こっくりさん
「こっくりさん」とは
狐と狗と狸の霊魂を指して「狐狗狸さん」と書かれることもあるが、これは当て字である。
また、地方や時代によって「キューピッドさん」「エンジェルさま」など多くの別名がある。
一言で言ってしまえば、「こっくりさん」は占いの一種であり「
プランセット」や「
ウィジャ盤」の仲間である。
複数人で「こっくりさん」を呼び出し、疑問に答えてもらったりするのである。
「こっくりさん」の手順
オーソドックスな形式は、以下の通りである。
- まず、鳥居と50音の文字、さらに「はい」「いいえ」などが書き込まれた紙を用意する。バリエーションによってはアルファベットなども書く。また、鳥居がハート型などになるバリエーションもある。
- 文字盤の上に十円玉を乗せ、この十円玉の上に数人が指を軽く乗せることで行う。(普通は複数人で行うが、1人でも出来る)
- 道具の準備が終わり参加者が十円玉に指を乗せたら、次は「こっくりさん、こっくりさん、いらっしゃいましたら、こちらへお越し下さい」と唱える。
- そしてしばらく待っていると、誰も動かそうとしていないはずなのに勝手に十円玉が動き出す。
- この時に質問を行うと、十円玉が文字盤上を動き回答してくれる。
以上のように簡単な道具で気軽に行うことが出来る。
ただし、途中でやめたり道具をぞんざいに扱ったりすると祟られるとも言われている。
「こっくりさん」の歴史
井上円了氏の研究のでは、「こっくりさん」の発祥は明治17年(1884年)の伊豆周辺であるとされている。
西洋で19世紀ごろに流行した
テーブルターニングを嵐で漂着したアメリカの水夫が伝え、日本でマイナーチェンジをし「こっくりさん」になったらしい。
「こっくりさん」の変遷
上で述べたように、「こっくりさん」は「
テーブルターニング」から生まれたものであり、当初は現在のように文字盤を使うのではなくもっと「
テーブルターニング」に近い形態をとっていた。
3本の竹を上の方だけで束ねたものを広げ三脚状にしたものの上に飯櫃の蓋を被せ、その上をさらに布で覆ったものを「
テーブルターニング」と同じように使用していた。それからマイナーチェンジを繰り返し、和風「
ウィジャ盤」とも言えるスタイルになったと判明している。
「こっくりさん」の正体
一時期は集団ヒステリー事件の原因となることも在った「こっくりさん」だが、さまざまな実験・調査の結果現在では「不随意運動」という科学的に解明できる現象の1つとなっている。
‘被験者の知らない事柄に答えられない’点や‘被験者に目隠しを施し、さらに(記憶を頼りに動かされるのを防ぐため)文字盤を回転させると答えが出なくなる’点からコインは「こっくりさん」の実践者が動かしていることが判明し、‘コインを重ねて行うと上のコインが動く’という実験結果からコインは指が動かしていることが証明された(コインがひとりでに動くのなら下のコインから動くはず)。
かくして、「こっくりさん」は「
テーブルターニング」と同じく人の無意識下における動きによるものと結論付けられたのだった。
(なお、「
テーブルターニング」のほうは19世紀に既にファラデーによって原理が解明されている)
参考文献
朝里樹/氷厘亭氷泉『日本怪異妖怪事典 関東』363頁
最終更新:2023年10月22日 02:56