男にとって最初に自負心をもたせてくれるのは、母親が彼にそそぐ愛情である。
幼時に母の愛情に恵まれて育てば、人は自然に、自身に裏打ちされたバランス感覚も会得する。
そして、過去に捕らわれず未来に眼を向ける積極性も、知らず知らずのうちに身につけてくる。(上p40)
ルキウス・コルネリウス・スッラという男の最大の特質は、良かれ悪しかれはっきりしていることであった。言動の明快な人間に、人々は魅力を感ずる。はっきりする、ということが、責任をとることの証明であるのを感じとるからだ。敵にまわさなければ、痛快でさえある。(上p72)
どんなに悪い事例とされていることでも、それがはじめられたそもそもの動機は、
善意によるものであった。だが、権力が、未熟で公正心に欠く人の手中に帰した
場合には、良き動機も悪い結果につながるようになる。(上p181,カエサルの言葉)
野心とは、何かをやりとげたいと思う意志であり、虚栄とは、人々から良く思われたいという願房である。(中p19)
考案者が死ねばその人の考案したことまで忘れ去られてしまうのは、
オリエント(東方)の欠陥である。オチデント(西方)では、人は死んでも
その人の成したことは生き続ける場合が多いのだが。(下p69)