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繰り返されるウォークライ

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繰り返されるウォークライ


「・・・・野球部・・・・ですか?」
「うむ。」
 そうおもむろにうなずいて都立陣代高校生徒会長林水敦信は話を続けた。
 ここは陣代高校生徒会室、いつもどおりの怪しさ全開の雰囲気で自分を向かえ入れた会長が言うには
あるちょっとした問題が起きたらしく、そのことで自分が呼ばれたらしいのだが・・・・

学園世界への転移という混乱が収まった現在、
学業と共に放課後部活動も再開されるようになったのだが、
『他校の部活との交流試合を行いたい』という声があがってね」

「ああ、そんな話もありましたね。」

 せっかく知り合ったのだから、他校の部とも試合したいというのはまあ運動部なら当然のことだろう。

「まあ大丈夫なんじゃないですか?交流試合くらい元の世界でもありましたし。
そりゃあ『あいつ』みたいなのがあっちこっちの学校にいて無茶苦茶やってくる!
とか、言うなら話は違うでしょうけど・・・・・」

 脳裏に『あいつ』の今までの被害の数々が浮かぶ。
 今は極上生徒会に出向していてこの場にはいないが、
一人でも厄介なのにもし『あいつ』みたいのがいっぱいいたら・・・・・

「その点は問題ない。あくまで交流試合を求めているのは他校においても同じ部活、今回ならば野球部なのだから」

「じゃあ問題ないんじゃ・・・・・・・
あれ?もしかしてうちの野球部ってずば抜けて弱くて、それでいつぞやの用に廃部寸前ってことですか?」

「すくなくとも廃部寸前ということはないし、特に弱小であるわけでもないが・・・・・
問題は当たらずしも遠からずといった所だな。・・・・・・美樹原君」

「はい。会長」

 そういわれると林水の後ろに秘書よろしく立っていた生徒会書記美樹原蓮が、
手に持っていた紙袋からそっと一本のビデオテープを取り出し、
それを生徒会室備え付けのビデオデッキにいれ再生しだした。

「?なんのビデオです会長?」
「まあ見たまえ」


 ・・・再生された映像を一言で言うならば『B級コメディー野球映画』とでも言うところだろう。
 衝撃波をまとったボールがバットを粉砕し、
ホームランコースのボールがいきなり垂直に落下しだしてキャッチャーのミットに収まり、
バントで打ったボールがものすごい勢いで場外に飛んでいく・・・。


 当然、相手側は点など入らずあっという間に試合終了。
 残ったのは死屍累々とした“陣代高校野球部”の敗者の群れのみである。

 ただただ、一方的に相手チームによる非現実的なプレーが行われ映像は終了するのだった。


「・・・・・・なんですかこれ?」
「試合の映像だが?」

「いや、・・・どっかの映研の作品ですか?
CGは凄いけど肝心の話がこれじゃあ・・・って陣代高校野球部!?」

「ああうちの野球部だ」

「いやうちの野球部って・・・・・
まあ、たしかに負けてる方の学校名に自分とこの名前使われるのはあまりいい気はしませんけど。
 ああ! それでうちの部員達が怒って『この映像』作ったとこに抗議しに行っちゃったってことですか?」

 運動部というのは得てして血の気の多い連中が多い。
 『この映像』をみれば気を悪くもするだろう。


 だからといって、ただでさえややこしい状態のこの学園世界で、他校と揉め事を起こせばどうなるか・・・・・・
 下手をすれば極上生徒会の出張るほどの事態になりかねない。


「安心したまえ。特に野球部から抗議などは受け取っていない
まあ、それどころでもないのだろう。
この映像自体、別に作られた映像などではないしね。」

「へ?・・・・・作られた映像じゃないって?」

「うむ。・・・・・これは、前回行われた交流試合の記録テープだ」




 『総合学園都市』学園世界ができる以前から、数多の学園が集合して作られた都市であり、
その特徴として『能力者開発』を念頭においた特殊な学園である。
 当然、そこに通う生徒達も普通ではなく、
彼らは俗に言うところの『超能力者』である




「・・・・・つまり、これはその超能力学園の野球部とうちが試合した時の記録だと?」
「・・・・・・・そう言うことだ。」
「ってか! これどう考えても反則でしょ!?」
「特殊な道具を使っているわけではない。あくまで本人の身体能力の延長上のものだそうだ」
「いやでも!?ってか開発したならドーピングじゃないんですか!」
「残念だが、少なくともドーピングの種類の中に超能力開発というものは、現在の所存在しない。
 存在しない以上、本人の身体能力の延長上であるという主張を受け入れざるをえないのが現状だ」
「そんな! それじゃあうちみたいな普通の野球部じゃ鼻から勝負にならないじゃないですか!」
「まあそうなるな。
 ちなみに部員達も君と同じことを考えたようでね・・・・逃げるように次々と退部を願い出たそうだ。」
「!!!」
「・・・・敗北のショックも大きかろうが、何よりも『未知の力』に対する恐怖が強いのだろう。
 なんとか、顧問教師が説得して思い留まらせる事はできたそうだが」


