@輝明学園
きーんこーんかーんこーん……
こんな異常な状態でも、学校のチャイムは間抜けに響く。
「えー、今日は転校生を紹介する……」
そして、こんな異常な状況でも転校生とは来るものらしい。
担任教師(三十代 恋人募集中)がカモンと一言。
「えー、今日は転校生を紹介する……」
そして、こんな異常な状況でも転校生とは来るものらしい。
担任教師(三十代 恋人募集中)がカモンと一言。
ぶっ!?
扉を開けて、入ってきたのは二人の女生徒。
その二人の顔を見た瞬間、輝明学園の生徒たちは、誰ひとり欠ける事無く盛大に噴き出した。
その二人の顔を見た瞬間、輝明学園の生徒たちは、誰ひとり欠ける事無く盛大に噴き出した。
「え~、このような状況下でも転校してきた奇特な転校生。
ベル・フライさんとアゼル・アンさんだ」
ベル・フライさんとアゼル・アンさんだ」
その瞬間、教室には蜂の巣を突いたような混乱が発生する。
問答無用な阿鼻叫喚の中で、ベル・フライと呼ばれた少女―――裏界第二位の魔王、ベール・ゼファーは深々と溜息をついた。
問答無用な阿鼻叫喚の中で、ベル・フライと呼ばれた少女―――裏界第二位の魔王、ベール・ゼファーは深々と溜息をついた。
事の発端は、地球時間で約三日前に遡る。
裏界帝国の片隅に、寒風吹きすさぶ荒野が在る。
荒廃の魔王、アゼル・イヴリスの領地である。
近づくものから、意思に関わらず容赦なくプラーナを奪い取る彼女の元を訪れるのは、裏界広しとも言えど、ベール・ゼファーぐらいのものだ。
意気揚々と、突如発生した奇妙な忘却世界を使った新たなゲームに、アゼルを引き込もうとやってきたベルであったが、聞こえてきた声に、形のよい眉を顰める。
声のうち一つは、アゼル・イヴリスのもの。普段から、暗いというか真面目すぎなきらいがある彼女に珍しく、届くのは心の底から愉しんでいる笑声だ。
そしてもう一つ、どこかで聞いた覚えの在る、しかし、誰のものか思い出せない声。その正体不明も愉しんでいる様子だが、何故か、ベルの心には引っかかりが在った。
もっとも、正体不明の声の主が気になるものの、この魔王はそんな物で行動を制限するような性格ではない、いつものように荒廃の魔王に声をかけ――――――。
荒廃の魔王、アゼル・イヴリスの領地である。
近づくものから、意思に関わらず容赦なくプラーナを奪い取る彼女の元を訪れるのは、裏界広しとも言えど、ベール・ゼファーぐらいのものだ。
意気揚々と、突如発生した奇妙な忘却世界を使った新たなゲームに、アゼルを引き込もうとやってきたベルであったが、聞こえてきた声に、形のよい眉を顰める。
声のうち一つは、アゼル・イヴリスのもの。普段から、暗いというか真面目すぎなきらいがある彼女に珍しく、届くのは心の底から愉しんでいる笑声だ。
そしてもう一つ、どこかで聞いた覚えの在る、しかし、誰のものか思い出せない声。その正体不明も愉しんでいる様子だが、何故か、ベルの心には引っかかりが在った。
もっとも、正体不明の声の主が気になるものの、この魔王はそんな物で行動を制限するような性格ではない、いつものように荒廃の魔王に声をかけ――――――。
「やはりここに来たか。
待っていて正解だったよ、ベル」
待っていて正解だったよ、ベル」
振り向いた正体不明の声の主に、凍りついた。
「あああああああ、アステートッ!? 何で貴女がここに!?」
「うん?」
「うん?」
流し目に、再び凍りつくベル。
「あ、あすてーとさま、なにゆえここにいらっしゃるのでせうか?」
「うむ。お前が仲良くしてもらっている彼女に、挨拶しにきたんだが」
「いや、そうじゃなくてっ! あんた封印されてる筈でしょうがッ!!」
「うむ。お前が仲良くしてもらっている彼女に、挨拶しにきたんだが」
「いや、そうじゃなくてっ! あんた封印されてる筈でしょうがッ!!」
流し目。
硬直。
硬直。
「ふ、ふういんはどうされたのでせうか?」
「お前、私が何処に封印されていたのか、忘れたのか?」
「……――――あ、輝明学園、ね」
「そうだ。
で、今その輝明学園はどうなっているのかな?」
「―――なるほど……。そういう事……」
「そうだ。奇妙な事になった所為でな、叩き起こされる破目になったのさ」
「お前、私が何処に封印されていたのか、忘れたのか?」
「……――――あ、輝明学園、ね」
「そうだ。
で、今その輝明学園はどうなっているのかな?」
「―――なるほど……。そういう事……」
