オオカミのカムイ


ホロケウカムイ「Horkeu-kamui」 単にホロケウとも
オロケウカムイ「orkeu-kamui」 単にオロケウとも
オンルプシカムイ「onrupus(狩りをする)kamui(カムイ)」
ウォセカムイ「Wose(ウォと吠える)kamui(カムイ)」(※この語は山犬だとも云う)
ヌプリパコロカムイ「Nupuri(山)pa(上手)kor(領有する)kamui(カムイ)」
ユッコイキカムイ「Yuk(鹿)koyki(いじめる)kamui(カムイ)」
など、地方によりさまざまな呼び名があるが、基本的には全道で「ホロケウ」「オロケウ」の語が通じたという。

ジステンバーの流行と人為的な駆除の為に現在の北海道からエゾオオカミは絶滅してしまったが、かつてのアイヌにとっては深く畏敬されたカムイであった。イヌ以外の家畜を飼う習慣が無く、他地域のように家畜を襲うオオカミと敵対するということが無かったため、アイヌにとってオオカミは高潔であり武勇に優れるカムイであると考えられている。他のカムイたちが悪神のため死んでしまってもオオカミのカムイはまだ耐え抜いている、という筋の昔話もある。

他のカムイたちはほとんどがカムイの国に住んでいるのに対し、オオカミのカムイは人間の国にいないときは天の国に住んでいると考えられている。またイヌの祖神であるとも云われ、子孫であるイヌのピンチには天の国から駆け下りてくるという話がある。

またオオカミのカムイは、人間に肉を分け与えてくれるカムイでもあった。女性は送り儀礼ができないために動物を狩ることができないため、寡婦はよそから分けてもらわないと肉を食べることができなかった。そのような家では、オオカミの遠吠えが聞こえるとその場に駆けつけたという。オオカミのカムイが捕らえたシカなどが残されているからである。もちろんオオカミは人間を恐れて逃げ出したに過ぎないのであるが、アイヌにとってそれはオオカミのカムイが肉を食べられない家庭に下された獲物なのである。十勝本別ではケナスパ「Kenas(木原)pa(上手)」という場所がそういったオオカミの餌場であり、アイヌがその場所の生き物を殺すのは固く戒められていた。

参考資料

山北篤監修『東洋神名事典』71頁
最終更新:2021年07月04日 16:10