地域別索引:中南米

中南米

カリブ海の西インド諸島及びメキシコ以南のアメリカ大陸のこと。

16世紀ころからのスペイン、ポルトガルによりアフリカ人がこの辺、中米の島々に住まわせられ、繁殖させられたが、それへの抵抗と他でもって、ヴードゥー教等が発生する。これらは、コンゴや他の信仰を混ぜ込んでいるほか、先住民族の信仰も入っていると言われる。ブラジルでは仏教も入ったウンバンダというものができている。
 スペイン人の微妙な人種差別感により、メラニン色素が異様なバリエーションの皆さんがいる。
アステカ神話マヤ神話インカ神話のページも参照。

ハイチ


 フォン人が興したヴードゥー教は、フランスの信仰やケルト(スコットランドから負け出た人がいるので)、あとヨルバ系とモンゴロイド系先住民族アラワク人の信仰がこんがらがっておる上に、守護聖人などのキリスト教が表面に張り付いた形で、でもモーゼは特に拝まれてはおる。

ジャマイカ


 ほかの島々が、当初コンゴの人が持ってこられたのに対し、ここは最初、ガーナから引っ張られた。そのガーナの辺で、白人の人が勝手に作った入植地クロマンティで集められ輸出された皆さんは、立ち上がって抵抗する戦闘民族とされ、ハイチ革命で結構ビビッたご主人様があの辺のやめようっつうてコンゴ系へシフトするという特異な経歴を持つ。

 コンゴ系のクミナと呼ばれるものと、ドゥーピーと呼ばれるスピリチュアルな者を操るオビアというアシャンティ系の信仰、それに対抗する呪術師ミャル、そこら辺からブラックムスリムと混淆してできたラスタファリアニスム、あとプロテスタントの筈なんだけどアフリカン化してしまったポコメニアと呼ばれるもの、がある。

キューバ

 奴隷の養殖場として機能した当初から、黒人の皆さんの知的水準が高く、さらにここへ引っ張ってきたスペイン人が、野郎だけで入植地へ行くとか、差別体系がいい加減とか、ほかの理由で、黒人の文化に対する旦那さま方の態度はマイルドであった。これとは別の筈だけど奴隷収容所はCabildo(聖堂参事会)というありがたい名前で、黒人の出身地ごとに分けて作られた。これがスペイン系の旦那さま方から奴隷をよく使えられるような状態を維持でき、アフリカ系人も自国の文化を維持できるという両方いい感じの機能を出すようになり、そこそこ多様な宗教が花開く。ただここは、1957年の社会主義革命で、一応宗教をやったらいかんと一応言われるようになり、1990年まで「教会はある」のに「宗教はない」とか言われていた。

 ここへはお約束通り、当初コンゴから引っ張られてきた皆さんが、細々ンプンゴと呼ばれる神様を拝み、なんとか文化を支え、パロ・モンテと呼ばれる信仰を興した。これはマジョンベ(Mayombe)と呼ばれるトラッドな者、ブリジュンバ(Briyumba)と呼ばれるヨルバ系入ったもの、キンビサ(Kimbisa)と呼ばれるキリスト教混ざっとるものなどの流派がある。このコンゴの信仰体系で、いちばん偉い光の神様がZambiとかNsunbi、ensunbiと呼ばれる。ゾンビと同系で、暗黒の神様の偉い方がエンドキとかンドキとか言う。ンプンゴっていうかンサシ(ヨルバのシャンゴと習合しておる上にキューバのはチャンゴという)の霊を収める聖なる器具がプレンダ(スペイン語で「愛」「友情の証」「宝石」)とも称されるンガンガという器具で、パロ禰宜様パレーロはこれを作って神様へ伺いを立てる。えーとえーと、折口信夫は日本の信仰で、「中空の器」を神様の「まなあ」を入れるとりものとして拝むという点を指摘していたが、西アフリカの人も瓢箪のようなものをありがたがる信仰がみられるそうである。

 ハバナとマタンサスとカルデナスだけで、エフィク人やカラバル人が興したアバクアがある。これは女人禁制で、構成員ニャニーゴが搾取者へ暗殺をする目的で作られた、秘密結社のような排他的組織らしい。あと「オグンを拝む」「最高神の名前がアバシ」「イレメと呼ばれる小悪魔(ディアブリートともいう)のダンス(21世紀にはYOUTUBEでも見れた)がある」くらいしかわからない。

