ニセコイの第1話

少女が少年に錠前のペンダントを手渡した。
少女「ザクシャ イン ラヴ(愛を永遠に)」
「あなたは「錠」を、私は「鍵」を肌身離さずずっと大切に持っていよう」
「・・・いつか私達が大きくなって再会したらこの「鍵」でその中の物を取り出すからそしたら――」
少年「――うん!」

少年・少女「「結婚しよう・・・!」

10年後、この錠はまだ開かないままだ―――

第1話 ヤクソク

10年後、成長したあの少年が台所で料理を作っていた。
少年「よし」
(オレの名は一条 楽。この春から高校に通うどこにでもいる普通の高校生だ)
(そう、ただ一点を除いては――)

楽「おーい、メシ出来たぞてめぇら~」
組員たち「あっ!!お早うごぜぇやす!!坊ちゃん!!!」

楽(・・・オレの家族は少しだけ個性的(ヤクザ)だ)
(‘集英組‘と言えばここらじゃ有名なヤクザの元締めで、オレはそこの組長の一人息子・・・)

組員「うんんめぇ―――!!さすが坊ちゃんだ―!!」
「いや~いつもすいやせん」
楽「いーよ、お前らに任せてたらロクなもん食えね―し・・・いずれくる一人暮らしの予行演習と思えば・・・」
組員たち「ええ――!?坊ちゃんどっか行っちゃうんスか!?」
「そんなの嫌っス!!」
「行かねぇで下せぇ、二代目!!」
楽「誰が二代目か!!」

楽(こんな家柄ゆえか、オレは‘男たるものかくあるべし‘の精神で育てられ――)
(ところがオレはガタイも良くなきゃケンカだって超弱ぇ。
こいつらはオレをヤクザにしたいらしいがハッキリ言って向いてないのだ)
(オレは――)

楽「・・・いつも言ってるだろ、オレはヤクザになんてならねぇ!」
組員たち「「「え――そんな――!!」
楽「オレは一流大学を卒業して堅実な公務員になって、お天道さんに顔向けてまっとうに生きて生きてぇんだよ!!」
組員たち「おぉ――!!なんかよく分かんねぇけどかっこいいぜ、坊ちゃん!!さすがオレ達の二代目だ!!」
楽は、組員たちの理解の無さに泣き出した。
組長「やれやれ、毎日せわしねーな、てめーは」
楽「親父」
組員たち「「「組長!!おはよーごぜーます!!」
組長「そうだ、楽。近ぇうちてめ―に大事な話があっから覚えときな」
楽「・・・?大事な話?」
「・・・っといけねぇ、これじゃ遅刻しちまう」
組員「なにィ!?そいつぁいけねぇ!!」
「すぐにリムジンを御用意しろ!!バカヤロウ、15m級のをだ!!」
楽「やめろ――!!」

楽(-とまぁ、オレの願いとは裏腹にウチは毎日こんな調子で・・・
オレは日々苦悩の連続なのである――)

楽は組員たちのリムジンに送られ、学校に来た。
組員「・・・では坊ちゃん!!今日も元気に行ってらっしゃいやせ!!」
楽「・・・・・」
(ああ・・・周囲の好奇の目が痛い――高校でこそは家の事を隠し、静かで平穏な学校生活を送りたかったのに――こいつらのせいで今まで友達作るだけでもどれだけ苦労したか・・・)

組員「あん?何見とんじゃわりゃ、坊ちゃんに文句でもあるんかい、おお?」
楽「やめんか!!」
楽は生徒に因縁をつける組員に上履きを投げつける。
組員「あ、そうだ。坊ちゃん、実ぁ最近見慣れねぇギャング共がウチの島ぁ荒らし始めてねぇ・・・坊ちゃんも気ぃつけて下せぇ」
楽「は?ギャング?」
組員たち「実ぁ昨日もドンパチやったばっかりで・・・」
「ちょいと右耳を飛ばされやしたが、なーに平気でさぁ」
楽「ブ―――!!」
(もう嫌だ、こんな血生臭い世界――)
(ああ――早くこんな家から飛び出して静かに平和に暮らしたい――)
(思えば一流大学行くため、勉強ばっかりで彼女はおろかモテた事すら一度もねぇもんな・・・)
(・・・いや、あるか。一回きりだけど・・・)
楽は10年前に貰った錠前のペンダントをまだ持っていた。

楽(オレはこの日まで毎日が苦労の連続だった)

一人の少女が学校に急いでいた。
少女(ハァ・・・ハァ・・・ヤッバ~遅刻~!)

