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我は毛利元就。日輪の申し子なり。
居室にて各地に放った忍び共の報告書に目を通している最中である。
駒共が集めた情報を元にこれからの戦略を練る。…フッ、次はどこを攻めてくれようか…?

が。

にゃー。

…いつの間にやら侍女と共に立ち去ったはずの仔猫が居室へとやって来て、我の膝にちょこんと乗った。
これでは執務に集中出来ぬ。
「ああっ!いけませんよ猫ちゃん!殿様はお仕事中なの。さぁ、向こうへ行きましょう?」
侍女が半べそかきながら引き取りに来る。…しかし、仔猫は我の膝にしかみつき、離れようとせぬ。
にゃーっ!にゃーっ!
悲しげに鳴くものよ。…畜生でも感情があるというのか…?
…もう良い。捨て置け。このままでよい…
「は?しかし…」
このまま執務を続ける。貴様もいちいち彼奴を引き取りに来ては己の仕事を全うできまい。去れ。
…それからどの位そうしていただろうか。猫は我の膝の上で心地よさそうに眠り、
我はいつの間にやら必要な書類を全て読み終えていた。
すると侍女が茶と団子を運び入ってくる。
「殿様、少しお休みくださいませ」フム、気が利く事であるな。茶に団子がそえてある。
夕べ我が残した餅を団子にしたのであろう。為す事に無駄が無い。有難く頂戴しよう。
「昨夜のお客様方にも、お土産として渡しておきました」…痺れ団子でも呉れてやれば良いものを。

すると。
仔猫が目を覚まし、我の膝からようやく降りたかと思うと、居室の隅へ歩いて行く。
そして、侍女がこしらえた厠に座り込み、はばかりをしたのであった。
…ほう…早くも覚えたか…獣のわりに小利口なものだ。
「まぁ!偉いわ猫ちゃん!」
侍女も嬉しそうだ。…他愛もない…そう、他愛も……ない…
茶碗と皿を下げ、立ち去ろうとする侍女を思わず我は呼び止めていた。
「…はい、何でございましょう、殿様?」

…貴様に褒美を呉れてやる…厠を躾けた功績のな…
彼奴の名をたった今決めた…「りん」と言う…「日輪」の「輪」だ…
ただし褒美であるから貴様にのみ、教える。他言は無用である…
我が戦に出たら貴様が「りん」を世話するのだ、良いな?
侍女ははにかんだ様に少し微笑み、深々と頭を下げて出て行った。

我は「りん」を抱き上げ、縁側へ出る。「りん」は甘えた声で我の胸元で鳴く。
今日も日輪は煌々と輝き、あまねく天地を照らしておられる。

…日輪よ、今日も我と、この小さき「りん」にご加護を…
まだ暑い日が続こう。「りん」よ、日の光を浴び、大きゅうなるが良い…

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最終更新:2006年09月18日 03:57