もしも℃-uteの岡井ちゃんが本当に男の子だったら

30

最終更新:

okaishonen

- view
管理者のみ編集可
 四月になり、いよいよアルバムイベントが間近に迫ってくる中、桜は見ごろを迎えてくれた。
アルバムイベントの前日、それはりぃちゃんの誕生日にあたる。
僕は『ジンギスカン』のイベントがあるりぃちゃんに簡単におめでとうメールを送った。
返信されてきたメールには、りぃちゃんから僕に対してイベントがんばってねという内容だった。
可愛い絵文字や最近流行の”ぁぃぅぇぉ”という使い方をしている言葉たち。
そのどれもがりぃちゃんらしさの溢れていて、自然とにっこりと笑ってしまった。
他人から見たら、携帯を見てニヤついて気持ち悪くみえるかもな。

「今日はいい天気になったね、ちさと」
「だね。こんなにいい天気だと、ワクワクするね」
「一番最初はうちらの出番だよ。そうしたら、唄いだすんだから前座としては重要だよ」
「コントの中で、舞ちゃんに身長を抜かれたことをネタにしなきゃいけない日がくるとはね」
「ちっさー、それも仕方ないんじゃない。君は『ちっちゃいね~可愛いねぇ』を地でいってるしさ」
「愛理、いってくれるね~ちっさーパンチだ」と、僕はコントで使うネタをいち早く愛理相手に使ってみる。
「本番では間違うなよ、パンチするのは舞ちゃんにだからね」と、愛理からはからかい半分に返してきた。

そして、今日はアルバムイベント当日で、よみうりランドでこれからアルバムを買ってくれた人たちに
感謝の気持ちを込めたイベントが始まる。
ちょっと風が強いけど、それでもこんなに晴れ渡った日に桜満開の中できるのは最高の気分だ。
まずは僕と舞ちゃん、愛理の三人のキューティーガールズの登場から始まり、コントをする。
台本はしっかりチェックしたし、本番で失敗したらアドリブを効かせていくしかないな。
何事もなくコントが終わるのが一番なんだけどね。

「よし、今日のイベントも頑張ろう。舞ちゃん、愛理、ね」
「ちさと~何まとめちゃってるの~」
「キューティーガールズのリーダーは私だからね」

 僕らの出番であるコントを無事にすませ、いよいよ歌が始まっての本番になる。
これで、桜チラリでも唄ったら、よりいい記念になったのにな、と思いつつイントロがかかりだした。
この場所にはめぐがいた頃にもイベントで来たことがあり、思い出深い場所として記憶している。
めぐ、君がいなくなってすごく寂しいよ。
でもね、そんなにずっと悲しいばっかりじゃ℃-uteの応援してくれている人が悲しんじゃうから泣かないよ。
きっと今はめぐも僕らの事を応援してくれていると思うから、だから今も君の居場所はここにあるんだからね。
ほら、聞こえてこない? 皆が応援してくれる大きな声援がさ。
僕の目には今、会場を埋め尽くす人たちしか見えないよ。
MCの後は、僕と栞菜のスイーーツ→→→ライブを唄う番になる。
夢中で唄ってくるだけだから、気づいたらもう出番が終わってるような感じがある。
たぶん今日もあっという間に時間が過ぎていくんだろう。

「ちさと、ナイスだよ。いい歌声だったし、私は良かったよ」
「ありがとう、舞ちゃん。次は舞ちゃんだよ、頑張れ」
「応援しててよね、ちさと」
「うん、バッチリ応援するよ」

 僕と舞ちゃんはハイタッチをしてすれ違い、お互いを称えあって励ました。
舞ちゃんとなっきぃが唄う晴れのプラチナ通りは、アルバムの曲でもなかなか大人っぽい歌だと思う。
それをまだ中一になったばかりの舞ちゃんとなっきぃが唄うんだから、表現力がすごく要求される。
そこを二人は頑張って唄っていて、僕は感心させられてしまった。

「ちっさー、私も頑張ってくるね。キュフフ」
「なっきぃも頑張ってね。僕、なっきぃの歌声も好きだから」
「もうお世辞でしょ。でも、嬉しいから素直に受け取っておくね」

 なっきぃはすれ違う直前、僕の指先を短い時間だったけど、ギュッと握ってきた。
それは一秒を数えられるほど、長い間ではなかったかもしれないのに、僕にははっきりとわかった。
だって、別れ際に驚いて振り返った僕をみて、なっきぃがにっこりと微笑んでいたからだ。
僕はその表情になっきぃがとても大人っぽくなってきたな、と驚いて目をまん丸にしてみつめていた。
なっきぃ、あんな顔で笑うんだね。

「なっきぃ、追いてっちゃうぞ」
「うん、待って。じゃあね、ちっさー」

 なっきぃは先を歩く舞ちゃんを追いかけ、走っていった。
その後姿を見送り、僕はその次の出番を待つ愛理と舞美ちゃんたちに近寄っていった。
あのホテルの件以来、勝手にぎこちない感覚を持っていた僕は、勇気を出して舞美ちゃんに声をかけたかった。
だけど、どうしても一歩が踏み出せずにいる。
そこへ僕が近寄ってきたのを見て、愛理が栞菜を呼んで離れていった。
自然とこの場には僕と舞美ちゃんだけになる。
まさか、愛理は僕に気を効かせて舞美ちゃんと二人きりになるチャンスをくれたっていうのか。
だとしたら、このチャンスを棒に振ったりしたら、愛理には悪いな。