楽(だがこの日、オレの運命は変わったのだ)

少女は壁を側転で駆けあがっていった。

楽(そう今日からは)
(更に凄まじい苦労の連続となる―――)

楽「え」 少女「げ」
楽「ギャアァ―――!!!」少女「キャァ」
楽が壁の向こうから飛び降りてきた少女の下敷きになった。
少女「・・・いたた、あっ・・・!ごめん・・・!急いでたから!」
「ごめんなさ―い!!」
少女は走り去っていった。
楽「な・・・なんなんだ一体・・・」

1-Cに怪我した楽が入り、クラスメイトの舞子集と
小野寺小咲が驚く。
集「オース、楽・・・ってうわ!?」
小咲「一条君!?どうしたのそのケガ!大丈夫!?鼻血出てるよ?」
楽「あ!小野寺!だっ・・・大丈夫大丈夫、全然平気!」

集「・・・はぁ?女通り魔にやられたァ?」
「バカ言えよ、ウチの学校の塀、2m以上あんだろ。それ飛び越えてひざ蹴りってどんな女の子だよ」
楽「ホントなんだって!!」
集「そんな事より聞いたか!?今日の転校生って女だとよ!しかも噂によれば美人・・・!!」
楽(こいつ・・・まるで信じてねーな)
小咲「ちょっと待って、今、バンソーコ・・・」
楽「え!?いーよ、そんな・・・」
小咲「ダメだよ!バイ菌入ったらどうするの?ほら!」
楽「うおお~!!小野寺がこんな近くに・・・!ちょっとケガして良かったかも・・・」
小咲「はい」

集「・・・・・・良かったな、楽♡」
楽「うっ・・・うっせーな・・・!!」
(ハァ~・・・今日は幸先最悪かと思ってたけど、小野寺とも話せたし案外悪かね―のかも・・・)

担任「・・よーし、今日は転校生を紹介するぞー」
「入って、桐崎さん」
少女「はい」

生徒たち「「おお――!!」
楽「!」

転校生は壁を飛び越えて、楽にひざ蹴りしたあの少女だった。
千棘「初めまして!アメリカから転校してきた桐崎千棘です」
「母が日本人で父がアメリカ人のハーフですが、日本語はこの通りバッチリなのでみなさん気さくに接して下さいね!」

生徒たち「うお――かわいい――!!」
「すっげ―美人!」
「キャ―!!足細-い!!何あのスタイル~~!!」
「ハーフだってよ、あんなかわいい子見た事ねぇ!!」
担任「じゃ―ひとまずテキト―に後ろの空いてる席に・・・」
千棘「ん?」
千棘と楽が顔を見合わせる。
千棘・楽「「あ―――――!!!」」
千棘「あなたさっきの・・・」
楽「さっきの暴力女!!」
担任「ぼ・・?」クラスメートたち「う・・・」集「りょ」 小咲「く?」
千棘「ちょっ・・・!何よ、暴力女って!!」
楽「さっき校庭でオレに飛びひざ蹴り食らわせただろ!!」
千棘「ちゃんと謝ったじゃない!!」
楽「あれが謝っただ~~!?あれのどこが!!」
千棘「謝ったわよ!何よ、ちょっとぶつかったくらいで被害妄想やめてよね!」
楽「どこがちょっとだよ!!こっちは気絶しかけたっつーんだよ!!」
千棘「へーそう、血圧低いんんじゃないのあなた!こっちは謝ってんだから許してくれてもいいでしょ!?女々しい人ね!!」
楽「女々・・・!それが謝ってる態度かよ!!この・・・猿女!!」
千棘「誰が猿女よ!!!」
キレた千棘が楽を殴り、吹き飛ばした。

