この夜にもきっと終りが来る。だけれど、その時までは、
私が誰かのための星になって、みちしるべを照らし出したいんだ。
────まつろわぬ明星、暁星 蛍
それは、かつて誰かのために全てを擲ち、そして失くした者の名前。
自らの愛のために、滅びへと身を投げた者の成れの果て。
再びこの世に生まれ来た『少女』は、再び己ならぬ者の為に夜を駆ける。
今度こそ、守るべきものを喪わないために──。
≪容貌 / Appearance≫
腰までの長く艶やかな黒髪と、闇の中に照り輝く『明星』のような、燃えたつくれないの瞳を持つ
櫻の国の少女。
普段着として汎用(指定の制服がない高校のための)セーラー服を着用していることが多いが、和装やコートで歩きまわる姿も度々見られる。
またその美しい髪に、星型の飾りが付いた赤いリボンを巻いているのも特徴と言えるだろうか。
身長158cmほどで、スタイルはなかなか良い。どことは言わないがEはある。
≪性格 / Character≫
中性的な口調で穏やかに物事を語る様子から伺える通り、基本的には冷静で、かつ食えない振る舞いを見せる人物である。
よほどのことがなければ彼女は動じず、多くの状況で優しさと躊躇のないタフさを兼ね備えた行動ができる。
一度面倒を見始めたものは最後まで見捨てない、という信念から、敵の感情をも受け止めようとする一方で、戦っている間は容赦無い。
彼女が激昂したり動揺する時があるとすれば、並外れた外道を前にした時か、庇護や共闘の対象の生命が危機に瀕した時ぐらいか。
一方で、その静かで大真面目な雰囲気が見た目に似合っていないので、そこを面白がられていじられることもある。
スキンシップなどを図られると、そこは16歳の少女なのか、満更でもなさそうな様子を見せたり、頬を染めたりもするかもしれない。
欠点は「自分の始末は自分でつける」という意識がいささか強すぎることと、ちょっと詮索好きな所が目立つところ。
他者を守りたい、知りたいという気持ちから行うものなので悪意はないが、もどかしく思われることもあるだろうか。
……よく観察してみると、彼女には我欲というものがやけに希薄なところがある。
正確を期するなら、自分の欲求のほとんどが、他者本位のものに起因している――と言うべきか。
そのため自分の身体の状態や色恋沙汰には極めて疎く、その在り方は戦場において自己犠牲を恐れないスタイルにも繋がっている。
度々口にする「私を知ってもらいたい」という感情も、飽くまで「救いたい、という気持ちを知ってほしい」というだけのもの。
だけれど、その空虚を彼女自身は未だに認識していない。
≪能力 / Power≫
『夕星御霊(ゆうづつのみたま)』
月影に掻き消される薄闇にも、陽光にまつろう卑しき星にもならない、〝孤高なる明星〟を象徴する能力。
光を操作する能力だが、科学的な波動現象としての「光」を操るものではない。
手からビームライフルのように高熱の閃光を放ったり、轟音・閃光と共に爆発する光球を投げ放つなど、
神秘的な現象としての「ひかり」こそが、蛍が扱うものであり、それはまさに超常的なチカラである。
なので比較的自由度に優れた攻撃を行えるが、高い威力を持つ攻撃の前には手が発光したり、溜めの時間を要する。
この能力は武器とも相性がよく、銃器のように複雑な構造をしたものでなければ何にでも効果を与えることができ
数打ちの刀や、いっそ台所から取ってきた包丁であっても、即席の光剣として用いられる。
また害毒の浄化や傷の消毒、戦闘時に使えるレベルのものではないが自然治癒力の強化など、いわゆる「ヒーリング」的な要素をも内包している。
蛍が行使する術技は多岐にわたるが、その中でも代表的かつ使用頻度が高いものを以下に並べておく。
- 赤銅星(あかがねのほし)
- ホーミング能力を持つ林檎大の白光球を複数個形成し、周囲に浮遊させた後に飛ばす技。
被弾箇所に熱によるダメージを与えるが威力はさほど大きくなく、テンポを握るための技としての意味合いが強い。
孕んでいる熱量自体は侮れず、燃えやすいものを所持している場合、命中と同時に発火する恐れもある。