 野球の実力ではなく、
今まで体験した事の無い超能力という未知の力に敗北したのだから無理も無いだろう。
 ふう・・と、どこからとも無くため息がもれる。
 その息は誰が漏らしたものなのか・・・・・・・・
生徒会室を静かな沈黙が包んだ。


「・・・・・でぇ、あの?それでどうしようと?
 いや私だってなんとかしたげたいとは思いますけど・・・・・・
 でも、それこそ今回はついてなかった野良犬にでも噛まれたぁ~
とでも思って、心機一転するよう励ますくらいしかできないですよ?」

 実際問題、他にできることなど無い。
 なにせこちらは何の力も無いただ『戦争バカ』が一人いるだけの普通の高校なのだから

「・・・・・・我が校だけならそれでもよかったのだがな。」
「へ?我が校だけって言うと?」
「私立穂群原学園高校・私立桃月学園など我が校と同じ、
基本一般の生徒が通う学園において同じ様な問題が発生している。」

「・・・・・あ~なるほど。」


 学園世界として混じりあったのはなにも特殊な能力者を有する学園だけではない。
 なんの特別な力を持たないその他大勢の一般学生が混ざる以上、
このような問題が起きることはある意味当然の事であった。

「とはいえ、彼ら特殊な力を持つ者たち・・・・・仮に『能力者』としようか。
 彼らの数も決して少なくはなく、彼等もまた『学生』である以上、事は非常にデリケートな問題を孕んでいる。
 よって明確な基準はあえて作らず、
今後はどのような競技においても試合前に各校ルールの『すり合わせ』を行う事が義務付けられる事になるそうだ。
 トラブルの対処法としては極上生徒会の存在もある以上、無駄な火種を作る必要もあるまいということでね。
 今後、この件に関しては各校理事会などが中心に微調整を行っていくことで決着がついたそうだ。
 ただ、今回の事件でショックをうけた学生達も大勢いる以上、彼らの心のケアも必要になってきてね。
 なにかしら彼等のやる気を取り戻させるきっかけが必要になったのだよ。」
「はあ・・・・・まあコテンパンにやられたのは事実だし、
なんかはっぱをかけないといけないのはわかりますけど・・・・・・きっかけって?」
「なに、幸い問題が発覚したのはスポーツだ。スポーツで起きた問題であるなら同じスポーツで解決すればいい。」
「うん、まあ・・・・・・そうでしょうね。
 ・・・・・まさか、うちの野球部にもう一度試合して更に勝てと?」
「テレビなどで使い古された手段ではあるが、それだけに効果の期待できる手段だろう。
 なに無理に勝つ必要は無い、要は一般人でも善戦する事ができるとわかれば、
少なくとも未知の相手に対する恐怖はある程度払拭できるだろう。」


 まあ、強引ではあるが理屈は判らなくはない。
 なにせ、これから先しばらくは、嫌でも超能力や魔法なんていう
今まで非現実の世界の存在といっしょに生活しなければならないのだから。

(まあ、それは仕方ない事だと思うけど・・・・・・・・・)
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・
 ・・・・嫌な汗が背中を流れる

 善戦するほど野球部を鍛える。
と言うのも、どだい無茶な話だが、“なぜそれがうちの部なのか?”とか、というか“私はなぜ呼ばれた?”とか・・・・・

とにかく嫌な予感が全身を駆け巡った。


「あの~それで何でうちの野球部が再戦することに?」


「理由の一つには我が校が以前からこの手の特殊な生徒に対して耐性がある為だな」
「耐性・・・・・・」

 たしかに、日常的に下駄箱が爆破されグラウンドに地雷が埋まり、
又、ある日など校内全域でバイオハザードが起きて、
さらに!それら全ての事件の犯人が“堂々と”登校してくる学校など他にはないだろう。

(いや!たしかにみんな『アイツ』には慣れてるけど、それとこれとは話が違うんじゃ)

「もう一つの理由は・・・・・・・まあ可能性の問題だな。
 ・・・・やはり少しでも善戦できるよう、似たような前例があり、更に勝利した我が校が選ばれたのも仕方あるまい。」
「あの・・・・・まさか前例・・・って」


 ・・・・・・・嫌な予感はすでにほとんど確信にかわっている。


「無論。以前のラグビー部の一件だ。」


(ああっ・・・・やっぱりぃぃ~~)


 その発言を聞くと同時に私、陣代高校生徒会福会長“千鳥かなめ”は、
床の上に力なくガクっと崩れ落ちたのだった・・・・・・・




「ってな事があったのが一週間前。
 その翌日には宗介の奴が、『まかせろ』とか言って野球部員を勝手に連れて、
合宿をここ『私立輝明学園』でやりだして現在に至る・・・・と。」