 フォン人が何となくおり、ヴードゥーを何となく起こしたほか、アラダ地方を指すアララの名前で、ヴードゥーみたいな宗教を立ち上げていた。

 キューバで有名なのが、サンテリーアあるいはレグラデオチャと呼ばれるヨルバの信仰である。ヨルバの神々オリチャを拝み、イファと呼ばれる貝殻占いをし、ベンベと呼ばれる祭儀をする。上述の通り、インテレクチャルな黒人の皆さんと、彼らの儀礼を興味深く観察するスペインのご主人様が、そっちもいいけどカトリックもね問題を何とかするため、とりあえず、「オリチャは死んで守護聖人になった」という設定をでっちあげ、習合だか本地垂迹みたいなものを、やることになった。そのため、ヴードゥーのようなそれっぽい守護聖人ではなく、ローズマリ・エレン・グィリーによればオグンへ「ジャンヌ・ダルク」が、シャンゴという、マッチョの塊なオリチャは「聖バルバラ」があてられる。そのような経緯で、教会もサンテリアと併用されるため、ヴードゥーや他の宗教のような独自の宗教施設がない。また、スペイン語がメインであるため、S音がT音になる独特の表記がある。

ブラジル


 ヨルバの人がポルトガル人によって持ってこられた関係で、キューバのサンテリアとほぼ同じ信仰体系がある。こちらではカンドンベ(奴隷の踊り)のイレ(家)であるカンドンブレと呼ばれる。ポルトガル語なのでオリシャと呼ばれる神々は、サンテリアとほぼ一緒である。こちらも諸中南米諸国及びアフリカの皆さんと同じく、あんまりアブラハムの宗教にアレルギーがないので、別にキリスト教についても問題なく拝んでいる。さらに独自のテヘイロと呼ばれる施設がある。

 カンドンブレは、ヨルバ系のジェジェ・ナゴ・カンドンブレ(Gege nago candomble ジェジェがダホメでナゴはヨルバを指す語)とバントゥー系のアンゴラ・コンゴ・カンドンブレ(angola congo candomble)に分かれる。

 ジェジェ・ナゴ・カンドンブレの一派であるタンボール(太鼓)ヂ ミナ(はコンゴの地方の名前)から、先住民族いわゆるインディオの信仰と混ざった、ミナ・ナゴと呼ばれる信仰体系ができる。なおタンボールは儀礼の名前で使われ、さらに「タンボールを行う地方」が南米各地に結構ある。

 キロンボと呼ばれる逃亡奴隷のコミューンで、アンゴラ系の皆さんと先住民族の皆さんが交流し、ピジーと呼ばれる信仰体系ができた。これはキリスト教の守護聖人とオリシャ、先住民族が拝んでいた精霊カボクロの力を借り、治療をする。

 1920年代、ゼリオ・ヂ・モライスという人が、リオデジャネイロ郊外に、サンスクリットで「無限の中の有限」を指す語からとったウンバンダという宗教を立ち上げる。これは中流階級向けなので、かなり中庸で、キリスト教と仏教とアフリカ系宗教がいい感じで混ざっている。一応至高神ザンビ(Zambi)、黒人奴隷の賢者プレトヴェーリョ(Preto Velho)、インヂオの狩人カボクロ(Caboclos)、子供の霊クリアンサ(Criança)、欧州や東洋からの移民エシュ(Exu)が主要な霊である。これはカトリックの救えない羊さんや他で、民衆の要望にマッチしたため1950年代から信徒がぶわっと増える。

 カンドンブレの一派としての信仰、リオ・デ・ジャネイロで実践されているのがマクンバと呼ばれるが、この呼称は「怪しい宗教」の名で使われ、呪いの言訳として流通している。そういう霊の障りを、日系移民の仏教とか新興宗教とか神道とかの皆さんが、何とかするというナイスな状況が20世紀に展開していたという。

ベネズエラ


 一応聖人崇拝がある。サンフアン(洗礼者ヨハネ)、チニータ(ベネズエラ第二の都市マラカイボの守護聖人「チキンキラの聖母」の愛称)、サンベニート(パレルモの聖ベネディクトという16世紀のアフリカ系聖人の別称)と言われる皆さんが、サントとかではなくアミーゴと呼ばれ、各家々で聖像が置かれて現世利益祈願の対象として拝まれる*1

