アットウィキロゴ
ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

陰たちの集い

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
―――浅間山高校

「ふう…」
校庭内に立ち並ぶ仮設テントの隅っこで、寝袋に入りながら少年がため息をついていた。
「今日も大変だったなあ…」
遠い目をして呟く。今日の昼間に起こった出来事を思い出しながら。
「よりにもよってゆうなの奴、ドラゴンの住みかに迷い込むなんて」
これまでにもこう言うことは何度もあった。
ヤクザ、妖怪、地底怪獣、忍者、パンダ、タヌキ(あと本人は忘れてるけど宇宙人)…
天性のトラブルメイカーである“お隣さん”を守るため、多くの戦いを繰り広げてきた。しかし。
「こっちに来てから色々ありすぎなんだよなあ~」
3日前、突然に起こった、異世界への転移。
何故か色んな世界の“学園”が集まると言う珍事に巻きこまれてからと言うもの、少年はロクに休む暇がないほど忙しかった。

幼馴染の危険を未然に防ぐこと113回(いつもの5割増しくらい)
幼馴染がモンスターの類に襲われて戦闘になること63回。
迷子になった幼馴染の探索に出ること18回。
色々あってダンジョンを探索することになること6回。
柊蓮司に遭遇すること4回。
柊蓮司と共に学園世界の危機から学園世界を救うこと1回。

わずか3日の間にこれだけの出来事に巻き込まれたのだ。
今は少年の正体を知る3人に手伝ってもらって何とかなってはいるが、こんな生活が続いたら…
「…このままでは僕は過労死するかも知れん」
あんまし愉快じゃない結論に達して、少年は顔を青くする。
「いやいや。大丈夫大丈夫。ど~せそのうち帰れるだろ~しゆうなだって今回のことで反省して少しはマシに…」
ぶんぶんと愉快じゃない結論を振り払って自分に言い聞かせる。ポジティブ、ポジティブ。
「…ダメっぽいな。ゆうなのドジは筋金入っちゃってるし」
ダメだった。ネガティブハート続行中。
「う~んマジで何とかしないとなあ…」
「それなら、ワシに1つ、よい考えがあるんじゃが…」
「!?」
唐突に話しかけられ、少年は戦闘態勢を取る。
寝袋から瞬時に“消え去り”、忍者装束を纏って人影の背後を取り、忍者刀を突き付ける。
「ほほう。その若さでとんでもない錬度じゃな」
だが、その声は少年の“更に背後”から聞こえた。
「…何者だ」
瞬時に飛んで距離を取り、油断なくその老人を見据える。
(…父さん、いや下手すると爺ちゃんに匹敵する腕前だぞ…)
老人の“忍者”としての実力に半ば恐怖すら覚えながら。
「…怪しい者じゃよ。だが、敵では無い」
その老人は落ち着き払い改まった口調で言う。
「ワシの名は輝明学園校長、荻原宗一郎。本日は折り入って頼みたいことがあり、はせ参じた次第。
 まずは刀を納め、話を聞いてはくださらぬか。陰守家次期党首、陰守マモル殿」
「…分かった」
少年…陰守マモルは黙って刀を納め、聞く体勢をとった。

この、1人の少年と1人の老人の出会い。
全てはそこから始まった。
そして時は流れ…

―――輝明学園桜花寮

「…それは浮気。確率は割と高い。みのさんも言っていた。男の秘密には、要注意」
お土産のまんじゅうをぱくつきながら、黒髪の少女は言った。
「そ、そんなこと!だって、一狼君に限って、そんな…」
そのお土産を持ってきた茶髪の少女が狼狽して言う。
「環境が変われば、人は変わる。いわば、異世界デビュー」
お土産のまんじゅうを食べるスピードは決して緩めず、黒髪の少女は更に“助言”をする。
「あうう…やっぱりそうなのかなあ…」
助言に打ちのめされ、濡れた子犬のように落ち込む茶髪の少女。
「…新しい恋に生きるのも、1つの人生。考えてみる?」
「それはダメ。だって私は…一狼君の“所有物”だもん」
お土産のまんじゅうを食いつくした黒髪の少女の提案を茶髪の少女は顔を赤くして瞬時に却下して見せた。

