銀河鉄道999(アンドロメダ編)の最終回

銀河鉄道999(スリーナイン)号はついに、アンドロメダ星雲の中心にある終着駅、機械化世界の聖地である惑星大アンドロメダに到着する。
鉄郎は機械の体を望んで旅に出たものの、この星で鉄郎は、惑星大アンドロメダを支えるネジの1つにされるという。
これを拒否すればメーテルが極刑に処されると聞き、鉄郎はそれを受け入れ、女王プロメシュームの側近である機械化人メノウ(劇場版アニメでも登場したクレアの母)に、999のパスを返却する。


メーテル「鉄郎は…… ネジになるといった…… 限りある命だから、人は一生という時間の中で精いっぱいがんばるといった鉄郎が…… 私を助けるためにネジになってもいいといった…… 私は鉄郎の夢を砕いた女…… 鉄郎の希望も未来も消してしまった女…… 私を魔女と呼ぶ人もいる…… そう、私は魔女……」

メーテルのペンダントのカプセルから、第1話から語り掛けていた父の声が響く。

父「メーテル…… 鉄郎のはおまえを理解したのだ…… つらいだろうが おまえの務めを果たせ……」
メーテル「後世、鬼と呼ばれてもいい、魔女と呼ばれてもいい…… ただ…… 私は鉄郎を犠牲にしてまで自分の願いをとげたくはない……」

メーテルの目に、涙が滲んでいる。

メーテル「永遠の時の輪の上を歩き続けるより…… 私も…… 私も鉄郎と一緒にネジになりたい!! よりそう二本のネジに!!」
父「鉄郎は自分がなる一本のネジという機械の体がどれほど大事な意味を持っているか知っているぞ!!」
メーテル「私は鉄郎をネジになんかしたくない!!」
父「くじけるな、メーテル!!」


メノウが鉄郎を、女王プロメシュームのもとへ案内する。

メノウ「鉄郎さん」
鉄郎「は? ……」
メノウ「女王プロメシューム陛下を、少しあまくみているのではありませんか?」
鉄郎「そ、そんなことないよ!!」
メノウ「あなたはネジになることを承知して…… プロメシュームさまに近づくチャンスをねらったのではありませんか?」
鉄郎「……」
メノウ「あなたの戦士の銃(コスモドラグーン)では女王陛下には歯が立ちませんよ」
鉄郎「!!
メノウ「鉄郎さんがどう考えておいでかわからないが…… 機械帝国は大宇宙の歴史上 最大最強最高の大帝国です。『不滅』という言葉は、プロメシューム陛下とその機械帝国のためにこそあるようなもの……」

鉄郎たちの行く通路の末に、巨大な球体がある。

鉄郎「なんだい、あの球体は!?」
メノウ「女王陛下の謁見室……」

鉄郎「女王なんて どこにもいやしないじゃないか」
メノウ「言葉をつつしみなさい、鉄郎さん!!」

巨大な女性の生首が宙に浮いている。
機械化帝国の最高権力者、プロメシュームである。

プロメシューム「私が見えぬか、おろかな生身の二足動物よ」
鉄郎「女王プロメシュームって 機械の生首のことか!?」
プロメシューム「無礼なことを申すな!! おまえには、私が機械の生首にしか見えぬか? 機械化母星 惑星大アンドロメダの中心に存在して すべてをつかさどるこの私が!!」
謎の声「鉄郎……」
鉄郎「? ? !!」
謎の声「長い旅を…… 私と一緒に…… ありがとう……」