「え、えぇと・・・あ、あのぉ」
「あのね」

 驚いた、声をかけようとしたタイミングで舞美ちゃんも僕に声をかけてきたからだ。
二人はそのおかしさに顔をあわせたまま、少しの間固まった後、くすくすと笑いあった。

「ちっさー、こっちのタイミング読んでたでしょ。もう、こっちが話しかけようとしたの台無し」
「舞美ちゃんこそ、僕の考えを読んでたとしか思えないんだけどな。こっちこそ台無しだよ」
「言ったな~『ちっちゃいね~可愛いね』なくせに」
「ちっちゃいは強調して言わないでよ。すっごく傷ついたぞ。グサって」
「ごめん、このあたり?」
「うん、そこらへんだ」

 僕は演技で痛がったふりをしたのに、舞美ちゃんはちょっと本気にしたのかお腹のあたりをさすってきた。
悪ふざけのつもりの僕と真剣な舞美ちゃんという、対照的な空気が漂う中、舞美ちゃんが「ごめん」と言ってきた。
僕は何の事で謝ってきているのかわからず、さっぱりという顔をしていた。
そんな僕をみて、舞美ちゃんは「あのホテルの事だけど」と言い出し、鈍感な僕もわかった。
あれは舞美ちゃんを責めているわけではないんだし、謝らなくたっていいんだ。
だって、一般的に考えてみれば異常なのは僕なんだから。

「ちっさー、男の子だからってさけたりしてごめんね。あんな事になっても普通に接してくれてありがとう」
「いいんだ、別に舞美ちゃんが傷つけようと思っていったんじゃないのはわかるから」
「それにしたって、私があの時は大人な対応できたらって何度も思うんだ。まだ未熟だね、私も」
「舞美ちゃん、僕こそもっと大人になるべきだって知ったよ」
「無理に大人になろうとしないで。私はそのままのちっさーが好きなんだから」

 舞美ちゃんは照れた顔で、僕の頬っぺたに軽くキスをして「時間だ」と去っていった。
僕はもうそれが信じられず、呆然と舞美ちゃんの唇が触れた部分を触っているだけだった。
まだ完全にじゃないかもだけど、また話しかけられる気がして、飛び上がりたかった。
だけど、この時は嬉しい時は跳びあがることも忘れて、冷静になろうと努力した。


 ぼぉ~とばっかりもしていられず、ステージから戻ってきた舞ちゃんに頭をはたかれて正気に戻った。

「ちさと、何してるの。次の準備があるんだから、早くしなよ」
「う、うん・・・」

 そうだった、今日はまだまだ出番があるのにこんな調子じゃ観に来てくれた人にも悪い。
そうだ、僕はステージに立って、やることがあるんだからしゃきっとしなきゃだ。
僕は頭を切り替えて、握手会が終わるまでの時間まではさっきのことを一切忘れるよう努力した。
すぐにあのキスが浮かんでしまうかなって思ったけど、お客さんの顔を見ていたら一切忘れて集中できた。
皆が僕らを応援してくれているからこそ、℃-uteは活動していられるんだし、感謝してもし足りない。
一人ひとりのお客さんの顔を見て、『ありがとうございます』と笑って握手をしていく。
皆が楽しそうな顔をして帰っていくのがパワーになって、明日からの活動の源になる。
よかった、今日のアルバムイベントは無事に大成功したんだ、そう思えるだけの成果があった。
次に控えるBerryz工房との合同コンサートは、横浜アリーナから始まって名古屋、大阪でも行われる。
そこでは僕が皆を引っ張っていけるよう、もっと弾けていくつもりだ。

「お兄ちゃん、何だか最近嬉しそうだね」
「えっ、いやだな~合同コンサートが楽しみでしょうがないんだよ。明日菜だってそうでしょ?」
「うん、エッグの皆で℃-uteとBerryz工房の両方を盛り上げるからね」
「よろしくぅ~皆で楽しいコンサートにしようよ」

 妹の明日菜に言われるくらい、最近の僕は合同コンサートを前にニヤけてしまっていたらしい。
というのも、いつもは別々にコンサートをして、夏と冬のワンダのコンサートでは一緒になっても、
二組で合同で行うのは初めての事になる。
やっと、僕らもあの七人組に並んでステージに立てるんだ、そう考えたらニヤニヤしても無理はない。
それくらい、このコンサートは℃-uteにとっても、Berryz工房にとっても、いい刺激になるに決まっている。
桃ちゃん元気にしてるかな、相変わらずうるさくしている様子だし、元気なんだろうけど。
映画の合宿で喧嘩もしたけど、最近では顔もスタイルも成長して優しい熊井ちゃん。
熊井ちゃんとも仲良くしたいよ、やっぱりさ。
りぃちゃんと会うのも久々だけど、可愛くなっているし会うのが楽しみだ。
こうして、あっという間に四月は終わりを迎え、横浜でのコンサートになった。

記事メニュー
人気記事ランキング
目安箱バナー