コロンビア


チキンキラの聖母(virgen de la Chiquinquira 祭日は7月9日)が拝まれているほかは民衆カトリックが盛ん。

トリニダード&トバゴ


 オービアが信仰されているのだが、ここはインド系の移民が結構いる関係で、イスラム教ヒンドゥー教が混ざり、オビアを実践するオビアマンは祭儀の際にコーランとか読む。ほか、オリシャを拝む、スピリチュアルオリシャ、とシャンゴだけ拝み、ヴードゥー色が強いバプティストオリシャが拝まれている。あとキリスト教の一派で、シャントウェルと呼ばれるものやお歌を歌ってトランスするシャウターズ(Spiritual baptist Shouters)*2などがある。

ドミニカ共和国


 一応ヴードゥーが何となくあるらしい。パロとかコンゴ信仰が盛ん。

プエルトリコ


 サンテリーア、スピリティズムが拝まれている。あと上流階級で、メサ・ブランカというのが流行っている。

バハマ

 クリスチャンが多いが、キャットアイランドを中心にオービアの信仰がある。

マルティニーク、グァドループ


 ポール・ゴーギャンが滞在してたり、ラフカディオ・ハーンが来日する前にここでまったりしてたので有名。小泉八雲もここでのゾンビ(お化けみたいなもの)伝承を収録しているが、そういうのとしてのゾンビ伝説は20世紀後半でも言い伝えられていた。またマリア様崇拝のほかに、Quimboise(ケンボワゼ)あるいはQuimboiseur(ケンボワスール)と呼ばれる施術師が働いている。


主な文献

 勉誠出版『アジア遊学No.59 鬼とデ-モン』
 岩崎賢『アステカ王国の生贄の祭祀 血・花・笑・戦』
 ヒメネス・ボルハ/三原幸久/在田佳子『インカの民話』
 D・M・ジョーンズ/B・L・モリノー/蔵持不三也/井関睦美/田里千代『ヴィジュアル版 世界の神話百科 アメリカ編 ネイティブ・アメリカン マヤ・アステカ/インカ』
 M. A. アストゥリアス/牛島信明『グアテマラ伝説集』
 フィリップ・M.シャーロック/マーシャ・ブラウン/小宮由『クモのアナンシ ジャマイカのむかしばなし』
 パトリック・シャモワゾー/吉田加南子『クレオールの民話』
 ホルヘ・ルイス・ボルヘス『幻獣辞典』
 エリアス・セレドン/山中和樹『コスタリカ伝説集』
 メアリ・ミラー/カール・タウベ/増田義郎/武井摩利『図説 マヤ・アステカ神話宗教事典』
 朝里樹/えいとえふ『世界怪異伝説事典』
 バーバラ・コックス/スコット・フォーブス/ナカイサヤカ『世界恐怖図鑑4邪神・妖怪・魔獣』
 朝里樹『世界現代怪異事典』
 キャロル・ローズ『世界の怪物・神獣事典』
 フィリップ・ウィルキンソン/松村一男/寺西のぶ子/矢倉美登里/伊藤理子『世界の神話と英雄大図鑑』
 小沢俊夫『世界の民話12 アメリカ大陸〔II〕』
 キャロル・ローズ『世界の妖精・妖怪事典』
 クララ・ベサニーリャ/横山玲子『大英博物館双書 IV 古代の神と王の小事典3 アステカ・マヤの神々』
 R.A.ラバル/三原幸久/平倉佳子『チリの民話』
 寺田とものり/TEAS事務所『ドラゴン ~世界の真龍大全~』
 P.カルバリョ・ネト/三原幸久/武部修子『南米北部の民話』
 ホセ・サナルディ/セーサル・サナルディ/寺井広樹『南米妖怪図鑑』
 L.C.カスクード/三原幸久『ブラジルの民話』
 カメの笛の会『ブラジルのむかしばなし1』
 カメの笛の会『ブラジルのむかしばなし2』
 カメの笛の会『ブラジルのむかしばなし3』
 野崎貴博『ブラジル妖怪と不思議な話50』
 加藤隆浩『ペルー・ボリビアのむかし話』
 ウォルクスタイン/清水真砂子『魔法のオレンジの木 ハイチの民話』
 高平鳴海/女神探究会『女神』
 ゴンサレス・カサノバ/三原幸久/浅野光子『メキシコの民話』
 リカルド・アルバレス/向晶子『森と川の神話 奥アマゾン・ピロ族の世界』
 松下直弘『やさしく読めるスペイン語の昔話』
 山室静/山田野理夫/駒田信二『四次元の幻境にキミを誘う 妖怪魔神精霊の世界』
 三原幸久『ラテンアメリカ民話集』

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最終更新:2023年11月28日 13:21

*1 檀原照和『ヴードゥー大全』254頁

*2 檀原照和『ヴードゥー大全』258頁 同著331頁によればShoutはバンバラ語起源