※あてんしょん※
- ノリと勢いで書き上げたシロモノです
- 拙いです
- 一部改変が有ったり、設定をよく知らずに使ってます
- キャラ崩壊が著しい気がします
- ダークというかグロテスクな表現が含まれます
等など、あくまでパラレルな話としてお楽しみください
初めて書いたSSだからね、期待しても損するからね
1話「在りし日の思い出」
大陸の西側に位置する工業大国【マキナポルタ】の辺境には尖った耳とふさふさの尻尾を持った獣人族、狼族の里のひとつがある。
この里で生まれ育った者は密偵として国に雇われ、【プロメテンの火】という技術に関して争っている魔導大国【スピノー】へのスパイ活動を行う。
里の西端に位置する木造の小さな家には腕利きの密偵として里の住民から慕われるひとりの男とその家族が住んでいた。
男の妻とその息子と思しき年端もいかない少年、そしてその少年より何歳か年上に見える猫獣人が丸いテーブルを囲んでいる。
弟「ねえお兄ちゃん、この世界はいつ生まれたの?」
母「あなたもそういう事に関心を持つようになったのね、兄さんにそっくり」
弟「えへへ、それで、いつなの?」
兄「難しい質問だね…研究所の学者さん達も答えには辿り着いてないみたいだよ」
弟「えーっ、それじゃあ分からないの?」ショボン
父「でも、文明が生まれた時を世界の誕生とするならそれは間違いなく【
フルゴル神】が降臨した時だろう」
弟「フルゴル……ああ! 毎日朝のお祈りを捧げる神様だよね!」
兄「よく知ってるな、えらいえらい」ナデナデ
弟「えへへー、僕だって里長さんから色々教わってるんだよ」
兄「へえ、どんな事を習ってるんだ?」
弟「色んなご本読んでもらったり、掟のこととか教えてもらうんだ!」
それを聞くと、父親は意外そうな顔をする。
父「お前、もう掟について教わったのか?」
弟「そうだよ! まだちっちゃいけどお父さんの息子だから特別だって教えてくれたんだ、【人知れず、静かに依頼を遂行する】でしょ!」
父「そうだ、偉いな……お前は俺以上の密偵になるよ」
そう言って頭を撫でる偉大な父を、少年は尊敬の思いで見上げていた―――
数年後
12歳となった兄は里で成人の儀を行い、正式に国雇の密偵として里を出て行った。
父も息子に修行を付けるために休んでいた密偵稼業を再開した。
弟「ねえお母さん、お兄ちゃんとお父さんはいつ帰ってくるの?」
母「今は二人共スピノーに潜入して情報を集めている筈だからしばらくは会えないって、知ってるでしょ?」
弟「うん……でも、寂しいよ。 このテーブルも、二人で使うには広すぎるよ……」
母「そうね、もうすぐお父さんの仕事が一段落つくから、久し振りに帰ってくるって役人さんが言ってたわよ」
弟「ほんとう!? もうすぐお父さんに会えるの!?」パアァ
母「だからもう寝なさい、お父さんに眠そうな顔で会いたくないでしょ?」
弟「うん! おやすみなさい!」
母「おやすみなさい……本当に良いの? あなた」
視線の先の箪笥から出てきたのは、毅然とした顔をした夫だった。
寝室に戻り布団に潜り込んだものの、久し振りにお父さんと会えるという興奮で、少年は中々寝付けずにいた。
弟「早く会いたいなぁ、お父さん! 早く帰って来ないかなぁ……」
ようやくうとうととしてきた頃、寝室の扉が開いた。
弟「ん……もしかしてお父さ……」
そこに居たのは全身を灰色のローブで覆い隠し、右手に大振りなナイフを持った人影。
弟「誰……?」
??「…………」
恐怖で顔を歪ませる少年に無言で襲いかかる男。
少年は殆ど無意識に修行用の短剣でナイフを弾いていた。
弟「うわぁぁぁ! 助けて、お母さん! お父さん!」
絶叫しながら振るった短剣が男のローブのフードを掠め、一瞬男の顔が顕になる。
弟「お父さん……? 嘘だ、嘘だぁぁぁ!!」
