クリシュナ(Krishna、Kṛṣṇa)

ヒンドゥー教の神のひとりで、同宗教では宗派を超えて重視される
聖典『バガヴァッド・ギーター』の教主。
維持神ヴィシュヌの化身(アヴァターラ)の一つとされ、
諸化身の中でも傑出した支持を集める。

『バガヴァッド・ギーター』を含む大叙事詩『マハーバーラタ
で大活躍し、その後プラーナ文献において彼の
幼少時代にまつわる伝承が形成されていった。

クリシュナとキリスト

キリスト教開祖イエスとクリシュナはしばしば結び付けられる。
ChristとKrishnaという字面からして深いつながりを見出す人も多い。
代表例としてインド系新宗教ISCKONをあげることができる。
クリシュナ信仰の聖地ヴリンダーヴァンにちなんでアメリカ合衆国
ウェストバージニア州に造られた彼らの宗教施設ニュー・ヴリンダーヴァンには
蓮華座を組み、インドの神か仏のように片手をあげたイエス像がある。
彼らにとって神聖な意味合いを持つ一例と言える。
こちらはプラス評価の見方であると言える。
一方マイナス評価もある。「イエス・キリスト」が
他宗教の神話から盗んで捏造された証拠、という見方で
一部のキリスト教批判者はこの立場をとる(キリスト神話説)。
キリスト神話説の古典『磔にされた十六人の世界の救い主』では
Chrishnaという表記が用いられ、現代のネット上にも波及している。
なお『磔にされた十六人の世界の救い主』自体の資料としての信頼性は低い。

クリシュナとキリストの相似点を知ることで、キリスト教徒も
クリシュナに親しみを持つようになるのではという見方がある。
しかし、多くのキリスト教徒は、これを嫌悪している。
まず相似点を挙げることは、先にあるようにキリストが
先行する神話を元に成立した人為的存在というニュアンスを含むこと。
第二に、これが他宗教との混交の理由付けにされ得ること。
第三に、イエスと異なるクリシュナの行動が、しばしばキリスト教的倫理、
キリスト教徒側の意識と反することを理由して挙げることが出来る。

一方、キリスト教側からは『バガヴァッド・ギーター』の内容は
新約聖書『ローマ人への手紙』を真似たものだという主張がなされている。

比較表

比較対象 クリシュナ イエス
意味 クリシュナ(「黒」) キリスト(「油を注がれた者」)
神学的位置 神の化身 受肉した神の子
社会的立場 戦士として戦いに参加 大工
家系 王族ヴァスデーヴァのもと生まれる ダビデ(王)にも連なると主張される
誕生 出産経験のあるデーヴァキーから 処女マリアから
生誕祭 8月24日 12月24日
誕生時の妨害 暴君カムサが 暴君ヘロデが
異性関係 ラーダーなど恋人が多く存在 聖書には記載なし
子供 1万6千人の妻との間に18万人 聖書には記載なし
猟師に鹿と間違われ、かかとを射られて死亡 刑として十字架にかけられて死亡

注記

参考資料

美莉亜・訳『バーガヴァタ・プラーナ』全三巻、ブイツーソリューション刊
前川輝光「クリシュナの物語『マハーバーラタ』」CiNii論文

参考サイト

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最終更新:2011年04月02日 05:46