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遭遇!魔将グレデェズデ



 近年その実力を認められ、晴れて勇者候補となった『アースラ』の一行。
 そんな彼等が新たな冒険を求めて隣国へと続く森の中を行軍中、突然高笑いと共に木の上に現れた全身紫の衣装とマント姿な魔族が一人。
 突如現れたその魔族はアースラ達の正面にあった少し大きな岩の上に降り立つと、何だか珍妙なポーズを決めながら自己紹介を始めたのである。

「俺こそが魔将グレデェズデ!この世において最も最強!最も華麗!お茶の間拍手喝采必須の魔王候補であーる!」
 こう、高らかに。

「…は?」
 思わず目が点になる勇者候補アースラ。
 パーティーメンバーである戦士ビル(オッサン)、僧侶カール(ホモ)、魔法使いディル(童貞)も総じて同じ表情だ。

「ちょ、ちょっと待ってくれ」
 アースラはグレデェズデと名乗った魔族に手を挙げて時間を要求。

「うむ、三分間待ってやろう」
 グレデェズデは何だかウキウキノリノリな表情でその要求を認めた。

「なぁ、あいつ何?」と、アースラ。
「知らん、魔族なのは確かではあるが」と、ビル。
「肌も真っ白で中々の美形で好みだが」と、カール。
「ちょっと待てそこのホモ」と、ディル。

 頭痛が痛い。
 戦闘では頼りになるのだが、堂々と問題発言をぶちかます一部メンバーにアースラはこめかみを押さえてしまう。

「取りあえず敵、なのか?敵でいいのか?自分から魔王候補とか言っちゃってるが?」
 ちらりと見れば、そいつは岩の上で様々なポーズを取りつつ「この方がカッコいいか?いや、やっぱこっちだな」等とブツブツ言っている。

 ちなみにこの時点で既に五分以上が経過していた。

――――

「えーと、それでご用件は?」
 協議の結果、相手はバカだと言う結論に至ったのだが、一応紳士的に聞いてみる。

「はっはっはー!知れた事!貴様等愚かな勇者候補は芽の出る前に潰すに限るだろう!古事記にもそう書いてある!」

 はいバカ決定。
 魔将と名乗る割には一人みたいだし、多分ボッチなんだろう。
 しかし相手はまかりなりにも人外であり、強大な魔力を秘めている魔族。勇者候補として一切の油断はしない。

「こちらは4人、それでも挑むのか?逃げるのなら見逃すぞ?」
 武器を構えたアースラ達の言葉にグレデェズデはにやりと笑う。

「ふふふ、滅びるものこそ美しい…。我が腕に抱かれて死ぬがいい!」
 文字通り腕を広げ、グレデェズデが岩の上から飛び降りて襲い掛かってきた!

「ぬぅん!」
 戦士ビルが巨大な剣で迎え撃つ。大振りだが必殺の一撃!

「遅いわ!」
 だがグレデェズデはその剣を掻い潜り、腕を広げたままビルに接近。
「グレデェズデパンチ!」
 そう叫びながらビルの顎をすらりと伸びた長い足で蹴り上げる。

「グガッ!」
 至って普通の蹴りであった。
 だがその一撃で崩れ落ち、そのまま動かなくなるビル。

「こいつ!」
 アースラは驚愕する。だが迷いはしない。
 冒険者となり、旅に出た時から覚悟は出来ている。
 俺は勇者として世界に正義と平和を示さなければならないのだ。

「うおおおおおお!」
 森に入る前に立ち寄った街で買ったばかりの鋼の剣。
 蹴りの余韻で態勢が崩れているグレデェズデの心臓を狙った突きによる攻撃。
 回避しようのない、完璧なタイミング。

 だが。

「甘い甘い無駄無駄無駄ぁ!てめぇらはいちいち覚悟や何やら重いんだよぉ!」
 なんとグレデェズデは蹴りの遠心力を利用して華麗に空中で翻り、勢いの乗った拳で剣を殴りつけたのである。
 その一撃で鋼の剣はあっさりと折れ、刀身が明後日の方向へと飛んでいく。

「そぉら!回復なんかさせねぇぞ?」
 アースラの自慢の剣を殴り折ったグレデェズデの拳に小さな炎が生まれた。
 そしてそれを倒れたビルに癒しの力を行使していたカールに向けて軽く放り投げる。

「ぬわーーーーーーー!!」
 しかしその小さな炎はビルとカールを瞬時に覆い尽くすと、一瞬でそのまま二人を骨まで焼き尽くしたのだった。

「フフフ…。今のはグレゾーマではない、ただのグレだ」
 その光景を見てドヤ顔で解説するグレデェズデ。

「意味不明な事を言ってるんじゃねーぞ!くらえ!氷結の瀑布!」
 魔法使いのディルが自身が使える最大級の氷結魔法をグレデェズデに向けて放つ。
 それは直径5メートルはある氷塊を無数に生み出し、相手の頭上に落とすという大技。
 猛烈な落下音と共に、氷塊群がグレデェズデを完全に飲み込んだ。

「やったか!」
「やれてねーよバーカ」
 地面に積み上がった氷の山が崩れると同時、その氷の一つが凄まじい速度で山から押し出されてディルに激突。彼の身体は自身の生み出した氷によって押し潰された。

「な…、なんなんだよお前はああああああ!」
 剣の柄だけを握ったアースラが絶望の表情でそう叫んだ。
 そして絶望の表情のまま、アースラの首はゆっくりとその身体からずり落ちていく。

「言ったであろう?俺こそが魔将グレデェズデ。いずれ魔王になる男である!」
 神速とも言える速度で抜き放った剣を鞘に納めながら細く笑む。

 そして森の中、一人の魔族の調子外れな高笑いが響き渡ったのだった。



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最終更新:2021年11月22日 02:17