「そうだ。奇妙な事になった所為でな、叩き起こされる破目になったのさ」
軽く肩をすくめる、大公爵アステート。
曰く何でも、目が覚めて久しぶりに裏界を廻っている途中らしい。
ならば、こんな所で油を売っている必要はないので、嘘であるとベルは確信している。
曰く何でも、目が覚めて久しぶりに裏界を廻っている途中らしい。
ならば、こんな所で油を売っている必要はないので、嘘であるとベルは確信している。
「でも、何でアゼルのところにいるんですか!?」
「言っただろう。
お前が仲良くしてもらっているようだから、礼を言いに来たのさ」
「言っただろう。
お前が仲良くしてもらっているようだから、礼を言いに来たのさ」
ぐりん。と首をめぐらせ荒廃の魔王を睨みつけるベル。
「ちょ、ちょっとアゼルっ!! 誰が誰に仲良くしてもらってるですって!?」
「ご、ごめんなさい。ベル」
「それに二人で何話してたのよっ!! って、なんで目を逸らすのよアゼル!
笑いを堪えてる様に見えるのは何故かしらッ!!?」
「ご、ごめんなさい。ベル」
「それに二人で何話してたのよっ!! って、なんで目を逸らすのよアゼル!
笑いを堪えてる様に見えるのは何故かしらッ!!?」
「そんなもん、古代神時代のお前の思い出(失敗談)に決まっているだろうに」
大公爵の言葉を引金にして、裏界の荒野に、蝿の女王の絶叫が轟いた。
………。
裏界帝国の一角、普段人影のない荒野には、現在三つの影が在った。
一つはこの領域の主、『荒廃の魔王』アゼル・イヴリス。
普段の暗い影など何処ふく風と、ころころと彼女は鈴のような笑声を上げていた。
二つ目は、裏界第二位の実力者、『蝿の女王』ベール・ゼファー。
何時もの自信に溢れた姿は見る影もなく、頬を紅潮させて俯いている。肩が震えているのは、羞恥か怒りか。
最後の一つは、悪徳の七王が一柱。『大公爵』アステート。
螺旋くれた二本の角が、肩までかかるウェービーヘアから突き出し、六対十二枚の黒翼を背負っているグラマーな女性。
輝明学園秋葉原分校の地下迷宮に封印されていたが、その輝明学園自体が異常事態に巻き込まれた為、
封印が弱体化、覚醒に至ったと言うこの大魔王は、ベール・ゼファーの主人にして恋人という立場だ。そして、先ほどからアゼル・イヴリスに語って聞かせている話からして、それに偽りは無さそうだ。
一つはこの領域の主、『荒廃の魔王』アゼル・イヴリス。
普段の暗い影など何処ふく風と、ころころと彼女は鈴のような笑声を上げていた。
二つ目は、裏界第二位の実力者、『蝿の女王』ベール・ゼファー。
何時もの自信に溢れた姿は見る影もなく、頬を紅潮させて俯いている。肩が震えているのは、羞恥か怒りか。
最後の一つは、悪徳の七王が一柱。『大公爵』アステート。
螺旋くれた二本の角が、肩までかかるウェービーヘアから突き出し、六対十二枚の黒翼を背負っているグラマーな女性。
輝明学園秋葉原分校の地下迷宮に封印されていたが、その輝明学園自体が異常事態に巻き込まれた為、
封印が弱体化、覚醒に至ったと言うこの大魔王は、ベール・ゼファーの主人にして恋人という立場だ。そして、先ほどからアゼル・イヴリスに語って聞かせている話からして、それに偽りは無さそうだ。
「―――でな、コイツ。そのときなんて言ったと思う?」
「………。『だって、そのほうが面白いでしょ?』ですか?」
「あたり。
わざわざ危ない橋を渡りたがったり、相手の勝利条件を設定してやるなんてな。全く、誰に似たんだか」
「………。『だって、そのほうが面白いでしょ?』ですか?」
「あたり。
わざわざ危ない橋を渡りたがったり、相手の勝利条件を設定してやるなんてな。全く、誰に似たんだか」
「……間違いなく、あんたよ。アステート(ボソッ)」
「うん? ナンカ言ったか?」
「な、なんでもないです!」
「うん? ナンカ言ったか?」
「な、なんでもないです!」
アステートが語るたびに、アゼルは鈴のように笑い、ベルは酸性物質に触れたリトマス紙のようになっていく。
爆発寸前の爆弾を連想するのが、容易になってきたベル。
それに気付いているのかいないのか、アステートは過去を暴露し続ける。
そして、迎える臨界。
爆発寸前の爆弾を連想するのが、容易になってきたベル。
それに気付いているのかいないのか、アステートは過去を暴露し続ける。
そして、迎える臨界。
「あ、あんた――――!」
いい加減にしときなさいよッ!!!