状況を飲み込めないまま、少年は無我夢中で逃げた。
里を飛び出し、意識のある限り走り続けた。
東の空が僅かに白み始めた頃、少年は意識を失った。
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次に少年が目覚めた時、目に映ったのは教会の天井だった。
シスターからの説明で昨日の夜中にうちがマキナポルタの役人によって燃やされた事を知った。
それから少年は教会で密偵の修行を積み、12歳で成人の儀を終えて国雇の密偵となった。
少年が密偵になって3年
少年は密偵の中にスピノー側の二重スパイが居るという情報を秘密裏に貰い調査をしていた。
そして、遂に二重スパイを捕らえることに成功した。
弟「これから貴方を尋問する…………兄さん」
兄「……麻痺毒の使い方が上達したな」
弟「何で……なんで兄さんが二重スパイなんか」
兄「答えるよ……そうだな、まずは俺がギルさん…父さんに拾われた時の話しをしようか」
弟「……聞くよ、早く」
兄「俺は今から15年前、スピノーの路上で父さんに拾われた」
弟「知ってる、それがどうかした?」
兄「それが、俺が密偵として最初に遂行した任務だ」
弟「えっ……そんな事って」
目を見開き後ずさりする弟に、麻痺で身体も動かせない状態の兄は静かに語り始める。
兄「俺は元々スピノーの教会に捨てられた孤児だ。 そこで催眠暗示を掛けられた」
兄「それは起爆スイッチを入れると『スピノーに雇われてマキナポルタの密偵の家に潜入したスパイだ』という記憶が蘇る暗示だ」
兄「暗示を掛けられた記憶を消されて俺はマキナポルタの密偵が潜入していると思われていたポイントに置き去りにされた」
兄「父さんはただの捨て子じゃないってことには気付いていただろう。それでも本当の息子のように育ててくれて、本当に感謝している」
兄「そしておれはスピノーの連中の思惑通り、密偵の手解きを受けてスピノーに潜入した」
兄「潜入先の高官に催眠暗示のキーワードを囁かれ、俺はマキナポルタの密偵に偽の情報を掴ませた」
兄「つまり俺は最初からスピノー側の人間だったのさ」
兄の独白を聞いて尚、少年はそれを受け入れられずにいた。
弟「そんな……嘘だ、だって兄さんはずっと優しかった!」
兄「そうあることが俺への命令だった、それだけのことだよ」
弟「それじゃあ、うちが焼かれた理由って……」
兄「ああ、俺に掴まされた虚偽の情報を伝えたことと、裏切り者を育てた罪だ」
兄「お前はとうとう親の仇をとっ捕まえたんだよ、やったじゃないか」
弟「こんなの、全然嬉しくないよ……あの優しくて、何でも知ってて、色んな事を教えてくれた兄さんがスパイなんて……信じたくない!」
兄「そうか……なら、もうお前に会うのも最後になるだろうから、ひとつ教えを授けてやるよ」
弟「教え……?」
兄「自分が本当に信じたいと思うものを信じろ……それだけだ」
少年はそれを聞いて、躊躇いがちに宣言する。
弟「なら僕は、僕は優しかった兄さんを信じるよ!」
兄「優しかった俺、か……良い台詞だ、感動的だな」
兄「……だが無意味だ。 お前はまだ甘い」
弟「僕は……」
兄「ゆっくり答えを探すがいいさ、お前にはまだ先がある」
少年は拷問の末に兄を殺害した。
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弟「僕は、もう家族が死ぬのも、家族を殺すのもうんざりだ……」
そして少年は里を抜け、放浪を始める。
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マキナポルタを出て、何処までも歩いて行く。
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フルゴル神信仰派の本拠地ともいわれる【スペロ】という国に入り、しばらく