楽(――この瞬間、オレの更なる苦労の日々への扉が勢いよく開いた)
(オレと転校生の一日目――)


千棘「・・・どうしてくれんのよ。恥かいちゃったじゃない!」
楽「・・・・なんでオレが怒られる側なんだよ、普通逆だろ!!殴られたのオレだぞ!!」
千棘「私だってあんたのせいで迷惑してんのよ!!」
「日本での新しい生活・・・!せっかく華々しい高校デビューの一歩目を刻むハズだったのに・・・!!」
「あんたのせいで計画が台ナシよ!!」
楽「知・る・か!!!先に手ぇ出したのお前だろ!!」

集「あれがひざ蹴りの主?あの話マジだったんだ~」
「でもオレ!!あんなかわいい子のひざ蹴りならいつでも・・・」

担任「おやおや~?なになに、お前ら知り合いだったの?それならちょうど良かった」
楽・千棘「「は?」」

千棘は楽の隣の席になった。
千棘「えええ―――!?」
楽「なんでこいつがオレの隣に・・・!!」
担任「だってさ―、桐崎も日本に来たばっかで色々と不安でしょ?」
楽「抗議する!!」千棘「断固抗議する!!」
楽・千棘「「この扱いは明らかに不当である!!」
担任「申請は却下されました」
「じゃ頼んだからな、一条」
楽・千棘「「ええ~~~~・・・」」
千棘「・・・こっち寄って来ないでよね、女々しさがうつるから!」
楽「なっ・・・こっちこそ!!猿っぽさがうつったら迷惑・・・」
千棘のパンチが楽の頬をかすめる。
楽「何も言ってません」

楽(くっそ~、なんなんだ、この女は・・・!!こんな凶暴でムカツク女は初めてだ・・・!!!)
(これで本当に女かよ・・・小野寺やあの‘約束の女の子‘とはえらい違いだ)
(・・・あの子、今頃どうしてんのかな・・・顔も名前も覚えてないけどあの約束だけはハッキリ覚えてんだよなぁ)
(あれから結局一度も会えなかったけど・・ペンダントを持ってればまた会える気がして―――)
(ああ・・・あの初恋のような恋を小野寺と出来たら・・・な~んて・・・)
「・・・ん?ん?んん?あ―――!!?無い!!オレのペンダントが無い!!」
千棘「・・・うるさいわね」
楽「一体いつから、どこで・・・・」
(ハッ・・・!あの時のひざ蹴りで・・・!!)

千棘「ハァ!?なんで私がそんな物探すの手伝わなきゃなんないのよ」
楽「てめ―のひざ蹴りのせいで失くしたんだからてめ―にも責任あんだろ!!思い出してもあの時以外考えらんね―んだ!!」
千棘「・・・そんなの一人で探せば・・・」
楽「一人で見つかんなかったから言ってんだよ!!」
小咲「どうしたの?一条君・・・」
楽「小野寺――!」
小咲「こんにちは、小野寺です」 千棘「よろしく」
楽「いや・・・ちょっと大事なもん失くしちまって・・・」
小咲「そうなの?手伝おうか?」
楽「い・・・いや!こいつのせいで失くなったんだし、こいつが探すのが筋ってもんだ」
千棘「なんですって!?」
「で?どんなペンダントなのよ、それ?」
楽「あ・・・このくらいのチェーンの先にこ~~んな形の鎖がついた・・・」
小咲「え、それって・・・」
楽「ん?どっかで見たのか?」
小咲「あ、ごめん。勘違いかも・・・多分・・・」
千棘「・・・分かった。じゃあそれを探すかわりに今後私に学校の中で話しかけないって約束してくれる?」
楽「・・・は?」
千棘「私嫌いなのよ、過ぎた事をグチグチ言う男って。そんな器の小さい男とお友達って思われたくないもん」
楽(くぁ~~~~!!なんてムカツク女なんだ!!なんで初対面のオレがここまで言われにゃならねんだよ!!ふん!!何が話しかけんなだ!!)
「お――分かったよ、望む所だ」
千棘「・・・手伝うの放課後だけだからね」
楽(オレだっててめーみたいな女とこれ以上関わりたくなんて・・・)
担任「そうだ。一つ言い忘れてたよ、一条」
楽「へ?」
担任「桐崎に学校の事、色々教えてやって欲しいからさ、桐崎をお前と同じ・・・
飼育係にしたからよろしく!」