主従の立場を放り投げ、荒野に二度目の絶叫を響き渡らせかけた瞬間。
主従の立場を放り投げ、荒野に二度目の絶叫を響き渡らせかけた瞬間。
「お、来たか。るー………」
「ふむ。懐かしい気配だと思えば、やはりキサマだったか、アステート。
キサマが解放されているとは、少々事態が深刻になってきたな」
キサマが解放されているとは、少々事態が深刻になってきたな」
歪んだ空間の奥から、進み出た小さな影。
ぱっと見て不遜な態度なその少女に、大公爵は首を傾げ、
ぱっと見て不遜な態度なその少女に、大公爵は首を傾げ、
「さいふぁー………って、
しばらく見ないうちに、変わったなお前」
しばらく見ないうちに、変わったなお前」
裏界第一位の魔王の名を呼んだ。
「ふん。久しいな、大公爵。
地の底での眠り姫の真似事は、意外に退屈だったのか?」
「そうでも無いよ、金色の魔王。
できればもう少し、ひたって居たかったさ」
地の底での眠り姫の真似事は、意外に退屈だったのか?」
「そうでも無いよ、金色の魔王。
できればもう少し、ひたって居たかったさ」
二人の魔王の、視線が絡み合う。
「で、ルー・サイファー!
アンタまで何しにきたのよ!?」
アンタまで何しにきたのよ!?」
外見年齢六歳の魔王は、蝿の女王を冷めた半眼に晒して、
「見当も付かんのか、ベール・ゼファー。
久しぶりに飼い主に出会って頭の廻りが鈍くなったのか?」
「な・ん・で・す・っ・てぇえ……?」
久しぶりに飼い主に出会って頭の廻りが鈍くなったのか?」
「な・ん・で・す・っ・てぇえ……?」
荒野に、金色と白銀の魔力が火花を散す。
「聞こえなかったか蝿の女王。耳まで悪くしたのか?」
「―――っ!! あんた、この場でぶち殺されたいの?」
「……。はんっ、口だけは立派だな」
「……いぃ度胸してるじゃなぁい。
このっ、あたしがっ、あんたに対策を立てないとでも思ってんの?」
「ほぅ。その頭、少しは建設的なことが考えられるようにはなったのか―――。
苦しゅうない。そのスポンジの詰まった頭で考えた結果、ここで見せてみるがいい」
「―――っ!! あんた、この場でぶち殺されたいの?」
「……。はんっ、口だけは立派だな」
「……いぃ度胸してるじゃなぁい。
このっ、あたしがっ、あんたに対策を立てないとでも思ってんの?」
「ほぅ。その頭、少しは建設的なことが考えられるようにはなったのか―――。
苦しゅうない。そのスポンジの詰まった頭で考えた結果、ここで見せてみるがいい」
荒野に、攻勢魔力が吹き荒れる。
「ディヴァインコロナッ!!」
「エターナルブレイズ」
「エターナルブレイズ」
陽光にも似た閃光と、命を食い尽くす紅蓮が放たれる。
絡み合う二つの魔術。反応し臨界を迎えるエネルギーの塊。
二つの攻撃魔法が破壊を撒き散らす瞬間。
絡み合う二つの魔術。反応し臨界を迎えるエネルギーの塊。
二つの攻撃魔法が破壊を撒き散らす瞬間。
「アゼル。頼む」
「分かりました」
「分かりました」
割り込む影。
プラーナを食い尽くす荒廃の力が、魔力を奪い去り、攻撃魔法を消滅させ、
プラーナを食い尽くす荒廃の力が、魔力を奪い去り、攻撃魔法を消滅させ、
「喧嘩するなら外でやれ、ついでに私の話を聞いてからにしろ」
睨み付ける大公爵の眼力が、闘争の空気を破壊する。
二手三手先を組み上げていた金色の魔王と蝿の女王は、ふんっ、と子供のように視(死)線を外し合った。
二手三手先を組み上げていた金色の魔王と蝿の女王は、ふんっ、と子供のように視(死)線を外し合った。