黒髪の少女の正体はオクタヘドロン製造“人造人間”鈴鹿葉月。
茶髪の少女の正体は絶滅社製造“人造人間”姫宮空。

同じ人造人間であることのよしみと春休み中、スクールメイズによく潜っていた縁で親しくなった2人の少女。
空は、葉月によく相談に乗ってもらっていた。正直人選を間違っている気がするが、空にそんな知識は無いので仕方がない。
そして、今日の2人の議題は…
「…斎堂一狼の、姫宮空にも言えない秘密。そして、秘密の影には他の女の姿。やはり、浮気の可能性が高い」
「はうう~…一狼君が、遠い、遠いよ…」
空が悲しげにぼやく。

斎堂一狼と、姫宮空。輝明学園がこの学園世界に来てからと言うもの、2人の距離は開きっぱなしである。

まず最初に学園のみ転移したため、住んでいたボロアパートのお隣さん状態から男女別の寮暮らしになり。
一狼のみが校長に呼ばれて空にも秘密の任務を引き受けるようになって一緒にいる時間がどんどん短くなり。
そのうち一狼が別の学園で見知らぬ少女と話をしているのが目撃され。
ついに先日、輝明学園の屋上でとある少女と2人きりで“激しく情熱的な男女の密会、キスはディープで”を行っているのが目撃された。

「…やっぱり、私じゃあ…“人造人間”じゃダメなのかな…一狼君も、普通の人間の女の子の方がいいのかなあ…」
「分からない。だけど、種族の壁は厚いと聞く。乗り越えるのは、大変」
“人ならざるもの”と“人”の間に、恋愛は成立しえないのではないか。それが、自らの正体を知った後の、空の最大の“恐怖”だった。
余りにも、違い過ぎる。戦闘兵器として作られた自分と一狼ならばなおさら。
「今日も校長先生直々の頼みがあるからって行っちゃうし…」
そんな言葉と共に授業終了後すぐにどこかに出かけて行った一狼のことを思いながら言う。
「…危ないお仕事じゃないと良いんだけど…」
心配だ。せめて自分も手伝えればいいのにと考えながら呟いた、そのときだった。
「その心配はない」
はっきりと葉月が言う。
「ありがとう葉月ちゃん。慰めてくれるんだね」
珍しいと思いながら空は、にっこりと笑って礼を言う。
だが葉月は慰めのつもりは0だった。
「斎堂一狼の本日の動向なら、聞いている。それから判断するに校長直々の依頼と言うのは嘘の可能性がある」
「…え?」
空が、固まる。笑顔のままで。
「本日の斎堂一狼。彼はザールブルグアカデミーに向かう姿が目撃されている。輝明学園の女子と一緒。女子は身体的特徴から“屋上の少女”と同一人物だと思われる」
空は笑顔のままで固まったままだ。
「女の子と2人。相手は屋上の少女。向かった先は危険地帯ではなく、他の学園。任務よりは、デートの可能性が高い。故に危険は、無い」
そんな、葉月の分析と結論を聞いた瞬間。

ガンッ!

色んな意味で真っ白になった空ががっくりとつっぷしてちゃぶ台に頭をぶつけた。

―――ザールブルグアカデミー

「…木を隠すには、森。と言うわけね」
初めて訪れるアカデミーの様子を観察し、輝明学園の制服に着替えた“屋上の少女”ことライズ・ハイマーは一狼に尋ねた。
「はい。もちろんそれ以外に学長のドルニエ様の考えもあるのですが、その意味も大きいと思います」
ライズの言葉に、一狼は頷く。
ザールブルグ王立魔術学校、通称アカデミー。
錬金術を研究している学園であると言う以上に学園世界で有名な理由に“自由学園宣言”がある。