楽・千棘(な・・・・)
楽「・・・なんでこーなるんだよ!!」
千棘「・・・・ちょっと、話しかけない約束じゃなかったの?」
楽「オレとの会話ナシで作業出来んのかよ?更に言えばここは‘学校の中‘じゃねぇ!」
千棘「・・・細かい男ね」
楽(くそっ・・・!何が悲しくてこんな奴と・・・)
千棘「・・・それにしても、何よ、この生き物の数は・・・」
楽「仕方ないだろ、ケガとかしてたんだから」
千棘「あんたが拾ってきたのコレ!?」
「・・・ハァ、うだうだ言ってても始まんないわ」
「さっさと終わらせてそのペンダントとやら探すわよ」
千棘は、バケツの水を直接、プランターにやった。
楽「何やってんだ―――!!」
「そんなに水やったら根腐れするだろ―が!!」
千棘「ちょ・・・このくらい平気よ・・・多分」
楽「プランターから水あふれ出しってけど!?」
「お前には任せておけん!オレが動物のエサ用意するからお前はそれを運んでくれ」
千棘「なによ!命令しないでくれる!?」
楽「えー、ニワトリ一羽(成雄)のエサの適量は――」
楽は、天秤でニワトリのエサを測り出した。
千棘「細かぁ!!?」
楽「オレはやると決めたらキッチリやらないと気が済まない派だ」
千棘「んな事してたら日が暮れるっての!!」
「男なら細かい事は言わずにドン!!」
千棘は金魚の水槽に袋から直接、エサをやりだした。
楽「金魚―――!!!男らしすぎるだろ!!」
千棘「何よ、文句あんの!?」
楽「こいつらはお前と違って繊細なんだよ!!」
千棘「誰が繊細じゃないって!!?」
千棘が楽の顎を殴りつける。
楽「てめぇのやり方じゃここの植物は2日で枯れ果てる!!」
千棘「あんたのやり方じゃここの動物、ストレスで2時間で死滅よ・・・!!」
楽(くっそ~~~なんてかみ合わねぇ奴なんだ・・・!!相性最悪!!こんな奴とずっと一緒にこんな事を・・・!?)
千棘「ほら!残った時間はペンダント探す!!」
楽「わ―ってるよ!!」

楽(オレと凶暴女の二日目――)

千棘「む~~~~・・・」(ややこしいわね、日本語・・・)

楽「ほれ」
千棘「!・・・何よ、コレ」
楽「現国のノート、お前全然取り切れてなかっただろ?」
「お前の事は嫌いだがな、困ってる奴を放っとく程オレは人でなしじゃあ・・・」
千棘「「話しかけんな」って言ったハズだけど?余計な事しないでくれる?」
楽(こ・の・ヤ・ロ~~!!よくもオレの厚意を~~~!!)

楽(オレと性悪女の3日目――)
集「・・・なぁなぁ楽、お前桐崎さんといつの間に仲良くなったんだよ」
楽「ハァ?何だよソレ・・・」
集「だってよく一緒にいるじゃん。放課後も二人で何かやってるし、仲良くしゃべってるしよ」
楽「仲良く・・・!?あれのどこが・・・」
集「ほら桐崎さんって美人だろ?気になってる奴も多いわけよ」
「なんでこの学校に?とか、なんでこんな変な時期に?とか色々な」
楽「美人~~?あれが?」
「あいつはただ席が隣なだけの同級生だよ、一緒にいるのも事情があっるだけでたまたまだし、断じてあんな奴とは仲良くねぇ!」
集「へ~?」
千棘は体育で活躍し、喝采を受けていた。
楽「・・・・ますます猿」
楽の顔面にダンベルが投げつけられた。
千棘「あんたもう手伝ってあげないわよ!?」
楽「悪かったって!」

