ハーピー(Harpye)

人間の女性の頭を持つ鳥の姿の怪物。「ハーピィ」と表記されることもある。
その名は「掠め取る者」あるいは「むしり取る者」を意味する。
「ハーピー」は英語的な読みであり、ギリシャ的な読みでは「ハルピュイア(Harpuia)」、複数形は「ハルピュイアイ(Harpyiai)」。
ストロパデス群島に生息し、人間や死者の魂をさらっていったという。

血族

ハーピーはポントス?の息子タウマース?と、アガメムノン王の娘姉妹、エレクトラの子?である。
虹の女神イリスの姉妹に当たる。

ギリシャ神話には「三人組」がたびたび登場するが、ハーピーの中にも「三姉妹」がいる。三人の名前は以下の通り。

オキュペテー(Okypete 「速く飛ぶ女」)
ケライノー(Kelaino 「黒い・暗い女」)
アエロー(Aello 「疾風」)

ハーピー族は恐ろく醜い容貌を持っているとされる。
だが、上記の3姉妹だけは例外的に非常な美貌と優雅な肢体の持ち主とされることもある。

3姉妹の一人ケライノーは、ポセイドンとの間に二人の息子カライス(Klais)とゼテス(Zetes)をもうけており、
この2人はアルゴー探検隊に参加している。

また、ポダルゲー(Podarge)という者は、西風の神ゼピュロス(Zephyros)との間に
神馬アイトーン?(Aithon 「燃え盛る馬」)を設け、
太陽神ヘリオス?(Helios)の日輪の戦車を引く四頭の神馬の一頭となる。

他にもゼピュロスとハーピー族(ポダルゲーかは不明)の間には、
アキレウスの2頭の神馬や、カストルポリュデウケス?の神馬が産まれたという。

アルゴー探検隊」に登場するハーピー

アルゴー探検隊」の物語にもハーピーは登場する。

アルゴー探検隊の寄港地・トラキアのサルミュデソスはハーピーの「鳥害」に悩まされていた。
サルミュデソスの王・ピネウスはアポロンから予言の力を授かっていたが、
この力を濫用した事が神々の怒りに触れ、視力を奪われた上に王位を追われ、貧しく暮らしていた。
さらに彼の毎日の食卓にはハーピーが遣わされ、食べ物を奪っては糞尿で汚していくという有様であった。
同情したイアソン?率いるアルゴー探検隊はハーピーの退治をピネウスに約束する。

アルゴー探検隊の中には西風の神の息子達・ゼテスとカライスの兄弟がいた。
彼等の身体は翼を備えており、空を自在に飛んでハーピー達を退治した。
しかし、彼等の母もまたハーピーであり、自らの叔母達を退治したとも言える。

彼等はハーピー達の命を奪う事はしなかった。
親族であったからではなく、ハーピー達の姉妹・イリスが助けを乞うたからである。
これ以来ハーピーは悪さを止め、ピネウスにも視力が戻った。

ピネウスは同時に取り戻された予言の力で、イアソン?らにアルゴー探検隊の次なる障害・
怪自然現象シュムプレガディスの切り抜け方を教えた。

参考

尾形隆之介『通読 ギリシア神話』東京図書出版会
ルネ・マルタン『図説ギリシアローマ神話文化事典』原書房
楠見千鶴子『ビジュアル版ギリシア神話物語』講談社

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2005年06月10日 12:06