 正直、ここまで前回と同じだともはやため息しか出ない・・・・
ここまで送りだしてくれたクラスメイト達の励ましにもどこかあきらめムードが漂っていたし。


「・・・・・あの・・・・・千鳥・・・かなめさんですね?」
「ふえ!?」


 考え事の海に沈んでいた意識に、急に声を掛けられ慌てて回りを見渡す。

 周囲では輝明学園の生徒達が、
暗いオーラをまとってぶつぶつ独り言を口走っていた自分をものめずらしそうに見ていたが。

 声を掛けてきたのは周囲の生徒達ではなく、
生徒達の後ろにいた大きな本を抱えた長い黒髪と黒いスーツが特徴的な女性だった。

「はじめまして、私はこの学園で教師をしているリオン・グンタと申します。
 ここであなたに会うのもこの書物に書いてある通り・・・・・」

 ・・・・・・なんか不思議な人である。


「え、あ、どうも始めまして!
 え~と都立陣代高校生徒会より参りました。千鳥かなめと言います!
 今回は当校の問題にご協力いただきましてありがとうございます」

 ペコリ、とあわてて挨拶を返す。

「どうぞ、お気になさらず。
 今回の問題は、こちらとしても看過できる問題ではありませんでしたし。
 さ、こちらです」

 そうゆうと静かに笑みを浮かべ、
リオン先生は周りで見ていた生徒達に道を空けるよう言いながら歩き出した。

「そう言って頂けると助かります。
 それで、あのリオン先生・・・・でよろしいでしょうか?
 あの、変な質問だと思うんですけど・・・・・・・
 宗介・・・・あ、いや・・・・相良君達は何か、その・・・・・失礼を働いたりしてないでしょうか?」

 いきなり変な質問だとは自分でも思うが・・・・
 それでも、前回の『アレ』があった以上、
先に確認しておかないと不安が募るばかりで仕方が無い。

 しかし・・・・・
彼女は手に持った大きな本を広げ、パラパラとページをめくりながら

「ふふ、可笑しな質問をされますね。
 ・・・・・なるほど・・・・・ふふ。
 ・・・・大丈夫ですよ。ご心配には及びません。
 皆さん楽しそうに練習に励んでいますよ」

 と、予想と大きくはずれた答えを返してくれた。

「・・・・楽しそう・・・・ですか?宗介たちが??」
「ええ・・・・・信じられませんか?千鳥さん」
「正直・・・・・とても」

『あの宗介』が楽しそうというのも信じられないが、
ほとんどの部員達が退部しかけるほどだった野球部が、そんな簡単に立ち直るものだろうか??

「ふふ、その様ですね。
 ・・・・・・まあ百聞は一見に如かずといいますし、見れば判るとおもいますよ。
 今の時間だと・・・・・・
 ああ、そうですか・・・・・もう少ししたら彼らも休憩時間のようです」
「へ?あ、はい・・・・・??」

 少々あっけに取られながら先生のあとをついて行く。
 ・・・・・・しかし本に休憩時間でもメモしているのだろうか?
 先ほどからパラパラとページをめくりながら歩いているが???

「あの~先生?その本いったい?」
「うん?・・・・・ふふふ。それは・・・・・」
「それは??」
「・・・・・・それは秘密です。」

 もし自分が男ならそれだけで骨抜きにされてしまいそうな極上の笑みをうかべ、リオン先生はそう答えた。






「よし!二十分休憩に入るぞ!!」
『輝明学園地下体育館』元々は別の目的で作られた、本来秘密の訓練場。
 ここが都立陣代高校野球部の現在の合宿所である。
 元の目的が目的のため、地下でありながらその敷地は広くちょっとしたドーム球場クラスの広さを有している。
 スピーカ越しに響く男の声を受け、部員達がそれぞれ休憩に入った、丁度そこに

「・・・・・さぁ、着きましたよ。」
「うわぁ。本当に野球場みたい・・・・・って、あ!宗介~!!」

 リオン先生に連れられた千鳥かなめがやってきた。

「千鳥か。どうかしたのか?わざわざこんな所まで?」

 むっつり顔にボサボサ頭の少年―――
 陣代高校生徒会安全保障問題担当・生徒会長補佐官及び現極上生徒会執行委員相良宗介である。
 あいも変わらず、こちらの気もしらず間の抜けた発言をする宗介に
スパーン!!と伝家の宝刀・ハリセンを頭に食らわせる!!

「・・・・・・・なかなか痛いぞ千鳥。」
「どやかましい!!あんたまた勝手なことして!!」
「・・・・・・なるほど。そんな所から出しているんですね。」
「問題ない極上生徒会を通して申請は行っている。林水閣下にも許可は得ている。」
「そうゆうことじゃなくて!あ~もうっ!!・・・・・・はあ、まあいいわ。どうせ何いっても無駄だろうし。
それで野球部の皆は無事!?」

 そういって周囲を見渡してみる。
 休憩中の部員達は特訓が激しいのか、
ユニホームはボロボロ体のあちこちにテーピングと痛ましい格好をしてはいるが、
そこには痛い敗北を期した相手と再び戦う羽目になった悲壮感など微塵も漂っていない。
 皆、その顔には笑みすら浮かべていた。

 (・・・・・・・て、あれ??てっきりもっと酷いことになってると思ってたのに???)