遂に少年は力尽き、倒れた。
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少年が目覚めた時、そこは建物の中で、目の前には仮面を付けた青年が立っていた。
??「俺は
イグニス、ギルド【ファイアワークス】のマスターをやってる。 どうだ、行き場がないなら俺達の仲間にならないか?」
こうして少年は生産ギルドファイアワークスの一員として、新たな日々に身を投じていく事となる。
2話「イネルヴァの涙」
夕刻
ファイアワークスの本部にある個室で、狼族の少年「ペガ」は戸棚から分厚い紙束を取り出す。
紙束を机に乗せると、顕微鏡の様な道具を覗き込む。
ペガ「これがイネルヴァの涙か……流石に水の神様がくれたものだけあって、見たことも無い様な魔導構造をしてる」
イネルヴァの涙、それは若返りの効果を持つ秘薬である。
飲めばたちまちの内に身体が若返る、まさしく魔法の薬だ。
ペガ「これの構造を解明すれば延命の薬が作れるかもと思ったけど、中々難しいな……そっちはどうだい、鼠くん」
鼠「チュー…」
籠の中の鼠は弱々しい鳴き声を上げる。
ペガ「昨日2回目の経口摂取実験してからずっとこの調子だね、1年毎じゃあスパンが早すぎたかな?」
鼠「……」
応える声はない。
すでに鼠は息絶えていた。
ペガ「……っ!」
ペガ「やっぱり駄目か、所詮は若返りの薬、不死には程遠いって事かよ……」
少年は悔しそうに歯を噛みしめる。
そもそもの始まりは、少年がこのギルドに加入して間もない頃の事だ。
ギルドに居た不死鳥の末裔ともいわれる鳳凰族の男と長寿で知られる
エルフの女が結婚し、ペガを養子に招き入れたのだ。
身寄りのなかったペガはとても幸せだったがある日気付いてしまった、長命種でない自分だけが先に老いて死んでしまう事に。
そしてペガは長い寿命を手に入れる術を探し始めた。
若返りの薬は上手く使えば不老の薬にならないかと思ったのだが、どうやら空振りの様だ。
ペガ「くそっ……こんなんじゃあ僕の寿命の方が先に尽きちゃうよ……親父にも、おかーさんにも、悲しい顔なんてさせたくないのに……!」
悲痛な声に返事はない。
と思っていたのだが、答える声があった。
?? 「そんなことしたって、朱雀も
フォートレスも喜ばないんじゃないかな……?」
ペガ「……蓬さん?」
そこに立っていたのは希少種族で心ない人達に狩られることもあるという、半蛇の少女……と言っても、両性具有だが。
蓬 「やめた方が良いよ、こんなことをしたって誰も救われやしない」
ペガ「そんな事っ! 蓬さんに何がっ」
そう言いかけて思い出す。
まだペガがファイアワークスに加入する前の話だが、かつて蓬の住む里が滅んでいる事を。
ペガ「……ごめんなさい、不謹慎でした」
蓬 「別に良いよ、大切な人達と死に別れる気持ちはよく分かる」
あくまで蓬は静かに諭す様な口調で喋る。
蓬 「でも、こんなことをして、何の意味があるの?」
ペガ「だって、僕はもう……家族と死に別れるのは御免なんだ!」
子供が我儘を言うように、少年は反論した。
蓬 「このことは誰にも話さない……もう一度考えて、それで本当に良いか」
そう言って蓬は部屋を出て行った。
少年はぽつんとひとり、部屋に取り残された。
ペガ「くそっ! どうしろって言うんだよ……」
ペガ「僕が親父やおかーさんよりも先に死ぬのはどうしようもない事じゃないか……」
ペガ「それをどうにかしたいって思うのが、そんなに悪い事かよッ!」
ペガは誰にぶつけることも出来ない思いを噛みしめる。
未だ成果は上がらず、どうすれば良いのか分からない状態だった。
果たして長命の術を手に入れるのが先か、
はたまた自分の寿命が尽きるのが先か、