『道は違えど、我らは研究の徒。真理を追うものよ。集え』

学園世界の長老『ジジイ四天王』の一角である学長、ドルニエの言葉を受け、この学園はすべての学園世界の生徒の出入りを自由としている。
学園内の自治は各学園が行う。
この原則のもと、他校の生徒が気軽に入るわけにもいかない学園世界の各学園の敷地において、ここは貴重な情報交換の場となっていた。
そして集まった各学園の研究者や彼らの友人、材料収集や護衛の依頼を購買で受けてきた生徒たち。
民族どころか種族レベルでてんでばらばらの生徒たちがアカデミーの随所を行きかっている。
「ここならば誰がいてもおかしく無いですからね。こちらです」
何度も通いすっかり慣れた歩調で一狼はアカデミーの図書室へ向かう。
現在は本を全て持ち出して閉鎖され、このアカデミーで唯一人気のない場所となっている図書室。
その本棚を動かすと…
「…隠し部屋?」
「ええ。元々はドルニエ学長の研究室だそうです」
そう言いながら奥へと進んでいく。そしてその奥には…
「…誰もいないわね」
本や実験器具、怪しげな装置が並んでいるだけの、せまい部屋だ。人気は無い。
「二重に隠されているんです。何でも昔、この研究室を自力で発見したアカデミーの生徒がいたとかで」
そう言いながら一狼は沢山ある装置の1つを指さす。精巧なミニチュアの入った、ガラスの球に。
「今からやる手順を、覚えてください。忘れると入れなくなりますから、確実に」
「分かったわ」
そして、一狼はいつもよりゆっくり、丁寧にいつも通りの手順でガラスの球に触れて行く。
すると、カチリと音がしてガラスの球が輝き出す。
「…これで入れます。まずはライズさんから。このガラスの球に触れてください」
「…」
無言でコクリと頷き、ライズはその球に手を伸ばす。元が魔法の存在しない世界の出身のせいか、少しだけ緊張している。
そして、ライズの手が球に触れた瞬間。
一瞬の閃光と共にライズの姿が消える。
「…さて、僕も行くか」
輝きを失ったガラス球を再度起動する。そして手慣れた様子でガラス球に触れて、閃光と共に消える。
そして研究室には再びいつもの静寂が戻った。

―――EVANGELINE'S TEA ROOM

“カゲモリ”の創立メンバーの1人であり、このアーティファクトの製作責任者の名がついた“カゲモリ”の集会所。通称『エヴァの茶室』
そこに漂う雰囲気に、ライズは思わず身を固くする。
独特の、ピリピリした雰囲気。かすかに響く剣戟の音。少女はそれを知っている。それは“お父様”と共に向かった…戦場の気配。
ライズは油断なく虚空に手を伸ばす。時空鞘におさめた剣を抜くために。そして、剣を握りしめたその瞬間だった。
「大丈夫。多分、いつものです」
後ろから声をかけられ、思わずビクリと身震いする。
ライズは後ろを振り向く。そこに立っていたのは、斎堂一狼。
「いつもの?」
納得が行かないとでも言うようにライズが尋ねる。
「はい。最初にここに来た時は、みんな驚くんですけど、あの2人がいるときはいつもこんな感じですよ」
そして、奥を指さして、言う。
「こっちです。さ、行きましょう」

少し歩いて出た、広い部屋。そこは一種異様な光景だった。

「いい加減にしなさいよ!この甲賀の性悪狐!いっつもいっつもアタシの邪魔ばっかりして!」
「それはこっちのセリフですわ!この伊賀のお間抜け狸さん!貴方が邪魔をしなければマモル様と2人きりでしたのに!」
「あ!やっぱりあんなこと言って、マモル兄ちゃんと2人きり狙ってたんじゃん!しかもアタシが来れないように細工までして!」
「それはそっちも同じでしょう!?お陰でマモル様はお1人で行ってしまいましたわ!ゆうなさんを助けるために、あんな危険な場所に!」
「1人じゃなくて耳之介も一緒!だからこっちのが上!大体、そう思うんだったら貴重なメンバーの到着邪魔するような真似しないでくれる!?」
「少なくとも貴方にだけはそれを言われる筋合いはないですわ!」

動きやすい格好のツインテールの小柄な少女と、同じような格好のポニーテールの少女がお互いにお互いを罵り合っている。ただ罵りあっているのではない。
お互いに一狼の使う剣に似た、東洋風の剣で斬り合いながらだ。ライズの目から見てもかなりの手だれ同士。その斬撃がぶつかり合い、剣戟の音を響かせている。