楽(オレと曲芸女の4日目――)

楽(いてて・・・ったくあのゴリラ女め、どういう環境で育てばあんな凶暴になるんだ?)
(まぁ環境は人の事言えた口じゃね―けど)
組員達「兄貴ィ!!三丁目でまたギャング共が!!」
「何ィ!?今週でもう三度目やぞ?」

小咲「・・・はい一条君」
楽「おっ・・・ああサンキュー!」
小咲が楽に絆創膏を渡す。
小咲「・・・なんかまたケガ増えたね」
楽「っとにあのヤロー・・・すぐに人の事殴りやがって・・・」
(・・・ヤクザでももっと手ェ出すのおせーぞ・・・)
小咲「でも、そう言いながらも優しくしちゃうのが一条君の良い所だよね」
楽「・・・え?」
小咲「桐崎さんのためにノート取ってあげてたでしょ?見てたよ」
楽「そ・・・そっか」
(うおお~!!そんな所見ててくれたんだ!なんかスゲー嬉しい!)
小咲「あ、そうだ。一条君はそのペンダントどこで買ったの?」
楽「いや・・・あれ貰ったんだ、昔」
小咲「昔?」
楽「10年くらい前・・・?」
小咲「じゅ・・・!も・・・物持ち良いんだねぇ・・・」
楽「ちょっとした約束でな、大事にしてんだ」
小咲「・・・約束・・・」

楽(オレとゴリラ女の6日目―――)
千棘「・・・あ―もう、全然見つからないじゃない」
楽「・・・うっせ―な。グチグチ言う奴嫌いなんだろ?」
「・・・そういえばさ、お前どうしてこんな時期に転校して来たんだ?」
千棘「は?何よ、いきなり・・・」
「・・・別に、親の都合よ」
楽「ふ―ん、親って何してんの?」
千棘「な・・・なんだっていいでしょ!?なんであんたなんかに私の身の上話しなきゃなんないのよ!!」
楽(く・・・ホントかわいくない奴だな・・・)
(・・・こいつが‘美人‘ねぇ・・・ま、黙ってりゃそうなのかもしんね―けどな・・・)
千棘「ん―無い――」
楽(それに――なんだかんだ言って一応毎日ペンダント探すの手伝ってくれてんだよなー―)
千棘「・・・ハァ――ここにも無い。私あっち探してくる」
楽「お・・・おう」
(・・・ん?あれ・・・この匂い・・・どこかで嗅いだ事があるような・・・どこかなつかしい・・・昔からよく知ってるみたいな匂い――)

楽(う~~~~ん?・・・・どこで嗅いだ匂いだっけか?)「ん?」
ギャングたち「ファックオフ!!」「ドッグビッチ!!」
組員たち「おりゃあ――!!」「ヤクザナメンなや、コラ――!!」
楽(あれがギャングか・・・なんか・・・ますますひどくなってないか・・・?)

楽(オレと桐崎の7日目―――)

女子2人「「ねぇねぇ桐崎さん」」
千棘「え?」

楽「おせ―よ、桐崎。早く手伝って・・・」
千棘「も――ガマン出来ない!やってられるか、こんな事!!」
楽「ハァ!?なっ・・・なんだよ、いきなり・・・」
千棘「・・・さっきクラスの子に言われたの」

女子2人「ねぇねぇ、桐崎さんと一条君って付き合ってるの?」
「え~だって、いつも楽しそうに話してるし、放課後も一緒にいるって聞いたよ~~~?」

千棘「・・・って」
楽「な・・・」
千棘「どぅわれが楽しそうに話してるって?放課後一緒なのはこのバカの探し物を私が親切で探してあげてるだけなのに!!」
楽「なぁ!!?」