焦りは増すばかりである。
ペガ「イネルヴァの涙も駄目……なら一体どうすれば……!」
【最後のアムリタ】をはじめとした『不死』に関する記述はこの世界にも多々ある。
しかしその殆どが架空の存在で、現存するものは何ひとつとして無かった。
ならば仕方ないとそれらの文献を調べて自作してやろうと思ったのだが、これが上手くいかない。
当然といえば当然なのだが、何度試作を繰り返しても実験用の鼠の死骸が量産されるだけだ。
もう駄目か、と思うたびに両親を悲しませる訳にはいかないと自分を奮い立たせる日々だ。
ペガ「いや待てよ、そういえばずっと昔に里長さんに読んでもらった本に確か……」
ペガ「駄目だ、思い出せない」
少年が望んでいることは果たして両親のためか自分のためか、もう分からなくなっていた。
?? 「おい、小僧」
ペガ「……誰?」
知らない声だ。
?? 「ここだここ、見えないのか?」
目線の先に居たのはひょろりとした立ち姿の男だ。
ペガ「誰だよ、あんた」
?? 「あんたとは失礼な、俺はしがない外神だよ。 お前、不死になりたいんだろう?」
3話「銀狼の森の伝説」
狼族の青年は、実に10年程振りに故郷へと足を踏み入れた。
狼族の里は今も変わらずその営みを続けている。
門番「何者だ……」
ペガはローブのフードを脱いでみせた。
門番「お前まさか……ギルダーさんのところの坊主か? 10年振りくらいになるか」
ペガ「ええ、長い間留守にして申し訳ありません」
門番「良いんだ、お前の親父も災難だったな」
門番の男は笑顔で通してくれた。
里の中は以前と変わらない。
少年「兄ちゃん、見ない顔だな! 狼族だろ?」
ペガ「うん、ここの出身なんだ。 戻ってくるのは10年振りくらいだけどね」
少年「へぇー、それじゃあ会ったことない訳だ! 特に変わり映えしないだろうけどゆっくりしてけよ!」
ペガ「そうするよ、ありがとう」
見たこともない少年だが、昔よく通った雑貨屋のリンドさんの面影が有ったから、きっとその息子だろう。
ペガは少年を見送ると、里長が住む石造りの建物へと向かった。
ペガがここに来たのには理由があった。
昔里長に読んでもらった本、それが何か思い出したのだ。
本の名は【銀狼の森の伝説】確か狼族の青年が不死の力を授かる……そんな内容だったはずだ。
ペガはこの里で唯一の石造りの建物へと足を踏み入れた。
ペガ「久し振りですね、里長さん」
里長「……ペガ、か?」
ペガ「はい、里長さんはお変わり無い様で」
里長「大きくなったのう……何歳になった?」
ペガ「……25、です」
里長「そうか……お主が戻ってきてくれて嬉しいよ」
ペガ「ありがとうございます……今日は、訊きたいことがあって来たんです」
里長「ほう、それは何だい?」
ペガ「昔読んでもらった、銀狼の森の伝説って本のことなんですけど」
里長「懐かしいのう、今でも里の子供達に読み聞かせておるよ。 それがどうかしたか?」
ペガ「この本に書いてあることって、実話なんですか……?」
里長は目をぱちくりさせたが、ゆっくりと答えた。
里長「所詮は伝説、本気にすることではないよ」
ペガ「そう……ですか」
肩を落とすペガに向かって里長は続ける。
里長「しかし、お主が本当に真実を知りたいのなら……【リロリ村】に行ってみると良いかもしれんな」
ペガ「リロリ村? 聞いたことないですね」
里長「そこに地図がある、持って行くと良い」
ペガ「ありがとうございます」
地図を手に建物を出ようとするペガに向かって、里長は無邪気な笑みを浮かべた。
里長「ところで、儂がいつから里長をしているか知っているか?」
ペガ「何ですか、いきなり。 知りませんけど、いつからなんです?」
里長「秘密じゃよ」
そう言って里長は再び無邪気に笑った。
ペガ「リロリ村、行ってみないとな……」