プロメシュームが後ろを向くと、その後頭部はメーテルの顔となっている。

鉄郎「メーテル?
プロメシューム「そう、私の愛する娘 メーテル……」
鉄郎「? ? ? ?
プロメシューム「少年よ…… 私の娘を助け…… 長い旅路を終えて…… 共に無事ここへ来てくれてありがとう…… おまえは心やさしい少年…… たじろぐことはあっても…… 悩むことはあっても…… 歯をくいしばって歩き通す 強い心を持った男の子…… 私にも、昔そういう時があった…… 私はメーテルを通して そういうおまえを見続けていた…… おまえがメーテルによせている想いも知っている……」
鉄郎「メーテルを通して?」
プロメシューム「機械伯爵に母を殺され…… それ以来、火と燃える憎しみを機械人間に対して抱いていることも…… メーテルを通してよく知っている…… 鉄郎よ……」
メーテルの顔「私はメーテル…… あなたと一緒に旅をしてきた、メーテルが見る時…… 私も同じものを見る…… あなたの(そば)のメーテルが喜ぶ時、私も喜ぶ。メーテルが悲しむ時、私も悲しむ…… かよいあう同じひとつの心を持った…… ふたつの存在…… 私はメーテル」
プロメシューム「おまえの負けだ、少年よ…… 機械の体になって永遠に生きて…… 機械化世界を滅ぼそうというおまえの心の中…… それこそはかない夢…… 蟷螂の斧。鏡の中の自分が殺せるか? おまえは重要なネジとなって 機械化母星 大アンドロメダ…… 私とメーテルの永遠の世界を支えて、生きるがいい」
鉄郎「鏡の中の自分を殺す??」
プロメシューム「ネジとなれ、少年よ。『るつぼ』を、『るつぼ』を閉じるネジとなれ!!」
鉄郎「ま、待ってくれ、もう一度ほんとのメーテルに ぼくは……」


一方でメーテルは、プロメシューム配下のアンドロイドたちの案内で、大アンドロメダの最奥へと降下してゆく。

メーテル「人の気配を感じないのは なぜ? 動く機械人間の一人の影すら見えず、ここには生命反応もないのはなぜ?」
アンドロイド「降下中も護衛をしている私たちがいるではありませんか、メーテルさま」
メーテル「あなた方は機械化人ではありません。ただのアンドロイド、ただのロボット、心を持っていない動くだけの機械!!」

メノウ「お待ちしていました、メーテルさま」
メーテル「メノウさん…… 分身の私を通してみていました…… 鉄郎をネジにして、ご満足?」
メノウ「…… 鉄郎さんです……」

メノウがメーテルに、1本のネジを手渡す。

メーテル「…… 鉄郎!!」
メノウ「鉄郎さんは『るつぼ』の外壁のつぎ目をとめるネジになりました…… この前一本…… 気力をなくしてはずれて、抜けそうになっているネジのかわりです」
メーテル「『るつぼ』のネジ…… この『るつぼ』には9億9999万本のネジが使われている。一本でも抜けると圧力で歪んで『るつぼ』は開いてしまう…… 大切なネジ…… いっぺん『るつぼ』にとりつけたら…… どれが鉄郎かわからなくなる…… 」
メノウ「では…… とりつけをはじめます……」
メーテル「鉄郎…… 心のあたたかい子…… 時の終わりまで…… 一緒に旅を続けたかった、私の鉄郎!!」

メーテルが涙を流しながら、ネジにキスをする。
マニピュレーターがネジを取り上げ、取り付けが始まる。

メーテル「9億9999万本の中の一本…… ありがとう、メノウさん……」
メノウ「え……」
アンドロイド「女王陛下がお待ちかねです」


メーテルは、プロメシュームのもとへやって来る。

プロメシューム「メーテル…… 私の娘よ…… よく無事で 惑星の部品となる立派な若者を連れて帰ってくれた」
メーテル「お母さん」
プロメシューム「私はなにもかも見ていた…… なにもかも知っていた…… 宇宙の果てまで歩いてゆくおまえを…… 私と一緒にいるメーテルの心を通じて、いつも見ていた…… いとしい娘よ、お帰り」
メーテル「トランクをお返しします、お母さん」

メーテルが、旅の中でずっと手にしていたトランクを放る。

プロメシューム「旅は終わった。もう、そんなもので話をする必要はない。これからは口を開けば声が聞こえる」
メーテル「それと もうひとつ……」

メーテルがペンダントを外し、涙を流す。

メーテル (さようなら……)
父「泣くな、メーテル。これでいいのだ!!」

父の声の響くペンダントも、プロメシュームのもとへ投げる。

プロメシューム「なにを投げた、メーテル?」
メーテル「さようなら、お母さん」
プロメシューム「さようなら? メーテル、おまえ、どこへ行く?」
メーテル「新しい旅へ出ます」
プロメシューム「だれと?」
メーテル「鉄郎」
プロメシューム「鉄郎? ばかをおいいでない、鉄郎はネジになった!!」