小咲(・・・今日は委員も早く終わったし、一条君の探し物手伝おうかな)
楽「ふざけんな!!てめ―の過失でもあるんだろ―が!!」
小咲「!」

千棘「あんたがしっかり持ってなかったからでしょ!?だいたいあんたもあんたよ!」
「もう一週間なのよ!?いいかげんあきらめなさいよ!!きっともう誰かが持ち去ったか、
ゴミと間違って捨てたのね!」
楽「・・・んなのわかんね―だろ。それにあれは・・・オレにとっては・・・!」
千棘「フン!何よ、大の男がペンダント一つ失くしたくらいで、あんたお気に入りのクマさん失くしたら夜も眠れなくなるタイプ?」
楽「ああ!?」
千棘「どーせ昔好きだった子に貰った物とかなんでーしょけど!あーやだやだ、昔の事ズルズル引きずって女々しいったら無いわ!!」
楽「・・・!!」
千棘「どーせその相手だって、あんたにそんなもんあげた事なんて忘れてるに決まってんのに、ホンットダサ!!バッカみたい!!」

少女(ずっと大切に持っていよう)

楽「うるっせぇな!!!だったらもう探さなくていいからどっか行けよ!!!」
雨が降り出した。
千棘「・・・・・分かった・・・」
千棘が去っていく。
楽(――やっちまった・・・女に本気で怒鳴るなんてホント――男らしくねぇな――・・・)
(あんな奴でも、ずっと一緒にペンダント探してくれてたってのに・・・まあ今さら言っても遅ぇけど――・・・)

楽(オレと千棘の11日目―――)

千棘(――どーせその相手だって、あんたにそんなもんあげた事なんて忘れてるに決まってんのにバッカみたい!!)
楽「~~~!!・・・くそ!!」
小咲「一条君!!・・・桐崎さんが来て欲しいって・・・」

楽と小咲は校庭に移った。
楽「・・・なんだよ、あいつ。こんなとこ呼び出して・・・」
千棘は遠く離れた所にいた。
楽「ん・・・あれ?あいつって・・・桐崎じゃ・・・」
千棘が投げた何かは、楽の顔面に直撃した。
楽「ギャアァア―――ス!!!」
「痛っっってぇ――!!何すんだあの野郎・・・!!」
小咲「だっ!大丈夫!?一条君・・・」
楽「ん?え・・・これ・・・!!」
千棘が投げたのは、楽のペンダントだった。
小咲「・・・!!それ・・・一条君の・・・?」
楽「あぁ・・・でもなんであいつが・・・」
小咲「・・・桐崎さんね、あの後ずっとソレ探してたんだよ・・・」
楽「・・・!?」
小咲「一条君に見つからないように言うなって言われてたんだけど・・・」
楽「ん?」
ペンダントの鎖には、手紙が付けられていた。

  • 訳せるもんなら訳してみろ!!
I fulfilled by duty.
So don’t talk to me anymore.
Suca basfand!!
Chitoge
(*訳 義理は果たした。今後、私に話しかけてこない事、クズ野郎!! 千棘)

楽「・・・読めねぇけどバカにされてる事だけは分かるな。どこまでもかわいくねぇ・・・」
(・・ったく、どこまでもムカツク奴だけどちょっとは良い所もあるらしい・・・)
「・・・それにあいつの言ってる事ももっともなんだよなぁ・・・」
「オレいいかげんこんな約束忘れちまった方がいいのかなぁ・・・」
小咲「そっ・・・そんな事ないよ・・・!」
楽「!?」
小咲「一条君・・・誰かと約束したんでしょ?もしその人が一条君と同じように約束を覚えてたら・・・きっとその人も悲しむよ?」
「たとえそれが10年も前の子供の約束だとしても・・・その人にとっては大切かもしれないよ・・・?」
楽(えっ・・・小野寺・・・?いやまさか・・・)
小咲「ハッ・・・!あっ・・・ゴメン!!変な事言って・・・!」
楽「え・・い・・いや・・・ありがとな。なんか元気出たわ」
「そうだよな。もし今後その子に会えても会えなくても、オレにとって大事な約束なのは変わんねぇ。大事に持っとくよ」
「色々サンキュ―な、小野寺!んじゃまたな!」
小咲「あ!うん・・・またね!」
「・・・ハァ・・・」
「また聞けなかったな・・・私のバカ・・・」
小咲は、古びた鍵を持っていた。