 なまじ以前のラグビー部の惨劇を知る分、覚悟してやってきたので少し拍子抜けする気分だった。

「そう心配するな、俺だって学習している。
 前回の反省をいかして、今回は俺一人で行うのではなく極上生徒会の友人のコネクションを頼ってみた。
丁度その道のエキスパートがいると言う話を聞いたのでな」

 そう語る宗介の顔にも満足げな笑みが浮かんでいた。

「へ?じゃあ今回はあんたが前みたいな特訓してたんじゃないの!?」
「無論だ・・・・・流石は異世界、このような訓練方法があったとは。今回は俺もよく学ばせてもらった。」
「へえ?・・・・じゃ、じゃあ今回はそのエキスパートの人が指導していたの?」

『エキスパート』つまりプロが監修していたなら酷いことにはなってないはずだろう。
 どんな特訓かは判らないが、どうやら少なくともあの悲劇は回避できたらしい。
 あれほど落ち込んでいた部員達の変わりようもそのプロのおかげだろうか。

「肯定だ。俺はあくまで補佐に回り彼女の補佐をメインに行っていた。」
「・・・・・・彼女?」

 ・・・・・・なんか気になるワードが出てきた気がするんだけど?

「ああ。同じ極上生徒会執行部の柊蓮司の友人の女性なのだが・・・・・・千鳥?」
「・・・・・ふうん・・・・・・そうなんだ。」
「お、おい・・・・ち、千鳥?お、落ち着いて聞いてくれ?
 我々には何か・・・・そう!大きな誤解がある気がするんだが!?」
「別にぃ?・・・・・・そんなことないわよおぉぉ。
 相良君はずっと!その『女の人』と『一緒に』特訓してたわけだ!ふ~ん。ほ~おぉぉ!!」

 ニコリと微笑んで答える。
 なにか宗介がだらだらと汗を流しているが知ったことではない。
 ジリジリと詰め寄っていく・・・・・・・・と


「大丈夫ですよ千鳥さん。彼女にはちゃんと恋人が別にいますから・・・・・・」
「へ?」    (た、助かった・・・・・・。)
「ですから、あなたが嫉妬する必要はありません。」
「っ!!!い、いや!別に私は!し、ししし嫉妬なんかしてませんよ???!!」

 口元に笑みを浮かべたリオン先生が、からかうようにそんな事をいってくる。
 真っ赤になったこちらを見る先生の顔は、実に楽しそうだった。

「そうですか?まあ・・・・・・何と言おうと真実はこの書物に書いてある通り。」
「ちょぉ!!本に書いてあるってどうゆう!!!」
「それは秘密です♪ふふ・・・・・・」
「なあぁぁ!!!」
「まあそれはさておき。「いやさておきといわれましても!!」千鳥さん。用事は済まさなくてよいのですか?」

 そうあっさり話題を摩り替えられ、本来の目的を思い出す。

「ううぅ・・・・・。わかりました・・・・・・。」
「むう。よくわからんが心配しなくても今回の訓練方法が知りたいなら、
後でデータをまとめて提出するが「うるさいっ!!!」・・・・・すまん・・・・・・・。」
「あ~もうっ!!んっ!!ほらこれ!野球部のみんなに差し入れ。まさかまた食事制限とかしてないでしょうね」

 そういって友人達と協力してつくったおにぎりの入ったバケットを差し出す。
 作っている時に一緒に手伝ってくれた仲間達が
「なんか・・・・・・こんな所も前といっしょだねぇ。」などと言っていたが・・・・・・
 ま、まあ気にしないことにしよう。

「問題ない、部員達も喜ぶだろう。・・・・・よし!全員集合!!副会長が差し入れを持ってきてくれたぞ。」

 掛け声一発休んでいた部員達がダッシュで集まってくる。
 さわやかに駆け寄ってくるその姿はまさにドラマなどで見られる『高校球児』の姿そのものだろう。

「ありがとうございます!」「いただきます!」

 そう口々に、感謝の意を述べながらおにぎりを食していく部員たち。
 その姿には、以前のラグビー部のような血に飢えた獣の姿は微塵も感じられなかった。

「・・・・・・はぁ~。まさかここまで立ち直らせることができるなんて・・・・。ちょっと本気で凄いわねそのプロの人」

 絶望の淵にいた筈の部員達を立ち直らせるだけでも困難だったろうに・・・・・
 などと関心していると入り口のほうから

「何をしているの?リオン・グンタ」

 静かな・・・・・・・・・しかし、強い警戒を含んだ声が聞こえてきた。
 ん?と振り向いて声のほうを見ると、
輝明学園の制服に身を包んだ赤い髪に赤い瞳の生徒がこちらを静かに睨み付けるように見ていた。