ネジになったはずのその鉄郎は、元通りの姿で999号の車掌のもとへ現れる。

車掌「て? 鉄郎さん!!」
鉄郎「車掌さん、喜んでよ。なんだか知らないけど ネジにならなくてすんだよ。メノウさんが古いただのネジと入れかえて ごまかしてくれたんだ」
車掌「メノウさんが!?」
メノウ「クレアのガラスのかけらを…… 鉄郎さんがずっと持っていたのを見て…… 私がまちがったことをしてたのに、気がつきました」

そこへメーテルが現れる。

鉄郎「メーテル メーテル メーテル
メーテル「鉄郎」
鉄郎「くそ~ ぼくはだらしない、情けない、涙が出てきた、良く見えないよ、メーテル」


プロメシューム「メーテルが鉄郎と『るつぼ』へ行った?? 鉄郎と?? これは、なぜ…… なぜ、それが私にわからぬ…… メーテルのすることは、みんなわかるはず……」
メーテルの顔「私が心を閉ざせば…… お母さんにはわからないこともある」
プロメシューム「裏切っていたのか!! すると今までも!!」


鉄郎はメーテルの案内で、大アンドロメダ中枢部の「るつぼ」のもとへやって来る。

鉄郎「この『るつぼ』がそんなに大事なものなのかい…… それにしては衛兵も守備隊もいないね」
メーテル「この床も…… 柱も、生きた機械人間の部品…… でも、ものもいわず生命反応もない…… ただの物体」
鉄郎「し、死んじゃったのかい?」
メーテル「すぐわかるわ。鉄郎!! あの赤いネジを撃ちなさい!!」
鉄郎「赤いネジ??」
メノウ「メーテルさんの(ルージュ)のついた赤いネジ」
鉄郎「メーテルの…… 口紅…… あれか!!」
メーテル「あのネジはもろい鋳物のネジよ、早く!!」

鉄郎が狙いを定め、そのネジを撃つ。
「るつぼ」を留めていた無数のネジが、一斉に飛び出す。

鉄郎「うわ~ ネジが全部飛び出した~」
メーテル「圧力弁が開いたわ!!」

「るつぼ」の中で、無数の火の玉が渦巻いている。

鉄郎「な、なんだ、この中の火の玉は!?」
メーテル「惑星大アンドロメダを構成する機械化人から吸い取られ、集められてきた心の火…… 人の魂…… 機械化世界を支えるエネルギー、つまり食糧…… 生命反応がなかったのは これのせい…… 部品として固定され…… 惑星を支えながら命を吸いとられてゆく……」

火の玉が人魂となって、次々に空へ飛んでゆく。

鉄郎「ああ…… 人魂が出てゆくよ…… 心の火になったあの人たちは またどこかで人に生まれ変わるのだろうか? もしそうだとしたら…… もう一度 機械の体がほしいと思うだろうか……」

プロメシューム「寒い…… この寒さはどうしたこと!?」
メーテルの顔「『るつぼ』がこわれたわ、お母さん」
父「そうだ、プロメシュームよ。機械帝国はエネルギーを失って停止する」
プロメシューム「だれ!?」
父「惑星大アンドロメダという永遠の墓場の、私は話し相手だよ」
メーテル「お父さんよ」
プロメシューム「なに!! ドクター・バン!! あなた…… 反機械化世界をめざした裏切り者!!」
父「あわれな機械の女よ、この星はおまえが思うほど、強固ではない。メーテルが歯をくいしばり、何度も往復して部品となる同志を運んできたのは なんのためだと思う。メーテルの連れてきた若者たちが部品となって要所要所に配置されているのは なんのためだと思う。構成された若者たちの部品は死んだよ…… 命の火を吸い取られてな。だが、若者たちの部品はわざと、ゆるやかな結合で壊れやすくなっているのを忘れるな!!」