そしてそれをおろおろと止めようとする、普通っぽい感じのツインテールの少女。
「こ、こんなところでやると危ないよ!二人ともここは仲良「弓塚さんは黙っててください!」「さっちんは黙ってて!」あう…」
「放っておけ。いつものことだ。どうせ決着はつかん」
弓塚&さっちんと呼ばれた少女に対し、落ち着き払って茶を飲みながらたしなめるのは、小等部位の年齢にしか見えない幼い少女。
傍らには緑の髪をして、不思議な耳飾りをつけたメイドが無言で控えている。
「………」
そして1人我関せずと言った様子で大きな杖を抱えて黙々と本を読む、青い髪でメガネの少女。
ちなみに背もたれにしているのは小山ほどもある巨大な竜だったりする。

「もうあったま来た!今日こそ決着をつけてやる!」
距離を取ったツインテールの少女がどこから取り出したのか大きめのスイカほどもある爆弾を取り出す。
「望むところですわ!」
一方のポニーテールの少女が手品のように両手いっぱいに投げナイフを持ち出す。
「伊賀忍法奥義…」
「甲賀忍法奥義…」
そして部屋の中とか関係なしに忍術の奥義が炸裂しそうになった、その瞬間だった。
「…いつも言ってるだろう。火器を使うなら外でやれ、と」
茶を飲んでいた少女の言葉と共に爆弾が凍りつき。
「…飛び道具も禁止。壁に穴が開く」
杖を手にした少女が呪文と共に起こした風の槌がナイフを残さずたたき落とす。
「…何事?」
目の前で繰り広げられた異常事態についていけず、珍しく素でライズが呟く。
「いつものことです…」
それに、創立メンバーであったが故にすっかり慣れてしまった一狼が疲れた声で答えた。


「あ、斎堂君。最近あんまり来てなかったからちょっと久し振りだね。
 それと…新しいメンバー?名前は?あ、私は弓塚さつき。弓塚でもさつきでもさっちんでも好きなように呼んでね」
最初に2人の存在に気づいたのは先ほど止めようとしていたツインテールの少女…さつきだった。
八重歯を見せる人懐こい笑みを浮かべて握手を求めてくる。普通だ。この場にいるのが不思議なほど普通だ。ちょっと目が紅いけど。
「…ライズ・ハイマーよ。ライズでいいわ」
その普通っぷりに毒気を抜かれ、手を握り返すライズ。
「え、新しいメンバー?」
「まあ、これはこれは。斎堂さんが連れてくるなんて、珍しいですね」
先ほどまで激しい斬り合いをしていた2人の少女が近寄って来て、名乗る。
「陰守山芽だよ!よろしくね!ライズさん!」
「陰守ホタルです。よろしくお願いしますね。ライズさん」
完全に同時に名乗り、そして同時にお互いをにらみつける。

「…ちょっと“雲隠ホタル”。なにどさくさに紛れて嘘ついてんのよ」
「…こっちのセリフですわ。“服部山芽”さん。そのような嘘をついて、恥ずかしくないんですか?」

一触即発の空気。っていうか既に2人とも剣を抜きかけている。
「ああ!2人とも抑えて抑えて!」
それを慌てて止めに入るさつき。幸薄い少女である。

「“雪風”のタバサ。タバサでいい」
次にやってきたのは人形のような青い髪の少女。
「それと…挨拶」
ちらりと後ろを見て先ほどまで背もたれにしていた竜に一言かける。
「わかったのね!おねえさま!」
なんと竜がそれに応えて喋る。その事実に思わず息を飲むライズの前で、竜が1人の女性へと姿を変える。
青く長い髪と豊かな胸を持つ、大人の女性。その女性は子供っぽいしぐさで挨拶をする。
「シルフィードなのね!よろしくなのね!きゅいきゅい!」

そして、最後に残った少女がちらりとこちらを見て、言う。
「…ふん。雰囲気からすると“吾妻兄妹”の同類、と言ったところか。まあいい。
 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ。エヴァでいい。それと…」
「絡繰茶々丸です。よろしくお願いします。ライズ・ハイマー様」
丁寧な口調で茶々丸と名乗ったメイドが深々と頭を下げる。

