チョンチョン(Chonchon)
チリやアルゼンチンのマプチェ族に伝わる怪物。
人間の頭部のみの姿で、耳は頭よりも大きな翼になっており、首の付け根からフクロウの足のような鉤爪が生える。
チョンチョンは人間の魔術師が変身した姿であり、邪術によって編み出した秘密の軟膏を首に塗ると、頭部が胴体から離れてこの姿になれる。夜になるとトゥエー、トゥエーまたはチュエ、チュエ、チュエ(tue tue tue)と不吉な声で叫びながら飛んでいく。夜が明けそうになるとチョンチョンは胴体の所へと帰っていき、元の魔術師の姿に戻る。胴体が見つからなかったり、何らかの理由で頭部と胴体が結合できなかったりすると、なぜか地面に激突して自らの命を絶ってしまう。それを目撃した者が確認したところ、あったのは1羽のフクロウの死骸であった。病人のいる家を狙って部屋に忍び込み、病人の魂を奪う。チョンチョンが家に侵入する前に、家族が気づいてお祈りを捧げれば追い払うことが可能だが、侵入を見過ごしてしまった場合、ほとんどの病人は助からない。また、地面に
ソロモンの印(六芒星)を描けば落下させることができる。他のチョンチョンが助けにくるまで、どんなに激しく羽ばたいても飛び立つことはできないようだ。これを嘲った者は、チョンチョンからの報復を受けることになる。
こんな話がある。ある晩、客を招いて家に集まっていたところチョンチョンの声が聞こえた。誰かが
ソロモンの印を描いたところ、肉髯のある大きな鳥が裏庭に落ちてきた。彼らは鳥の首を切り落として犬に与え、体は屋根の上に放り投げる。するとすぐさまチョンチョンたちの声が聞こえた。鳥の頭を食べた犬の腹は、まるで人間の頭を呑み込んだように膨れ上がっていた。翌朝、チョンチョンの死骸を探してみたが、屋根の上からは消えており見つからなかった。
ある墓掘りの話によると、同じ日の晩に見知らぬ者たちが死体を埋めにやってくるのを見たという。その死体には頭が無かった。
参考文献
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佐藤俊之/山北篤『悪魔事典』190頁
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モンスター図鑑』36頁
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ホセ・サナルディ/セーサル・サナルディ/寺井広樹『南米妖怪図鑑』19頁
最終更新:2024年02月25日 00:55