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蜜蝋パンク

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28096@mixi

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どんな対象でもかまわないが、例えば旧石器人にテレビを見せたとしたらどう理屈をつけるだろうか?具体的な理屈のつけかたは制作者の判断にゆだねるとして、ここで、本人のベースとなっているテクノロジー(石器)と目にしたテクノロジー(電子)の間の乖離を三層で表すとする。中心にあるものはカヴァーテクノロジー(石器)で、越えるものはオーヴァーテクノロジー(電子)である。このしくみは現代人にとっては、マイクロテクノロジーと進歩したナノテクノロジーの関係に似ている。これとは別に、旧石器人にとっての猿人のような存在の持つ技術を懐古趣味的な意味をこめてアンダーテクノロジーと呼ぶ。
 サイエンスフィクションのアンダーテクノロジーのジャンルにはサイバーパンクのインフラを蒸気にしたスチームパンクがあり、時計仕掛けや真空管仕掛けのインフラを背景としてクロックパンクやエレクトリックパンクという言葉がある。前者はバベジの解析機械やタイガー手回し計算機、後者はギターアンプとして現在の世界でも使われている。
 失われたという意味では、ワックスパンクと呼べるような時代がある。エジソンが始めた「電気の世紀」のちょっと前、彼は機械ショップ(マシンショップ:http://farm6.static.flickr.com/5041/5250739606_66ed4563fd.jpg)で働き、そこで機械ショップ文化と呼べるべきものを知る。エジソン発明会社はこの機械ショップの風土から生まれた。前電気的なこの時代は、蓄音機はあったが、ゴム、エボナイト,
シェラックなどの天然樹脂や、塩化ビニルなどの化学素材が原料の円盤ではなく、真鍮や鑞でできた円筒(シリンダ)型をしていた。この黎明期で無限の可能性があったと考えられる時代の特異点で起こった変革を、ワックスパンクの時代と命名する。
 ワックスパンクをサイバーパンクほかの亜流であるクロックパンクやエレクトリックパンクと分けて定義する一番大きな意義は、ワックスパンクに全体主義的な息がかかっていなく、化学的なアプローチがナノテクノロジーに通じるためである。そこには永久機関のような動力としての人間はフォーカスされることはない。ただ、素材を見つけ、ひたすら実験をし、まぬけな答えをだして場当たり的に自然をハック(小斧で森を切り開く、の意味がある)する。
 ワックスパンク時代の象徴的な道具はエジフォン(ediphone)という、電気の父の名前を冠した鑞管による口述筆記(ディクテーティング)システムである。まだできたばかりの企業体にこれを売り込み、重役が鑞管に声を吹き込み、パンチャーがそれをタイプして公式文章やアーカイブにするというしくみは、道具を越えたインフォメーションテクノロジーとなっている。コンサルタント、という職業もこのごろ生まれている。

このように、現在のインフラのもとになってはいるものの、取り扱っている媒体の素材が現在とあまりにかけはなれているため、顧みられない事象がある。しかし、これはフィクションを作る上での教訓となる。ワックスパンクからみた未来には、マイクロテクノロジーのような技術は無いかもしれないし、マイクロテクノロジーの先にある未来からマイクロテクノロジーを見た時、自然の取り扱いのあまりのまずさに未来の人間は苦笑するかもしれない。しかし、インフォメーションテクノロジーとしての完成度と徒労感について、人々は驚愕するべきだろう。ワックスパンクの時代から、我々は殆ど進歩していないし、人間である限り、この先も大した進歩は望めないだろうからである。


 ※エスノたちの生活は~パンクと個別で呼べるような物が多い。お好みで生活のインフラをすべて素材で固める方法もあるだろう。バンプーパンクとか、フリントストーンはストーンパンクとでも言えば良いだろうか。珍しい例では高野文子の「棒が一本」に出てくる映像再生装置で、これは小麦粉(フラワー)をインフラに使っているようだ。先輩が醤油のかたちをして、うどんをおしつぶして映像を再生するさまは印象深い。電球の発明やレコードの音質など、エジソンが要所要所で百科事典的にそのエスノの時代を行き来しながら電気の世紀をつくったと、という考え方もできる。ワックスパンクはまぬけさにおいて群をぬいている。

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