件(くだん)


 件とは、主に西日本で語られている妖怪
牛の体に人間の顔を持つ。牛から生まれ、人語を話すが、生まれてから4~5日で死ぬ。その間に必ず的中する予言をする。
その予言の内容は災いに関係するため、件が生まれるとかならず災いが起こるといわれ、第二次世界大戦前や天保の大飢饉の前にも現れたという。そのため、牧場などでは人の顔をした牛が生まれると不吉な予言をする前に殺してしまったと言われる。しかし、江戸時代に残された件の記録では豊作を予言している。

この妖怪は主に西日本で伝播、分布しているため、内田百閒がこれを題材にした短編を書いた際、東日本の読者から内田のオリジナル妖怪と言われたという。

「人面牛身」と言われるが、南方熊楠は「件は国字です俗説」の言訳として、和歌山県のある屋敷の座敷牢で、「牛っぽい顔のおっさん」が、民衆の相談に乗ったという話を柳田國男に提供している。

 とり・みき(マンガ家)によれば、第二次世界大戦の終る直前、主に兵庫県で
「この戦争は盆には終わる」
 といううわさが流れたという。

参考文献

とり・みき『くだんのアレ』
佐藤 健二『流言蜚語』
南方熊楠『南方熊楠全集 第8巻』

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2021年06月26日 09:41