角大師
(1)
良源が七十三の頃、疫病を司る厄神が訪ね、
良源の身体を侵しに来た。
良源が小指の先を出し、「これに憑いてみよ」と言うと、疫病神がその小指の先に触れるやいなや、全身に悪寒が走り発熱し、耐え難い苦痛を感じた。その際
良源は
夜叉の姿となりその疫病神を退散させた。「わずか一本の指ですら、このような耐え難い苦痛を覚えるのだ。これを逃れるすべのない衆生はまことに哀れだ」と、
良源は弟子を集め鏡の前に座り「鏡に映った私の姿を写し取ってくれ」と、禅定に入ったところ、鏡に移っていた
良源の姿は見る間に変わり、骨だらけの
鬼に姿を変えたのだ。弟子はその姿を絵に映し、版木にして札をつくり、書く家に配ると、その効果はてきめんであった。以来その札絵を角大師と呼ぶようになった。
参考
学研 天台密教の本
最終更新:2006年04月19日 21:42