「・・・・・・あらあら。私はただ、こちらの陣代高校の副会長さんをここまで案内してきただけですよ?緋室灯さん」

 睨まれているにもかかわらず顔に微笑を浮かべながらリオン先生が答える。
 緋室灯と呼ばれた生徒はこちらを見た後

「?くれは?いや違う・・・・・・」

 と少し驚きながら、油断無くこちらに近づいてきた。
 ぴりぴりとした空気がただよう

「ふふ、御心配なく。今の私はただの“鉄道と秘密が好きな学園教師”リオン・グンタです。
少なくとも、今ここで何かをすると言う事はありません。」

 こちらの顔をみてリオン先生が不適に微笑む。
 その笑顔に少しだけ寒気を感じつつも、この二人・・・・・仲悪いのかな??などと考えていると


「遅かったな緋室。執行部で何かあったのか?」

 と宗介が彼女に声を掛ける。

「大丈夫。執行部は関係ない、少しくれはと話をしていただけ。」
(?くれは?さっきもこちらを見て呟いてたけど・・・・・そういえばどっかで聞いた名前ね?)
「赤羽くれは理事長代理 ・・・・・現在この輝明学園の理事長代理を勤めている方です。
 ・・・・・ああそういえば、彼女は少し千鳥さんに似ていますね」

(思い出した!どっかの理事長がすごい若いって話がうちの学校内でも噂になって!)

「確かその人が 私に似てるってことで風間君たちが騒いでたっけ・・・・・なんかいろんな逸話のある人で」
「・・・・・混乱を収めるためにと行われた学園の全校集会で、
自身の疲労と混乱がピークに達したあまりに、
全ての説明を『はわ!』と『はわわ!』だけでこなした通称『はわはわ朝礼』。
 一年前の写真が新聞部などを通して流通したために、
各校の胸囲の貧しい女生徒達が衝撃のあまり暴徒と化した『赤羽印タオル事件』。
 それに伴う貧乳愛好家の男子生徒達の「貧乳はステータスだ!!希少価値なんだ~!!!」
という魂の叫び声を発端とする貧乳VS巨乳の『学園世界天下分け目の乳合戦』などなどの事ですね」

 律儀にリオン先生が解説してくれる。
 ああ、あれは大変だった。
 横にいる宗介と向こうの緋室さんもいろいろ思い出しているみたいで

「・・・・・・いままで、多数の暴徒を鎮圧してきたが・・・・・・
あそこまで恐怖を覚えたのは『あの時』の用務員以来だった。」
「・・・・・あの後、くれはしばらく脳が完全に死んでいた。」

 ・・・・・まあとにかく大変だったのである。
 噂ではどっかの世界の大魔王とかいうのが
「私だって! 私だってね~!!小説なら!!本気さえ!!っ本気さえだせればぁぁぁ~~!!!!!」
 と泣きながら「裏切り者~!!!」と叫びつつ大暴れしてものすごい被害を出していたらしいし。
 まあそんな事件の中心にいた人なので学園世界ではちょっとした有名人なのである。
 ・・・・・・正直あまり似ていると言われても嬉しくないような。
 と、微妙になった空気のおかげか、
リオン先生と緋室さんの間のぴりぴりした空気も収まったようである。

「・・・・・緋室灯。よろしく。」

 と緋室さんがこちらに声を掛けてくる。

「あ、どうも。え~と、陣代高校生徒会副会長の千鳥かなめです。よろしく緋室・・・・・さん?」
(あれ?そういえば学年って、いくつなんだろこの人?宗介は呼び捨てにしてたけど)
「千鳥。彼女は三年だ」

 悩んでいたら宗介が答えてくれた

「あ!すいません緋室先輩!!」

 慌てて訂正する。

「・・・・別に・・・・・いい。先輩は要らない。」
「え?そうですか」
「・・・・・・あかりん、って呼んで。」
「うえ!?」
「・・・・冗談。灯でいい。私もかなめって呼ぶから」

 意外とユニークな人のようである。

「あーそれじゃあ、えっと灯さん?」
「なに?」
「あのあなたが宗介の言ってたその道のエキスパートって言う人なんですよね?」
「そう。」



 簡潔に答えられる。
 ・・・・・・なんというか想像してたイメージとかなり違う人だと思った。
 なんかもっと明るい爽やかな笑顔を振りまいてるような人かな~と勝手に予想してたんだけど。

「あ、あの今回はうちの宗介が迷惑かけちゃったみたいで・・・・・・どうもすいません。」

 宗介がここに来たのは、私が話をした翌日すぐにだったし、
彼女にもかなり無理をしてもらったろう。
先に謝罪しておく。

「?別に謝ってもらうような事はない。問題は学園世界全体のもの。協力するのはあたりまえ。気にしないでいい。」

 そう彼女はなんでもないように言ってきた。
 いきなり協力させられたはずなのに、なんと暖かい言葉を掛けてくれるのだろう。

「そうだぞ千鳥。なにもキミが気にすることは「どやかましいっ!!」・・・・・痛いぞ千鳥」
「いいから! あんたも頭さげなさい! いきなり手伝ってもらったんだから、せめて御礼ぐらいちゃんと言いなさい!」

 グっ!と頭を掴んで宗介にも頭を下げさせる。

「本当に気にしないでいい。私は気にしないから。」
「千鳥さん、頭をあげてください。そんなにされると逆に緋室さんが困ってしまいますよ?」

 灯さんとリオン先生がそれぞれ声をかけてくれる。

「あ、あははは。すいません、なんか逆に気を使わせちゃって。」
「別に、いい。」
「ふふふ、千鳥さんも大変ですね。」

 リオン先生は何か察したらしい。・・・・・まあいつも宗介のフォローばっかしてるから。
 とりあえず突っ込まれる前に話題を変える

「でもほんとすごいですね。野球部の皆すっごい生き生きとしてるし。立ち直らせるの大変だったんじゃ?」
「問題ない。皆、自分で立ち上がった。私はただ、きっかけをあたえただけ。」
「へえ。」

 ・・・・・などと感心してると向こうから野球部の部長が歩いてきた。

「皆さん、もうすぐ休憩時間が終了しますよ。」
「うむ。了解した。」

 そう宗介が答える。
 私はちょっとした好奇心から部長を呼び止めた。

「ああ、ちょっとまって。ねえ部長さん。」
「はい?なんでしょうか?」
「いや、その。みんなよくまた野球する気になったな~って思って。
 一週間前にあった時とみんなまるで別人だし。」
「ああ、そのことですか。」

 私の疑問に答えるその顔にも笑みが浮かんでいた。部長は語る

「・・・・・・たしかに、前回の試合の後はとても野球ができる状態ではありませんでした。
 圧倒的な彼ら超能力者の力になすすべもなく、
どうせこれ以上やったってあいつ等に勝つことなんてできないとあきらめ、退部しようとも思いました。
 辛かった・・・・悔しかった・・・・辞めたいと何度も思った。
 それは無理やりここに連れて来られた時も一緒です。」
「って、宗介ぇぇぇ~! やっぱあんた無理やり連れて来たのね!」
「むう・・・・・・・。」

 宗介の顔にダラダラと汗が浮かぶ。・・・しかし

「どうか攻めないでください! 私達はむしろ感謝しています!!」
「へ!?」
「・・・・ここに来れたおかげで私達はもう一度野球をしようって思えたんですから!!」


 グっと拳を握り部長は力説する。宗介と灯さんを見つめながら

「お二人のおかげで、私達は勇気と強い自信をいただいたのです!
 たかが一回の敗北がなんだ!?
 打てないなら打てるようになればいい!
 ボールが取れないなら取れるまで食いついていけばいい!!
 たかだか一回、超能力に負けたくらいで諦めるような腰抜けの集まりじゃないだろ私達は!!
 やられたならその悔しさをばねに何度でも戦ってみせる!!!
 そう! 私達は次こそ勝ってみせる! そうだろ?!! みんなっ!!!」
「「「ハイ部長!!!」」」「「「やってやる!!!やってやるぞ!!!」」」

 部員達が部長の熱弁に続く、そこには敗北感など微塵もない。
 あるのはただ、『勝利』への熱意のみ!!

「いい返事だ、貴様ら!!!よし!!練習を再開するぞ!!!」

「「「「「「「「はい!!!!」」」」」」

 部員達の熱意を受けた宗介の号令の元、皆がグランドへと向かう。
 その勝利を目指してひた向きに突っ走る姿はまさに『スポーツマン』
 生まれ変わった『新・野球部』の姿がそこにはあった。

「凄い・・・・・・凄い!凄いです!!」

 私も思わず叫んでしまう・・・・・それぐらい興奮する光景だった。

「これなら!この調子で練習すればきっと向こうともいい勝負が!
ううん!!もしかしたら勝つことだってできるかもしれない」
「・・・・・・大丈夫。今の彼らは強い。たかだか超能力なんかに負けはしない。」

 静かに、しかし自信ありげに灯さんがうなずく。
 その顔にはわずかながら笑みが浮かび、優しい眼で彼らをみている。

「うん!これならいけます!!それで!?試合はいつ行います?一月後?いっそ一週間後にでも!!」

 な~んて、ちょっと調子に乗ってみる。
 まあ、いくら皆のモチベーションが高くとも
最低でもあと二週間は「試合は明日。前回の試合と同じ球場で行う」・・・・・・へ???

「・・・・・あの?・・・・・明日??」
「そう。」
「すでに相手の学校には連絡を入れてあります。」

 いままで興奮する私を見ていたリオン先生が補足してくれる。
 ・・・・・・・って!!え!?明日ぁ~!??

「ちょ、ちょっと待ってください!!いくらなんでも明日って!!早すぎますよいくらなんでも!!」

 というか、そんな簡単に勝てるような相手じゃない!
ちょっと練習したくらいで勝てる相手じゃないからうちが選ばれたはずだ!しかし

「かなめ。」

 慌てる私に灯さんが静かに・・・・力強く声を掛ける。

「大丈夫。彼らはこの一週間それだけの事をしてきた。」
「でもっ!!」
「彼らを信じてあげて」
「あっ・・・・・」

 そういわれるととても言い返せない・・・・・・・・せめてもの反論として

「でも・・・・・実際相手の連中、凄いんですよ?
こう・・・球なんか、ばぁ~~!!!ってとんで凄い勢いで打とうとしたらバットが逆に砕けたり」

 あの映像でみた相手の凄さを伝える。
 早まって、もしまた負けたら彼らは今度こそ立ち上がれない。しかし


「心配しないで。どんな事があっても彼らは負けない。そのためにいままで辛い練習に耐えてきたのだから。」

 灯さんが強く説得してくる。
 部員達をここまで導いてきたのは彼女だ。
 今日、見に来ただけの自分なんかよりよっぽど彼らの事を理解しているだろう。
 その彼女がここまで言うのだから、やはり大丈夫なのではないか?
 今日始めてあった彼女だけど宗介も信頼しているみたいだし、なによりその道のプロの言う事だ。
 素人の自分と違い、相手の実力を理解した上での判断のはず。
 プロがここまで言うのだから・・・・・・間違いないんじゃないだろうか?
 先ほどの部長の熱弁と皆の自信がその証拠だろう。

「・・・・そう・・・・そう、ですよね。私達が信じないと。
 信じます、私も信じますよ!彼らならきっと勝ってくれますよね!!」

 そうだ!他校の生徒の灯さんが信じてくれているのに、生徒会の自分が信じなくてどうするというのだ!!
 そのことを少し恥じながら強く同意する。

「かなめ。・・・・・・・ありがとう。」

 私に灯さんが見惚れるほどの優しい笑顔をむけて礼を言ってくる。

「いえそんな。私の方こそ・・・・・」

 ちょっと照れくさくて思わず笑みがもれた

「彼らは必ず勝利してくる。」

 もう一度、灯さんが強く断言する。

「そう・・・・・たとえ・・・・命にかえても!!!」

 ・・・・・・・・・・・・・・はい????

「え?あの・・・・・灯さん?・・・・???」

 戸惑う自分を無視して、灯さんが部員達の所へ歩いていく。
 思わず残ったリオン先生の方を振り向くが笑ってるだけでなにも答えてくれない・・・・・
 灯さんに気づいた部員達は一斉に動きを止め、皆始めから打ち合せていたかのように見事に整列する。
“笑顔のまま”で。

 ・・・・・・そ、そういえば。
 ここに来てから今までずっと部員達はずっと『笑顔しか』浮かべていなかったような・・・・・

 てっきり、そうゆう人なんだと思ってたけど・・・・・部長さん
 さっき、悔しかったとか言ってた時も笑顔のままだったような・・・・・。
 整列した部員達をよく見てみる―――浮かんでいるのは笑顔のみ。

『何か同じような』笑顔のみ―――

「あ・・・・・あの・・・・・・リオン先生?」
「はい?なにか。」
「これって・・・・・まさか」

 言い終わるより先に整列した部員達の横から宗介が正面に移動し、部員達の方を振り向いて――――
 って!!この光景は!!!!


「ようし!!いくぞぉ!!!! お前達の目的はなんだ!!!」
「「「キルキルキル!!! キルキルキル!!!」」」
「お前達の役割は何だ!!!!」
「「「「キルキルキル!!! キルキルキル!!!」」」」


さらに灯さんがそれに続く

「・・・・あなた達は赤羽理事長代理を愛している?学園世界を愛している?」
「「「「「はわわ!!はわわ!!はわわ!!はわわ!!はわわ!!はわわ!!はわわ!!はわわ!!はわわ!!」」」」」

 ――――輝明学園地下体育館に部員達のはわわコールが響きわたる。
 彼らの顔はそのフレーズに完全に陶酔しきっている

「な・・・・・・あ、ああ」
「・・・・・行えば誰でも今すぐ“GEBOKU”・・・・アンゼロット城が誇る究極☆訓練法『ロンギヌス式訓練法』
これはその『お試し版』と言ったところですね。」