「えっと、今ここにいるのは、これで全部ですよね?エヴァさん」
一通り名乗り終わったところで一狼が確認する。
「ああ、他は全員出払っている。後はそのうち会うこともあるだろう」
「分かりました。では次はこの中を案内します。結構広いので、はぐれないようにしてください」
「分かったわ。じゃあ、行きましょう」
そして、ライズを伴って一狼は中を案内する。
客室(そのうちの1つには『さつき専用』と書かれている)、食堂、厨房、浴室…果ては学長手製のアイテムが納められた薬品庫や書斎、遊戯室まで。
「ずいぶん充実しているのね」
ライズがその設備に関心する。
「はい。任務によっては1週間は所属学園に戻れないこともありますからね。そう言う場合のセーフハウスでもあるんですよ」
「なるほどね」
そんな会話をしながらあちこちを見て回った。

「あ、おかえり~」
数時間後、再び最初の部屋に戻ってきた2人に、さつきが声をかける。
「さて、もう日も落ちた。斎堂も戻ってきたことだし、私は帰るぞ」
2人が戻って来たのがちょうど良い契機となったのだろう。座っていたエヴァが立ち上がり、帰り支度を始める。
「あの~…今日はエヴァさんのところに泊まっていいですか?ここに残るのも寂しいし、かといって外で下手に1人でいると、先輩に再殺されそうで」
そんなエヴァにおずおずとさつきが尋ねる。エヴァが仕方ないと言った感じで頷くのを見て、嬉しそうにほほ笑む。
「あ、じゃあそろそろアタシも帰るよ。そろそろマモル兄ちゃん戻ってきてるだろうし」
「そうですわね。では、私もそろそろ」
さつきの必死の頑張りでとりあえず今日は戦わないことにしたらしい山芽とホタルが残像と共に瞬時に制服に着替える。
「…帰る。そろそろ夕食の時間」
「もうおなかぺっこぺこなのねー!」
タバサとシルフィードも帰る準備を整える。
「後は…」
エヴァがちらりと一狼とライズの方を見る。
「僕も帰ります。今日はライズさんの案内を頼まれていただけなので」
「私もここに用は無いわ」
それに答えて一狼とライズが口々に言う。
「そうか。ならば途中までは全員一緒に帰るか」


―――再びザールブルグアカデミー

「結構時間立ってたんだね」
「すっかり真っ暗ですわね」
図書室をでて、忍者コンビが辺りを見て言う。
日が落ちて真っ暗になったアカデミーの内部を揃って歩く。
途中には蝋燭が何本か立っているもののその程度では充分とは言えずかなり暗い。
「どうでしたか?カゲモリのみんなは?」
「…ずいぶん個性的なのね」
斎堂の問いに溜息をつきながらライズは率直な感想を口にする。自分の“仲間”も十分個性的だと思っていたが、まだまだ甘かったようだ。
「しかし本当に暗いな。電灯の一つも入れれば良いものを」
「ちょっと不気味ですよね。なんか幽霊とかでそ「馬鹿!」あ!」
世間話モードに入っていたさつきがエヴァに窘められる。
それで自分のうかつさに気づいたさつきがおずおずとタバサの方を見る。

カラン

タバサが手にしていた杖を取り落とした。真っ青だ。ついでに言えばちょっぴり涙目だ。
「あちゃー…大丈夫だよ?幽霊とかって実は滅多なことじゃでないし」
杖を拾ってタバサに渡しながら必死にフォローするさつき。何気に自分がそっち系なのはスルーで。
「…本当?」
「うんうん。私も割といつもここにいるけど、今まで見かけたこと…」

ミシィ

静寂に包まれたアカデミー内でその音が響き渡り、さつきとタバサが思わず抱き合う。
「…何の音だ?斎堂、見てきてくれ」
エヴァが訝しげにして、一狼に言う。
「分かりました」
そう言って1人先行する。
「何の音だろう?まさか本当に幽霊なんてこと…」
そんなことを言いながら奥に目をこらした一狼が固まる。
そこには、自らの握力だけで石の壁を“握りつぶし”た…