ペガは地図を頼りに件の村を目指して歩みを進めた。
とうとう辿り着いたリロリ村。
長期休暇を取っていたとはいえ、相当な日数を費やしてしまった。
門を潜ったペガの目には、異様としか言えない光景が飛び込んできた。
男性が居ないのだ。 ひとりとして。
更に不思議な事に、村にいる女性は高く見積もってもても10歳程にしか見えなかった。
不思議そうに周囲を見渡していると、ひとりの年端もいかない少女がこちらに歩いてきた。
少女「ようこそリロリ村へ、儂がこの村の村長じゃ」
子供が村長の真似事をしていると思うだろう。
しかしその少女には外見には不釣り合いな凄みがあった。
少女「不思議か? しかしこの姿こそが、かつてこの地に【
不死身の魔女】が居たことの傍証なのじゃ」
ペガ「それじゃあ、ここの人達は本当に……?」
少女「ああ、年を取らない。 それも何故かおなごだけ、な」
ペガ「その不死身の魔女さんは今何処にいるんですか!?」
少女「そうカッカするでない……そうじゃな、儂にも分からん」
ペガ「そんな……あ、そういえばここで年を取らない仕組みってどうなってるんですか?」
少女「儂も詳しくは知らん、じゃが不死身の魔女が不死の薬を零したらしい……そう伝わっておる」
ペガ「その薬はここにあるんですか?」
少女「見つかってはおらん。 じゃが、昔魔女が使っていたといわれる小屋が残っておる。 行ってみるか?」
ペガは一も二も無く頷いた。
魔女の書斎は混沌としていた。
大量の実験道具に試験管、膨大な資料が散乱している。
ペガ「この中から探せってことですか?」
少女「それも構わんが、もう調べた後じゃ」
ペガ「えっ……それじゃあ」
少女「不死に関係する資料は残っていなかった。 あったのはこれだけじゃ」
少女の手にあったのは、見る角度によって様々に色彩を変化させる美しい宝石だった。
ペガ「何ですか? それ」
少女「【心写しの石】というんじゃが、簡単にいえば持ち主の記憶を石の中に封じ込めるマジックアイテムじゃな」
ペガ「なんでそんな物がここに?」
少女「研究成果を記録しようとしたんじゃろう、中身の入った石はひとつも残ってなかったがな」
ペガは肩を落とす。
少女「そう気落ちするでない、永遠の命など詰まらないものよ」
ペガ「でも……どうしても、欲しいんです」
少女「強情な奴じゃのう……後悔するぞ」
ペガ「でもっ! ……それでも、僕は……!」
少女「まあよい、自分の生き方を決めるのは自分なのじゃからな。 ……これも何かの縁じゃ、持っていけ」
少女はそう言って宝石を差し出してくる。
ペガ「でもこれ、貴重なものじゃ……」
少女「良いんじゃ、これに大切な記憶を封じておけば、何時でも思い出せるんじゃから」
そういう少女の左手の薬指には、心写しの石が埋め込まれた指輪が嵌められていた。
ペガ「……分かりました、ありがとうございます」
ペガは石を受け取ると村を後にした。
そんな時、脳内に直接話しかけてくる声がある。
?? 「おい小僧、収穫は有ったか?」
ペガ「なんだよ、外神」
外神「フーゼントーチ様と呼べ! ……そろそろ俺の力を借りたくなったんじゃないか?」
ペガ「……お断りだね」
外神「チッ ……釣れねぇ奴」
4話「花火の証」
初老の狼族は頭を抱えた。
時は流れ、ファイアワークスとして共に数多の冒険を繰り広げた仲間達はその多くが天寿を全うした。
ウォークさんはシャルちゃんに婿入りしてからたまにしか帰ってこなくなり、
ギリギリまで現役を続けていたイグニスさんもつい去年病に倒れ、逝った。
若い世代も力を付けてきているものの、今や古参組と呼ばれる猛者達は朱雀家の3人だけになってしまった。
次は自分だ。
そう思うたびに焦りに駆られる。
しかし、それは抗いようのない事実だ。
本当にそうだろうか?
