イエス(Jesus)

一世紀のパレスチナで活躍した宗教家。キリスト教の開祖。
この当時腐敗していた律法学者やファリサイ派を批判し、
彼らの形式的な信仰を否定した。

新約聖書の英語表記New Testamentはイエスを通して結ばれた神と人との新しい契約であることを表している。

思想

安息日に病を癒す、など律法に反する行動をしているが
本人は律法に反するとは考えておらず、むしろ
「律法を完成させる」(『マタイによる福音書』 5:17)ものであると主張した。
律法学者やファリサイ派の言うことは守りなさい、と
言うが、その行いは真似てはいけない、という(マタイ23:1-5)。
その理由は言うだけで、実行しないため、彼らは他人の肩に荷物を
背負わせるが、自分はそれを動かそうとしない。
イエスが律法の中で最も重要としたのは
「神を愛すること」と「隣人を自分のように愛すること」
の二つであり、法の全てと預言者の教えの礎であると考えていた(マタイ 22:36-40)。
イエスにとって律法を盾に他者に重荷を背負わせる行為は、律法の礎に背く行為なのである。
そもそも「安息日は人のために定められた。人が安息日のためにあるのではない」(マルコによる福音書 2:27)という考えの持ち主だった。

系図

イエスについては二通りの系図が存在する。それぞれ『マタイによる福音書』の冒頭と『ルカによる福音書』の3章23節以下に書かれている。
どちらの系図にもダビデ(彼の子孫からメシアが現れるとされていた)の名があるが、
両者に連なっている名前は異なる部分もある。この問題への調和化の例としてマタイの系図をヨセフのものとし、ルカの系図をマリアのものとしている(注解つき新改訳など。フランシスコ会訳合冊新約聖書ではルカのもヨセフの系図としている)。
ルカの系図では、ヨセフは結婚してマリアの父エリ義理の息子になった、とする。
古くは2-3世紀のユリウス・アフリカヌスがこう主張した。
このエリは聖伝?でのマリアの父ヨアキムと結び付けられる。
エリをエリヤキムの短縮形とする。エリヤキム(エルヤキム)という名前の
人物が旧約聖書にも登場しており、彼はエホヤキム(ヨヤキム)と改名している。
これをギリシャ語表記にするとヨアキムになる。
『テモテへの手紙一』や『テトスへの手紙』からは系図談義がウザがられていたことが伺われる。
「作り話」と同じ文章で取り上げられており、上記の二種類以外にも別バージョンの系図が出回っていたのかもしれない。

兄弟姉妹

マタイとマルコに帰せられる福音書によれば、イエスにはヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダの兄弟と、姉妹が二人いた。プロテスタントではこれを字義通りにとる。
牧師の山白令一は『マタイ福音書註解』で、マタイ2章25節(「男の子が生まれるまでマリアと関係することはなかった」)の註に、マリアが一生処女であったという見解に根拠は無い、と書いている。
しかしカトリック教会や正教会ではそうは考えない。マリアの処女性についてはルターも同じ考えだったりする。フランシスコ会訳の合本版新約聖書の註には、当時のユダヤでは兄弟という語はいとこ、親戚を含む言い回しだったとある。
マタイ2章25節でも旧約聖書の箇所をあげて、著者はそう言いたかったんじゃない、としている。4~5世紀のエピファニオスはヨセフの前妻との間に生まれた子供としている。

奇跡

処女懐胎や復活、またらい病や盲目を癒したり、水の上を歩く奇跡譚でも有名。
これらはイエスが神からの人であることを語るものでもあるが、
さらにイエスが旧約聖書に予言された存在である、という主張も
これに含めることができる。旧約の預言とイエスとの結びつけは
福音書のさまざまな箇所で目にすることができる。その念の入り様は
イエスがロバに乗って来る、ということすら予言されたこととする(マタイ 21:2-8)ほど。

宗教的位置づけ

キリスト教ではイエスは神のひとり子とされ、神性においても人性においても完全であるとされる。「第二のアダム」と呼ばれることもあるが、アダムのように被造物とはされていない。ある時点から神によって創られた、生まれたとは見なされない。
イエスの神格化は福音書の時点から既に見られる。とくにヨハネによる福音書はその色彩が強い。
後代に発祥したイスラム教ではイエスの神性は否定され、クルアーンの中のエピソードでもイエス自身が否定している。イエスはイスラム教でも重要な預言者とされている。
さらに後代に生まれた神智学?ニューエイジ思想ではイエスは偉大なマスター(大師)である。ニューエイジではアセンデッドマスターの一人ともされ、「サナンダ」という名前とも結び付けられている。
心霊主義でも大霊の偉大なメッセンジャーだが、唯一の「神の子」という見方は否定される。
新興宗教では釈迦と並んで教義に取り込まれやすい人物である。

キリスト神話説

クリシュナなどの他宗教・他神話の神と共通点があるとされ、それが
「イエス・キリスト」が捏造された存在である証拠とする主張が存在する。
これをキリスト神話説という。ただし、挙げられる「共通点」の中には19世紀に
書かれた『磔にされた十六人の世界の救い主』に由来する
出典の甚だ怪しいものが多く含まれており、取り扱いには注意を要する。

日本でも幸徳秋水が『基督抹殺論』というキリスト神話説本を書いている。

参考文献

  • 新共同訳 聖書
  • 新約聖書 フランシスコ会聖書研究所訳注

参考サイト

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最終更新:2010年01月30日 20:40