応用技として、光球を自分の周りで回転させる〝星神楽〟や、更に小さい威力微小の光弾を散弾のように放つ〝千々星〟などがある。
- 星大筒(つつのおおづつ)
- 手に霊力を溜めた後、高い貫通力を持つ熱線を掌から放つ技。
タメ動作さえ終われば優れた威力と発生速度を併せ持つが、蛍はこれを乱用することはしない。
最初の使用でその破壊力を印象づけ、常にチラつかせた上で、飽くまでも隙に対する追撃や敵の攻撃への対応として用いるのである。
- 星羽槌(つつはづち)
- 〝赤銅星〟とよく似ているが、それよりも一回り大きく、濃い橙色をした球を飛ばす技。
球は何らかのモノに接触した時点で炸裂し、おまけに轟音と閃光を置いていく。
命中すれば、その名の通りハンマーで叩かれたような衝撃と鋭い灼熱に襲われ
回避や防御をしたとしても、その残滓が感覚を刺激する。
代わりに連射性能は〝赤銅星〟より劣っており、あちらと比較すると速度も遅い。
誘導弾、あるいは浮遊機雷と言った使い方が主となるだろうか。
- 六連星(むづらぼし)
- 『光』を操作することによって、自分と同じ姿をした偽の像を作り出す技。
名前はハッタリで、実際に作り出せる分身は三つ、本体と同じように動かそうとすると一つが限度。
偽の像はいわゆる当たり判定を持たず、攻撃を受けてしまうと雲散霧消する。
使用できる場面は限られるが、像は人肌と同じ程度の熱を持たされており、熱を探知の手段とする敵が現れた場合、更に有用なデコイとなりうる。
- 帚星(ははきぼし)
- 背中や沓に光の翼を出現させ、その熱エネルギーを異能で運動エネルギーに変換することで、強引に高速移動を行う技。
自在な飛行を可能とするものではなく、一種の空中ダッシュや大ジャンプと言った方が正しい。
前兆があからさまな上に霊力のロスや肉体への跳ね返りが激しいため、緊急回避技としての性質が強いか。
- 再演・布都御魂(さいえん・ふつのみたま)
- 蛍がその前世において打ち払った、巨大な神剣を操る英雄の技を彼女の異能で再現する奥義。
手に持った武器に星の光を宿し、刀身や突端をコーティング。刃毀れを知らない灼光の剣へと変えてしまう。
纏う光の長さを変えることでリーチと破壊力を増し、最大出力では視界をまるごとなぎ払うに至る大技。
だが実際には燃費や誤爆回避の問題から、突く瞬間に刃を伸ばしたり、適度な長さの光刃を振り回す事が多い。
≪背景 / Background≫
超然とした雰囲気と優しさの影に、不完全な心を隠した蛍。
その正体は遥か昔、後に櫻の国と呼ばれることになる地に存在し、〝星の神〟として祀り上げられた精霊が、人の身体に転生したものである。
朝廷に反抗する、まつろわぬ部族の信仰を受けていた彼女は、自らを信ずる者のために最後まで力を揮い続け
事実、最盛期には大軍をも退ける力を見せ付けたが、搦め手の秘儀によって力を封じられ、庇護下の民も平定されてしまった。
神格による力のブーストを失った精霊はこの世界を彷徨い、やがてうっかり赤子の魂として或る女の胎に宿った。
こうして生まれた蛍は宿世の記憶を留めており、そのことが今に至るまで彼女の在り方に影響している。
そんな彼女のいまを支えている目標/信念は、かつてと同じく「冷酷な世界に叛逆し続ける」こと。
今度は、飽くまで人として。もう一度、虐げられる人々の希望でありたいと蛍は願っている。
――だけれども、「神」としての記憶を生まれながらに持っていた彼女は、まだ少しも「人」としての青春を知らない。
それ故に、信仰に存在を依存していたかつてと同様、他者を救うシステムとしてしか自分の在り方を見いだせない節がある。
しかも何より始末が悪いことに、彼女はその過去から引きずっているに過ぎない気持ちを、「16歳の私が見つけた気持ち」と曲解しており
かつ、表面上はとてもしっかりしていそうに見えてしまう――ということなのだ。
今の彼女は、その行動の拠点を
水の国の
旧市街で営まれる「あけぼし綜合事務所」なる古さびた家屋に置いている。
平時は能力を利用した彫字・細工店だが、事情を知る者が訪れた時、そこは裏の世界の仕事人・暁星 蛍のオフィスとなるのだ。
最終更新:2013年12月03日 04:05