ずっと昔、少年の頃から考えていた方法。
だが、ずっと考えないようにしてきた方法でもある。
それはつまり、長命種の両親の身体を分析して長命の術を見つけようというものだ。
そもそもの目的に反すると、ずっと避けてきた方法だ。
しかし、それを選択せざるを得ない程に、彼は追い詰められていた。
ペガ「親父、おかーさん…………ごめん」
ペガは長年に渡って愛用してきたショートソードの刀身に麻痺毒を念入りに塗る。
そして、親父こと朱雀の寝室へと向かった。
音を立てない様に扉を開けたつもりだったが、朱雀はある程度見越していたかの様に言った。
朱雀「……ペガか」
ペガ「よく分かったね、親父」
朱雀「足音で分かるよ。 ……俺を殺しに来たか?」
冗談とも本気とも取れない口調に、ペガは狼狽える。
朱雀「お前に殺されるなら本望さ……息子の死ぬ姿は見たくない」
あくまで穏やかな調子を崩さない。
ペガ「…………ごめん」
そしてペガは足を踏み出し……いや、踏み出せなかった。
かつて自らの死を受け入れ、息子を逃がした父親と、
今ここで自らの死を受け入れ、息子を待つ父親。
ふたりの偉大な男を前に、足が動かない。
それどころか、ペガの頬には涙が止めどなく流れている。
ペガ「僕には……出来ないよ……」
弱音を吐いたのはいつ以来だろうか。
朱雀「そうか、俺もお前やフォートレスが悲しむのは嫌だよ」
ペガはそれ以上は何も言えずに朱雀の寝室を立ち去った。
ペガは懐からひとつの石を取り出した。
見る角度によって様々に色を変える不思議な宝石だ。
ペガ「まさかこれを使う日が来るとは思わなかった……」
ペガは宝石をじっと見つめる。
ペガ「本当に……これで良いんでしょうか」
応える声はない。
ペガ「大丈夫、きっと思い出せる……きっと」
自分に言い聞かせる様に呟く。
ペガ「心写しの石よ、その瞳を開き給え」
かつて教わった起動ワードによって、宝石が輝きを帯びる。
宝石に映り込むのは、4人の人影が仲良く食卓についている様子。
それが消えると同時に現れるのは、2人の人影が、1人の人影をもふもふしてる様子。
ペガ「ありがとう……父さん、母さん、兄さん、親父、おかーさん」
その呟きを聞き入れたかの様に、表面に文字が彫られる。
『愛おしい、大切な思い出』
ペガ「…………さよなら」
翌日は快晴
目を覚まし廊下に出たペガと鉢合わせたのはフォートレスだった。
フォートレス「あらペガちゃん、今日は早いね!」
これ程の時が過ぎても出会った時から全く変わらない美貌は、いつもペガにちくりとした痛みをもたらしていた。
しかし今日は不思議と何も感じなかった。
フォートレス「どうしたの? ペガちゃ……」
最後まで言い終わらない内にフォートレスは崩れ落ちる。
麻痺毒を塗った刃が腹部に突き刺さっていた。
別の部屋の扉が開く。
出てきたのは朱雀だ。
朱雀 「お前、なんて事を!!」
しかし朱雀は構えた剣を振り抜けない。
ペガ 「俺はもうあんたの知っているペガじゃない」
フォートレスに刺さっていたショートソードで抜き様に逆袈裟斬り。
朱雀も麻痺して倒れこむ。
そして、異常を察したファイアワークスの若い団員が廊下に出てきた。
団員 「ペガさん? ……あんた、何やって」
団員はおでこから血しぶきを上げて仰向けに倒れた。
魔導銃の弾丸が頭を撃ち抜いたのだ。
銃声を聞きつけて、多くの団員が駆けつけてくる。
しかしその多くがこの異常な状況を理解できていない様だった。
ペガは彼等に向かって無言で魔導銃を突き付けた。
最後に残ったものは、麻痺したまま倒れ伏す朱雀とフォートレス、