「一狼君…酷いよ…信じてたのに…」
幽霊より怖いものがいた。
「ひ、姫宮…何でここに?」
狼狽する一狼に、空は静かに問いかける。
「一狼君こそ。今日はお仕事じゃ無かったの?なんで、ここで女の子とデートしてるの?」
「ち、違う!本当に任務で!いや詳しくは言えないんだけど!」
“カゲモリ”の活動は構成員以外には秘密。本当のことを言うわけにもいかず苦しい言い訳を強いられる一狼。
「おい。斎堂。幽霊の正体は分かったか?」
「ああ、エヴァさん!ちょうど良かった。そ、そうだ!本当にデートじゃない!その証拠に今日はみんなで…あ」
みんなでいた。そう言えば姫宮も納得してくれる。そう思って助けを求めようとした一狼が、特大の地雷を踏んだことに気づく。
だって今日のメンバーは…
「うん?その服、輝明学園の…ウィザードか?」
「…情報照合完了、ウィザードです。タイプはアタッカー/人造人間、2年2組の姫宮空と思われます」
「へ~人造人間かあ。葉月ちゃんとも知り合いなのかな?」
「かも知れませんね…あれ?確か斎堂さんも2年2組ですよね?もしかしてお知り合いですか?」
「あ、ちょっぴり私に似てる気がする。えっと、姫宮さん、だっけ?こんな所でどうしたの?」
「…とにかく。幽霊じゃないなら大丈夫。怖くない」
「あ、おねえさま復活したのね!よかったのね!きゅいきゅい!」
タイプは違えど共通点が1つ。それは美少女勢ぞろい。まさにハーレム状態なのだ。
「…ご愁傷さま。早く誤解が解けるといいわね…こじれると、大変だから」
その状況に“出会い”を増やしすぎて大変なことになっていた、とある青年を思い出したライズが、珍しく同情的に、ポンと一狼の肩を叩く。
(た、頼む!隊長殿、古泉さん、玲二さん…この際カゲモリで男なら誰でもいい!ここにきてくれ!)
そんな少年の内心の必死の祈りは天には届かなかった。そして…
「そんな…1人じゃなくてたくさんの女の子と一緒なんて…一狼君の…一狼君の…」
目にいっぱい涙を貯め、姫宮空が大きく息を吸い込み…
「ひいらぎれんじぃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!」
脱兎のごとく逃げ出した。リミッター解除の全速力で。
「え!?ちょっと、それ悪口なの!?って言うか待ってくれ!誤解なんだ姫宮!…無茶苦茶はやい!?」
必死の全力疾走で追いすがる一狼。あっという間に2人は見えなくなった。

…その後、斎堂一狼が姫宮空の誤解を解くのに、1週間の時を要したと言う。



設定

カゲモリ(陰守)

学園世界の最初期、『極上生徒会』が成立する前から存在する、学園世界(と紺若ゆうな)の平和を“陰”から“守”る特殊部隊。
元々は輝明学園校長“荻原宗一郎”が忍者“陰守マモル”と出会い、その実力を見込んだことから始まり、
学園世界の長老として尊敬される『ジジイ四天王』間での調整の末、創立された。

初期メンバーはマモルの他は『ジジイ四天王』が責任者である学園のうち、ザールブルグ以外の3校から1人ずつ選出され
隊長に浅間山高校『陰守マモル』
輝明学園『斎堂一狼』
トリステイン魔法学院『“雪風”のタバサ』
真帆良学園『エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル』
の4名。

また、ザールブルグアカデミー学長ドルニエの研究室が集会所として提供された。

その後、彼らの友人や各学園内で自らの能力を隠して暮らしていたものなどをスカウトしてメンバーを増やしていき、現在に至る。
(余談だが新規の構成員や“カゲモリ”の案件は宗一郎自ら行脚して集めている。輝明学園の運営が理事長代理に任されているのはそのため)
元の世界では正体を隠して暮らしていたものが多いためか、構成員には自らの正体を隠すのに長けた、隠密や忍者、人外種族が多い。
なお、自らが“カゲモリ”であることを『ジジイ四天王』と“カゲモリ”の構成員以外に明かすことは禁止とされている。
そのため任務中は“購買経由で依頼を受けた学生”として行動する。
この際、自らの学園内では非戦闘員を装っている構成員は任務中は輝明学園の“ウィザード生徒”として扱われる。
ちなみに任務中以外は基本的に束縛は無いのでメンバーは割と好き勝手に学生生活を謳歌している。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー