詩人の六崎杏介くんに勧められて購入したのが未生響(+)(空中線書局)の詩集だった。『氏の詩に比べると僕などまだドサンピンです』という。どれ、と思って買ってみたのだがあまりの難解さに私はついていけず、しばらく放置していた。めくってはみた。だが意味が分からず(分からなくてもいいのだが)ただひりひりと焼けるような文字列が私をいつまでも感化し続けた。
六崎くんはかなりこの詩人に思い入れがあるらしく、彼の作る詩ははじめ未生響のオマージュのように見えた。私は彼との交流を通して「戯詩」という手法-アルチンボルド法、回文、当て字など―を少しばかり教わった。どうやら言葉遊びのようなのだ。だがただの言葉遊びではない、未生響の詩は何かを物語りはじめている。だがその「何か」は巧妙なレフラクター(屈折機)によって異なる次元を軽やかに超えて現出している。
そら、宙リップが映えている。メッキ天使は懸垂する。 (第1節より)
ただチューリップが生えていると言っては面白くない。チューリップ≒宙リップ、生えて≒映えて、と言い換えることにより、メッキ天使の懸垂というシュールなイメージが空中にまざまざと浮かびあがる。少し穿つけれど間投詞の そら、も空、と言い換えることができるのではないか。ここに屈折の(1)言い換えること、を指摘する。
(Fanatic Amen “plorogue Fatherland Escape”より4、5節抜粋)
G-l-i-d-e! 然りの花弁のスカイサイン。発奮する膝蓋期のソープオペラ。テンタクルな全一狂のEternal Escape。
永々Oたる発生のユリカ語でhappenせよ膝蓋期のソープオペラ。レンゲの下睫は微風を起こしている。乱飛するラッパは風に潜っている。
(ここまで抜粋)
未生響の言葉によると、思考よりコトバが先立つ逸脱した詩の遊戯、幼年が常にセカイを無思邪に眺めるように、もう一度コトバ=物在と交感し戯れることが出来たなら―ということである。未生は幾つかの戯詩的要素を用いて、いかにもレフラクターのように混沌をある照準に絞り込んでいる。
ここでは他国言語との結びつきによるイメージの飛躍(2)、繰り返しによるイメージの強め(3)、同音異義語による新しい文章の創造(4)、乱飛(ラッピ)するラッパ、に見られる韻を踏んだ言い回し(5)、などが見られる。未生は詩の遊戯と言っているので私たちはそれを遊戯的に捉えれば十分であるが、多少補足として抜粋部分を説明するために、私なりにこの詩を翻訳してみた。
未生響の言葉によると、思考よりコトバが先立つ逸脱した詩の遊戯、幼年が常にセカイを無思邪に眺めるように、もう一度コトバ=物在と交感し戯れることが出来たなら―ということである。未生は幾つかの戯詩的要素を用いて、いかにもレフラクターのように混沌をある照準に絞り込んでいる。
ここでは他国言語との結びつきによるイメージの飛躍(2)、繰り返しによるイメージの強め(3)、同音異義語による新しい文章の創造(4)、乱飛(ラッピ)するラッパ、に見られる韻を踏んだ言い回し(5)、などが見られる。未生は詩の遊戯と言っているので私たちはそれを遊戯的に捉えれば十分であるが、多少補足として抜粋部分を説明するために、私なりにこの詩を翻訳してみた。
滑空!すると花弁の空中広告。成り立たない世界に一時的に蓋をし発奮する昼ドラマ。触手のような完全一体に狂うものたちの永遠逃亡。
エイエイオーという発声の揺りかごで偶然に生じよ一時的な昼ドラマ。レンゲの下睫毛は微風を起こしている。乱れ飛ぶラッパは風に潜っている。
と、勢いで翻訳してみたものの、詩情に乏しいものになってしまった。
ついでに補足しておくと、膝蓋期という言葉は実際には無い(つまり造語)で、この部分は3節の中の、-セカイは未だ蓋無し無底であるそうだ。-という箇所を受けている。ここでは世界が成り立つ根拠(つまり底)がなく、蓋も無いカオスであるという伝聞に基づき、膝蓋骨(膝の皿)で蓋する期間と読めなくもない。膝の皿の骨はググるとかなり生々しい写真を見る事ができる。そこからソープオペラという言葉も想起される、というのは勘ぐりすぎだろうか。
ついでに補足しておくと、膝蓋期という言葉は実際には無い(つまり造語)で、この部分は3節の中の、-セカイは未だ蓋無し無底であるそうだ。-という箇所を受けている。ここでは世界が成り立つ根拠(つまり底)がなく、蓋も無いカオスであるという伝聞に基づき、膝蓋骨(膝の皿)で蓋する期間と読めなくもない。膝の皿の骨はググるとかなり生々しい写真を見る事ができる。そこからソープオペラという言葉も想起される、というのは勘ぐりすぎだろうか。
英語と豊富な西洋哲学の言葉たちを揃え、独自のレフラクターで神秘的な世界を描く未生響の詩は強い魅力を発している。ただ戯れるだけでは帰さない独自のスタイルに六崎くんも惹かれているんだろうなと思う。
さて、指摘した(1)〜(5)のレフラクターを使って、私も私の詩を屈折させてみた。
“June”
“June”
エカ樹は画架に葉を降らせるらしい
ミモザ・マグノリアが祝福している
ひと筆ひと筆葉なれ
かさ高く茂り
ぼつぼつとほどこされる点描
ミモザ・マグノリアが祝福している
ひと筆ひと筆葉なれ
かさ高く茂り
ぼつぼつとほどこされる点描
天啓は満天に葉なれ
モリシア・モナントスにmolt 盛られる
展示は感歎の声に包まれて
集うもの思うもの
めいめいが火をくべてゆく
点描の天才が点灯するハイアートの残り美よ!
モリシア・モナントスにmolt 盛られる
展示は感歎の声に包まれて
集うもの思うもの
めいめいが火をくべてゆく
点描の天才が点灯するハイアートの残り美よ!
ハイドランジアはオルフィスムの輝きに
あわいする点描のまたたきに
アンフォルメルへ盲目する
エカ樹は現実から離れ―
美は実験的に滑りだす
あわいする点描のまたたきに
アンフォルメルへ盲目する
エカ樹は現実から離れ―
美は実験的に滑りだす
(以上)
特に(1)言い換え(3)繰り返し(5)押韻を取り入れてみた。飛躍には乏しいがある程度の絞り込みはできたのではないかと思う。自作の元の詩を戯詩とするために、2度3度と改稿を繰り返す必要があった。他にも詩をばらばらにして他の詩とくっつけるなど、興味深い戯詩の世界がある。そこには作者が思ってもみなかった飛躍や発想がふんだんにある。
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