折り重なって倒れる死体の山、
そして、独りの殺人鬼だった。
これが絶望か。
自業自得、自分が招いた結果だ。
しかしそれを受け入れがたいと思う自分がいる。
足元で悲痛な表情を浮かべるふたりを見ても、最早何の感情も湧いては来なかった。
「こんなことをしたって誰も救われやしない」
ずっと昔に蓬にいわれた言葉が重くのしかかる。
でも、もう後戻りはできない。
する訳にはいかなかった。
トーチ「ったく派手にやったなあ、小僧」
ペガ 「……ああ」
トーチ「そろそろ俺の力を借りたくなったか?」
ペガ 「……何故」
トーチ「どっちみちここの設備じゃ研究は進まねぇし、もう少ししたら建物自体封鎖されるだろ」
ペガ 「……それで」
トーチ「お前の故郷にでも行って俺達の楽園でも作ってノンビリ暮らそうぜ?」
ペガ 「……楽園?」
トーチ「お前、こいつらの記憶封印したんだろ? だったらそれを元にクローンでも作りゃあ良い」
ペガ 「……そんなこと」
トーチ「出来るんだよ、俺ならな」
ペガ 「……そうか、それも面白いかもな」
最終話「置き土産-time-」
痩せこけた頬の狼族の青年は、ファイアワークスの本部で家族に囲まれて幸せに暮らしていた。
ペガ 「ねえおかーさん、この世界はいつ生まれたの?」
フォートレス「あなたもそういう事に関心を持つようになったのね」
ペガ 「えへへ、それで、いつなの?」
フォートレス「難しい質問ね…研究所の学者さん達も答えには辿り着いてないみたいだよ」
ペガ 「えーっ、それじゃあ分からないの?」ショボン
朱雀 「でも、文明が生まれた時を世界の誕生とするならそれは間違いなく【フルゴル神】が降臨した時だと思うよ」
ペガ 「フルゴル……ああ! 毎日朝のお祈りを捧げる神様だよね!」
朱雀 「よく知ってるね、えらいえらい」ナデナデ
そう言って頭を撫でる偉大な父を、少年は尊敬の思いで見上げていた―――
?? 「ねえ」
ペガ 「親父ー! 今日も剣術教えてよ!」
?? 「ねえってば」
朱雀 「良いぞ、今日は【エクスカリバー・モルガン】を教えてあげよう!」
?? 「聞こえてないの?」
ペガ 「うるさいなあ、邪魔しないでよ。 折角楽しい夢を見てるところなのに」
マキナポルタの辺境にある狼族の里。
その西端にある焼け落ちた民家のすぐ側に、今は砦が建っていた。
砦には夜になると青い篝火が灯り、怪しく輝くという。
砦の中では独りの狼族が鳳凰族の男とエルフの女を使って不死の実験をしているらしい。
聞いた話では実は不死になることには成功していて、里の住民を攫って作り変えたクローンを相手に家族ごっこをしているらしい。
そんな噂がまことしやかに囁かれるようになったのは何時頃だっただろうか。
元々は狼族の里から逃げてきた少年が、老いて亡くなる間際に語り始めた話だっていわれている。
なんでも調べに行った連中はひとり残らず【オルフェ】とかいう化物に変えられちまうんだとよ。
そりゃあ実際に調べに行かれたら嘘がバレるからじゃあないのか?
いやいや、実際に調査隊が組織されたことがあるらしいんだよ。
それでどうなったんだ?
誰一人帰って来なかったってさ。
まあ本当かどうかなんて分かんないけどさ。
ははは、そんなのただの作り話に決まってるさ。
いっそ俺たちで嘘を暴いてやろうぜ。
何言ってんだ、本当に化物にされちまったらどうすんだよ。
そんな訳ないだろ。
その里ってこの近くだろ、行ってみようぜ。
ったく、死んでも知らねぇぞ。
おいあれ……なんだ?
黒い……鳥人?
おいおい、嘘だろ……
ほら、言わんこっちゃない!