 アンゼロットの置き土産の一つでしょう。
 と、淡々と部員達によるサバトの儀式をみながらリオン先生が教えてくれる。

 アンゼロットってだれ?とかなぜそこで赤羽理事長代理?て言うか、下僕って何!?とか、
いろいろ聞きたいことはあるんだけど

「あの・・・・・・・・リオン先生・・・・・・・それってつまり」
「タチの悪い洗脳ですね。」

 ・・・・・・・・・・・・・

「なっ!!なああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」






 その後の事は、大方の予想通りの結末だろう。
 確かに彼らは、特異な力などは何一つ使わなかった―――だが!
 ・なぜか仮面を付け入場してくる部員達。
 ・それを応援する応援席を埋め尽くす同じ仮面をつけた(みたことの無い)OB達。
 ・一緒に応援する(マスコットのつもりか!??)ずんぐりむっくりとしたねずみっぽい着ぐるみ。
 ・異様な光景に混乱する相手校に追い討ちを掛けるように、自ら剛速球のボールにぶつかっていく我らが野球部員達。
 ・さらに守備でも曲がっちゃいけない方向に腕を曲げながら体ごとボールを受け止める鉄壁の守備陣。
 無論、この間も彼らの仮面からはみ出た口元には明らかな笑みが浮かんでおり、
その口から試合中ずっと「キルキルキル。キルキルキル。」の呟きが漏れていた。

 ―――すでに球場は一種のホラー空間と化していた。

 当然、この状態で相手側にいつもの調子が出るわけもなく、
なんかいろいろおかしい部員達の姿にいい様のない恐怖を覚え得意の超能力もその力を発揮できず、
前回とは打って変わって試合結果は陣代高校野球部の圧勝となった。

 曰く「まるでゾンビと試合をしているようだった・・・・・・」と


 ――――球場内に部員達とOBの勝利の歓声が響く


「「「「「はわわ!!! はわわ!!! はわわ!!!」」」」」
「ふもっふ!!」
「「「「「はわわ!!! はわわ!!! はわわ!!!」」」」」
「ふもっふ!!」
「「「「はわわ!!! はわわ!!! はわわ!!!」」」」」
「ふもっふ!!!!!」
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・その歓声を聞きながら、私はただ笑っているしかできなかったわけで

「・・・・・・はっ・・・・・ははは」

 なんか向こうの方でうちの校長に思いっきり謝っている巫女装束の女の人とか、
 その横で頭を抱えてる幸薄そうな男の人とかいるけど・・・・・・・
 あ、足すべらしてグランドの方に落ちていった


「・・・・・・全ては定められていた結末。この結末もこの書物に書いてある通り」

 そういいながらリオン先生がこっちにやって来た。

「・・・・・・知ってたんなら教えてくださいよ。」

 いや、ほんとに。

「だって・・・・・・・・・・・・」
「だって?」
「・・・・・だってぇ。聞かれなかったしぃ~。」

 と、ものすごい、いい笑顔でリオン先生はお答えになられた。

 ・・・・・・・もはやなにも言うまい。



「て、言うか・・・・元々の目的ってこの場合どうなるんだろ?」
「うふふ。ああ、大丈夫ですよそれは」

 私の呟きに先生が楽しそうに答える

「・・・・・みなさん“いくらなんでもこいつ等とやるよりはましだろう”と感じたそうですから・・・・・・。」



「「「「「「はわわ!!! はわわ!!! はわわ!!!」」」」」
「ふもっふ!!」
「「「「「はわわ!!! はわわ!!! はわわ!!!」」」」」
「ふもっふ!!」
「「「「はわわ!!! はわわ!!! はわわ!!!」」」」」
「ふもっふ!!!!!」
「「「「はわわ!!! はわわ!!! はわわああぁぁぁぁぁ!!!!!!!」」」」」
「ふもっふううううううぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・
 ・・・・・納得。



 ちなみに、今回の一件が学園世界中に広まり、赤羽理事長代理の逸話、
通称「はわわ伝説(☆れじぇんど)」にまた新たな1ページが刻まれたそうだが――――
それはまた別の話。






 ―――――野球部達の歓声溢れる球場を出て、帰路につく。

「はわわぁぁ~はわぁぁぁ・・・・・」
「・・・・まあ、元気出せよ?くれは・・・・・・」

 途中、グランドで揉みくちゃにでもされたのであろう柊蓮司と疲れた顔の赤羽くれはを目撃したが
 ・・・・・・・・・・今は放置しておこう。
 今、この学園世界で騒ぎを起こすのは私の望む所ではない。

 そんな事よりも・・・・・・

 嗚呼。思わず身が震える。
 愛しい恋人に優しく愛撫するように、そっと本のページをめくる。


「素晴らしい」


 そう・・・・・本当に素晴らしい。

 ・ウィスパード
 ・AIM拡散力場
 第八世界、ファージアースではないこの学園世界にのみ存在する、
 主八世界とは違う別の理に支配された秘密の数々。

 ・・・・・・・・・知りたい。

 ・・・・・・・・・・もっと秘密を。

 この学園世界に溢れる秘密のすべてを!

 そのための教師の姿。自然に、自由に歩きまわるための仮初の器の一つ

「うふふふ。せいぜい長引いてください。この素晴らしき学園世界よ。」


 私が『この世界の秘密』を全て知るその時まで・・・・・・・



 我が名は『秘密公爵リオン=グンタ』

 我が書物の前に全ての秘密は白日の下に晒らされる。




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