………。
「それで? (はむ)何故ここに居るのだアステート。
(はむ)聞いてやるから(もぐもぐ)疾く話すがよい(ごっきゅん)」
(はむ)聞いてやるから(もぐもぐ)疾く話すがよい(ごっきゅん)」
荒野に出現した茶卓を囲んで、ルー・サイファーが問い詰める。チョココロネに齧り付いているのは、ご愛嬌である。
「いま、輝明学園がおかしいだろう?」
「他の世界の奇妙な学校と混ざり合っているようだな。
それがどうしたのだ」
「………。五月蝿いんだよ」
「………何がだ?」
「どうやら封印の上に学校を作るのは、そこかしこで見られる手法らしくてな……。
私が、気持ちよくベルの助けを待っているその横で、アラハバキだのラガヴリだのが好き勝手に暴れまわり………と、安眠妨害この上ない」
「他の世界の奇妙な学校と混ざり合っているようだな。
それがどうしたのだ」
「………。五月蝿いんだよ」
「………何がだ?」
「どうやら封印の上に学校を作るのは、そこかしこで見られる手法らしくてな……。
私が、気持ちよくベルの助けを待っているその横で、アラハバキだのラガヴリだのが好き勝手に暴れまわり………と、安眠妨害この上ない」
そんな理由か。
どーん。と、空気が一気に白っぽくなった。
どーん。と、空気が一気に白っぽくなった。
「………なにそれ?」
「えーっと……」
「………あの部下(ベル)にして、この主人(アステート)在り。といった感じだな」
「えーっと……」
「………あの部下(ベル)にして、この主人(アステート)在り。といった感じだな」
白けた視線を向けてくる三魔王に気付いているのかいないのか、『大公爵』アステートはヒートアップの一路を辿る。
もちろん、三人の視線は、更に色を失っていく。
もちろん、三人の視線は、更に色を失っていく。
「そーゆーワケで、うっとおしいからアイツラ何とかしてくれ」
アステートが言葉を結ぶ。
そのときにはもう、テーブルにはルーしかいなかった。
そのときにはもう、テーブルにはルーしかいなかった。
ベルは主の言動に脱力し涙して、アゼルはそれを慰めており、義務感百パーセント話を聞いていたルーも、既に真面目に考える気は失せている。
「あー、アゼル。行ってみるか?」
「え?」
唐突かつ意外なルーの提案に、アゼルは思考に置き去られた。
「だから、例の学校にだ。我がプラーナ吸収能力を抑えて、万が一のために服の下に魔殺の帯を巻いておけば、問題はないと思うぞ」
「………良いんですか?」
「ああ。
ベルと一緒に行って来い」
「え?」
唐突かつ意外なルーの提案に、アゼルは思考に置き去られた。
「だから、例の学校にだ。我がプラーナ吸収能力を抑えて、万が一のために服の下に魔殺の帯を巻いておけば、問題はないと思うぞ」
「………良いんですか?」
「ああ。
ベルと一緒に行って来い」
ぱあぁ。っと、ひまわりのような笑顔が生まれた。
「ちょっと、何であたしまで―――っ!?」
「輝明学園への潜入は慣れているだろう? 何も知らないアゼルを一人で放り出すのかお前は」
「輝明学園への潜入は慣れているだろう? 何も知らないアゼルを一人で放り出すのかお前は」
アステートに流し目を向けられて、身体を強張らせたベルに、最早拒否権などなかった。
などという経緯を経て、転校生ベル・フライとアゼル・アンが誕生したのだった。
転校初日の昼休み。
転校生ベル・フライはごつんと額を机に押し付けていた。天板がひんやりとしていて気持ちいい。
