込む。
『おかえり』
妹のように想っていた少女が長女に氷の刃を向ける。
「あず・・・・さ・・・?何なの・・・何なのこれ・・・?」
長女が両親の死体に近づくと同時に、梓が両親の死体に刃を向ける。その姿を見て見開いていた目を、更に目を見開く。
『私に暴力を振るったから・・・・・・要らなくなった』
彼女の無表情な顔が私を睨んだ。
その先の事は、今でも思い出せない。
「失った虚しい思いから逃れる為に、誰よりも強くなりたいと思った、そういう事だ」
『ナゼ、キミハアズサヲサガソウトシナイ?』
「・・・・・探しても見つからない、そう感じたからだ」
『ナゼ、キミハツヨクナロウトオモッタンダ?』
「だから辛い時から逃れる為に――」
『モウツラクハナインダロウ?ナゼ?』
「・・・・・・・・・・・・せめて目の前に居る者が私の居ない間に消えてしまわないように」
「どんな敵からも護れる・・・・・・そんな力が欲しかったんだ」
目の前にある何かは、徐々にその姿を現し始めた。
『ソウカ――ナラ、俺ノ力ヲ使ウトイイ』
「・・・・どういう事だ?」
『影ヲ操ル者、闇ヲ統ベル者』
『ソレガ私、黒弦』
「・・・お前の力を使えば、この闇から抜けられるのか?」
『ソウダナ・・・心ノ強イ者デ無イト、マズ私ノチカラヲ得ル事モママナラナイ』
『オ前ハ闇ニ染マリ、壊レツツアル。闇カラヌケタ所デ前ト同ジヨウニハ戻レナイ』
『ソレヲ覚悟シテオケ』
「・・・愚問だ」
「来い――黒弦」
右手には刀身がしっかりと握られる。
何をすれば良いのか、頭の中に伝わっていく。
Повелитель теней
―影の君主
漆黒の闇に響き渡る一閃。
『オマエノ名前ハ何ダ?』
光が差し、褐色の肌と長い銀髪が現れる。
「私の名前は―――そうだな、黒弦と名乗らせて貰おうか」
最終更新:2009年03月12日 14:21