千奈美編 7 - (2008/11/20 (木) 00:44:38) の1つ前との変更点
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「ねぇ、こんな薄気味悪い場所じゃないと出来ない話って何?」
「大した話でもないんだけどね、ってさっきから蚊が多いね。あぁ~もう追い払うだけで大変」
僕ら14人はベリキュー最後の収録にとあるお寺までやってきていた。
近くには河原もあって自然に囲まれたいい場所なんだけど、それは昼間のお話で、夜になると明かりが一切ないので不気味な場所になる。
さすがにお寺だけあって、お墓まで立っているから、怖がりの僕としては早く帰りたい。
なのに、僕はえりかちゃんと雅ちゃんに大事な話があると呼ばれて、お墓まで渋々やってきていた。
「お寺の中だとスタッフもいてみつかる危険もあるからね。蚊も多いけど、こっちにしてみました」
「えりかちゃん、僕はこんな場所は怖いって。早くお寺の中に戻ろうよ」
「ダメダメ。中だと出来ない大事な話なんだから、外に呼び出したのに中戻るわけないでしょ」
蚊に血を吸われてだいぶ困っていても、えりかちゃんは決して叩こうとはしない。
僕と一緒に蚊のお墓を作って埋めてあげたんだし、えりかちゃんは蚊にも優しいに決まっている。
その優しさを今は弱っている僕に向けてほしいものなんだよな。
僕がどれだけ怖がりかわかっていそうなものなのに・・・
「えりかちゃんがしたい話っていうのは、あんたにとって大事なことなんだからね。ちゃんと聞いたほうがいいよ」
こちらも蚊と格闘しながらの雅ちゃんが、ここにきて初めて口を開いた。
お墓まで来る途中はずっと無言でつまらなさそうにしていたのだけど、原因はこの後のロケにあるらしい。
僕もスタッフさんに詳しくは聞いていないけど、夜にならないと始められない撮影とくれば、誰だって考えることは同じだ。
肝試しをしなくてはいけないのだ、ほとんど明かりがない状態のお墓の中で。
普段は自分が罰ゲームするわけじゃないからと笑っていた僕も、この時ばかりは千奈美ちゃんと雅ちゃんに同情した。
「今日しなくちゃいけない話なのかな?」
雅ちゃんから大事だと言われても、ここでする必要のある話なのか不安だ。
えりかちゃんたちは前科一犯の過去があるから、少しは疑ってみないといけない。
「今日しておいた方がいいと思うな。あんたさ、ベリキューメンバーにどれだけ自分が男の子だってバレたか自覚ある?」
えりかちゃんは思わせぶりな笑顔をみせ、考えたくなかった質問をしてきた。
誰が知らないかを探すほうが難しいほどに、僕が男の子なんだって情報は皆に知れ渡っている可能性が高い。
佐紀ちゃんや千奈美ちゃん、茉麻ちゃんも知らないとして、残り10人は確実に知っている。
「佐紀ちゃんと千奈美ちゃんと茉麻ちゃん以外は皆知ってると思う」
「読みが甘いな、千聖。佐紀ちゃんと茉麻は知らないけど、千奈美も最近知っちゃったんだってさ」
「そうだったんだ・・・知らなかったな・・・それ、本当なんだよね?」
「本人がそう言ってたのをみやが聞いてるから確実なんじゃない。冗談でそんなこと言うはずないしさ」
あまりのショックに言葉を失いそうになった。
まさか千奈美ちゃんにも知られることになるとは思いもしなかったからだ。
今更何を恐れる必要があるって思うかもしれないけど、僕には何度だって慣れることが出来ない。
そのうちに事務所にまでバレてやめさせられてしまうことまで考えてしまう。
「でも、まだそれが確信ってわけでもないじゃない。だから、ここに千奈美を呼び出して確認しようよ」
「うん。千奈美ちゃんはもしかすると事務所に話しちゃいそうな気がして不安になる」
「平気だって。バレてたらとっくに首だよ。よくて卒業になるんじゃないの」
気軽そうに言ってくれるな、と僕は頭を撫でてくる雅ちゃんを恨めしく思った。
卒業だなんて今はまだ聞きたくもない言葉だ。
僕が雅ちゃんと話しているうちに、えりかちゃんは早速電話をかけていた。
「あ、もしもし。千奈美さ~聞きたいことがあるから、こっちにきてくれない? うん、すぐに来て。は~い、じゃあね」
電話を切った後、えりかちゃんが一瞬だけ不気味な笑顔をみせたのを僕はみてしまった。
また嫌な予感が胸をよぎった。
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