プロメシュームの顔が、暗闇の中で、みるみる醜く老いさらばえてゆく。

父「欠陥のあるこの星は、一度事故をおこすと二度と修理はできない……」
プロメシューム「あ、ああ…… 寒い…… とても寒い…… 助けて…… メーテル……」


鉄郎「大アンドロメダ星は こわれるのかい!」
メーテル「いいえ。エネルギーを失い、お父さんのカプセルの影響でバランスをくずし…… アンドロメダ星雲の真の中心…… 超重力の墓場へ引き込まれて…… 永遠の眠りにつく…… 光さえも外へ出ることは永久にない 暗黒の墓場…… 」


惑星大アンドロメダの駅で、メノウが鉄郎に、999号のパスを返却する。

鉄郎「これは!!」
メノウ「お返しします、どうぞいい旅を……」
鉄郎「ぼくは地球へ帰れるんだ、ここを出られるんだ!!」
車掌「急いでください、超重力につかまったら おしまいです」
メーテル「車掌さんとメノウさんは先に乗っていて……」
メノウ「はい……」
鉄郎「?」
メーテル「鉄郎!! さあ、よく見なさい、これが私……」

メーテルが服を脱ぎ棄て、全裸の姿を鉄郎に晒す。

メーテル「カムフラージュランジェリーはつけていないわ…… 近くへ来て!!」

しかし鉄郎は、きつく目を閉じている。

鉄郎「999に乗る前にぼくは、メーテルが悪魔の子でも魔女でもかまわないと誓った…… ぼくにとってのメーテルは…… ずっとぼくの前にすわって旅をしたメーテルだけだ。だから…… だからぼくは見たくないよ……」
メーテル「ありがとう、鉄郎…… 遠く時の輪の接する所で…… まためぐり会いましょう……」
鉄郎「

鉄郎が目を開くと、メーテルは服を元に戻し、別の車両に乗ろうとしている。

メーテル「途中の星も地球も機械化人間がたくさんいるわ…… くじけずに、鉄郎!!」
鉄郎「メーテル いつか…… こういう時が来るって覚悟してたから…… みっともないことはいわないよ!! ただひとつだけ教えておいてほしいことがある…… プロメシュームが…… 『鏡の中の自分を殺せるか……』っていったのはなぜだい??」
メーテル「アンドロメダ大星雲が…… その中の惑星大アンドロメダが…… 宇宙という鏡に映った…… 銀河系や地球かもしれないという意味…… 機械化母星 大アンドロメダが…… 過去か未来の地球が鏡に映った姿かもしれないということ…… ここが、もし地球だったら…… こんな悲しいことってないわね 鉄郎!! アンドロメダが鏡に映った銀河かどうか…… 自分で答えを出しなさい、鉄郎!! 私は、あなたの想い出の中にだけいる女…… 私は…… あなたの少年の日の心の中にいた青春の幻影…… さようなら、私の鉄郎……」

メーテルが鉄郎にキスを残す。
汽笛が鳴り響き、メーテルの乗った別の列車が駅を発つ。

メーテル「さようなら……」


鉄郎は999号で、地球への帰途につく。
向かいの座席にいつも座っていたメーテルは、もういない。



向かいの座席には
メーテルの移り香だけが残っていた。
それがだんだん薄らいでゆくのが、
鉄郎は寂しい……

ゆらめく少年の日の陽炎の中に影を残して……
行ってしまったメーテルを鉄郎は忘れない。
あの旅立ちの汽笛が、
まだ鉄郎の耳の中で鳴り続けている……

歯を食いしばれよと尾をひいて、
どこまでもレールの上をついて来る……

選んで出た自分の旅がいつかきっと、
すばらしい終着駅に着くことを……
そうだ、鉄郎は決して後悔はしない……

旅はまだ、続くのだ。



「銀河鉄道999」─ 完 ─
最終更新:2021年07月07日 06:37