神様ぁ……居るんなら助けてくれぇ!
?? 「やっと返事してくれたね」
ペガ「君が邪魔するからだよ。 また説教でもしに来たの? 蓬さん」
蓬 「違うよ、結局ペガくんが幸せになれたのか聞きたくて」
ペガ「同じじゃないか、でも残念だったね。 これ以上ないくらい幸せだよ」
蓬 「本当に?」
ペガ「決まってるだろう!? 親父やおかーさんとずっと一緒に居られるんだよ、こんなに幸せなことはない」
蓬 「……そっか、ならもう何も言わない」
ペガ「早くそうしてくれれば良かったのに」
蓬 「でも最後にもうひとつだけ言わせて欲しいんだ」
ペガ「何だよ、早く言えよ」
蓬 「あの外神に心を許したりしてないよね……」
ペガ「……解ってる。 あいつのことも、なんで蓬さんがそれを訊いたのかも」
蓬 「そっか。 なら安心だ、もう私が言うことはないよ」
ペガ「大丈夫だよ、向こうにはまだ【ファイアワークス】が居るんだから。 ……僕は皆を“信じたい”」
蓬 「そうだね、じゃあ、さよなら」
ペガ「さよなら」
そう言葉を交わすと、あの頃と寸分違わぬ姿の“少女”はペガの前から姿を消した。
トーチ「そろそろ虚しくなってきたんじゃねぇか? 首領サン」
ペガ 「何の用だよ、フーゼントーチ」
トーチ「おおっと、初めて俺の名前呼んでくれたか!? 俺ぁ嬉しいぞ!」
ペガ 「そんなことはどうでも良い、要件を言え」
トーチ「相変わらず冷たいねぇ……首領、お前は【あらゆる奇跡が収束した世界】が有ったら、行ってみたいと思うかい?」
ペガ 「なんだよ、それ」
トーチ「そのままさ。 あらゆる可能性が存在する世界さ」
ペガ 「……で、それがどうしたって言うんだ?」
トーチ「そこには手術台で寝転んでるお前の両親も居るはずだぜ、クローンなんかじゃない、な」
ペガ 「そうか……それは興味深いな」
トーチ「そこで、だ。 この【
異世界渡航装置】を使ってそこに行かねぇか?」
ペガ 「そんなもんがあるなら早く言え……さっさと行こう」
トーチ「それじゃあ早速スイッチを入れるぜぇ!」
トーチ(馬鹿め! これで邪魔なファイアワークスの“最後のひとり”を異世界に送っちまえばこの世界は俺のモンよ!)
トーチ(お前のお陰で量産出来たこの大量のオルフェを使って世界征服してやるぜ! ザマーミロ!)
グサッ
トーチ「…………グサ?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
トーチ「何故……っ! 何故だ! 何故“砦ごと”ワープしてやがる! ま、まさか……お前! 裏切ったなぁ!!」
フーゼントーチの鳩尾には、かつてペガの父親が振るった剣【置き土産】が突き刺さっていた。
ペガ 「折角ここまで一緒に来たんだ。 楽園に辿り着く時も一緒が良いだろ? 相棒」
トーチ「ち、ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
フーゼントーチはペガに取り込まれ、その瞬間を以ってこの世界から砦は消滅した。
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蓬「ゆーきやこんこ、あられやこんこ」
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砦が消えると、その残骸が青い火の粉と灰の雪となって降り注いだ。
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蓬「ふってはふってはずんずんつもる」
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マキナポルタに降った【灰の雪】は、一大ニュースとして大陸中に広がった。
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蓬「やーまものはらもわたぼーしかぶり」
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しかし、灰の雪に纏わる悲しいエピソードを知るのはただひとりだけ。
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蓬「かーれきのこさずはながさく」
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雪が止んだ後に残ったのは、清々しい程の青空だった。
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蓬「さて、この空を守ったのはいったい誰なんでしょうか? ……ねぇ、ペガ」
-Fin-
最終更新:2016年03月21日 14:50