楽(・・・それにしてもビビッたな~、一瞬小野寺が‘約束の女の子‘かと・・・)
(まさかな~・・・でも確かに雰囲気は似てる気も、それにあの話しぶり・・・
もしも小野寺が‘あの子‘だったら・・・)
(ヤッベー―!!それって最高じゃねぇか・・・!!なんて運命的な・・・!)
(よし!来週会ったらさりげなく確かめてみるか!ダメ元、ダメ元!)
(・・・まぁでも小野寺とあんな話が出来たのも、考えてみりゃあのゴリラ女のおかげか・・・)
(ちっとは感謝してやってもいいかな、もう関わる事もね―だろ―けど・・・)

楽(と思ったのだが、オレ達は意外と早く再び関わる事になる―――)

組長「お、帰ったか、楽。ちょいとオレの部屋に来な」
楽「なんだよ、親父、いきなり呼びつけて・・・」
組長「今度大事な話するっつたろ?思いの外、早く事が動いてな・・・」
「てめぇも最近のギャングとの抗争は知ってると思うが、それがいよいよ全面戦争になりそうなのよ」
楽「んなっ!!大丈夫なのかよ、戦争って・・・」
組長「まぁ、もしそうんりゃお互いただでは済まんわな」
「そこでだ!!この戦争を回避する方法が一つだけあってな、しかもてめぇにしか出来ねぇ事だ」
楽「オ・・・オレにしか・・・?」
組長「実ァ向こうのボスとは古い仲でな、奴にもてめぇと同い年の娘がいるらしいんだが・・・そこで楽よ」
「おめぇ、その子と恋人同士になってくんねぇか?」
楽「ハア―――!!?こっ・・・恋人ぉ!!?なっ・・・なんでそんな・・・」
組長「な―に、フリだけでいいんだ。互いの組の二代目が恋仲となっちゃ、若ぇ連中も水差すわけにゃいかね―だろ?」
楽「いっ・・・いや、だからって冗談じゃねぇよ、んな事出来っか!!オレはなぁ・・・!」
(もしかしたら小野寺が約束の・・・!)
組長「なんだ、彼女でも出来たのか?」
楽「うっ・・・それは・・・ゴニョゴニョ・・・」
組長「悪り―がこっちも命かかってんでな、泣き言言ってもやって貰うぜ?」
楽「ぐっ・・・」
組長「よし、じゃあ入ってくれ」
楽(え!?もう来てんの!?くっ、でも仕方ねぇか・・・あくまで‘フリ‘だし
どーせ数日の事だろ―し、これで戦争が回避されるってんだから・・・)

楽(オレは――この時もっと予測すべきだった。ちりばめられたヒントに気付いて、この最悪の事態を回避すべきだったのだー―)

?「・・・だからまだやるって決めたわけじゃ・・・」
楽「ん?」
?「でも彼なかなかイケメンらしいよ?」
?「え!?いやいや、でも・・・」
楽(あれ?この声・・・)
組長「さぁ、この子がお前の恋人になる―――」
組長がカーテンを開ける、その向こうにいたのは――
千棘「まだ心の準備が・・・」
千棘だった。
二人が顔を見合わせ、固まる。

楽(――瞬間、オレの中で全てが繋がった)
(なぜこいつがこんな時期に転校して来たのか、なぜ家の事を話したがらないのか)
(そしてなぜ、こいつの匂いをなつかしく感じたのか――)
(・・・そうだ、あの匂いは)
(硝煙の香り―――)

組長「・・・こちらがその桐崎千棘お嬢ちゃん。お前ら二人には明日から・・・」
「3年間恋人同士になって貰う」

楽「えっ・・・」

楽(かくして――相性最悪のオレ達は今日恋人になった)
(このニセモノの恋がオレを10年前の約束へと導てゆく事になるのだが)
(オレはまだ知る由も無い)



(続く)

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最終更新:2016年03月09日 22:15