彼女の正体を悟れない他世界の学生たちの質問攻めにあって、体力を使い果たしているのだ。あの、ナツミとかいうファルファルロウをほーふつとさせる女が、非常に厄介だった。と、脱力しながら反芻する。
転校生ベル・フライはごつんと額を机に押し付けていた。天板がひんやりとしていて気持ちいい。
彼女の正体を悟れない他世界の学生たちの質問攻めにあって、体力を使い果たしているのだ。あの、ナツミとかいうファルファルロウをほーふつとさせる女が、非常に厄介だった。と、脱力しながら反芻する。
「ベル」
呼びかけられた声に首をめぐらせれば、
「なに? アゼル。ってアンタ元気ね、疲れてないの?」
「ううん。みんな初めての事ばかりだから―――」
呼びかけられた声に首をめぐらせれば、
「なに? アゼル。ってアンタ元気ね、疲れてないの?」
「ううん。みんな初めての事ばかりだから―――」
だから楽しいと、荒野に一人佇んでいた魔王少女は笑った。
他者と触れ合う事こそ、彼女が望んで止まなかったもの。念願叶い、浮かれるのも仕方あるまい。
(ま、アゼルのこんな顔が見られるんなら、ルーの奴に感謝してやってもいいかしら。ってナニ考えてるあたし)
意外と言うか、異常なことばかり重なった結果、導かれた今の状況だが、考えてみれば悪くはない。
もともと、ココで遊ばせてもらう心算だったし、手に入れた生徒としての立場は、ゲームに更なる彩を加えてくれる事だろう。
そして、アステートの真意もまた、ここに来て理解できた。勿論、安眠妨害という事もあるのだろうが、それ以上にココは奇妙だ。
(ま、アゼルのこんな顔が見られるんなら、ルーの奴に感謝してやってもいいかしら。ってナニ考えてるあたし)
意外と言うか、異常なことばかり重なった結果、導かれた今の状況だが、考えてみれば悪くはない。
もともと、ココで遊ばせてもらう心算だったし、手に入れた生徒としての立場は、ゲームに更なる彩を加えてくれる事だろう。
そして、アステートの真意もまた、ここに来て理解できた。勿論、安眠妨害という事もあるのだろうが、それ以上にココは奇妙だ。
(おそらく、それに気付いたからこそ、わざわざ私を送り込んだって所ね……。回りくどい事を)
彼女は、蝿の女王の主人にして恋人。このベール・ゼファー、つまらない奴の下につく気も、連れ添う気も無い。
『大公爵』アステートの、粋と洒脱と酔狂は、ベール・ゼファーのそれを超える。
『大公爵』アステートの、粋と洒脱と酔狂は、ベール・ゼファーのそれを超える。
(くすくす。
貴女が私のやることを、上から見て楽しむのは何時もの事だけど、参加者ではなく傍観者を選んだ事、後悔しても知らないわよ『大公爵』)
貴女が私のやることを、上から見て楽しむのは何時もの事だけど、参加者ではなく傍観者を選んだ事、後悔しても知らないわよ『大公爵』)
「ね、ベル」
アゼルの声に、思考の海から引き戻される。
「お弁当、一緒に食べない?」
「お弁当? そんなもんあたし持ってきてないわよ」
「大丈夫、ベルの分も作ってきた」
「………いつの間に」
「お弁当? そんなもんあたし持ってきてないわよ」
「大丈夫、ベルの分も作ってきた」
「………いつの間に」
にこにこと、華が開くような笑顔をうかべるアゼルに、ひたすらに浮かれてるわね、コイツ。と、ベルは嘆息して、学生がやるように机をくっつける。
荒廃の魔王のお弁当は、普通においしかった。
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